かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

合掌。臼井儀人さんのご冥福をお祈りいたします。

2009-09-20 23:23:32 | Weblog
 そういえば、と今更ではありますが、またブログのデザインを替えました。前はパステルカラーのカタツムリ、という梅雨仕様で、夏になったら替えよう、と思ったままずるずるとなかなか夏らしい季節にならなかったためかタイミングを失い、結局ついこの間まで引っ張ってしまいました。しかしながら、季節はもう秋になるわけですし、少し紅葉の季節には早すぎるのではありますが、秋仕様に改めたのです。かつてこのブログのテンプレートデザインはほぼいじることが出来ず、表示する情報やその順番も出来合いを使うよりほか無かったのですが、最近はある程度カスタマイズできる幅が広がり、使い勝手が良くなってきました。こういう変更は大歓迎ですので、これからもどしどし中身をいじれるように自由度を上げていって欲しいです。

 さて、長野県と群馬県の境にそびえる荒船山付近で消息を絶った「クレヨンしんちゃん」の作者臼井儀人さん、とうとう遺体で発見されたのだそうですね。御年51歳。原作の漫画はほとんど読んだことがありませんが、毎週やっているテレビアニメは大体見ておりますし、映画の方も結構楽しんで観てきましたから、そんな作品の原作者たる方の訃報には、粛然とするものがあります。創作という特異な能力がまた一つこの世から消えたわけで、それもどうやら事故らしい、というのですから、そのやるせなさは計り知れません。この業界のヒトは多忙で不規則な生活になるためなのか、あまり長生きできないように感じるのですが、それでも生きていればまだ新たな話をつむいでおられたことでしょう。それを思うと、ご冥福を祈りつつも、いかにも残念無念という想いが募ります。
 それにしても、一人で山歩きというのは何はともあれ危ない、と思います。クマにはそう出くわさないにしてもありえない話ではないですし、野犬とかマムシとかスズメバチとか、危ない動物は色々います。どうやら岩場で滑り落ちてしまわれたようですが、ふとした拍子に足場の悪いところで踏み外したり躓いたりすることも珍しくはありません。ひょっとしたら一人の山歩きに慣れておられたのかもしれませんが、せめて一人同行者がいたなら、と思わずにはいられませんでした。
 「クレヨンしんちゃん」はこれからどうなるのでしょうね。サザエさんや仮面ライダーシリーズのように、アニメのスタッフの手でずっと続けられるのでしょうか。アニメや映画にどれくらい原作者の意向が反映されているのか私にはわかりませんが、もし今後何らかの変質が余儀なくされるのだとしたら残念ですね。

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13 作戦 その3

2009-09-20 09:25:26 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 ケンプ率いるドラコニアン部隊と麗夢達が出会うには、それからまだ15分を要した。その間に円光、ドラコニアン、プジョーと夢魔達の間に熾烈な戦闘が繰り広げられたのは言うまでもない。ひとしきり凄惨な戦闘が終息した後、ドラコニアンはほぼ主砲を撃ち尽くし、プジョーも残すところロケット弾一発、右側のバルカンは弾切れ、左側も残弾数10発足らずと言う状態になっていた。だが、その鬼神も避ける戦いぶりは、さしもの夢魔達も、続けての攻撃をためらう程な効果はあった。今、大阪城下の広場では、ドラコニアン5両がプジョーを中心に円陣を組み、それぞれもう咆哮することはない主砲を居丈高に振り上げて、夢魔達ににらみを利かせていた。その周囲、主砲の射程距離の外側に、夢魔達が群がり集まり、こちらの隙をうかがっている。今こちらの状態を気づかれて総攻撃を受ければ、今度こそ駄目かも知れない。そんな緊迫した中で、鬼童はケンプ等を前に、練り上げた作戦を披露していた。
「あの怪物には、恐らく通常兵器は通用しません。いや、寧ろ撃たない方がいい。何故なら、あれはほぼ間違いなく風船のような構造になっていると推測されるからです」
「どう言うことだ?」
 ケンプの右目がぎらりと光った。今の今まで、ドラコニアンの無反動砲弾をたっぷりあの巨体にお見舞いしてやろうと思っていただけに、その言葉は看過できなかった。鬼童はまっすぐケンプの目を見返すと、臆することなく口を開いた。
「もし、あの姿が元の少女の肉体をそのまま拡大したのだとしたら、到底骨格も細胞も形を維持することは不可能です。血液循環一つとっても、それだけの圧力を生み出す事は出来ないでしょう。第一、衣装まで巨大化するのはどう考えても不自然です。それにあの大阪城の壊れ方。あの様子を見ても、怪物の体重が見かけに相応しいほどのものとは到底思えません」
 鬼童の指さす方角に、今は大阪城にどっかり腰を据えた少女の姿があった。もし見かけ通りの大きさで肉体が構成されているとしたら、その体重は恐らくは千トンを超えるだろう。大阪城は鉄筋コンクリート造りの堅固な建物だが、だからといってそのお尻に敷かれて耐えられるとは考えにくい。仮に耐えられたとしても、最上層くらいは陥没破壊していて不思議ではないのだが、実際には最上層どころか、その屋根ですら、重量物を載せているとは思えないしっかりした姿を見せていた。
「なるほど、では一体中に詰まっているのは何だ?」
「これも推測ですが、恐らく負のエネルギー、即ち瘴気が充満していると考えられます」
「瘴気?」
「ええ、夢魔達はあの少女の体から次々と生み出されています。恐らく、中に詰まった瘴気が漏れ出るとき、少女の肉体の一部を利用して実体化しているのでしょう。もし細胞一つで夢魔が一体実体化できるなら、その数はざっと最大60兆に達します。到底倒し切れませんよ」
 60兆……。今度はケンプの顔がどす黒く染まった。ここまでドラコニアンIIの力を信じて走ってきたが、相手がそんな全人類の数千倍の数にも達するのだとしたら、到底勝ち目はない。
「ではどうすれば……」
 榊の不安げな問いに、鬼童は言った。
「方法はあります。要するに、瘴気を消滅させればいいんです。円光さんには、その力があります」
「し、しかし拙僧でもあれだけ大きなものを滅散出来るかどうか……」
 さすがに脂汗を浮かべて躊躇する円光に、鬼童は言った。
「大丈夫ですよ、円光さん。ドラコニアンIIに搭載された対精神波セキュリティーシステムは、思念波砲と原理的に同じ構造になっています。従って、うまく活用すればあの怪物でも充分対処可能です」
 鬼童は皆が理解の色を示すまで言葉を切ると、再び語りはじめた。
「まず、ドラコニアンIIのシステムを、思念波砲仕様に改造します。ちょっとした調整で済みますから、時間はかかりません。次に、改造済みのこの5両で怪物を取り囲み、お互いをリンクさせて円光さんの力を増幅すれば……」
「瘴気を払うことが出来る!」
「その通りです麗夢さん!」
 ぱっと明るい顔になった麗夢に、鬼童もにっこり歯を輝かせた。だが、ケンプはまだ難しい顔を崩さず、鬼童に言った。
「だが、そうなると我々は相互支援できなくなる。既に砲弾は殆ど尽きかけているし、幾ら強靱な装甲でも、単体で奴らの集中攻撃を受けたら破壊されるかも知れない」
 ケンプはドラコニアンIIの性能に惚れ込んでいたが、だからといってそれが無敵だと思うほど盲信してもいなかった。第一、砲弾を撃ち尽くした戦車など、ただ図体がでかいだけのでくの坊でしかない。
「ええ。その点については若干不安が残るのですが、ここは麗夢さん、お願いできませんか?」
 突然振られて、麗夢はきょとんとして聞いた。
「何をしたらいいの?」
 すると鬼童は、真剣な眼差しで麗夢に答えた。
「おとりです。奴らにこちらの意図を悟らせないように、かき回して欲しいんです。これまでの様子を見ていると、夢魔達が狙っているのは明らかに麗夢さんです。きっと一度倒されたことを記憶していて、最大の脅威と認識しているのでしょう」
「馬鹿な! 何を言い出すんだ君は!」
 榊が声を荒げて鬼童に詰め寄った。円光も気色ばんで鬼童を睨み付けている。しかし、麗夢は躊躇う事無く榊と鬼童の間に割って入った。
「私、やります。見たところ、シェリーちゃんの夢に入ることが出来そうだわ。そこを足がかりにして、中から引っかき回してやるわ!」
「麗夢さん危険すぎる! 第一、夢に入っている間、無防備になる身体をどうするんです?」
 麗夢の決意に狼狽した榊が、今度は麗夢の方に向き直る。すると麗夢は、にっこり笑って鬼童に言った。
「榊警部にこの子を運転してもらうわ。それでいいでしょ? 鬼童さん」
 わ、私が? と驚き呆れる榊に、鬼童は言った。
「それで行きましょう!」
「頼んだぞ、榊警部」
 鬼童の陽気な声と、ケンプの落ち着いた声が交錯し、榊の決意を促した。麗夢はと見ると、悪戯っぽくウインクを返してくる。
「お願いね、榊警部」
 こうなってはやるしかない。榊も腹を決めた。
「わ、判りました。全力を尽くしましょう」
 最後の問題を解決した鬼童は、改めてそれぞれに指示を下した。
「ヴィクター! これからドラコニアンIIのシステムを少しいじるから手伝ってくれ! 円光さんは最後の瞬間まで気を充分に高めておくこと。榊警部はプジョーが奴らに捕まらないよう、うまく逃げ回って下さい。麗夢さんとアルファ、ベータは、お任せしますから、あの怪物の気をしっかりそらせて下さいね。ケンプ将軍も、よろしくお願いします」
 それぞれがそれぞれの仕草で鬼童に頷きかけた。力強く突き出された鬼童の右手拳に、麗夢、榊、円光がそれぞれの拳を左右からくっつける。わずかに遅れてヴィクターが行動を共にし、ケンプもまた、軽く唇の端に笑みを浮かべ、自分の生身の拳でヴィクターの隣から加わった。
「ヴィクター、もし生き残ったら覚悟してくれたまえ」
 ヴィクターは真剣な眼差しで、ケンプの目を見返した。
「覚悟は出来てますよ、将軍」
 するとケンプは、ふっと表情を緩めた。
「いい心がけだ。死ぬんじゃないぞ」
「将軍こそ、シェリーちゃんのためにも必ず生きて帰ってきて下さい」
「無論だ」
 ケンプは拳を降ろしながら、自分の愛車に向けて踵を返した。その後を追って鬼童が続いた。
「ヴィクター、早く! 時間がないんだ!」
「判った」
 ヴィクターは改めて怪物の手の中で眠るシェリーを一瞥すると、鬼童の後を追って怪異な巨体に駆け寄った。
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