(前話・唯一の家族旅行の蛇足)
その日の旅行は、あいにくの雨。
日常から解放され、
時を忘れて 過ごしてもらおうと
旅館にはテレビも時計もなかった。
あの台風一過後、(前話参照)
私は 旅先に本を持っていく。
静寂の中、ただ雨音を聞きながら
読書する贅沢といったら・・・
私のそんな感動をよそに
主人はスマホでテレビを、
息子はパソコンでユーチューブを見ている。
どこにでも電子機器を持ち歩いて・・・
嵐の音だったり、
心地よく頬にあたる風の心地よさだったり。
その時の天気やにおいと共に読む物語の世界。
いつか息子も流れゆく受け身映像ではなく、
心に深く残る物語と出会ってほしい。
そんな私の願いがいつ届くのかわからないが、
旅先でいつも母が手に本を持っていたという映像が、
息子の心に残ることをひそかに期待して、
今日も旅行鞄に本を入れる。
※ 旅行鞄に本を入れて・・・13年、
いまだ息子に読書の兆しなし。