安保適用範囲だが尖閣日本領有否定した米大統領
オバマ大統領が来日し、4月23日夜には、東京銀座の「すきやばし次郎」で安倍首相が主宰した非公式夕食会に出席した。
食事の効用は大きい。
オバマ大統領はすしが好物とのことで、食事のメニューに限って言えば、すきやばし次郎のすしは極上のおもてなしになったと思われる。
とはいえ、食事は食事、政治は政治、でもある。
日本外交の立て直しが急務である。
日米関係が急激に悪化しているが、その原因は安倍政権の極右行動にある。
米国は東アジアの平和と安定を希求しているが、安倍首相の靖国参拝は、この目的に適合しないとの見解を示している。
安倍首相は米国の牽制を無視して靖国神社に参拝した。
これに対して「失望」のメッセージを発した米国に対して、衛藤晟一首相補佐官が「失望しているのは日本」のコメントを発表した。
また、靖国問題で日米関係が悪化していることについて、萩生田光一自民党総裁補佐が、「オバマ政権だから関係が悪化している」と述べた。
さらに、安倍首相がNHK経営委員に起用した百田尚樹氏は
「南京大虐殺は、日本の民間人を大虐殺した米国が、自国の戦争犯罪を隠蔽するために米国が持ち出したもの」
との主旨の発言を示した。
この状況で、日米関係が改善できるわけがない。
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どれほどすしが美味でも、それだけで外交関係が改善するわけではない。
日米首脳会談では以下の点が確認された。
第一に、尖閣が日米安全保障条約の適用範囲であること。
第二に、安倍政権の集団的自衛権行使容認の姿勢を米国が歓迎すること。
第三に、TPP交渉の早期妥結を日米両国が推進すること。
である。
メディアは、「尖閣が日米安保条約の適用範囲」を明記したことを大きく報道するが、噴飯ものである。
米国はかねてより次の見解を明示してきている。
1.尖閣は日米安保条約の適用範囲である。
2.尖閣の領有権について、米国はいずれの国の側にも立たない。
これが米国の基本スタンスで、今回の記述は、これを追認するものでしかない。
日米安保条約は日本施政下にある地域を適用範囲としている。
尖閣諸島は沖縄返還の際に、施政権が日本に帰属することになった。
このときに、米国が尖閣の領有権についても、日本の領有を明示していれば、日本の主張は肯定されたものになった。
しかし、米国は尖閣の領有権については、日本の領有を表明していない。
米国は尖閣を係争地と認定している。
尖閣領有権については、日本だけでなく中国も主張しており、米国は中国の領有権主張を認識したうえで、尖閣の領有権については日本帰属を明確にしていないのである。
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さらに重要な問題がある。
「尖閣が日米安保条約の適用範囲である」とすることが意味する内容が明確でないことだ。
日米安保条約第5条の条文は次のものである。
第五条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
この条文で定めていることは、
「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動する」
ことである。
尖閣有事の際に米軍が出動することなどは、まったく定められていないのである。
この点については後段で解説する。
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共同記者会見でオバマ大統領が、「尖閣が日米安保条約の適用範囲」との見解が新しいものでなく、従来通りの見解であることを説明した。
同時に、領有権について、日本の領有を支持しないことも明言した。
さらに、米国、中国、ロシアを大国と表現し、それ以外の国を小国と表現した。中国が大国で日本が小国であることを示唆する発言でもあった。
TPPの大筋合意は現時点で成立していない。
安倍首相は日米共同声明の発表を先送りすると発言したが、オバマ大統領の訪日中にTPP大筋合意を成立させてこれを盛り込むとの意味なのか、それとも、日米共同発表自体が実現不可能になったのか。
現時点でははっきりしない。
全体を総括すれば、日米首脳会談で新たに明確になったことは皆無に近いということである。
TPPの最終結果を見守る必要があるが、TPPについては、拙速な対応は日本の主権者の利益に反することを明確にしておかねばならない。
現段階では、目玉が何ひとつないために、
「尖閣は日米安保の適用範囲」
という言い古された言葉を、日本のメディアが懸命にニュースにしようとしているのだと思われる。