動き出す北朝鮮=ロシア経済圏
ロシアのヤクーニン鉄道省次官が、シベリア鉄道の北朝鮮乗り入れとロシア製原油・天然ガスの北朝鮮輸出で、北朝鮮と合意に達した。
ヤクーニンは旧KGB出身で(つまり専門的なスパイ)、プーチンからの信頼の厚い次世代のロシア大統領候補NO1の実力者である。ヤクーニンの交渉相手は北朝鮮の金正日の息子・金正男(ジョンナム)である。日本に密入国しようとし逮捕され強制送還された、あの金正男である。
プーチンの狙いは、北朝鮮の資源とロシア製の原油・天然ガスとのバーター取引、さらに韓国への資源販売路線の確保、そして北朝鮮=中国の関係に「亀裂を入れ」、来るべき中国崩壊時には、朝鮮半島へのロシアの影響力を確実にする事である。将来、韓国経由で日本列島の南部への原油・天然ガス海底パイプライン建設も、ヤクーニンの頭には在る。
北朝鮮に対する食料・エネルギー供給のストップによる「兵糧攻め」で、北朝鮮の核兵器問題・拉致問題を解決しようという日本政府の戦略は、これで大きな切り札を「失う事になった」。
プーチンの西欧=東欧=中央アジア=ロシア=中国=南北朝鮮=日本という、エネルギーによる巨大ユーラシア経済圏構想の中に北朝鮮はこうして「組み込まれて行く」。
この市場経済化で、将来、北朝鮮体制と中国は確実に崩壊する。
しかしEUのような経済共同体を実態としながらの政治共同体を作るという構想は、プーチン=ヤクーニンには無い。従って、中国・北朝鮮崩壊時のアジアの動乱への対応策は、プーチンのようなKGB出身の諜報員にとっては構想の外にある。政治の手足でしかないスパイに、世界全体の構図を描く能力は無い。そのような訓練も受けていない。
一方、ガンで死に瀕している患者本人に、ガンの治療方法を研究しろと言っても無理である。動乱の当事者である中国・北朝鮮に、動乱を解決しながらのユーラシア全体の政治・経済圏・通貨圏構想を求めても無理である。知性・技術・資金力、全てにおいて、それは日本の仕事である。
日本にはその能力は十分在る。しかし、その気力があるかどうかは極めて疑わしい。
巨大ダムに直系1cmの穴が空くと、直系1cmの水が漏れる時間が長い間続く。その「長い時間の末」、突然1cmの穴が数秒で直系5m程に大きく口を開き、次の瞬間、ダムは崩壊・決壊し大洪水を引き起こす。この巨大ダムが、現在の中国である。