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えせ「国民会議」が高く評価する消費税大増税

2010-06-21 08:57:19 | 植草一秀氏の『知られざる真実』

えせ「国民会議」が高く評価する消費税大増税
参院選を目前に控えて、「新しい日本をつくる国民会議」が6月20日、「政権実績・参院選公約検証大会」を開き、民主、自民両党が発表したマニフェスト(政権公約)の検証結果を発表した。


新聞報道によると大会では、参院選直前の首相交代によって、民主党のマニフェストが経済財政政策で大きく方針転換したことが注目され、消費税を含む税制抜本改革を示したことに肯定的な意見が多く示された。他方、昨年の衆院選マニフェストよりも抽象的になり、政策変更の理由が示されていないとの不満も示されたとのことだ。


「国民会議」などの名称が付された機関がマニフェストを検証する大会を開いたと伝えられると、一般国民は中立、公正な機関がマニフェストについて、公正な検証を行ったとの印象を持ちやすい。


しかし、こうした検証を行う機関そのものが中立・公正の機関ではなく、特定の利害関係者と癒着する存在であるなら、その検証結果をうのみにすることはできない。こうした活動自体が特定勢力による情報操作、世論操作の手段として用いられている可能性を注意深く洞察しなければならない。


上記した「新しい日本をつくる国民会議」は別名「21世紀臨調」と呼ばれる組織である。体制替えが行われる前は、「21席臨調」の名称だけが用いられていた。


私は前身の「21席臨調」の政治部会で主査を務めていた。部会長は佐々木毅元東大総長、私とともに主査を務めたのが政策研究大学院大学教授の飯尾潤氏だった。


小泉政権が発足した時期に私は政治部会の主査を務め、小泉政権の経済政策に対して厳しい批判を展開した。


すると、「21席臨調」はしばらく休会状態に入り、その後、突然、体制が刷新された。主査を務めていた私には何の連絡もなく、私は突然、主査どころか委員からも外された。


推測するところ、小泉政権から強いクレームがついて、体制を刷新することになったのだと思われる。


政治部会の委員には、主要全国紙の政治部長がほぼ全員顔をそろえ、他には政治学者と労働組合幹部がメンバーに組み入れられていた。連合前会長の高木剛氏なども委員として参加していた。


この機関の事務局は社会経済生産性本部が担当していたことから、基本的には大資本の一種のシンクタンク的存在とみなすことができる。


つまり、主権者国民を代表する会議ではない。「国民会議」と称するには、内容のかい離が大きすぎる。「大資本・大資本系労組連合会議」とでも名称を改めないと、一般国民が提示された情報を誤って読み取ってしまう。


第2次大戦後の日本政治を支配し続けてきたのは、米国・官僚・大資本である。昨年8月の総選挙を通じて実現した政権交代により、この基本構造が刷新されることが期待されてきた。


米国・官僚・大資本に代わって政治の主役の座に就き、政治権力を掌握するべきは主権者国民である。


在日米軍基地問題で日本の主張を正々堂々と米国に提示し、


官僚天下りを根絶し、


企業団体献金を全面禁止して大資本による政治支配を排除する、


この三つの課題を実現することが強く求められてきた。


 経済政策運営では、消費税増税を検討する前に、無駄な政府支出を徹底して排除し、同時に官僚天下りを根絶することが求められている。


 また、大資本による政治支配を排除するには、企業団体献金を全面禁止することがどうしても必要である。


 昨年の総選挙での政権交代を実現させた民主党は、「国民生活が第一」のスローガンを掲げ、上記の三つの課題を実現することを政権公約に掲げるとともに、その実現に向けて力を注いできた。





 ところが、鳩山前首相が普天間基地移設問題で日本の主張を貫くことを断念し、米国のごり押しに屈する日米合意を発表したため、主権者国民の批判が激増し、鳩山政権は総辞職に追い込まれた。


 このいきさつを踏まえれば、本来は、対米隷属外交を修正する新政権が樹立されなければならなかった。なぜなら、それが主権者国民の意思を尊重する対応だからだ。


 ところが、この政変を利用して、民主党内で内乱=クーデターが発生した。菅直人氏は新首相に就任すると同時に、主権者国民と民主党との約束=政権公約を片端からひっくり返し始めたのである。


 まず、普天間基地移設問題につき、主権者国民の意思を踏みにじり、米国の言いなりになった日米合意を、そのまま踏襲することを宣言した。


 国会で政策方針を示した所信表演説では、「天下り根絶」も「企業団体献金全面禁止」も、具体的に主権者国民に約束することを避けた。


 日本の警察・検察・裁判所制度近代化の一丁目一番地である「取り調べ過程の全面可視化」の公約も捨て去る姿勢を鮮明に示し始めた。


 経済政策運営では、増税検討の前に、政府支出の無駄排除を徹底させるとのこれまでの公約が反故にされ、2012年度にも消費税率5%ポイント引き上げの大増税方針が示され始めたのである。


 国民生活を守るということは、すべての国民に雇用の機会が与えられることであり、そのためには、不況脱出を優先し、完全雇用実現に向けて景気回復を維持することが最優先されなければならない。


 鳩山政権の下では景気回復を重視する国民新党の政策提言が尊重され、景気回復重視の政策が実行されたが、菅新首相は景気回復重視から財政収支改善最優先の超緊縮財政政策に経済政策の基本方向を転換することを示唆し始めている。


 冒頭に紹介した21席臨調は大資本の色濃い組織である。この機関が、菅新政権の大増税路線をプラスに評価するのは当然のことである。


 大資本は大衆増税である消費税大増税による社会保障財源確保に大賛成であり、当然のことながら、法人税減税にも大賛成である。医療保険や年金制度での企業負担の増加を警戒しており、こうした領域での企業負担増加を回避するために、早期の消費税大増税を切望している。


 米官業による日本政治支配の手先として行動しているのが利権政治屋=利権政党と御用メディア=マスゴミである。


 「国民会議」などと称する第三者機関が、実はマスゴミと大資本によって組織されるものであることは決して珍しくないことに十分な留意が必要だ。珍しくないと言うより、むしろ、それが主要な形態であると考えておくべきだ。


 消費税大増税を実施する前に、①政府支出の無駄を排除すること、②日本経済の回復軌道を確実に維持することが、どうしても必要である。


 天下り排除を手抜きにし、企業献金を温存し、他方で、消費税大増税を強引に押し通してしまおうと考える中心が米・官・業であることを忘れてならない。


 米国は、日本政治支配を官(官僚機構)と業(大資本)と結託して実行する方針を第2次大戦後まもなく確定して、現在もその基本姿勢を維持している。


 利権政党とマスゴミがこの支配者の手先となって行動する実働部隊である。


 政権交代が実現したにもかかわらず、民主党内クーデターの影響で、政治の実権が再び悪徳ペンタゴンの手に引き渡されようとしている。


 参院選、9月民主党代表選、これと前後して本格化すると予想される政界大再編を通じて、主権者国民の手に政治の実権を奪還しなければならない。


 官の無駄を排除せずに消費税増税に前のめりになるのが悪徳ペンタゴンの特徴的な行動様式である。


 参院選選挙区では非悪徳ペンタゴン系民主党候補、社民党候補、国民新党候補に投票し、比例区では社民党、国民新党、ないし非悪徳ペンタゴン系民主党候補に投票することが望ましい。


 マスメディアが介在する情報は、基本的に偏向しているから、基本的に無視することが求められる。


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