①「民意」を受け止める気のない安倍政権は自分たちの利益を増やす不公正な仕
組みの構築に邁進中
2014.02.05 櫻井ジャーナル
安倍晋三内閣に「民意」を受け止める気はない。自分たちの意思を「民意」とし
て庶民に受け入れさせようとするだけであり、これまで庶民は支配層の 意思を
受け入れてきた。一部の利権集団に富が集中する仕組みを変えようとして貧乏く
じを引くより、利権集団に取り入ることで「お零れ」を頂戴し、 不正は見て見
ぬ振りをする方が徳だからだ。
しかし、見て見ぬ振りのできない人たちもいる。沖縄占領の問題では圧倒的に少
ないものの、原発に関しては相当数の人びとが声を上げている。自分た ち、あ
るいは自分たちの子孫の命に関わる問題だからだろうが、利権集団はそれが気に
入らない。
不公正な仕組みの結果、社会の歪みは大きくなっているが、不公正の度合いをさ
らに高めろと利権集団は叫んでいる。世界的に見ると、不公正な仕組み が社会
を歪ませ、このまま放置すると現在の支配システムが崩壊すると危機感を持つ支
配層も増えているのだが、日本ではそうした動きが見えない。
そもそも資本主義とは富を一部に集中させる仕組みで、19世紀には大きな問題に
なっていた。チャールズ・ディケンズの『オリバー・ツイスト』な ど、そうし
た問題をテーマにした小説も書かれている。
富の集中を放置しておくと庶民の怒りが革命に発展する可能性がある。これを阻
止するひとつの方策として採用されたのがファシズム。ドイツの巨大資 本だけ
でなく、ウォール街から多額の資金がアドルフ・ヒトラーたちへ渡ったのは、そ
うした理由からだ。
巨大資本の横暴が目に余る状態になると、アメリカではそうした資本を規制し、
労働者の権利を拡大しようというニューディール派が支持されるように なる。
そして1932年の大統領選挙ではフランクリン・ルーズベルトが当選した。
ルーズベルトの当選に危機感を抱いたJPモルガンを中心とするウォール街の金融
資本はファシスト政権の樹立を目指すクーデターを計画している。こ の計画は
スメドリー・バトラー海兵隊少将やジャーナリストのポール・フレンチが議会で
証言して明らかになったのだが、長い間、学者やメディアは知 らない振りをし
ていた。広く知られるようになったのは、インターネット上で取り上げられるよ
うになってからだろう。
ドイツがヨーロッパを制圧してソ連を倒す一方、アメリカでクーデターが成功し
たならば、欧米に巨大なファシズム帝国が誕生するところだった。必然 的に中
東やアフリカも制圧される。
さらに、関東大震災からJPモルガンの影響下に入った日本政府が東アジアを制覇
すれば、この地域もファシズム帝国になった。つまり、全世界がファ シズムで
覆われるところだった。こうした流れにならなかった大きな理由は、ドイツがソ
連に敗北、日本が中国で勝てず、アメリカでルーズベルト政権 が1933年から45
年まで続いたということにある。
戦後、一部の利権集団、いわゆる「1%」の人びとに富を集中させる仕組みが公
然と主張されるようになったのは1970年代。フリードリッヒ・ハイ エクやミル
トン・フリードマンたちの「自由主義経済」を欧米の支配層が宣伝し始めたので
ある。
ハイエクは1899年にオーストリアで誕生、ウィーン大学で博士号を取得してから
アメリカへ渡っている。1930年代にハイエクは私的な投資を推 進するべきだと
主張、政府の介入を主張するジョン・メイナード・ケインズと衝突していた。
その当時、ハイエクに学んだ学生の中にデイビッド・ロックフェラーも含まれて
いる。フリードマンもハイエクの影響を受けたひとり。一方、ルーズベ ルトは
ケインズの政策を採用している。
1945年4月にルーズベルトが執務室で急死するとウォール街の逆襲が始まる。戦
後日本の進む方向を決めたジャパン・ロビーで中心的な役割を果た したひと
り、ジョセイフ・グルーはJPモルガンの代理人だった。
フリードマンの「理論」が弱者に過酷なことは明らかだったため、通常ならば反
対の声が高まる。最初にこの「理論」を実践したのはチリだが、その際 に軍事
クーデターで民主的に選ばれた政権を倒し、反対派を拘束するだけでなく、虐殺
している。ナチスを使ってファシズムを広めようとしたことを思 い起こさせる
やり口だ。イギリスの場合はフォークランド諸島/マルビナス諸島をめぐるアル
ゼンチンとの戦争を利用した。
この時期、つまり1980年代にアメリカで憲法の機能を停止するためにCOGプロ
ジェクトを始めたのも偶然ではないだろう。10年、20年の単位 でファシズム体
制へ移行する計画を立てている。実際、2001年9月11日にこのプロジェクトは始
動、ファシズム化が急速に進んでいる。各国政府 から政策の決定権を奪うTPPは
プロジェクトの総仕上げに近いものだろう。「1%」の人びとは再び世界をファ
シズムで統一しようとしている。
安倍晋三にしろ、小泉純一郎にしろ、菅直人にしろ、野田佳彦にしろ、民主的な
仕組みを破壊し、ファシズム体制を築こうとしている。こうした人びと にとっ
て「民意」は雑音にすぎないのだが、団結した庶民の怖さも知っているようで、
団結する前に反抗、あるいは反乱の芽を潰そうとする。そのた め、監視システ
ムを強化し、情報統制しようとするわけだ。安倍首相に民主主義のルールを守る
意思はない。彼の頭の中はすでにファシズム色に染まっ ている。
(転載終わり)