表題の単行本を読了。
スポーツに関わる仕事を(民業で)している者として、共感するところが満載の一冊。
成長する可能性が高い産業分野なのに、旧態依然な人たち(の思考と言動)により、成長が妨げられている。
現状と課題の見極め、日本と諸外国との比較、これから我が国のスポーツが進むべき方向性を端的に示している名著といえる。
行政の限界(能力)、長期的なビジョンや経営感覚の欠落、助成金頼みの競技団体、そして未来の我が国のスポーツ(ビジネス)の姿。
スポーツビジネスがなかなか育たない我が国の状況を、その背景にあるものの解説を含め、きめ細かい取材と鋭い視点で、スポーツ業界(産業分野として)の特殊性を見事にあぶり出している。
とても痛快であり、見事なほどに記している。
ここまで端的に書き記した本に初めて出会った。
内容等に興味があれば、是非ご一読を。
概略は↓
「2020狂騒の東京オリンピック」
吉野 次郎 著
224ページ
価格1,512円(税込)
発行元日経BP社
発行日2015/11/30
<内容>
※出版社のホームページより抜粋
新国立競技場のデザイン、建設費を巡る騒動の最中、東京五輪開催後に「新国立ジャイアンツ球場」として活用する案が浮上した。
読売新聞グループが全面バックアップするも、永田町の主流派が猛反発、最終的に潰された。
経済合理性を無視してまで、新国立競技場を「国家のシンボル」に据える理由は何なのか。
背景を探ると、そこには「国立競技場」に対して日本人が戦前から連綿と抱いてきたある想いがあった。
日本のスポーツ界は戦前から、「金もうけは卑しい」という価値観に囚われている。
慈善事業として開催される甲子園や、観客に背を向け独自の哲学を貫く全日本柔道連盟。
内紛を繰り返すスポーツ団体や採算度外視で赤字を垂れ流すスポーツスタジアムが、日本各地に点在する。
米国スポーツ市場が約60兆円に成長したのに対し、日本はその20分の1の約3兆円しかない。
稼げなければ、現役選手を鍛えることも、次世代の選手を発掘することもできないにも関わらず、である。
「日本のスポーツ界はいまだ戦時下にあり」————。
経済記者が正面から取材をして見えてきたのは、時代錯誤のまま身動きが取れずにいる日本のスポーツ界だった。
弱体化が進む市場に未来はあるのか。
スポーツを巡る日本の現状と課題、そして解決の糸口を「経済的観点」から分析したルポルタージュ。