平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

父親たちの星条旗~ヒーロー時代の終わり

2010年04月25日 | 洋画
 硫黄島に星条旗を立てた若者たち。
 その写真が話題になり彼らはヒーローになる。
 しかし彼らはただ丘に旗を立てただけで、少しも英雄的な行動をしたわけではない。
 作られた英雄であり、戦時国債を集め、戦意を鼓舞するための広告塔なのだ。
 その結果、壊れていく主人公の若者たち。

 歳をとれば体が壊れていくように、様々な人生体験によって人の心も壊れていく。
 特に戦争は<人の心を壊す>最たるもの。
 この作品の主人公達の後の人生もそうだ。
 国家によって戦場に送り込まれ、国家によって広告塔に利用される。
 人を殺さなくてはならない状況に置かれ、広告塔という偽りの自分を演じさせられる。
 唯一の彼らの救いと支えは仲間たち。
 仲間たちとの思い出。いっしょに海に入ってはしゃいだこと。

 かつてのアメリカ映画は無邪気だった。
 「史上最大の作戦」「大脱走」
 ドイツは悪であり、アメリカは正義。
 そのために戦う主人公はヒーロー。
 ヒーローを描いていれば拍手喝采で劇場には人が入った。
 ヒーローたちは陽気で、心は少しも壊れていない。

 ところが現在はベトナム戦争、イラク戦争の悲惨を知っている。
 映画「ディアハンター」はベトナム帰還兵の壊れた心を描き、「タクシードライバー」の主人公もベトナム帰りの心の壊れた男だった。
 いわば、この作品「父親たちの星条旗」の主人公達と同じ。
 
 戦場の悲惨は人の心を蝕み、壊す。
 国家は個人を戦場に送り込み、利用する。

 無邪気にヒーローを信じられる時代は終わったのだ。


コメント (2)
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