かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

映画『オペラ座の怪人』2004年版を観てきました。

2008-06-14 23:09:37 | Weblog
 今日は午前中家人に連れられて、映画「オペラ座の怪人」を観に行きました。一緒に行く予定だった友人が所用でキャンセルしたため、予約チケットを無駄にしないために、代役で観に行ったのでした。
 「オペラ座の怪人」は、もう大分昔に劇団四季がやってるのを観たことがあり、その音楽が耳にこびりついていたものでしたが、今日、改めて映画で見直して、それがよみがえった感じがします。
 冒頭、モノクロで描かれる、20世紀初頭の廃墟然としたオペラ座。そこで行われる競売のシーンから、一気に往時の栄華へと時代をさかのぼっていくカットが綺麗で、思わず引き込まれてしまいました。映画というのはこういう表現ができるのがすごいです。同じような効果を小説で成し遂げようと思ったらどう書いたらよいか、映像美に酔いしれながらちょっと考えてしまいました。まあ動画と音とで圧倒的な情報量を誇る映画と文字だけの小説とでは比べ物になどならないのはハナから判っているのですが、それでも何か方法はないか、と考えてしまうのは一種の病気なのでしょう。
 ただ、せっかく冒頭で一気に映画に引き込まれた私でしたが、残念ながらところどころで「うーん」とさめてしまうところも無きにしも非ずでした。
 私はミュージカルというのがそれほど嫌いではなく、たとえば古いですけど「王様と私」とか「メリーポピンズ」とかは好きだった作品です。ですが、それでも突然歌いだす登場人物たちに、ぬぐえない違和感を覚えたのは確かです。劇団「四季」のミュージカルでは気にならなかったのに、演劇の舞台と映画とでは大分感じ方が違うみたいです。
 舞台ではセットなどは当然作り物として見えるわけで、その中で演じられるものは、現実とは遊離した独特の幻とでも言うべき雰囲気をかもし出し、そのために、この場で時に奇矯な行動、すなわち人々が突然歌いながら会話を交わしたりするようなことをしても、さほど違和感を覚えたりしないのではないでしょうか。一方映画では、セットや登場人物たちがリアルに作りこまれていて非常に現実感のある映像が流れているため、突然歌いだしたりされるとどうにも奇矯な印象をぬぐえないのではないか、と感じました。
 それでもヒロインの可憐な美しさ、劇中劇で行われる各種ミュージカルの絢爛豪華さ、ヒロインを巡る若き子爵と怪人との三角関係、ラストの、ほろりとさせられる墓場でのカットなど、映画としての面白さはなかなかなもので、およそ2時間半と映画としては長丁場なこの作品を、ほとんど時間を意識せず最後まで観ることができました。
 ところで、この映画、ぐぐってみたら日本語訳の誤訳珍訳に関して随分多くの指摘があるみたいですね。私も観ながらどうも妙な違和感を感じずに入られませんでしたが、これらサイトを観て、それが氷解しました。また、誤訳で勘違いさせられていた部分も、正しく内容を理解することができました。ネイティブな耳を持たない私などにとって、字幕は大変重要な代物なのですから、誤訳が無い様に、そして間違えたときは速やかに訂正するように、何とかならないものなのでしょうか。

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新作短編その3

2008-06-13 22:41:07 | 麗夢小説 短編集
 明日、明後日と今週末の休みは少々私事で忙しくなりそうですので、予定より1日早いですが、万一更新できなかった場合を考慮し、今のうちに連載小説をアップしておきます。もうちょっと書き込んでおきたかったですが、時間も限界ですし、次の展開をどうするか工夫を考えることにして、とにかくアップします。このあたりの機微が、連載の難しいところですね。結構勉強になります。

それでは、起承転結の「承」の始まりです。次はなるだけドラマチックに「転」を決めたいところですが、切りどころが難しいです。

----------------------以下本文-------------------------

 朝倉の夢。それは、白色の地獄であった。気温は零下20℃を切り、風速にして20メートルを超える強風が吹き荒れ、ほんの数メートル先すら判然としないほど、濃密に雪が降りしきる。その上空に、麗夢は真夏らしいミニスカートの裾をはためかせつつ、忽然と姿を現した。その左右には、すっかり夏の毛に生え替わっているアルファ、ベータが付き従う。そんな恐らくはわずか1分でさえ耐えていられないはずの姿で、彼女らは平然と雪原に舞い降りた。
「きゃっ!」
「ニャ!」
「キャン!」
 ずぼっと音を残して、麗夢達の姿が白い地獄から一瞬で消えた。数瞬後、消えた辺りの白い平面が、突然ぽこっと盛り上がったかと思うと、シンクロナイズドスイミングのように、麗夢が頭から飛び出してきた。アルファ、ベータも頭だけ取りあえず持ち上げて、あーびっくりした、とばかりに麗夢を見上げている。
「なんて深い雪なの? 夢でなけりゃすっかり生き埋めになるところだわ。大丈夫? アルファ、ベータ?」
 ふわり、と身体を再び浮かせて、麗夢が雪で顔中真っ白になったアルファとベータに手を差しのべる。二匹も主を追いかけるように身体を雪に浮かべ、取りあえず雪原の表面に足を降ろした。そのまま身体をブルぶるっと震わせ、余分な雪を払い落とす。現実世界と違い、夢の中なら、麗夢もアルファ、ベータも、基本的に物理法則による制限を受けない。余程強力な夢魔に支配された夢でない限り、暑さ寒さも関係なく、こうして体重が無くなったかのように、柔らかな積雪の上に足跡一つつけず立つことさえ自在である。
「それにしても、夢魔はどこにいるのかしら?」
 麗夢は白い闇を透かして辺りを見回した。殆ど視界は効かないが、ごくまれに雪を透いてかなり遠くまで見通すことが出来る瞬間がある。そのときに見えるのは、起伏のある雪原がどこまでも続くだけのモノトーンな世界だ。そして、そこはかとなく辺りを支配する空虚な悪意。でも、とこの時麗夢は思った。こんな希薄な霊気で、果たして寝ている人の身体を凍らせるほどの冷気を発生させることが可能なのだろうか・・・?
 夢の中で生者を虜囚とし、その命を喰らうのは案外に容易い。夢魔の力が弱くても、とにかく過度の恐怖を演出し、少しずつでも確実に命を啜っていけば、いずれ人は衰弱し、最終的には死を迎える。一方、現実世界にまで影響を及ぼし、直接肉体から命を奪えるのは、例えばかのルシフェルほどの力があって初めて為し得る行為である。では、この霊気にそれだけの力があるだろうか?
 アルファ、ベータもそのことに気づいたのであろう。しきりに鼻を鳴らし、尻尾を振って自身が感じる不審感の原因に想いを馳せているようだ。だが、一行はその事をじっくり吟味する事は出来なかった。白一色の世界に、異なる色合いが現れたのである。
 それは、まず暴風雪を突いてとぎれとぎれに聞こえてきた歌から始まった。
「ゆ・・・の・・・ぐんこおり・・・んで・・・」
 瞬く間に風にちぎられ、雪に吸い込まれていく歌声だったが、しばらくその声の方向を注目するうちに、ようやくはっきりとその対象が見えてきた。
「・・・どーこが川やら道さえ知れずぅうっ! うまーは倒れるすぅててもおけず! こーこはいーずこぞ・・・」 
 それは、体中雪にまみれながら歩いてくる集団であった。
 先頭を行く3列の人が雪をかき分けるようにして道を開き、そのあとを2列、3列、2列、と肩を組むように寄り添う人並が続いていく。列が進むたび、さらさらの雪の中に次第に道らしきものが生まれ、その細い啓開路に沿って、ぞろぞろと付き従う人の列が続く。皆薄っぺらな外套を身にまとい、簡単な帽子をかぶり、小銃を肩に下げている。いつの時代かは判らなかったが、どうやら日本の軍隊の行進らしいことは麗夢にも理解できた。
「これが鬼童さんの言ってた『都市伝説』の正体って訳ね」
「ワン! ワンワンワン!」
「あ、やっぱり死霊なの?」
「ワン!」
 目の前の集団に鼻を鳴らしていたベータが、明らかな死臭を感知して麗夢に告げた。この雪原も、彼ら死霊が生み出した妄執の産物であることは疑いない。おそらくは、どこかで吹雪に迷った軍隊が遭難したときの妄執が、今も永遠に無限の雪原を彷徨い続けているのだろう。円光も鬼童も、そんな彷徨の一端を目敏くもかぎつけた訳だ。
 麗夢が感心するうちにも、そんな一団が目の前を横切り、向こうの雪の中へと消えていく。その最後尾に、少し遅れながら必死に大きな橇を引く数名の男達が見えてきた。何を積んでいるのか、相当に重量のありそうな橇で、およそ200人余りの人間が踏み固めた雪道にめりこみ、両側から崩れたつ粉雪に埋まって、あたかも雪に溺れるかのように、時折ぐいと引っ張られるときだけ、橇の片鱗を雪の上にかいま見せている。そんな橇が15台、これも次々と麗夢の前を横切っていった。
「あ、朝倉さん!」
 その最後の橇を引く男達の一人に、見覚えのある顔立ちがあった。間違いなく、朝倉幸司その人である。うつろな目で雪に埋もれながら進むその姿は、強制労働で命旦夕に迫る囚人達もかくやと言わぬばかりな有様で、ふらつきながら橇を引き続けていた。どうやら朝倉は、この迷える魂にどういう訳か囚われ、その生命を削られ続けている訳だ。多分先に亡くなった朝倉の友人達も、こんな死霊の軍隊に無理矢理雪の中を歩かされ、無惨な死を迎えたのであろう。
「まあとにかく朝倉さんを助けましょう。早く手当てしてあげないといけないし。アルファ、ベータ、いいわね!」
 麗夢は左右に陣取る可愛らしい毛玉二つに確認をとると、力強い返事を糧に、全身の力を奮い起こした。
「はああああああっ!」
 麗夢の身体が、突然金色の光に包まれた。そこに、円光から届く破邪の神気が流れ込む。アルファ、ベータも同じように自分達を核として光の玉を生み出した。そんな異なる大きさの3つの光球が見る間に膨れ上がり、数瞬のうちに、直径数メートルはある巨大な球へと成長した。
「はあっ!」
 気合い一閃! その瞬間、突如光が爆発した。膨大な雪を瞬時に溶解し、蒸発させる巨大な熱量が、核爆発のごとく夢世界を席巻した。吹き付ける強風が空間ごとあえなく吹き飛ばされ、雪原は瞬く間に漆黒の大地へと塗り替えられる。更に輝きを増す麗夢の光は、露出した地面に次々と生命のほとばしりを誕生させた。ようやく麗夢とアルファ、ベータが気を抜いた頃、あれほど夢世界を埋め尽くした雪は跡形もなく消え去り、永遠の白い闇に過ぎなかった平原は、緑溢れる野原と化してうららかな日差しに包まれていた。あれほどいた兵隊達も忽然と消え、朝倉幸司がただ一人、その向こうでうつ伏せに倒れているのが見える。
「なんなの? これ」
 円光の気が送り込まれているとはいえ、さすがに麗夢も、そのあっけない幕切れには少し唖然とさせられた。もちろん夢を浄化するに足る力を発揮した自覚はあったが、もう少し夢魔らしい抵抗の一つもしてくるだろう、と麗夢は予測していたのである。
「終わった、のよね?」
 麗夢の疑問形に、アルファ、ベータも目を見張り、耳を澄ませ、鼻をくんくん鳴らしてその夢の様子をうかがった。しかし、結局麗夢同様、怖気をふるう悪夢の気が滅散し、健全な、普通の夢の世界に塗り変わっていることを確かめられたに過ぎなかった。
 麗夢は、アルファ、ベータともう一度辺りを見回してから、改めて言った。
「じゃ、取りあえず帰りましょうか」
 元気よく尻尾を振って同意した二匹は、麗夢のミニスカート姿と並んで、この緑の平原から現実世界へと帰還した。
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火星の土採取成功! さて水や有機物は見つかるでしょうか?

2008-06-12 22:40:44 | Weblog
 去年の今頃は、コミックコミュニケーション、おととしは、私にとっては最後のコミケとなった夏コミで出す新作の執筆、と結構忙しくしていた季節なのですが、今年はブログでの新作連載で、それなりに充実した忙しさを満喫しています。ただ、イネ科雑草の花粉による影響でアレルギー症状が出るのが困ったところで、しかもそれがどうも年々ひどくなってきているような気がしないでもないのです。イネ科の花粉は、ただくしゃみや目が痒くなったりするだけにとどまらず、皮膚に接触するとひどい発疹を生じ、ひどいときには全身にミミズ腫れ状態となって、家人から「妙な趣味に凝っているんじゃないか?」 などと笑えない疑惑まで招いてしまうほど、体中痒くて赤く腫れあがります。これは間違いなくアナフィラキシーショックの一典型で、呼吸困難になったりしないだけまだマシなのではありますが、このまま症状が悪化するようなことになれば、いずれはそんな危篤状態に陥らないとも限りません。もしそうなったらそもそもの元凶たるスギ花粉を蔓延させた林野庁を訴えたくもなるのですが、幸いというべきなのでしょう。第2世代型抗ヒスタミン薬を飲むと、症状が綺麗に抑えられ、眠くもならないのでどうにかこうにか日々を無事過ごすことができているのが現状です。それでもこの暑い中、外出時のマスクは必須ですし、何かと不便をかこつのが困りものなのです。
 
 さて、そんな憂鬱になりがちな初夏の季節ではありますが、火星ではフェニックスが火星の土の採取に成功したそうで、それはまためでたいお話なのであります。
 この間から、着陸地点の北側の地表を深さ2~4センチ引っかいて土を採り、分析装置へ運ぶテストに取り組んでいましたが、土が塊状でうまく装置に入らず、失敗していたとのことです。それを、今回、装置に入れる前にふるいにかけて装置に入るサイズの細かい粒子を採り、ようやく装置に入れるのに成功したのだそうです。ちと驚いたのが、最先端のギミックが詰め込まれた火星探査機が、ふるいなんて道具を持参していたということ。結局それが役に立って、ついに火星の土を分析することができるわけですから、なかなか昔からの道具というのも馬鹿にならないものがあります。分析装置は小型の高温炉で、取った土を加熱して発生するガスの成分を調べると、氷や有機物が存在しているかどうか判断できるのだそうです。今回の挑戦で即座にそれらの課題が解決するとも思えませんが、是非可能な限り実験を繰り返し、火星生命の確かな根拠を捕らえるところまで、がんばってもらいたいものです。
 
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今日は比較的穏やかな、なんとなく意味を考えてみたくなる夢見でした。

2008-06-11 22:06:23 | 夢、易占
 6月も三分の一を過ぎて、そろそろ梅雨も本番という感じの一日でしたが、週末以降、どうやら梅雨の中休みで晴れの日が続くようです。その後大雨が降って7月半ばには梅雨明け、という具合に教科書どおりの季節となれば良いのですが、往々にして最近は異常気象が常態化している様子の空模様なので、安心はできません。今年は暑い夏になるとの予報ではありますが、そろそろPCつけ放しの部屋が、周りの部屋に比べて随分蒸し暑い環境になりつつあります。正直、あまり長時間つけていたくない状況なのです。本格的な夏になれば暑いのが当たり前になるのでしょうが、今は一足早い酷暑の訪れがほとほと厄介であります。

 さて、ここ数日早朝未明に目が覚めることが増えてきました。夜明けが早くなっているのが一番の原因だと思いますが、今日は4時半にいったん目が開きました。しょうがないのでトイレに行って用を足した後で改めて布団に転がりましたが、まあ何とか二度寝することができました。調子の悪いときは二度寝できなくて結局睡眠不足に陥り体調を崩していたものですが、どうやらそんな悪循環は今のところないようです。2度寝のいいところは昨日も記載したとおり夢をしっかり観られることと、その夢をかなり良好に記憶していられることです。たとえば、今朝の夢はこんな具合でした。

その1。
電車で「日本橋」(もちろん西の電気・オタク街のことです)に行く積もりで、友人と連れ立ちとある駅に降りたのですが、乗り過ごしたのか、知らない駅に着いていました。駅名は「今宮」。日本橋にほど近い下町の中の年季の入った駅のはずなのですが、そこがまるで大阪駅のようにホームが連なる巨大なターミナルで、周囲はまるで見覚えが無く、もうどちらに行ったらいいのか見当も付きません。「日本橋」までは歩いてもそんなにかかるはずがなく、東に行けばいいはず(実際は北)と思いつきはしたものの、折から天気も悪く、方角も分からないのです。ようやくにして駅の構内図を見つけたのに、結局それを見てもさっぱりとわからず、結局、ここは安全策を採って確実にたどり着ける地下鉄を探し、それに乗り換えよう、と思いました(実際には今宮に地下鉄の駅はないんですけどね)。

 その2。
 なぜか私はバイクで「日本橋」に向かう途中、大きな交差点に差し掛かっていました。やっぱり場所が判らなくなったので、いったん停車して辺りを見回すうちに、とうとう雨が降ってきました。恐らく目的地に近いと思われる、交差点を渡った向こう側に、大きなアーケードを構える商店街の入り口が見えています。私はその商店街を目指して、そのままバイクを押して信号を渡ることにしました。と、後ろから女子高生2人に背中を押され、思わず前につんのめりました。どうも街中の人通りの多い交差点で、わざわざバイクを押して歩くのが彼女らには邪魔だったらしいのです。私は苦笑いしながら次第に強くなる雨脚に追われて、とにかく商店街を目指しました。

 一体どんな心理的暗号がここに隠されているんでしょうね。駅とか電車とか交差点とか雨とかにはそれなりに意味があるようですが、それが今の私の深層心理とどうリンクしているのか、想像するだけで結構楽しかったりします。

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久々の「金縛り」は、ちょっとばかりダイナミックな運動会でした。

2008-06-10 21:06:05 | 夢、易占
 今朝、なかなか久しぶりに珍しい体験をいたしました。俗に言う「金縛り」という現象です。時刻は午前5時30分ごろ。5時過ぎに一度目がさめてしまい、そのときに目覚まし時計を確認しているので、時間はかなり正確だと思います。そんなわけで、目覚めはしたのですが、もう少しゆっくり寝る時間もあるということで、二度寝などしてみたのでした。二度寝は眠りが浅く、夢を観る可能性が高いので、明晰夢を観るにはうってつけの状態でもあります。もっとも、大抵の場合、二度寝しようと思っても身体がすでに覚醒状態に移行しているのか、なかなか寝付けず、そのまま起きてしまうことが多いのでした。それが、今回は珍しく身体も疲れていたのか、案外すんなりと寝てしまったようでした。
 ただ、いわゆる「金縛り」とちょっと違うのは、別に身体が硬直して反応しなかったわけではないという点です。
 どういうことかというと、私は仰向けに大の字になって寝ていたのですが、ふと気がつくと、右の方になにやらヒトの気配がいたします。私は家人が起きだしたのか、と思っていたのですが、更に、「ごめんください」だったか、「こんにちわ」だったか、少し年を感じさせる女性の声が聞こえたような気がしました。その直後、広げていた右手に何かが触れるような感触があり、それが更に握手するような按配になって、そのままぐいと右に引っ張られたのでした。私は何をしやがるとばかりに右手をぐいと引っ張りますが、なかなか強い力を感じて、てこでも動こうといたしません。それでもぐいぐい引っ張りあいをするうちに、ふとこちらが力を抜くと、ぐいと身体ごと右側に持っていかれそうになります。これは大変、とまた引っ張りなおして、左側に開きっぱなしの左手にも力をこめて体が持っていかれないように注意しながら、逆にこちらに引き込んでやるつもりで右手を力いっぱい引き続けました。そのうち手が滑ったのか指から相手の感触が消え、私は目が覚めました。さめたとき、右手がかなり疲れていて、握力が足りないようなこわばった感じがいたしました。歯軋りみたいなもので、寝ている最中に妙に力を入れたりしていたんでしょう。
 まあこれを心霊体験と呼ぶのは簡単なことですが、私はそういう類のものを基本的に信じておりませんし、寝ている最中のことでもありますから、夢と考えるのが一番妥当であろうと考えています。金縛りは随分昔若い頃には何度か遭遇した記憶もありますが、ここしばらくトンとご無沙汰だったので、タイプは違うとはいえなんだか新鮮で、まだそんな体験ができるのか、とうれしく思いました。これなら、そのうち明晰夢も観られるようになるかも、と期待できそうです。

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番組差し替えより、ワイドショーを自粛すべきだと思います。

2008-06-09 21:40:57 | Weblog
 昨日の秋葉原での事件、さすがに夕刊へでかでかと掲載されていますね。多分テレビもこの新聞同様の状態だったのでしょう。懸念していたことも、犯人の書いた中学校の文集から抜き出す形でしっかり挿入されています。そういう「関連」物がないか、随分探したんでしょうね。
 それにしても、大手のTV局は事件を連想させるから、と番組を差し替えたそうですが、そんなことを気にするくらいならワイドショーやニュースで取り上げるのをやめる方が余程抑止効果があるような気がします。報道を見る限り、犯人は相当注目を浴びたがっていたようですし、現在の蜂の巣をつついたような大騒ぎは、まさに犯人の夢がかなったことになるわけでしょう。こんな事件が続く、ととある識者がのたまっておいででしたが、もしそれが真実であるなら、こんな形で報道すべきではない、と私は思います。新聞にしたところで、掲載は三面記事の片隅とか、地方版の目立たないところでいいじゃないですか。そして、新聞一面トップには、もっといろんな善行を掘り起こしてくるとか、自分たちがミスリードしたときの謝罪文などを掲載し、そんな内容の話を、ワイドショーでも積極的に取り上げるべきでしょう。ゲームやアニメを槍玉に挙げる前に、自分たちの影響力についてマスコミは猛省すべきなのではないのでしょうか。

 せっかくサボテンの花が咲いたというのに、つまらない話が先に来てしまうのが残念です。我が国が連綿と伝えてきた豊かな花鳥風月をめで楽しむ文化と楽しむための教養を醸成し、そのために必要な教育や政策を進めていく必要があるのではないかと思います。

写真は、ようやく咲いたノトカクタス属の「青王丸」の花です。直径10センチ近い黄色の大輪の花で、光沢のある半透明な花弁が幾重にも重なり、デジカメでは表現しきれない見事なグラデーションを見せてくれます。これは珍しく自家和合性をもっていますので、多分夏ごろには種ができることでしょう。それもまた、楽しみです。

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アキバの惨劇が妙な連鎖反応を起こしたりしなければよいのですが・・・

2008-06-08 21:20:24 | Weblog
 なんだかえらい事件が起こりましたね。秋葉原連続殺人事件、なんて言ってしまうと、まるで何かの番組みたいになってしまいますが、現実に起こった内容について、とりあえず報道でわかる範囲でみてみると、もうまさしく信じがたいことが起こった、と唖然とさせられるばかりです。この信じがたさは、阪神・淡路大震災で倒壊した高速道路の高架の映像を見たときに匹敵する非現実感でしょう。まずは亡くなった方のご冥福と怪我をされた方の早期回復を祈念申し上げつつ、関東方面の友人知人の方々の無事を祈らないではいられないです。
 それにしても、地元ではなく、わざわざ静岡からレンタカーで乗りつけての犯行。昨今、秋葉原が何かと話題になっていましたから、そういう目立つところでやりたかったのでしょうか。あるいは過去秋葉原で何か感じるところがあったりしたんでしょうか。動機等が明らかになるのはまだ随分後になろうかとは思いますが、秋葉原という場所柄を踏まえて、またぞろオタク文化と異常犯罪を結びつけるような報道がされないか、今から心配です。さらに、コミケなど身動きすら取れなくなるほどヒトの密集するところでこの種の事件が発生したらどんな惨事になるか。想像するだに恐ろしい話ではありますが、現実問題として、入り口で空港並みにチェックするくらいのことをやらないと、防ぐのは困難でしょう。あとはこういった危ない輩の目に留まらない様に、コミケもなるべく慎ましやかにマスコミに取り上げられないようになればいいんでしょうが、それもまた無理がある話で、現段階では、そんな事件がおきないよう、ただ祈るしか策はなさそうです。
 しかし、すでに何度か書いていますが、私も10代末から20代初めごろにかけては、繁華街で、でかいかなづちを振り回して一人一人ぶん殴っていったら愉快かも、などと想像するくらいはしておりました。でも、実行する気などもちろんありませんでしたし、その後も破滅的な衝動とも無縁に極平穏な日常を送り、今に至っています。でも、この犯人はそれを実行してしまったというわけで、その差はどのあたりにあるのだろう、と、この種の異常犯罪を見るたびに思います。実行するのも想像するのもそれほど差がない、ということなのか、やはり明確に一線を引ける何かハードルのようなものがあるのか、それが個人的資質の問題なのか、教育や社会背景などの問題なのか、個人的資質としたら、それは心などのソフトの問題なのか、脳や遺伝子に関連するハードの問題なのか。それらが明らかになる日が将来果たしてあるんでしょうか。私はこれまでかなり楽観的に考えておりましたが、最近少し悲観的な感じがしないでもありません。

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新作短編 その2

2008-06-07 20:28:52 | 麗夢小説 短編集
 先週から始めました、新作の短編の続きです、って、まだ題名決まっていません(苦笑)。これが鬼童の書く論文なら、「超精神体の寄生による生体恒常性の崩壊が引き起こす低温障害の発生とその対処方法の検討」とでも名づけるところでしょうが、これでは小説の題名にはならないので、もっと気の利いたものを考えないとなりません。これには、もうしばらくかかりそうです。
 さて、というわけで今回はおなじみのレギュラーメンバーが揃い、起承転結の「起」の部分が終了です。次回は物語が発展する「承」の始まり。「転」、「結」まで構想はできていますので、多分無事に書けることでしょう。ただ、すでに書いたものを分割して上げていくのと違って、アップするつど書き足していく、という今のスタイルは、新鮮ですけど想像以上に大変です。新聞の連載小説を書いたりするプロ作家さんはやっぱりすごいですね。私もせめて週一連載位はこなせるように成りたいです。
 それでは、本文に参りましょう。

---------------------本文開始-----------------------


 朝倉幸司は、都内某所の大学にほど近い学生向マンションで、1人暮らしをしている。榊は念のため、私服警官を貼り付けて警護させていたが、麗夢と榊が到着したとき、その警官が2人の男とマンションの影でもめていた。
「円光さん! 鬼童さん!」
 麗夢の一声に、それまで険しい表情で警官達とやり合っていた2人の顔が、見る間に朗らかにほころんだ。
「おお、麗夢殿!」
「麗夢さん!」
 二人は警官をそっちのけにして麗夢の方へ同時に一歩踏み出した。
「麗夢殿もこの妖しの気配を察せられたか」
「麗夢さんがくるからには、どうやらこれは『当たり』のようですね」
 円光は錫杖を片手に墨染め衣に脚絆姿、対する鬼童は、瀟洒なスーツに、ショルダーバックを一つ肩から提げている。よく見るとそのバッグにはあちこちLEDライトが点滅し、ただのカバンではないことをさりげなく主張していた。どうやら円光は気配を感知し、鬼童は計測機器の反応を頼りに、この朝倉が住まうマンションまで出張ってきたらしかった。
「二人とも凄いわ。これじゃあ私の商売上がったりね」
「いえいえ、僕の方は偶然ですよ」
 鬼童が、うれしげに語りかけた。
「ちょっとした都市伝説を追いかけているうちに、円光さんと一緒になりましてね」
「都市伝説?」
 小首を傾げる麗夢の仕草に、思わず鬼童と円光の心拍が2割方高まった。
「え、ええ。昔の軍人の幽霊が出る、っていう話なんですがね。それも一人二人じゃなくて、数十人規模が隊列をなして行進してくる、っていう話なんですよ」
「拙僧は巽の方角からずっと妖気を辿って参った。どうやらこの辺りで一段と強くなっている様子。麗夢殿は何か感じないか?」
「昔の軍隊に、妖気・・・。そうね、確かに何かヘンだわ。アルファ、ベータ、判る?」
「フーッ」
「うー、ワン、ワンワン!」
 アルファ、ベータも鼻を鳴らし、尻尾を振って、辺りに漂うただならぬ気配を麗夢に知らせる。
「取りあえず朝倉に話を聞きましょう。彼はずっと部屋に閉じこもっているとのことです」
 榊は報告を受けた部下に待機を命じると、先頭を切って目の前のマンションに足を向けた。
「朝倉さん、朝倉幸司さん、警視庁の榊です。開けてもらえませんか?」
 榊はインタホンを押して朝倉を呼び続けた。既に榊は、田中耕太の事件直後に一度朝倉を訪ね、その後もたびたび事情聴取している。
「朝倉さん! おかしいな、いないはずはないのだが・・・」
「手の放せないことでもしているのかしら?」
 麗夢の疑問に、榊は首を横に振った。
「いえ、これまでもすぐに出てこないときがありましたが、返事だけは必ずありました。こんなことは初めてです」
 榊は、念のためドアノブに手をかけたが、しっかり鍵がかかっているのが判っただけだった。
「何なら僕が開けましょうか?」
 鬼童が微笑みながら本気とも冗談とも付かぬ口調で申し出た時。鬼童の左肩に下がるカバンから、小さな、だが甲高い警報音が鳴った。と同時にアルファ、ベータが緊張のうなり声を上げ、麗夢と円光もドア一枚挟んだ向こう側に立ち上がったただならぬ気配を感じ取った。
「榊警部! 何か中で大変なことが起こっているわ! すぐここを開けて!」
「お、大家に鍵を借りてきましょう!」
「それでは間に合わぬ! ここは拙僧が!」
 円光はやにわに錫杖を振り上げると、その石突を一気呵成にドアノブへ叩き付けた。新鋭戦車の装甲すら撃ち破る円光の力の前に、耳障りな悲鳴を上げてドアノブがいとも簡単にはじけ飛び、勢い余って変形したドアのロックが解けた。反動で僅かに開いたドアを、麗夢が意を決して思い切り引き開けた。途端に、真夏の午後の外気よりもむっとした熱気が外に流れ出た。
「火事か?!」
 アルファ、ベータが間髪を入れず部屋に飛び込み、けたたましく鳴き声を上げる。榊、麗夢、円光と鬼童がそれに続く。部屋は小さな玄関を一足飛びに越えると、すぐに唯一の居室に繋がっている、6畳ほどの部屋の奥にベットが一台据えられており、厚い寝具が盛り上がっているのが目に入った。が、火の手はどこにも見られない。その代わりに、窓際に設置された空調が唸りを上げて熱気を噴出していた。鬼童が目ざとくリモコンを見つけ、一瞬絶句して呟いた。
「暖房? この暑いのに」
 鬼童が空調を停止している間に、榊、麗夢、円光は奥のベットに積み重なる寝具をひっぺがした。
「こ、これは!」
 ベットの上には、この熱気の中で達磨のように厚着をした青年が一人、膝を抱き、背中を丸めて小さく横たわっていた。落ち窪んだ目、紫に変じた頬、露出した手足は真っ白なロウのような色で、まるで血の気が感じられない。だがまだ息はある。榊は目ざとくそれを認めると、二人に言った。
「凍傷になりかかっている。 一体どうしてこの暑さで?」
「榊殿、どうやらこの青年は、何か悪辣な夢に囚われているらしい」
「悪夢って夢魔か? そのせいでこの暑さで凍傷になりかけているのか。一体どんな悪夢なんだ?」
「それを確かめるわ。行くわよ、アルファ、ベータ!」
 早速麗夢がベットの傍らにちょこん、と座り込み、アルファ、ベータがその膝に寄り添うように丸くなる。たちまち寝息を立てた麗夢に円光も気を練り直し、破邪滅妖の真言陀羅尼を口ずさむと、錫杖の先を青年に向けた。麗夢が夢の中から、円光が外から悪夢に対抗する必勝の布陣である。榊はその間に朝倉の手を摩擦しながら鬼童に言った。
「鬼童君、お湯を沸かして、風呂にも湯を入れてくれ!」
「判りました、警部!」
(一連の連続凍死事件が夢魔の仕業なのか・・・。でもどうして彼らが・・・)
 円光の結界が功を奏したのか、榊が懸命に摩擦する手に、僅かながら赤みが戻ってきた。榊は別の手をまた摩擦しながら、麗夢とアルファ、ベータの無事を祈った。
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今朝の夢では、初めて麗夢ちゃんが動いていました。

2008-06-06 22:38:24 | 夢、易占
 山梨県のフラワーセンター・ハイジの村という県の施設で行われていたコスプレ大会が、なんでも電話一本の苦情で中止になったそうです。集客の目玉として、昨年4月から計6回開催されていた人気イベントだったとのことですが、この目玉イベントを電話一本で中止に追い込んだ御仁は、どんな方だったんでしょう。よほど県の行政に影響を及ぼすことができるヒトなのではないか、と想像されるのですが、いずれ何らかの真相が明かされる日もあるだろうことを期待するとして、どうもこのところ東の方ではこの手のきな臭い話が目立ち始めたような気がいたします。コミケもいつまでイベントとしてやっていけるのか、都がオリンピック招致に本格的に乗り出したりした昨今、どうも不気味な感じがぬぐえない気がいたします。

 さて、そんな状況下とは何の関係もなく、私は今朝、なかなか良い夢を見ましたので、それを記録しておきましょう。
 「ドリームハンター麗夢」がテレビ放映されているのを自宅で観ているという夢です。2本放映されているのを観ていたのですが、初めのうちは、かつての「アニメ大好き!」みたいに旧作を観ているつもりでいました。ところが、途中でふと気づくと、今見ていた2本のストーリーや映像に、見覚えがないのです。ひょっとしてオリジナルな新作が放映されているのか? と思い、ビデオ録画の準備をしました(この夢では、なぜか麗夢のアニメが連続して何本も放映される番組編成になっているのです)。
 内容は断片的にしか記憶に残っていないのがなんとも残念で、起きてから必至に思い出そうと努力したのですが、薄れ行く記憶から拾い上げられたのは、これだけでした。

・麗夢ちゃんが何か敵の能力で、夢の戦士状態なのに力が発揮できず、身動きも取れなくなっている状態で衣装が引きむしられるように飛び散ります。ですが、テレビ放映のため、「肝心」なところはちゃんと見えないように工夫されていたりしているところが、妙にリアルでした。

・麗夢ちゃんが敵の力で拘束され、キスを迫られます。実は敵は吸血鬼で、キスすることで血を吸い、吸った相手を仲間の吸血鬼に変えることができる、という能力を持っています。赤い唇にのぞく鋭い牙の列が麗夢に迫り、麗夢ちゃんの可憐な唇がアップになります。麗夢ちゃん大ピンチ! でCMです。

・とある絶海の孤島での話。話の内容はわかりませんが、おとり作戦が必要と判断した麗夢ちゃんがいったん現場から離れ、ヘリでその孤島に戻ってきます。ヘリから降りてきたのは、仮面で顔を隠した麗夢ちゃんと、麗夢ちゃんによく似た、髪が肩までの女の子。更に数人、面立ちのよく似た女性達が降りてきて、やる気満々に笑う娘や、頬を赤らめて苦笑している子など、連れ立って楽しげに用意された更衣室へ移動していきます。どうやら彼女らに麗夢ちゃんそっくりにカツラをつけてもらい、夢戦士のコスチュームを着せて、敵をかく乱する作戦らしいです。

 なぜかビデオのリモコンが見つからず、本体のパネルを操作して思うように動かない様子にあせりながら、こんなアニメを観ている、という夢でした。麗夢ちゃん新作! という夢は過去何度も観ていますが、映像として動いているのを観たのはこれが初めてでした。内容はともかく、いずれ正夢になって欲しいと心底感じる、幸せな夢見でした。

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どうして「サマータイム」なんて余計なことをやりたがるんでしょうね。

2008-06-05 22:28:59 | Weblog
 「サマータイム」なるものがまたぞろ息を吹き返してきたようです。ネットをあちこち散策してますと、「サマータイム」推進派には必ず何らかの利権が絡んでいるはず、といううがった見方もあちこち散見されますが、果たしてどうなのでしょうね。時計を一時間早めたり遅くしたりするだけで一体誰が儲かるのか、私にはあまり想定できないのですが、今や全国津々浦々にまで浸透した電算機関連については、特需といえる状況が出てくるだろうという話は、なるほどと思います。ただ、それだけではもぐらたたきのごとく何度も消えてはまた現れるこの現象を説明するには、変数が足りないような気がいたします。
 まあそれはともかく、首相以下積極推進の政治に対して、私自身はあまり普段の生活を変えて欲しくはありませんので、基本的には反対です。巷の声も大体反対一色のように感じられます。それゆえにこそ、「何か裏に大きな利権が?」 とまことしやかにささやかれるのでしょうが、科学的な立場からも、「サマータイム」には大きな疑念が突きつけられました。睡眠学会が、「サマータイム」は健康に悪影響を及ぼすとして、反対声明を出したとのことです。「サマータイム」自体は欧米各国で実施されているとのことですが、それら先進諸国での研究事例や、北海道の企業が試験的に始業時間を1時間早めた時の事例調査等を元に、不眠や朝に起きられないなど睡眠障害に悩む人たちの症状が悪化すると主張されてます。北海道の実験では、従業員の4割が体調が悪化したという結果がでており、これらを基に推計すると、医療費増大、仕事における作業能率の低下などで、1兆2000億円の損失が生じることになるのだそうです。確かに私など、ちょうど今時分、朝明るくなるのが早くなるせいか、早朝から目覚めるようになることがありますが、それが3日も続けば目に見えて抵抗力が失せ、風邪を引いたり具合が悪くなったりして仕事を休まざるをえなくなることがあります。そんな日が続けば自然に眠気が強くなってくるので、普通はそこまで悪化する前に不足分の睡眠を充足できるのですが、「サマータイム」なんてできた日には、無理にでも起きないといけなくなるわけで、数日のうちに倒れることになるかもしれません。
 睡眠研究の専門家集団から十分な客観的根拠を元にこういう提言が出たことを、推進派の方々はどう受け止めるのでしょう? 願わくば考え直してもらいたいところですが、本当に利権が絡んでいるとしたら、そうそう簡単には旗を降ろすことはないでしょうね。どういう反論を構築して推進を図ろうとするのか、是非聞いてみたいところです。

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世界に冠たる研究機関を、奈良県は何だと思っているんでしょう?

2008-06-04 22:15:10 | Weblog
 久々に見た気がする青空は、まだ夏というには色の浅い涼しげな感じの空でした。お日様も苛烈というには程遠いですし、季節が替わるには、今しばらく時間がかかりそうです。

 さて、今日の夕刊を観てましたら、3面記事部分に、奈良県橿原考古学研究所の所長が空席のまま2ヶ月経過している、という記事が出ていました。一昔前なら単なるローカルニュースとしてしかるべきところに小さく記載されるような記事ですけど、昨今の考古学ブームのせいでしょうか、このような記事が全国紙面に掲載されるというのは、ちょっと驚きました。
 まあそれはともかく、橿原考古学研究所は全国の自治体で唯一の考古学専門研究機関で、創立70周年を迎えます。過去には、高松塚古墳の壁画を発見したり、黒塚古墳から三角縁神獣鏡を多数発掘したりといった嚇々たる成果を挙げ、現在も44人の所員が、奈良県中に埋まる考古遺跡の発掘や調査、保存に活動しています。うちから車で5分ほどの神武天皇陵の近くにあるのですが、研究所のそばに立派な付属博物館があって、知的好奇心を刺激される数々の研究成果が展示されています。
 そんな研究所の所長は県職員ではなく、外部招聘された専門家の重鎮で、この3月末に退任した89歳になる4代目所長さんの後任人事が決まっておらず、というか、決める気がないようで、人選のリストすら作っていないのだそうです。我が国はおろか、世界にも通用する第一級の研究拠点に対して、県はこの4月に機構改革という名の合理化を進めてもいます。
 新聞にも書いてありましたけど、奈良県というのは、自分たちの「売り」がなんであるか、行政も議員も県民も、全く理解していないようです。私はここが、自分たちが世界唯一のかけがえのない宝の山の上に立っている、ということをぜんぜん理解していない、度し難い人たちが集まっている自治体だと思うことがあります。
 奈良県には公設試という、試験研究機関がいくつかあります。農業総合センター、森林技術センター、畜産技術センター、工業技術センター、薬事研究センター、保健環境研究センターなどなど。これらは、以前は農業試験場、林業試験場、工業試験場、薬事指導所、衛生研究所、という立派な名前があったのに、ひところの訳のわからない「機構改革」で看板が架け替えられ、センターばやりになってしまいました。それに対して橿考研は文字通り「研究所」としてがんばっているのですが、それはさておき、これら公設試が果たして奈良県に必要かというと、そうでもないと思うのです。たとえば農業は果樹なら和歌山県、米は三重か滋賀、野菜なら兵庫県が近畿を代表する産地で、そちらにも立派な試験場が存在します。あえて奈良でやる必要はないのです。工業だって大阪に任せればよいし、林業も銘木「吉野杉」がありますけど、京都にだって「北山杉」があり、何も絶対奈良でないとダメ、ということはないと思います。それに対して、考古学関係は、言うまでもなくこの県でしかできないことが山ほどあるのです。他の公設試を全部閉めてしまったって、考古学研究所だけは奈良県がしっかりやらないとダメだとさえ、いえると私には思えます。
 平城遷都1300年祭なんてことを企画するのなら、余計歴史、そして考古学への注力が必要なはずです。奈良県の行政には、今一度自分たちにとって本当に必要なもの、必要な人、必要な仕事は何なのか、見つめなおして欲しいと思います。

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雨は嫌いではないですが、続くのは勘弁して欲しいです。

2008-06-03 22:22:42 | Weblog
 昨日の雨に続いて、今日も雨。雨はさほど嫌いではないのですが、続くとちょっと厄介です。グローブも合羽も乾きませんし、バイクもしとどに濡れて、なんとなくあちこち具合が悪くなるような気がします。チェーンやクラッチケーブルなどには、乾いたところでできるだけしっかりとオイルをさす様にはしているんですが、雨が続けばそれもできないのが余計に気になってきます。それに、雨中走行は割と好きではありますが、やっぱり前が見えにくくなるので、いつもより余計に気を使います。コントラストが落ちる上、グレーっぽい色だとぱっと見濡れたアスファルトと区別つかないので、そういう色の対向車やそんな色調の服を着たお年寄りなどには本当に神経を使います。車は雨の日は昼間でも小さいランプ一つつけておいてもらえれば大分助かりますし、お年よりは出歩かないようにしていただくか、せめて服なり傘なりはもう少し派手で目立つものを選んでいただけたらと思うのですが、まあそんな奇特な車は、10台に1台もいらっしゃったら御の字ですし、お年寄りに関しては期待するだけ無理があるというものです。こうなると戦闘鑑の見張員よろしく、ないものをあるように錯覚することはしても、あるものを見落とすことだけは絶対にしないように心がけるよりありません。

 さて、そんなうっとおしい天気なので、気分だけでも明るくしようということで、この写真でも貼ってみます。



シソ科のカキドオシという、ごくありふれた、ようするに雑草と呼ばれる種類の草です。多年草で生命力が強く、ツルが垣根を通り抜けて広がっていくので、この名前がついています。小さな草で花もそんなに目立つものではないのですが、アップにすると結構鑑賞に堪えるように思いまして、ケータイカメラで撮影してみました。シソ科ですので、同じシソ科のラベンダーやローズマリーといったハーブと花の形はそっくりです。別名カントリ草といい、子供の疳の虫をおさえたり、血糖値を下げたりというような薬効があるとされ、連銭草という名前の生薬にもなっているとのことです。
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火星の氷が見つかったなら、次は是非生命の探索を。

2008-06-02 22:27:15 | Weblog
 ハップ剤で全身ミイラのごとくなりながら、今日はブログをつけております。朝から体中が痛くて、首、肩、腕、手首、背中、腰、膝、と、昨日の草刈で負担のかかったところが満遍なくイタイイタイの大合唱を奏でており、立ったり座ったりするのも一苦労な有様なのです。我ながらよくこれでバイクに乗ったり仕事したりできるものだ、と感心するくらいですが、明日には多少はマシになってくれますでしょうか? 

 さて、火星に着陸したNASAの探査機フェニックスの足元に、氷のようなものが見つかったんだそうです。NASAのサイトの写真を見てみますと、フェニックスの足元近くに真っ白で平らな面が写っています。モノクロですし本当に白色なのかどうかは判りませんが、NASAによると、氷かもしれないのだそうです。なんでも、着陸のときの逆噴射で地表面の砂が吹き飛ばされ、その下にあった氷が露出したのではないか、という推測がなされているとのことで、もし本当に氷なら、氷、すなわち水が実在することを証明しに行ったフェニックスは、早くもミッションコンプリート! ということになります。これから採取して調べるそうですけど、本当に氷だとしたら実に素晴らしいことですね。
 もっとも、ハレー彗星が氷の塊だったりするように、地球外の氷、というだけではもう手放しで喜べないかもしれません。一つハードルをクリアしたら更にその上を望みたくなるのがサガというもので、水の存在が確定したら、ここは是非生命の探索、そして発見を切望いたします。最低でもかつて火星に存在した生命の確たる証拠、できることなら生命体そのものを発見して欲しいです。多分見つかったとしても菌類までじゃないか、と思うのですが、それでも発見の日は、全世界を挙げて地球外生命体発見の日としてお祝いすべきだと思います。
 翻って我が国では新型ロケット開発が中止されたり、宇宙ステーションについても巨額の費用をつぎ込む必要性を明らかにせよ、などと言うような話が新聞などに出て来るのはつまらないものです。いいじゃないですか。役にたたなくったって。巨額の資金がといっても、お役人が無駄遣いした金額に比べればそうびっくりするような額でなし、宇宙には、夢と浪漫と伊達と酔狂でじゃんじゃんつぎ込めばいいのです。幾らつぎ込もうと、いずれそのうち、計り知れない価値が返ってきてチャラにしてくれますよ、きっと。

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新作短編 その1

2008-06-01 20:25:48 | 麗夢小説 短編集
 ・・・・・・もの凄いとしか言い様のない吹雪が、田中の背中をどやしつけるように吹きつけた。思わず、ひっと悲鳴をもらし、田中は手をかけたばかりの岩肌にしがみついた。風は時折ふっと弱まるが、直ぐさま前にも増した勢いで吹きすさび、崖にへばりつく身体を横殴りにしたかと思うと、下から猛烈な勢いで持ち上げられる。もう、方向も強さもめちゃくちゃだ。そんな雪と風の咆哮で一杯に塞がれた僅かな隙間に、「がんばれ!」とか「もうすぐ上に出るぞ!」などと励ます声が割り込んでくる。多分上からのはずだが、風で言葉も舞うのだろうか、方角がまるで見当つかない。だが、田中には正直そんなことはどうでもよかった。さっきから手足の感覚がほとんどない。岩にしがみついているのさえ、目で見ればそう言う形に手袋の指が岩にかかっているだけで、力を入れているのかどうかさえ心許なかった。と、その時、あぁっ! とも、うわっともつかない悲鳴と共に、田中の右上から黒い塊が落ちてきた。まるで踏ん張りがきかないのだろう。白い壁面をジェットコースターのように滑り落ちていく。振り返ってみれば、吹雪で視界が霞む中、今落ちたばかりの黒い塊と同じような連中が延々と列をなし、岩と雪にへばりついて、少しでも崖を上がろうともがいている。麻痺しかけた頭で、僅かに田中は思った。そうだ、今はとにかく上がらなければならない。上がるしかないのだ。
 見上げた顔に、轟音と化した風をついて、「登り切ったぞ!」と歓喜の叫びが届いた。「がんばれ!」と言う声も、さっきとは比較にならないほど生気を帯びて聞こえてくる。もうすぐだ。もうすぐ上に出る。僅かに力が増した指先が、ほんの少し岩肌を感じたその時。
『違う』
 一言。
 田中の耳元に呟くような小さな声が届いた瞬間、感覚が麻痺しかけた指から、ふっと岩肌の感覚が失せた。弾みで丸い帽子が宙に飛んだ。強風に巻かれてすぐに見えなくなる瞬間、小さな鍔の上に輝く星形がきらりと輝くのが見えた。
 
 ・・・・・・植田が見渡す限り、まるで周りの空間全てにグレーのペンキを流し込んだように、ただ辺りは灰色でしかなかった。猛烈な風が吹きすさび、狂ったような咆哮と共に、雪を殴りつけてくる。
 寒い。
 ひもじい。
 眠い。
 腰を没し、胸まで届く粉雪をかき分けながら、植田はただ黙々と前を行く黒っぽい背中を追い続けた。
 やがて、前の背中が立ち止まった。それまで、ただ暴風の叫声に満たされていた耳に、低いざわめきともうめきともつかぬ声が流れ込んでくる。思わず顔を上げた植田は、それまでグレーの濃淡でしかなかった視界に忽然と現れた黒い壁に目をやった。霞む目を懸命に凝らしてみると、ここまでひたすら進んできた雪原が唐突に終わりを告げ、巨木の連なる崖が聳えて、一行の行く手を遮っていた。
「天は我々を見放したらしい!」
 先頭で、誰かが叫んでいるのが聞こえてきた途端、暴風雪を押して動揺の波が広がるのを植田は感じた。たちまち数人が、その場で力つきたように膝をつき、雪の中に見えなくなった。
 見知らぬ隣の顔を見ると、眉や髭に長い氷柱を伸ばし、紫に変わった顔色の中に、うつろな目を泳がせている。その目線が、ふと植田とあい、火膨れしたようなその唇が、微かにわなないた。
『違う』
 その声を聞いた途端、植田は、全身を辛うじて支えていた最後の力が抜けるのを意識した。バランスを崩し、前のめりに倒れる瞬間、パウダースノーが口や鼻に舞い込んでくる冷たさを久々に意識しながら、植田の意識はふっつりと切れた。
 
 ・・・・・・斉藤が思い出したように意識を取り戻したのは、それまで悪性の流行病のように一行の耳にこびり付いていた風と雪の荒れ狂う轟音ではない音が飛び込んできたからだった。見上げて見れば、目の前に大きな滝が一つかかって、この寒気をものともせずに水を落とし、渓流の流れを形作っていた。崖下の窪地に集う人影は少なく、自分を入れてもせいぜい十人いるかどうかと言ったところだろう。ぼんやりとした頭で、そういえばいつだったか一行が二手に分かれ、自分達はこちらの方へ来たのだった、と「思い出した」。相変わらず雪と風が辺りを席巻しているが、崖が屏風のように立ちはだかっているためか、この一角だけは幾分その風も和らいでいるようだ。
 目の前の川は水量も豊かで、滝の崖や川岸近くはびっしりと凍りついているが、水面までは凍ることなく、下流へと水を流し続けていた。この川を下れば帰ることが出来る。助けを呼びに行くことが出来る。ふとそんなことを思った斉藤の前に、ふんどし一丁になった男が一人、立ちはだかった。
「この川を泳いで下り、本営に救援を求めに行くぞ! ついてこい!」
 紫色に腫れ上がった顔に手足。目だけがぎらぎらと異様な光を帯びている。斉藤は思わず立ち上がった。どうにかして自分も下帯一つになり、その男のあとに続く。そして、あと一歩で川に入ると言うところで、男が振り返った。
 『違う』
 ぼそり、と一言呟いた男は、次の瞬間には水の飛沫を上げて川の中程まで歩いて入り、そのまま下流に向けて飛び込んだ。斉藤も続けて水に入った。冷たいだろうと思ったが、別に何も感じないことに驚いた。そうか、水は凍らない程度に暖かいのだ。これに入って下っていけば、助かる。
 斉藤は、男が消えた川の流れに、自分の身も投げた。途端に風の音が水の音に変わり、すぐにその音も聞こえなくなった。
 
・・・・・・ 
 
 「一ケ月に3人ですか・・・」
 大学生・田中耕太、植田利明、斉藤正の変わり果てた姿を写した写真を応接セットのテーブルに戻した麗夢は、沈痛な面持ちで向かいのソファに収まる榊を見た。
「でも、こんな季節に凍死だなんて・・・」
 麗夢の事務所は空調の利いた涼しさに満ちているが、一歩外に出ると、そこは昨今の地球温暖化をイヤでも意識させられる焦熱地獄が待っていた。榊などは、ついさっきまで全身の水を絞り出されたかのように、汗びっしょりでここまで辿り着いていたのである。
「ええ。全く理解に苦しみますが、確かに死因は、凍死、です」
 榊は、ようやく引いた汗に寒気を覚えたのか、軽く身震いして自分が持参した被害者達の写真を見た。皆、全身に著しい凍傷を生じ、顔などはほとんど本人かどうか識別が困難なほど紫や黒に変色している。しかも、発見された当初は全身が薄い氷の膜で覆われていた者もおり、被害者達が発見される寸前まで、非常な低温下に置かれていたことを物語っていた。だが、彼らが発見されたのはいずれも自宅。市販のエアコンでは、真夏のこの季節はもちろん、真冬でも部屋で凍死する環境を作り出すのは難しいだろう。
「我々としては、何者かによって業務用冷凍庫などに閉じこめられて殺害された後、自宅に運ばれたのだろうと言うことで、人が十分に入ることが出来る冷凍庫や冷凍車を虱潰しに調べているところですが、目下の所全く手がかりはありません」
 榊の溜息に、麗夢もまた頬杖をついた。
「でも、わざわざ私の所に見えられたということは、そんな「まともな」事件じゃない、ってお考えなんでしょう? 榊警部は」
「ええ」
 榊は顔を上げて麗夢に言った。
「実は被害者達には、説明の付かない不思議なところがあるんです。捜査本部ではあまり重視していませんが、全員が家族の誰かに、死の直前まで姿を見られています。正確には、被害者達は夜寝室に入るまでは間違いなく自宅におり、翌朝、いつまでも起きてこない被害者を起こしに来た家の者によって、凍死しているところを発見されているんです。つまり、もし誰かが被害者をどこかの冷凍庫で凍死させたのだとしたら、その夜のうちに家族の誰にも気づかれないように被害者を連れだし、速やかに凍死させた上で、夜が明けるまでにまた家族に気づかれることなく被害者をベットに戻したことになります。本部では、いずれ不審な冷凍車の類が捜査線上に浮かび上がってくるだろう、と高をくくっているようですが、どうも私には、彼らが自分達のベットで寝ている間に凍らされたように思えてしかたがないのです」
 もちろん警察でそんな考えをしているのは自分だけですがね、と榊は力無く苦笑いした。確かに榊の話は、普通はどう考えてもありえない荒唐無稽さである。だが、榊にとって「ありえない」と言う言葉が死語になって久しい。その震源とも言うべき目の前の少女が、にっこりと笑って言った。
「判りました。確かに調べてみる必要がありそうですね。でも、次に狙われそうな方の目星は付いているんですか? 警部」
 榊は明らかにほっとした顔で一息つくと、おもむろに手帳を取り出して、中に挟んでいた一枚の写真を麗夢の前に置いた。
「朝倉幸司。三人と同じ大学のサークル仲間で、よく連れだって旅行したり飲みに出たりしていたそうです。これは全くの私の勘だが、次に狙われるとしたらこの青年に間違いないと思う」
 麗夢は写真を取りあげると、その人好きする甘めのマスクに軽く目を輝かせた。
「アルファ、ベータ、起きて。お仕事よ!」
「ニャウン?」
「キューン」
 この事務所で一番クーラーが利く涼しい一角から可愛らしい返事があがった。
「では警部、案内して下さい」
「判りました」
 榊は写真を手早く集めると、幾分軽くなった気持ちのままに、颯爽と立ち上がった少女の背中を追った。
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無事草刈も終わって、いよいよ6月のスタートです。

2008-06-01 20:24:09 | Weblog
 今日は朝から自治会の大掃除。私は草刈機を振り回して、腰やら腕やらが疲れて大変でした。小さいとはいえエンジンを担ぎ、直径30センチほどの鋼鉄製のカッターを竿の先で高速回転させ、それを両手で支えて振り回すわけですから、結構な腕力が必要とされます。でも同じように動員されて草刈機を振り回していた恐らく農家のお年よりは、実に手馴れたものですいすいと草を刈り払っていきます。そのカッターこそステンレス製の軽量化された刃を使っていましたけれど、同じように動かしているのに実に軽快で効率いいんです。どうも、私などが腕力任せに振り回すのと違い、お年寄り達は重心とてこの原理を身体が理解しているのでしょう。ほんのわずかな力ですぅっと草刈機を地に這わし、見事に草が刈り払われていくんですから。結局タバコくわえて飄々と刈ってるお年寄りのほうが、私などより広い面積を短時間に片付けておられました。昔鍬の使い方を教えていただいた大先輩もそうでしたが、こういう神に入った妙技を身につけられた方は、後期高齢者云々というようなくくりで語っては失礼に当たるんじゃないか、と思います。

 さて、月も改まりましたことですし、予定通り新作の連載を始めるといたしましょう。もっとも、続きがいつになるか、正直わかりません。いままでは過去の蓄積を元に、手直ししながらアップするという、いわば完成品の切り売りをしていたわけですが、今回は私としては初めて書きながらアップする、という、文字通りの連載になります。そのため、次にアップできるだけのテキストがたまるのがいつになるのか、想像がつかないのです。なるべく週1くらいにできたらとは思うのですが、まあとりあえずはがんばってみます、ということで、始めてみます。
 それと、表題は未定です。小説書いていて一番苦手なのが表題で、いつも書き上げてからしばらくしないと浮かんでこないのです。ただ、何にもなしではこの先困りますので、思いつくまではしばらく「新作短編」ということで通します。そのうち名前付けてそれまでアップしていたのを全部書き改めますので、それまではしばらく仮の名前で勘弁してください。

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