鉄道ファンだけではなく、多くのファンを持つ新幹線500系。
1997年3月、山陽新幹線でデビュー。当時の世界最速となる時速300kmでの営業運転を行い、新大阪~博多間の所要時間を2時間17分に短縮。山陽区間での平均速度はギネス世界記録にもなった。
500系の使命は「世界最速」であった。
国鉄分割民営化の後、JR西日本は山陽区間で飛行機に乗客を奪われ、苦しい立場となったのが背景にあった。
そこでJR西日本は「高速化で、飛行機から乗客を取り戻すこと」が大きなテーマとして開発された。
500系が長く人気を得ている理由の一つとして、その特徴的な外観にある。前頭部の形状は戦闘機のような約15mのロングノーズ。開発したJR西日本は「超高速走行でも空気の壁をスムーズに突き破るデザイン」をコンセプトにしたという。
また開発時に立ちはだかったものに「騒音問題」があり、それを解決する方法として導き出せれたのがこの形状だった。
列車が高速でトンネルに入ると、圧縮された空気がトンネルの出口側で大きな爆音を生む。山陽新幹線はトンネルの割合が50%を超えたため、ある「自然の造形」に着目して開発を進めた。
それは空中から水中へ素早く飛び込みエサを捕るカワセミ。カワセミの細長いくちばしの形状が水中に入る際の抵抗を減らすことがわかり、新たな500系に取り入れた。
500系は他にも、自然の造形を採り入れた。
試験走行の段階で、パンタグラフが風を切る音も大きな問題になった。そこで、最も静かに飛ぶ鳥だとされるフクロウに着目。フクロウの羽を徹底的に研究。空気抵抗を減らす突起の存在を確認し、パンタグラフの形状に応用した。
「空力性能の向上、低騒音化、それらを象徴する美しさの統合の結論」
当時、JR西日本は500系の造形をこう表現し、胸を張った。
続きは明日。