ルイガノ旅日記

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600年越しの里帰り〜芦屋釜

2021年06月27日 | 北九州
茶の湯で使われる湯釜の名品、芦屋釜。南北朝時代から製作が始まった芦屋釜は、都の貴族たちの間で名声を博し、室町時代にかけて一世を風靡したと伝えられています。しかし、何故か江戸時代初期には歴史の舞台から姿を消し、その高い技術は受け継がれませんでした。
「芦屋釜の里」は、そんな芦屋釜の伝統を復興し、古き良き時代の茶の湯の文化を振興するとともに、季節の花々を楽しめるようにと芦屋町が運営する、二つの茶室(蘆庵、吟風亭)を備えた日本庭園です。(写真は入口の長屋門)


芦屋釜資料館では、室町時代の湯釜や現代の技術で作られた芦屋釜などを展示するほか、芦屋釜の歴史や製造方法などを映像や展示を通じて紹介しています。


現代の芦屋鋳物師、樋口陽介氏の手になる浜松図真形釜(はままつず しんなりがま)。国指定の重要文化財を復元した作品です。


七宝文真形釜。これも現代の芦屋鋳物師、八木孝弘氏による重要文化財復元品です。


こちらの芦屋釜は、室町時代に作られた芦屋霰地真形釜。重要文化財に指定される芦屋釜の一つです。実はこれまで重文の芦屋釜は芦屋町にはなかったのですが、今年が町政施行130年にあたる記念として、昨年12月、県外の個人が所有するこの霰地真形釜を町が購入(2億7500万円)したのだそうです。15世紀初期に製作された釜ですから、なんと600年の歳月を経て芦屋に里帰りすることになりました。
この湯釜を展示する特別展は今日(6月27日)まで。おそらく今後も何かの折には公開されると思いますので、今回見逃した方は、是非その機会にご覧ください。
【追記】HPは修正されていませんが、芦屋釜の里事務局に問い合わせたところ、600年ぶりに戻ってきた重文の芦屋釜「芦屋霰地真形(あられちじしんなり)釜」をはじめ、住友コレクションの名品を含めて9点は、7月14日まで継続展示されるとのことでした。


資料館前の真っ白なむくげ。


庭園内に何種類かのむくげが咲いていました。




芦屋釜の里の案内図。


芦屋釜の伝統復興を目指す工房。看板には「蘆屋鋳物師復興工房」と記されています。
この工房では、全国に残る芦屋釜の調査・研究を踏まえ、16年の歳月をかけて芦屋釜の復元と鋳物師の養成を行っているそうです。


鋳型が並んだ工房。中には入れませんが、タイミングが良ければ製作中の場面を見学することができます。


池越しに見る大茶室、蘆庵。池は玄界灘、中洲のような島は芦屋町の奇観、「堂山・洞山」を表しています。


光を浴びて輝く青もみじ。


小茶室、吟風亭の門を内側から。裏山を背にしているせいか、ひっそりしっとりとした趣きです。


吟風亭は、京都御所苑内の仙洞御所跡にある茶室、又新亭(ゆうしんてい)を復元したものです。


露地の蹲踞(つくばい)と織部灯篭。


芦屋釜の里で、日本で一番小さなキツツキの仲間、コゲラを見つけました……と言いたいところですが、見たのは妻。手招きされて私も駆けつけましたが、すでに飛び去った後でした(^^ゞ


写りはよくありませんが、こんな動画まで……。おかげで私も、(妻の写真を通してですが)初めてコゲラを見ることができました。


国の重要文化財に指定されている茶の湯釜は全部で9点ですが、そのうち8点までを芦屋釜が占めています。往時の芦屋鋳物師の技術力、芸術性の高さを窺わせるエピソードですね。
芦屋釜の里では、お茶の文化を大切にするために大小二つの茶室(蘆庵、吟風亭)を備え、一般に開放しています(有料)。また、蘆庵の大茶室で春と秋の2回行われるミニコンサートは、マンドリンやフルート、マリンバ、ピアノなど毎回趣向を変えて楽しめるイベントです。新型コロナのため昨年春から中止されていますが、早く復活することを願っています。
コメント (4)
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