平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

相棒 「背信の徒花」

2009年11月19日 | 推理・サスペンスドラマ
 これぞ「相棒」クォリティ!
 真相が二転三転、そしてラストの余韻。
 以下、ネタバレです。

 真相の二転三転に関しては、
 まず国土建設省の片倉(中村繁之)が犯人として浮かび上がる。
 官製談合を非難した三島(村井克行)を自殺に見せかけて殺した容疑。
 片倉が三島に間宮駅で会っていたことから、その容疑がかけられる。
 なるほど情況証拠は十分。

 しかし右京(水谷豊)さんは別のことを見ている。
 養護老人ホーム・敬葉園の所長・江藤大(でんでん)。
 国土建設省から新しい高速道路のために施設を売り渡すこと、立ち退きを求められている。
 身寄りのない老人のために自分の老人ホームを存続させようと最後の最後までがんばった人。
 だが、がんばった理由の背後には別の理由が。
 ごねればごねるほど、立ち退き料が高くなることを所長は見込んでいたのだ。
 だから官製談合を告発し、高速道路建設を中止しようとする三島は邪魔だったのだ。

 今回の話が見事なのは、ふたつの動機を用意し、第一、第二の犯人を置いたことだ。
 そしてふたつめの動機は表面上は隠れて見えないこと。
 それが善良そうに見える所長の二面性を際立たせている。
 犯行が見破られたことがわかった時に見せた180度違う所長の顔、開き直り方はなかなか見物。

 ラストの余韻もいい。
 ラストを犯人の所長ではなく、談合を行った片倉に持っていった。
 <あだ花>をうまく使って表現している。
 <あだ花>は決して実をつけることはない。
 だが決して諦めてはいけない。
 殺された三島のように誰かが今の間違った世の中に抗わなければ、何も変わらない。
 そういうメッセージを作家は右京を通じて語っている。
 また、三島の思いが生きていることも。
 三島の植えた花は近く役場に植え替えられたと片倉に話す右京。
 高速道路に関わる片倉はいつかその花を見るかもしれない。
 その花を見た時、片倉は何を思うのか?
 三島の思いは生きているのだ。

 見事なラストですね。
 「相棒」のラストはいつも上手いと思うが、今回はふたつのメッセージが込められている分、さらに深いものになっている。

 今回はこれぞ「相棒」クォリティと言える一品です。

※追記
 三島の転落死のトリックもなかなか。
 転落死するような高い建物がない間宮市。
 では三島はどこから転落したのか?
 これは地面の下、埋め立てられた井戸。
 なくなった国土建設省のバッチがその井戸に落ちているだろうことが犯行の証拠にもなっている点も見事。

※追記
 それにしても右京さんはすごい。
 一枚の写真から、片倉が写っていること、三島が苗を持っていたことを読み取るなんて。


コメント (2)
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