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耐震構造の父

2010-05-04 08:58:06 | 文化
東京都中央区銀座4丁目にある(4代目の)歌舞伎座が、4月30日閉場された。

建設後59年を経過し、老朽化が目立ってきたため、一旦休場し改築することになったのは、皆さんもニュースなどでご存知だと思います。

新たに建て直される5代目の歌舞伎座は、現在の歌舞伎座と同じく劇場部分は従来通りの低層構造で、桃山風の外観を継承するようだが、背後に地上29階建・高さ135mの高層ビルを併設する施設として2013年春の完成を予定しているという。

背後に高層ビルがそびえたつのは、ちょっと色気がないような気もするが、札幌大通公園に面した場所に新たに完成する「○洋銀行」本店ビルのように、昔の建物(「北海道○殖銀行」本店ビル)のモチーフを完全に失わせる建物よりは100倍良いように思う。

話を戻します。
今回引退することになった4代目の歌舞伎座の構造設計は、日本の建築構造技術者・建築構造学者で「耐震構造の父」と評される内藤多仲(ないとう たちゅう)博士のもの。
この内藤博士は、アメリカ留学中に旅行用トランクの仕切板を外して積んだため、トランクを壊してしまった体験や船の構造から着想を得て、帰国後に耐震壁による耐震構造理論を考案。その後「架構建築耐震構造論」で工学博士号を取得します。

「耐震構造理論」を用いて、耐震壁付き鉄骨鉄筋コンクリート造の日本興業銀行本店ビルや歌舞伎座等の構造設計を担当。
日本興業銀行ビル竣工の3か月後に関東大震災が起こりますが、丸の内にあったアメリカ流の鉄骨造ビルが大きな被害を受けたのと対照的に、興銀ビルが無事だったことで内藤博士の理論が実証されます。
また、当時建設中だった(4代目)歌舞伎座は、内部を焼失したものの、躯体は無事だったエピソードが残っている。

戦後は名古屋テレビ塔、通天閣、さっぽろテレビ塔、東京タワーなどの多数の鉄骨構造の電波塔・観光塔の設計を手がけ「塔博士」とも呼ばれる。
彼が亡くなって今年で40年になるが、今でも彼の功績に対する評価は高い。

2012年初頭に、自立式電波塔としては世界一の高さとなる高さ634mの東京スカイツリーが、東京都墨田区押上に完成する(予定)。
また、その1年後に、5代目歌舞伎座も完成する(予定)。

そのような新しい建物たちを「耐震構造の父」はどのように見るのだろうか?

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