かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

今、この苦しいときこそ将来のための布石を絶やしてはいけない、と思うのですが・・・。

2009-11-15 21:45:23 | Weblog
 新作の製作も少しずつ進めており、とりあえずDTPソフトにテキストデータを移動して、大体70ページ弱の本になりそうだ、というのが見えてきました。レイアウトをいじったりとか、挿絵の枚数などで若干触れは出ますが、倍になったり半分になったり、というような極端なことにはならないでしょう。大体、いつも作っている本より若干薄め、というところに落ち着くのではないでしょうか。
 挿絵などは大体来月中旬くらいまでに取りまとめ、年内に印刷を開始、年明けには製本して、コミトレ当日に間に合わせる予定です。時間はある、と思っているとたちまち過ぎてしまうので、これからは相当意識して早め、早めに動いていきませんと、ここまでして落としたりしたら情けないですからね。努力あるのみ、です。

 さて、月では、アメリカの探査機衝突実験で大量の水が確認されたそうで、どうやら月に水があるかどうか、という論争にも決着がつきそうです。出来れば更に詳細な調査を行い、将来の月基地建設に向けた取り組みを続行してもらいたいですが、その先には巨額の研究資金がネックになっているとのことで、折からの不況を鑑み、今後果たしてどうなるのか、全く予断を許しません。
 我が国でも、事業仕分けで科学研究・普及等の分野が軒並み切られたり減額されたりしているようです。中には、IPS細胞のような、我が国が世界に対してアドバンテージを持ちうる先進的研究も減額を免れなかったそうで、このままではますます我が国には優秀な若手研究者が残らず、皆、海外の研究機関に出てしまうだろう、という悲観的な話も聞こえてきます。
 私は、個人的には未来への投資というべき研究開発をたとえいくばくかでも切るというのは反対で、苦しいときだからこそ将来への布石を打つ手を緩めてはならない、と思う次第ですが、未曾有の経済危機の中では聖域はありえない、というお金を出す側の理屈もまあわからないでもないのです。無い袖はふれない、といわれれば致し方ないと言わざるを得ないとも思います。ただ、そうなると若い優秀な頭脳が我が国から流出するのは避けられないし、そんな先人達の状況を見ては、ただでさえ理科離れが取りざたされる今の子供達が、今後ますます科学への道を歩もうと考えなくなるかもしれません。結局我が国は、平安の昔から科学は芸事と同じで貴族や金持ちがパトロンとなってやっと成り立ってきた世界です。長年かけて、下々のモノまでその必要性を理解させられず、理科離れとか科学音痴が世に跋扈する現代を鑑みれば、科学が根付かないままひたすら衰退への道を転げ落ちるしかないような、そんな暗い未来が見えてきそうな気がします。
 まあ景気が回復したら状況は改善するかも、と期待するよりないでしょうね。

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17 お姉さまは私 その2

2009-11-15 01:00:00 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 あの最後の瞬間の後、どこがどうなってそうなったのか、結局私には判らないままだった。ただ、私が目覚めたとき、私はどこかのホテルのベットに寝かされ、その回りにおじいちゃん、麗夢さんやアルファベータ、ヴィクター博士や円光さん、鬼童さん、榊警部。それにおじいちゃんの部下の人達みんなの心配げな顔に囲まれていた。おじいちゃんの部下のハイネマンさんは、両目がウサギさんのように真っ赤になっていたし、モーリッツさんなんか、さっきまで戦っていた魔物達と変わんないような怖いお顔をくしゃくしゃにしているしで、多かれ少なかれ、私は本当にみんなに心配をかけてしまったんだ、と言うことを、今更ながらに思い知らされた目覚めだった。
「……おじいちゃん、ごめんなさい」
「大丈夫だシェリー。何の心配もない。終わったんだ。終わったんだよ」
 半身を起こした私の身体を、おじいちゃんは私の傍らから身を乗り出し、涙ぐんで抱きしめてくれた。私もとうとう感極まってボロボロ涙を流すと、おじいちゃんにすがりついて思い切り泣いた。ただひたすらごめんなさいを続けながら。
 ヨハンさんやシュナイダーさん、麗夢さんも涙ぐんで、湿っぽい空気が部屋の中に満ちた。
 でも少なくともそこには、不安も恐怖もなかった。今は泣いていても許される。私はその安心に浸って、おじいちゃんにしがみついていた。
 やがて泣き疲れて気分も落ち着いた頃、麗夢さんが私の枕元に来て、夢の中で私の鳩尾を殴打したことを詫びた。
「ごめんなさいシェリーちゃん。ああするしかなかったとはいえ、貴女に痛い思いをさせて」
「ううん。でもお姉さまは……」
 私は麗夢さんの事を非難するつもりは全然なかった。そう。あれは仕方なかったのだ。あのままでは私もきっと無事ではすまなかったんだろう。だから麗夢さんの処置は正しい。でも、結局お姉さまは……お姉さまは……。
 私はまた目頭が熱くなって、うつむいてしまった、その時。
 おぎゃあ! と威勢のいい泣き声が、私の耳を走り抜けた。その泣き声は続けて元気いっぱいに、部屋中に響き渡った。
「シェリーに触る。別室に移してくれんか」
 おじいちゃんがそう言って、麗夢さんを促した。麗夢さんも頷いて離れようとしたが、その袖を掴んで、私は待ったをかけた。
「麗夢さん、何を抱えているの?」
「えっ?」
「お願い。見せて!」
 さっきまでは自分のことに精一杯で、麗夢さんが何かを抱えているなんて気がつかなった。麗夢さんはおじいちゃんに目配せすると、頷いて腰をかがめてくれた。
 するとそこには……。
 玉のように可愛い赤ちゃんが、手足をばたつかせて思い切り泣いていたのだった。
「可愛い! お願い、私にも抱かせて!」
「え? ええ」
 麗夢さんが更に腰をかがめて私にそれを手渡してくれた。すると、私が抱いた途端、赤ちゃんがぴたりと泣くのを止めて、にっこりと微笑んでみせた。
「おお、泣きやんだぞ!」
 榊警部が、びっくりしたように感嘆の声を上げた。私は当惑顔の麗夢さんに聞いてみた。
「この赤ちゃんどうしたの? 麗夢さんの子供?」
「何!」×2
 途端に円光さんと鬼童さんがずいと身を乗り出してきた。赤ちゃんが怯えてまた泣き出し、榊警部が二人の耳を両手でもって強引に退場させる。麗夢さんも苦笑しながら円光さんと鬼童さんを見送った。
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17 お姉さまは私 その1

2009-11-15 00:00:01 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 王室専用に用意された飛行機の中は、行きと違ってほとんど飛行機の中、という感じがしない、広々としたゆとりと快適さに満ちた空間だった。
 ミラノから関西国際空港までもビジネスクラスだったから、まだ小さい私には充分すぎる広さの座席だったけど、こうして新しい荷物、いえ、荷物なんて言ったら失礼よね。新たな友人と言い換えましょう。その友人と共に坐るには、ビジネスクラスの座席では少々手狭だったろう。でも、この飛行機なら、悠々余裕を持ってお互い快適な場所を確保できる。
 私は嬉々として、出発までの短い時間、長旅を少しでも心地よく過ごすために、毛布や枕の準備に余念がなかった。
「フロイライン・ケンプ、御加減はいかがかな?」
 荷物を納め、座席の微調整をしていた私は、背後からかけられた声に思わず畏まった。
「こ、これは皇太子殿下! ご機嫌麗しゅう……」
 するとカール殿下は、おじいちゃんと同様きれいに整えられた口ひげの下の口を柔和な笑みで満たしつつ、腰をかがめて私を見た。
「ははは、カールでいいよ。この狭い飛行機の中ではいやでも膝付き合わしていなければならない身の上だ。無礼講とまでは申さぬが、同じ飛行機に乗り合わせた仲間として振る舞ってくれたまえ」
「は、はい」
 そうはいっても相手はヴィクター博士よりも年上の男性、その上皇太子殿下なのだ。私は何となく居心地が悪くて、黙りこくってしまった。殿下は、そんな私に微笑みながら、更に言葉を継いできた。
「フロイライン・ケンプ、いや、私をカールと呼べと言ったんだ、君のこともシェリーと呼ばせてもらうよ。いいね、シェリー」
「はい」
「実はシェリーにお願いがあるんだ。聞いてもらえるかな?」
「な、何でしょう、殿下」
「カール」
「あ、か、カール……様」
 返事もやっとの私だったが、名前で呼びあうことで、少しだけ気持ちがほぐれてきた。カール殿下も目を細めて、更に私に話しかけた。
「お願いというのは他でもない。この日本で体験した君の冒険を、是非とも聞かせてもらえないだろうか。かの国にいる間は、私も色々と公式行事や今回のアクシデントで忙しく、なかなか時間がとれなかった。だが、この機内なら何の気兼ねもないし、時間もたっぷりある」
 すると、さっきまでぐっすり眠り込んでいた「友人」が、ぱっちりと目を覚ました。
「おや? お姫様はお目覚めのようだね」
 カール殿下が、私が整えつつあったスーパーシートを覗き込んだ。すると「お姫様」と過分な言葉を頂いた「友人」は、急に顔を曇らせると、思い切りよく泣き出してしまった。
「あらあらあら」
 私は殿下が側にいるのも忘れて、慌てて「友人」を抱き上げた。そんな私をほほえましくご覧になられた皇太子殿下は、邪魔をして申し訳ないと謝りつつ、奥のご自分の座席に向けて、優雅に歩いて行かれた。
「また後で、シェリーの冒険を聞かせてくれ。楽しみにしているよ」
「はい、カール様」
 私は今度はしっかりと名前で返事しながら、少々手に余る「友人」とともに、ぺこりと頭を下げた。そして、ついこの間のめくるめく冒険の数々を思い出して、少しだけ感傷的な気分に浸っていた。
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