サントリーホール・サマーフェスティバルの最終日は、ザ・プロデューサー・シリーズの管弦楽演奏会(2)で、新作初演3曲という意欲的なプログラムだった。
1曲目は川島素晴(1972‐)の管弦楽のためのスタディ「illuminance/juvenile」。illuminanceとは「物理学・光学でいう「照度」の意味」、juvenileとは「幼年性、少年・少女向けの、といった意味」(作曲者自身のプログラム・ノートより)。
第1楽章「illuminance」は「20に及ぶ自然界の「光の現象」をテーマにイメージが紡がれ、織り成していく」(同上)。その音はアニメの動きを音楽化したような活きの良さがあった。視覚的な音楽というか、むしろ視覚の音楽化といったらよいか。表題通り、照度の高い音の光景が展開し、その光景は目に焼きついた。
第2楽章「juvenile」は川島素晴らしいパフォーマンス音楽。第1楽章でアニメの動きを連想したわたしは、その関連から、アニメの舞台化のように見えた(詳細はネタバレになるといけないので、記述を控えるが)。演奏は指揮が作曲者自身(そこがポイントだ)、オーケストラは東京フィル。東京フィルの演奏は鮮度が良かった。
2曲目は杉山洋一(1969‐)の「自画像」。冒頭でスペイン・バロックの作曲家カバニーリェス(1644‐1712)の「皇帝の戦争」(バターリャ第1番)が高らかに演奏され、それが杉山洋一の生まれた1969年(その年はシュトックハウゼンが各国の国歌その他をコラージュした電子音楽「ヒュムネン」が作曲された年でもある)から現代にいたるまでの世界各地での戦争・紛争で攻撃された側の国歌・州歌・県歌の連鎖になだれ込んだ。途中でアメリカ国家が登場した。それは9.11同時多発テロを象徴する。最後はイタリア軍(杉山洋一はミラノ在住)の弔いのラッパが吹奏された。
「皇帝の戦争」も陽気な音楽だが、その後の国歌・州歌・県歌の連鎖も、勇壮な打楽器のリズムに乗って、躁状態の、興奮した音楽となった。何かに駆り立てられているようだ。その音楽の背後には、死体が累々と続いていく。そんなイメージがわいた。最後の弔いのラッパがむなしく鳴る。音楽そのものよりも、音楽の背後に映像インスタレーションを見るような、今まであまり経験したことのない音楽だ。
2曲目から指揮は鈴木優人に代わった。3曲目は一柳慧の交響曲第11番「ピュシス」。ピュシスとはギリシャ語で「自然」の意味。急‐緩‐急の3楽章からなる交響曲だ。作曲者の自然にたいする問題意識は共感できるが、曲からはその問題意識が伝わらず、挨拶に困るような感じがした。
(2020.8.30.サントリーホール)
1曲目は川島素晴(1972‐)の管弦楽のためのスタディ「illuminance/juvenile」。illuminanceとは「物理学・光学でいう「照度」の意味」、juvenileとは「幼年性、少年・少女向けの、といった意味」(作曲者自身のプログラム・ノートより)。
第1楽章「illuminance」は「20に及ぶ自然界の「光の現象」をテーマにイメージが紡がれ、織り成していく」(同上)。その音はアニメの動きを音楽化したような活きの良さがあった。視覚的な音楽というか、むしろ視覚の音楽化といったらよいか。表題通り、照度の高い音の光景が展開し、その光景は目に焼きついた。
第2楽章「juvenile」は川島素晴らしいパフォーマンス音楽。第1楽章でアニメの動きを連想したわたしは、その関連から、アニメの舞台化のように見えた(詳細はネタバレになるといけないので、記述を控えるが)。演奏は指揮が作曲者自身(そこがポイントだ)、オーケストラは東京フィル。東京フィルの演奏は鮮度が良かった。
2曲目は杉山洋一(1969‐)の「自画像」。冒頭でスペイン・バロックの作曲家カバニーリェス(1644‐1712)の「皇帝の戦争」(バターリャ第1番)が高らかに演奏され、それが杉山洋一の生まれた1969年(その年はシュトックハウゼンが各国の国歌その他をコラージュした電子音楽「ヒュムネン」が作曲された年でもある)から現代にいたるまでの世界各地での戦争・紛争で攻撃された側の国歌・州歌・県歌の連鎖になだれ込んだ。途中でアメリカ国家が登場した。それは9.11同時多発テロを象徴する。最後はイタリア軍(杉山洋一はミラノ在住)の弔いのラッパが吹奏された。
「皇帝の戦争」も陽気な音楽だが、その後の国歌・州歌・県歌の連鎖も、勇壮な打楽器のリズムに乗って、躁状態の、興奮した音楽となった。何かに駆り立てられているようだ。その音楽の背後には、死体が累々と続いていく。そんなイメージがわいた。最後の弔いのラッパがむなしく鳴る。音楽そのものよりも、音楽の背後に映像インスタレーションを見るような、今まであまり経験したことのない音楽だ。
2曲目から指揮は鈴木優人に代わった。3曲目は一柳慧の交響曲第11番「ピュシス」。ピュシスとはギリシャ語で「自然」の意味。急‐緩‐急の3楽章からなる交響曲だ。作曲者の自然にたいする問題意識は共感できるが、曲からはその問題意識が伝わらず、挨拶に困るような感じがした。
(2020.8.30.サントリーホール)