かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

連載終了!

2009-11-22 22:05:03 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
 御大にうかがいましたところ、「ドリームハンター麗夢XX 蒼の機関騎士」、初版完売に付き、重版されるのだそうです。初版の部数まではうかがってないので、どれくらい売れているのか、ちょっと判らないのですが、この不況下でわざわざ増し刷りしようというのですから、出版社もそれなりの手ごたえを感じたのでしょう。この勢いで新たな連載開始、というようなお話になってくれればありがたいと思います。そのためにもお買い求めいただいた皆様は、必ず読者アンケートハガキを出して、応援くださいますようお願いいたします。

 さて、長編小説「アルケミック・ドリーム 向日葵の姉妹達」の連載がついに終わりました、と思っていたのですが、挿絵を入れるのを忘れておりました。うーむ、綺麗に終わるつもりでいたのですが、なかなか完璧には行きませんね。
 このお話、私の作品では一番完成度が高いのではないか、と今でも思っていたりするのですが、バランス、という点でも、私の到達点になると当時から考えておりました。前作の「ドリームジェノミクス」が遺伝子工学をベースとした科学なお話に偏ったり、「麗しき、夢」シリーズが歴史趣味に暴走していたり、と、まあ自分が読みたいものを書くのだ、という同人小説を書き始めた当初からの欲望に忠実に従ってきたわけですが、それだけに読者そっちのけで一人悦にはいる、というようなところが多々あった作品が多かったように思います。御大にも評されたのですが、基本的に私は理屈っぽいので、荒唐無稽なお話にも一定の理屈を要求するようなところがあり、それがお話作りに一種の枠をはめるようなところがあったり、やたらと説明好きになってしまったり、と、エンターテイメントというには難のあるものが多かったです。それに対して、この作品では、それまでの私ならたぶんあと連載10回分は様々な背景設定の説明に費やしていかにも冗長なお話作りに終始していたと思うところをスパッと切り捨て、お話の本筋だけに焦点を絞って描くことに専念することにしたのでした。もっとも、最初書きかけのときは色々とその辺の設定をあれこれ考えていて、実際に下書きではそういう説明を延々と書き連ねていたりもしたのです。その粘着質な描き方をやめたのは、描いているうちに、自分が何を描きたいのか判らなくなったからです。当初ROMちゃんをも一回描こう、とだけ思って書き始めたのですが、どうROMちゃんを復活させるか、ばかり考えていて、途中で、はたとキーボードを叩けなくなってしまったのでした。結局瑣末な設定ばかり考えていて、お話の主題を全く想定していなかったため、書いているうちに、何故ROMちゃんでないといけないのか、訳がわからなくなってしまったのです。テーマの設定の重要さは一応頭ではわかっていたつもりでしたが、結局理解はしていなかったのですね。書きあぐねてから一旦それ以上続けるのを止め、振り出しに戻ってテーマを考え直すことにして、最終的にはROMちゃんに命の大切さを学んでいただこう、という基本が生まれ、相手役にジュリアンの魂を開放したシェリーちゃんを選び、今度はROMちゃんも救済してもらおう、というお話になったのでした。後はどうやって二人を出会わせるか、という点にだけ話を絞り、どうせなら土地勘のある関西に来てもらおう、と様々なエピソードをつむぎだしたわけですが、その過程で、どうせならやったことの無い一人称で書いてみようとシェリーちゃん視点でモノローグで進めることに決め、話の筋を進める三人称と重奏させながらクライマックスに持って行く、という、書いていて実に楽しい経験をしたのでした。当時はちょうど「マリみて」にはまった時期でもありましたので、そのテイストをちょっとばかり取り入れて二人の関係を設定したりしましたが、見ず知らずの何の接点も無い二人の少女を偶然出会わせる、という、以前の私には暴挙としか思えない形でスタートさせた話が、最後の最後まで、私としては適度な適当感を作品に付与することができ、私の作品の中では異例の出来栄えになったのではないか、と思っている次第です。
 さて、新作、現在も挿絵と表紙を作成中ですが、自分ではなかなかこの『アルケミック・ドリーム』を超える作品を書けるという感じがいたしません。多分それにはもう一皮、何かが剥けないといけないのだろうな、と思いつつ、次の作品ではそんな過去の自分を超える努力をして、成長を実感してみたいと思っていたりもします。まあそう簡単には行かないでしょうけど。

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17 お姉さまは私 その4

2009-11-22 01:00:00 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
「あ、麗夢さん達だ!」
 いよいよ飛行機が空港ビルを離れ、滑走路に向けて動き出した。ふと窓の外を見た私は、そこにかけがえのない人達の姿を捕らえて、思い切り手を振った。「友人」こと赤ちゃん、もちろん名前はROMちゃんにも窓の外を見せる。見えているかどうか判らないけど、きっとお互いに見えているんだ、と私は信じた。
 ありがとう皆さん。また会う日まで、ごきげんよう!
 やがて飛行機は向きを変え、空港ビルが見えなくなると、離陸準備のため私は子供用に調整されたその座席のシートベルトを、私とROMちゃんの身体にしっかりと付けた。
「さあ、私の国に帰るわよ、ROMちゃん」
 私は、隣で手足をばたつかせている赤ん坊に話しかけた。
「これから毎日お話ししようね。色んな所にも連れてって上げる。バイロン湖畔のお花畑とか……」
 私がぷにぷにのほっぺに指をつんつんさせると、ROMちゃんも小さな手で私の髪の毛を引っ張った。
「でもねROMちゃん? 今度は、私の方をお姉さま、と呼んでもらうわよ。何たって私の方が年上なんだから」
 その時には、是非ピンクのワンピースに白のエプロンドレスを着せて、頭にはちゃんとピンクのリボンを結ばせよう。
 私は早くその時が来ればいい、と祈りつつ、いよいよ離陸を開始した飛行機のGに、ゆったりと身をゆだねた。



 終
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17 お姉さまは私 その3

2009-11-22 00:00:15 | 麗夢小説『向日葵の姉妹達』
「違うわよ。実はね……」
 赤ちゃんをあやす私に、麗夢さんはかいつまんであの後のことを教えてくれた。
 麗夢さんが私を気絶させた直後、円光さんの必殺技、『夢曼陀羅』というのが炸裂したそうだ。それは、半径1キロにも達する巨大なもので、大阪城を中心に地面に描かれ、その辺りの魔物や、瘴気という負のエネルギーを軒並み吸引、消去したんだって。お姉さまはその時、身の丈40mを超える怪獣になっていて、眠り込んだ私の身体を鷲掴みにしていたそうなんだけど、夢曼陀羅の力にすっかり吸い込まれてしまったらしい。麗夢さんが言うには、お姉さまのおかげで夢魔を逃がすことなく、きれいさっぱり浄化出来たんだとか。ほんとならそれですっかり全てが消えて終わったはずだったんだけど、私を助けに来たみんなは、私が眠りながら抱きかかえているものに気が付いて、戸惑ったんだって。
 何故ならそれが、この赤ちゃんだったから。
「私が、赤ちゃんを……?」
「そうよシェリーちゃん。赤ちゃんはピンクの浴衣にくるまれていたんだけど、何か覚えがある?」
 ピンクの浴衣? 私は覚えがあるどころではなかった。私は赤ちゃんの顔をもう一度見た。すっかり機嫌を直して笑う赤ちゃんの目元や口元は、言われてみれば確かにそっくりではないか。
「お姉さまだ……」
「え? どう言うことシェリーちゃん?」
「だから、この子、お姉さまなのよ! ROMお姉さまなの! 麗夢さん、お姉さまは死んじゃいなかったんだわ!」
 赤ちゃんは、ROMと呼ばれたのがうれしかったかのように、一段と笑い声を上げて、きゃっきゃと喜んだ。
「そうか……」
「まさかとは思ったが……」
 鬼童さんやヴィクター博士が腕組みして考え込み、おじいちゃんは気むずかしげなお顔で二人に言った。
「大丈夫なのか? その、赤子があの怪物のなれの果てだとしたら……」
「おじいちゃんお願い! 私に育てさせて!」
 私は思わずおじいちゃんに言った。
「ま、待てシェリー!、幾ら何でもそれは……、第一、まだ安全と決まったわけではないのだぞ」
 慌てて私を説得しようとするおじいちゃんに、円光さんが言った。
「しかし、今のこの赤子には、邪気も何も感じない。ただの普通の赤子にしか見えぬ」
 麗夢さんも言った。
「そうね。元は確かにROMだったかも知れないけど、今はただの赤ちゃんでしかないわ」
「しかし、だからといってシェリーが育てるなど……」
 なおも難色を示すおじいちゃんに、ヴィクター博士が言った。
「ならば僕が引き取りましょう。シェリーちゃんに御世話してもらいながら、僕が育てますよ。それならどうですか?」
「ううむ……」
「お願い、おじいちゃん!」
 必死な私に、榊警部や鬼童さん円光さん、それにハイネマンさん達も味方してくれた。こうなるとおじいちゃんも一人頑張ってもいられないのだろう。とうとう最後にはヴィクター博士の提案に乗る形で、首を縦に振った。
「……判った。だが勘違いしないよう念のために言っておく。君にシェリーを嫁がせるわけではないぞ」
 榊警部が笑い出したいのを堪えて、向こうを向いて背中を震わせている。麗夢さんはやれやれと肩をすくめ、ハイネマンさんは、将軍、それはないでしょう、と呆れ顔だ。当のヴィクター博士はと言うと、顔を真っ赤にしてそんなことはないと必死に否定していた。
 私はと言うと? 
 まだ結婚なんて判らないし、第一私には夢の中で約束した人がいる。ヴィクター博士には悪いけれど、あくまでもお付き合いはこの赤ちゃんの御世話に限らせてもらおう。
 そう言うわけで私は赤ちゃんの養育係になりおおせ、こうして特別に王室専用機に席を設えてもらい、一路母国へ帰ろうとしているのである。
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