北九州市立美術館でランス美術館コレクション『風景画のはじまり~コローから印象派へ』が開催されています。【7月25日(土)〜9月6日(日)】
戸畑区の小高い丘の上に建つ市立美術館は、昨年、建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」を受賞した磯崎 新氏の設計により1974年に開館。老朽化のため2015年から2年以上に及ぶ改修工事を経て、2017年11月にリニューアルオープンしました。(この時の記念特別企画展も風景画がテーマで、『英国最大の巨匠 ターナー 風景の詩』でした)
筒状に伸びる二つの展示室が宙に迫り出した特徴的な外観。遠くからこの建物を見上げると、あたかも四角い双眼鏡が北九州市街を覗き込んでいるように見えることから、「丘の上の双眼鏡」という愛称で呼ばれるようになりました。
駐車場に車を止め、双眼鏡の真下までエスカレーターで上がったところに入口があります。
サーマルカメラによる検温やシートによる連絡先・健康状態の確認、混雑時の入館制限など、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための措置が徹底されています。その一環として、講演会やギャラリートークなどのイベントは、残念ながら中止となりました。
エントランスホールの広い階段の両脇には、ロダンとプールデルの彫刻が飾られています。また、階段を上ると、先ほどの筒状の双眼鏡部分へと続き、コレクション展示室やミュージアム・カフェなどが設けられています。
オーギュスト・ロダン『ピエール・ド・ヴィッサン』
百年戦争真っただ中の1346年、英国により包囲されたドーバー海峡に面した北フランスの港町カレー。この作品は、町を救うために敢えて人質となった市民たちの記念碑として制作された『カレーの市民』のなかの一体です。ちなみに『カレーの市民』全体像は、国立西洋美術館の前庭に展示されていました。
エミール=アントワーヌ・ブールデル『ペネロープ』
32歳から15年間ロダンに師事したプールデルは、彫刻の表現方法をめぐる考えの違いから、やがてロダンの下を離れ独自の道を歩みました。この作品は、ギリシャ神話からとったもので、トロイ戦争に出征した夫オデュッセイヤの帰りをひたすら待ち続ける貞淑な妻ペネロープ。ブールデル夫人がモデルだそうです。
1階の企画展会場、『風景画のはじまり~コローから印象派へ』……ここから先は撮影禁止です(^^ゞ
この展覧会では、フランスのランス美術館が所蔵するカミーユ・コロー(1796-1875)やギュスターヴ・クールベ(1819-1877)、ウジェーヌ・ブーダン(1824-1898)、そしてクロード・モネ(1840-1926)、ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)、カミーユ・ピサロ(1830-1903)ら印象派へと至る19世紀フランス風景画が紹介されています。
フランスで風景画というジャンルが成立したのは19世紀初め。それまでの絵画はアトリエで制作されていたのに対し、チューブ式の絵の具が開発されたことに後押しされた画家たちは屋外に出て、自然を主題として絵を描き始めたのだそうです。その先駆者となったのが、コローやクールベ、ブーダンで、モネやルノワールといった印象派に引き継がれ発展していきました。(以下の写真はリーフレットから)
ジャン=パティスト・カミーユ・コロー『イタリアのダンス』1865-70年
コローは、19世紀のフランス画壇における最も優れた風景画家のひとりで、ルノワールやピサロなど印象派の画家に大きな影響を与えたと言われています。
ギュスターヴ・クールベ『レマン湖の岸辺(急流)』1875年頃
アドルフ・ポルティエ『風景画家たち(レオン・ロワールに基づく)』1876年
ウジェーヌ・ブーダン『水飲み場の牛の群れ』1880-95年
空や雲を伸びやかに描くことから「空の王者」とも呼ばれたブーダン。若いモネを外に連れ出し、自然を観察してその場で描くことを勧めた画家です。
クロード・モネ『ぺリールの岩礁』1886年
ピエール=オーギュスト・ルノワール『風景』1890年頃
ここから先は、北九州市立美術館のコレクション展示室。最初の部屋だけ、写真撮影が許可されています。
エドガー・ドガ『マネとマネ夫人像』
親しい関係にあったドガとマネはあるとき、お互いの作品を交換しました。この絵はドガが描いた、ソファーに寄り掛かるマネと(おそらく)ピアノを弾くマネ夫人。マネはこの絵が気に入らず、絵の右側の一部を切り取ってしまったという、いわくつきの絵です。
TV東京の「美の巨人たち」で詳しく紹介されていた『マネとマネ夫人像』。この絵が北九州市立美術館にあると知った時の驚きと興奮を今も憶えています。ちなみにこの絵は、自分の絵を切り刻まれたことに怒ったドガが取り返し、復元するつもりで下塗りしたカンヴァスを継ぎ足したのですが、結局はそのままの状態で放置されてしまいました。
ピエール=オーギュスト・ルノワール『麦わら帽子を被った女』
色彩あざやかながら、やわらかな印象を与えるルノワールの絵。風景そのものよりも人物、とりわけ女性の描写に徹底的にこだわったところに、モネとの違いを感じます。
ポール・ゴーギャン『アウティ・テ・パペ(川岸の女たち)』【ノアノア木版画集】1893-94年
タヒチから帰国したゴーギャンは、タヒチの自然や文化について記したタヒチ滞在記『ノアノア(マオリ語で「かぐわしき香り」の意)』を執筆しました。この木版画は、その挿画として制作されたものだそうです。
ポール・セザンヌ『水浴者』
スタニスラス・レピーヌ『マルヌ川の眺め』1878-82年頃(ランス美術館蔵)
一緒に展覧会に出かけた母が、ミュージアムショップで選んだポストカードです。
こちらも同じくミュージアムショップで販売されていた小倉織「縞縞」のコースター。純白に挟まれた青のグラデーションが涼しげです。私が晩酌するときのためにと、母がプレゼントしてくれました(^^ゞ
小倉織は江戸初期から小倉藩で織られていた、丈夫でしなやかな質感が特徴の木綿布で、徳川家康も愛用していたと伝えられています。
風景画が好きなので、今回のランス美術館コレクション『風景画のはじまり~コローから印象派へ』は見ごたえがありました。ランス美術館と言えば、3年前に観た山口県立美術館の『ランス美術館展』も、ジャック=ルイ・ダヴィッドの『マラーの死』やランスにゆかりのある藤田嗣治(レオナール藤田)の作品などが印象に残っています。
ランスはシャンパーニュ地方の古都で、文字どおりシャンパン(フランス語読みではシャンパーニュ)生産の中心地として知られています。パリ東駅からTGVで45分と思いのほか近く、歴代フランス国王の戴冠式が行われたノートルダム大聖堂や大司教公邸トー宮殿、サン=レミ旧大修道院などの世界遺産をはじめ、世界的なシャンパンメーカーのカーヴ見学や試飲、葡萄畑が広がる美しい風景など見どころ盛りだくさん。レオナール藤田が設計・内装デザインを手がけ、死後埋葬されたフジタ礼拝堂(正式には「平和の聖母礼拝堂」)もありますね。
6年前パリに行ったときは、モンパルナス駅からTGVでボルドーに足を延ばし、丸々1日かけてシャトーを見学(もちろん試飲も……)しました。次は白ワインの番と言うことで、ブルゴーニュもいいかなぁと妻と話したことがありますが、ランスでシャンパン🍾というのも魅力的かもしれませんね。
……新型コロナウイルスの感染拡大が収まる気配を見せない今、妄想ばかりが膨らみます (^-^)ゞ
戸畑区の小高い丘の上に建つ市立美術館は、昨年、建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」を受賞した磯崎 新氏の設計により1974年に開館。老朽化のため2015年から2年以上に及ぶ改修工事を経て、2017年11月にリニューアルオープンしました。(この時の記念特別企画展も風景画がテーマで、『英国最大の巨匠 ターナー 風景の詩』でした)
筒状に伸びる二つの展示室が宙に迫り出した特徴的な外観。遠くからこの建物を見上げると、あたかも四角い双眼鏡が北九州市街を覗き込んでいるように見えることから、「丘の上の双眼鏡」という愛称で呼ばれるようになりました。
駐車場に車を止め、双眼鏡の真下までエスカレーターで上がったところに入口があります。
サーマルカメラによる検温やシートによる連絡先・健康状態の確認、混雑時の入館制限など、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための措置が徹底されています。その一環として、講演会やギャラリートークなどのイベントは、残念ながら中止となりました。
エントランスホールの広い階段の両脇には、ロダンとプールデルの彫刻が飾られています。また、階段を上ると、先ほどの筒状の双眼鏡部分へと続き、コレクション展示室やミュージアム・カフェなどが設けられています。
オーギュスト・ロダン『ピエール・ド・ヴィッサン』
百年戦争真っただ中の1346年、英国により包囲されたドーバー海峡に面した北フランスの港町カレー。この作品は、町を救うために敢えて人質となった市民たちの記念碑として制作された『カレーの市民』のなかの一体です。ちなみに『カレーの市民』全体像は、国立西洋美術館の前庭に展示されていました。
エミール=アントワーヌ・ブールデル『ペネロープ』
32歳から15年間ロダンに師事したプールデルは、彫刻の表現方法をめぐる考えの違いから、やがてロダンの下を離れ独自の道を歩みました。この作品は、ギリシャ神話からとったもので、トロイ戦争に出征した夫オデュッセイヤの帰りをひたすら待ち続ける貞淑な妻ペネロープ。ブールデル夫人がモデルだそうです。
1階の企画展会場、『風景画のはじまり~コローから印象派へ』……ここから先は撮影禁止です(^^ゞ
この展覧会では、フランスのランス美術館が所蔵するカミーユ・コロー(1796-1875)やギュスターヴ・クールベ(1819-1877)、ウジェーヌ・ブーダン(1824-1898)、そしてクロード・モネ(1840-1926)、ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)、カミーユ・ピサロ(1830-1903)ら印象派へと至る19世紀フランス風景画が紹介されています。
フランスで風景画というジャンルが成立したのは19世紀初め。それまでの絵画はアトリエで制作されていたのに対し、チューブ式の絵の具が開発されたことに後押しされた画家たちは屋外に出て、自然を主題として絵を描き始めたのだそうです。その先駆者となったのが、コローやクールベ、ブーダンで、モネやルノワールといった印象派に引き継がれ発展していきました。(以下の写真はリーフレットから)
ジャン=パティスト・カミーユ・コロー『イタリアのダンス』1865-70年
コローは、19世紀のフランス画壇における最も優れた風景画家のひとりで、ルノワールやピサロなど印象派の画家に大きな影響を与えたと言われています。
ギュスターヴ・クールベ『レマン湖の岸辺(急流)』1875年頃
アドルフ・ポルティエ『風景画家たち(レオン・ロワールに基づく)』1876年
ウジェーヌ・ブーダン『水飲み場の牛の群れ』1880-95年
空や雲を伸びやかに描くことから「空の王者」とも呼ばれたブーダン。若いモネを外に連れ出し、自然を観察してその場で描くことを勧めた画家です。
クロード・モネ『ぺリールの岩礁』1886年
ピエール=オーギュスト・ルノワール『風景』1890年頃
🍀
ここから先は、北九州市立美術館のコレクション展示室。最初の部屋だけ、写真撮影が許可されています。
エドガー・ドガ『マネとマネ夫人像』
親しい関係にあったドガとマネはあるとき、お互いの作品を交換しました。この絵はドガが描いた、ソファーに寄り掛かるマネと(おそらく)ピアノを弾くマネ夫人。マネはこの絵が気に入らず、絵の右側の一部を切り取ってしまったという、いわくつきの絵です。
TV東京の「美の巨人たち」で詳しく紹介されていた『マネとマネ夫人像』。この絵が北九州市立美術館にあると知った時の驚きと興奮を今も憶えています。ちなみにこの絵は、自分の絵を切り刻まれたことに怒ったドガが取り返し、復元するつもりで下塗りしたカンヴァスを継ぎ足したのですが、結局はそのままの状態で放置されてしまいました。
ピエール=オーギュスト・ルノワール『麦わら帽子を被った女』
色彩あざやかながら、やわらかな印象を与えるルノワールの絵。風景そのものよりも人物、とりわけ女性の描写に徹底的にこだわったところに、モネとの違いを感じます。
ポール・ゴーギャン『アウティ・テ・パペ(川岸の女たち)』【ノアノア木版画集】1893-94年
タヒチから帰国したゴーギャンは、タヒチの自然や文化について記したタヒチ滞在記『ノアノア(マオリ語で「かぐわしき香り」の意)』を執筆しました。この木版画は、その挿画として制作されたものだそうです。
ポール・セザンヌ『水浴者』
🍀
スタニスラス・レピーヌ『マルヌ川の眺め』1878-82年頃(ランス美術館蔵)
一緒に展覧会に出かけた母が、ミュージアムショップで選んだポストカードです。
こちらも同じくミュージアムショップで販売されていた小倉織「縞縞」のコースター。純白に挟まれた青のグラデーションが涼しげです。私が晩酌するときのためにと、母がプレゼントしてくれました(^^ゞ
小倉織は江戸初期から小倉藩で織られていた、丈夫でしなやかな質感が特徴の木綿布で、徳川家康も愛用していたと伝えられています。
風景画が好きなので、今回のランス美術館コレクション『風景画のはじまり~コローから印象派へ』は見ごたえがありました。ランス美術館と言えば、3年前に観た山口県立美術館の『ランス美術館展』も、ジャック=ルイ・ダヴィッドの『マラーの死』やランスにゆかりのある藤田嗣治(レオナール藤田)の作品などが印象に残っています。
ランスはシャンパーニュ地方の古都で、文字どおりシャンパン(フランス語読みではシャンパーニュ)生産の中心地として知られています。パリ東駅からTGVで45分と思いのほか近く、歴代フランス国王の戴冠式が行われたノートルダム大聖堂や大司教公邸トー宮殿、サン=レミ旧大修道院などの世界遺産をはじめ、世界的なシャンパンメーカーのカーヴ見学や試飲、葡萄畑が広がる美しい風景など見どころ盛りだくさん。レオナール藤田が設計・内装デザインを手がけ、死後埋葬されたフジタ礼拝堂(正式には「平和の聖母礼拝堂」)もありますね。
6年前パリに行ったときは、モンパルナス駅からTGVでボルドーに足を延ばし、丸々1日かけてシャトーを見学(もちろん試飲も……)しました。次は白ワインの番と言うことで、ブルゴーニュもいいかなぁと妻と話したことがありますが、ランスでシャンパン🍾というのも魅力的かもしれませんね。
……新型コロナウイルスの感染拡大が収まる気配を見せない今、妄想ばかりが膨らみます (^-^)ゞ
コメントありがとうございます。
本当に、何もかも軒並み中止や延期になっていました。
市立美術館でも、実施に漕ぎ着けたのは久しぶりなんですよ。
この設計はたしかに斬新ですね。
2本の筒状の部分は、美術館のコレクション展示室になっており、企画展などは1階スペースで行われます。
私も、(絵のことはよくわからないのですが…)風景画が一番好きなジャンルです。
今回の展覧会では、印象派の出展は数枚程度で、大半はそれ以前の風景画でした。
小倉織は戦時中の混乱で一旦は廃れてしまったのですが、近年それを復活させ「縞縞」というブランドを立ち上げたのだそうです。
木綿とは思えないような滑らかな手触りです。
セガンティーニは観たことがないような気がします。
「アルプスの画家」と呼ばれる人なんですね。
透き通るような青空で、本当にきれい〜〜
ぜひ一度、原画を観てみたいです。
その後お具合はいかがですか?
これからも暑い日が続くようです。
体調に気をつけて、この夏を乗り切りましょう〜♪
美術館の建築を見るのも楽しみの一つですよね。
磯崎新さん設計の美術館はかなり当時としては斬新だったかも?
風景画、いいですねえ。
ああ^行きたいです。
そして、小倉織のコースター涼しい色合いで爽やかです。
小倉織は、初めて見ました。
友達のご主人が小倉高校出身なので、又、聞いてみます。
セガンティーニの風景画の青い空もきれいです。
早く自由に好きなところへ行けるようになりたいです。