Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

金洪才/光州市立交響楽団

2016年07月01日 | 音楽
 日本オーケストラ連盟から招待券をいただいて、光州市立交響楽団の日本公演に行った。指揮は金洪才(キム・ホンジュ)。同交響楽団のホームページを見ても金洪才の名前は見当たらないので、日本での知名度の高さを買われたのかもしれない。

 わたしのところに招待券が来たのは、過去に何度かアジア・オーケストラ・ウィークのチケットを買ったことがあるからだろう。そんな程度の者にも招待券が回ってきたということは、強力なスポンサーが付いているからだろう。主催は韓国光州広域市と光州市立交響楽団、後援は駐日韓国大使館および韓国文化院なので、公的な助成を受けた公演のようだ。

 1曲目はチェ・ソンファンの「アリラン幻想曲」。弦がアリランのメロディを奏し始めたとき、その美しさが胸に沁みた。韓国にはとくに縁のないわたしがそうなのだから、会場に多くいるはずの在日の方々は、なおさらだったろう。メロディ自体の美しさもさることながら、演奏者の‘血’からくるものもあったと思う。

 2曲目はラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。ピアノ独奏はムン・ジヨン。プロフィールによると、2014年のジュネーヴ国際コンクール第1位、2015年のブゾーニ国際コンクール第1位と、華麗な経歴だ。1995年生まれなので今年21歳の女性。

 そのコンクール歴からいっても、どんなにスター然とした人かと思ったら、意外に純朴でまだ世慣れない若者のように見えた。演奏はさすがにスケールが大きいが、華麗というよりも、真面目に曲に向き合っている感じだ。

 アンコールにシューマンの歌曲「献呈」をリストがピアノ用に編曲したものが演奏された。音楽の流れがよく、膨らみにも欠けなかったが、この曲でもリストの甘さより、シューマンの夢見るような優しさが前面に出る演奏だった。

 3曲目はチャイコフスキーの交響曲第4番。第1楽章の展開部など熱く燃える箇所があったが、全体としては生真面目な演奏だった。日本のオーケストラがヨーロッパに行ったときも、現地の人は同じように感じるかもしれないと思うと、東洋人としての共通の感性・問題点を感じた。演奏レベルは日本の一部の地方オーケストラ(これはけっして蔑称ではないので誤解のないように‥)位か。

 アンコールに「イムジン河」が演奏された。これもまた胸に沁みた。昨今の世相にあって一服の清涼剤のように感じられた。
(2016.6.30.東京芸術劇場)
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