2020年夏季五輪の開催都市を決めるIOC総会は開催都市に東京を選んだ。早朝だったが、IOCのロゲ会長が「トーキョー」と発した瞬間に思わずガッツポーズをした人も多いはずだ。夏季は64年以来二度目となり、72年の札幌、98年の長野の冬季と合わせ四度目の開催となる。五輪は2020年7月24日~8月9日まで、パラリンピックは8月25日~9月6日まで行う計画。夏季五輪を二回以上開催する都市は、アテネ、パリ、ロサンゼルス、ロンドンに次いで五都市目となるそうだ。
五輪決定に景気の回復を期待する人も多いのではないだろうか。「景気」とはあの指標がどうだとかこの指標がどうだとかではなく、結局はなんとなく皆が「ああ景気が良いなー」とか「ああ景気が悪いなー」と感じている“その情景”なんだよと、何時ぞや偉い人が言っていた。景気の気は気持ちの「気」、気分の「気」。今回の五輪決定のニュース。まずは私達自身が前向きに捉え、そしてこれを明確なチャンスと位置づけ、意識を“ポジティブにシフトする”ことが大切なのではないかと思う。
祝!2020年東京五輪決定。その開催を今から楽しみに待ちましょう!
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「ジリリリリリリリン!」「火災が発生しました。なんたらかんたら・・・・。」
あなたならどうしますか?
昔、専門学校の自習室で勉強していた時のこと。この時、私は第一に「本当に火事なのか?」ということを考えた。周りを見ても逃げる感じではない。出入口の方を見ても煙がモクモクと見えるわけでもなければ臭いもない。ワーだのキャーだのという声も聞こえない。そこで次にこう考えた。「これは誤報だ」。過去にもあったじゃないか。あの時も結局誤報だった。ここであわてて逃げたらあとで恥ずかしい思いをするなと。
この状態は“正常性バイアス(Normalcy bias)”が強烈にかかっている状態だ。正常性バイアスとは「多少の異常事態が起こってもそれを正常の範囲内として捉え、心を平静に保とうとする働き」のことをいう。この働きは、我々が日常生活を送る中で遭遇する様々な変化や新しい出来事に、心が過剰に反応し疲弊しないために必要な働きである一方、上記のように我々のリスク感知を遅らせ対処を緩慢なものにしてしまう。もともとは適応をうまく行うために行動プログラムに組み込まれたものだが、緊急事態では逃げ遅れなど致命的な結果を招く元凶ともなる。しかも私の例のように過去に同じような経験をしていた場合、正常性バイアスは強化され、「まだ大丈夫」や「今回は違う」と、過去の経験値から都合の良い解釈をしてしまうやっかいな傾向を持つ。
正常性バイアスは個人だけがかかるものではない。企業、病院等、あらゆる組織がこのバイアスにかかる危険を有している。危機に直面している際に「でも今回は大丈夫だよね」と異常を異常と感じ取れないことは組織を壊滅的な状態へと導く引き金となる。組織に長年いる役職者ほどその豊富な経験値によりこのバイアスがかかりやすくなることから、いよいよ事態が切迫した際には手遅れになっていることが多い。大きな顧客の喪失や従業員の連続退職等、「まあ、そんなこともあるだろう」と軽く見ていたら実はそれが重大な事態の兆候であり、適切に対処しておけばこんなことにはならなかったのに・・・と後悔することも、正常性バイアスがかかっていたことを示している。
ではこの正常性バイアス。どう対処すればよいのだろうか。
ひとつは、いち早く科学的に危機をキャッチする仕組みを構築しておくことだ。これは、営業部門や経理部門、外部のコンサルタント等、外部環境と接する境界点で働く者や、組織の数字と接し定量的な分析が可能な地位にいる者がキーマンになる。我々税理士事務所が月次巡回監査を推奨している理由のひとつもここにある。毎月毎月を決算だと思い、常に最新の数字を把握しておくということの重要性。第三者である銀行等に適時対応するためだけでなく、経営者として組織の数字をリアルタイムで把握することが、科学的に「危機」をキャッチし素早く対処するための要となる。
もうひとつは、その組織に対して豊富な経験値を“有していない”若手メンバーの素直な気持ちをいち早くキャッチする環境を整えておくことだ。若手のメンバーはその組織内での経験値の少なさから正常性バイアスがかかりにくい状態にある。その彼ら彼女らが抱く「不安」というのは組織の弱点を見抜いている場合が多々ある。異常を異常と判断できているその意見に、経営者としてアンテナをめぐらしておくというのは有用なことなのである。
いずれにせよ、経営者はこれらのメッセージを“キャッチしなければならない”という点は同じである。キャッチできなくなるのが正常性バイアスなのにキャッチしろとはおかしな話だと思われるかもしれないが、誰しもが正常性バイアスにかかる危険を秘めており、一度かかるとこのようになるということを知っておくことは、いざかかった際にそこから素早く抜け出し、危機を危機と認識する手助けになるはずだ。先にも述べたように、正常性バイアスは心の平静を得るためのメカニズムでもあるため一概に否定されるべきものではない。しかし、経営者や管理職等より多くの人に影響を与える立場の人は、頭ごなしに「異常なんてそうは起きない」と考えるのではなく、上記「危機」と「不安」を結び付け、様々なシナリオを想定した上でその都度冷静に物事を判断することが求められるのである。
我々税理士事務所は数字を根拠とした分析から異常が発生していないか常に御社・御医院の経過を観察しています。月に一度訪問させていただく際にはお話をさせていただき、その不安や想いに耳を傾けています。そこから見えてくる“まだ見ぬ事態”を、組織外部の立場から進言させていただく“最後のキーパーソン”としてご活用いただければと考えています。
■参考リンク
㈱安全・安心研究センター
広瀬弘忠 東京女子大学名誉教授
http://www12.plala.or.jp/anzen_anshin/home.html
http://ameblo.jp/hirotadahirose/
監査部一課 原浩恭
五輪決定に景気の回復を期待する人も多いのではないだろうか。「景気」とはあの指標がどうだとかこの指標がどうだとかではなく、結局はなんとなく皆が「ああ景気が良いなー」とか「ああ景気が悪いなー」と感じている“その情景”なんだよと、何時ぞや偉い人が言っていた。景気の気は気持ちの「気」、気分の「気」。今回の五輪決定のニュース。まずは私達自身が前向きに捉え、そしてこれを明確なチャンスと位置づけ、意識を“ポジティブにシフトする”ことが大切なのではないかと思う。
祝!2020年東京五輪決定。その開催を今から楽しみに待ちましょう!
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「ジリリリリリリリン!」「火災が発生しました。なんたらかんたら・・・・。」
あなたならどうしますか?
昔、専門学校の自習室で勉強していた時のこと。この時、私は第一に「本当に火事なのか?」ということを考えた。周りを見ても逃げる感じではない。出入口の方を見ても煙がモクモクと見えるわけでもなければ臭いもない。ワーだのキャーだのという声も聞こえない。そこで次にこう考えた。「これは誤報だ」。過去にもあったじゃないか。あの時も結局誤報だった。ここであわてて逃げたらあとで恥ずかしい思いをするなと。
この状態は“正常性バイアス(Normalcy bias)”が強烈にかかっている状態だ。正常性バイアスとは「多少の異常事態が起こってもそれを正常の範囲内として捉え、心を平静に保とうとする働き」のことをいう。この働きは、我々が日常生活を送る中で遭遇する様々な変化や新しい出来事に、心が過剰に反応し疲弊しないために必要な働きである一方、上記のように我々のリスク感知を遅らせ対処を緩慢なものにしてしまう。もともとは適応をうまく行うために行動プログラムに組み込まれたものだが、緊急事態では逃げ遅れなど致命的な結果を招く元凶ともなる。しかも私の例のように過去に同じような経験をしていた場合、正常性バイアスは強化され、「まだ大丈夫」や「今回は違う」と、過去の経験値から都合の良い解釈をしてしまうやっかいな傾向を持つ。
正常性バイアスは個人だけがかかるものではない。企業、病院等、あらゆる組織がこのバイアスにかかる危険を有している。危機に直面している際に「でも今回は大丈夫だよね」と異常を異常と感じ取れないことは組織を壊滅的な状態へと導く引き金となる。組織に長年いる役職者ほどその豊富な経験値によりこのバイアスがかかりやすくなることから、いよいよ事態が切迫した際には手遅れになっていることが多い。大きな顧客の喪失や従業員の連続退職等、「まあ、そんなこともあるだろう」と軽く見ていたら実はそれが重大な事態の兆候であり、適切に対処しておけばこんなことにはならなかったのに・・・と後悔することも、正常性バイアスがかかっていたことを示している。
ではこの正常性バイアス。どう対処すればよいのだろうか。
ひとつは、いち早く科学的に危機をキャッチする仕組みを構築しておくことだ。これは、営業部門や経理部門、外部のコンサルタント等、外部環境と接する境界点で働く者や、組織の数字と接し定量的な分析が可能な地位にいる者がキーマンになる。我々税理士事務所が月次巡回監査を推奨している理由のひとつもここにある。毎月毎月を決算だと思い、常に最新の数字を把握しておくということの重要性。第三者である銀行等に適時対応するためだけでなく、経営者として組織の数字をリアルタイムで把握することが、科学的に「危機」をキャッチし素早く対処するための要となる。
もうひとつは、その組織に対して豊富な経験値を“有していない”若手メンバーの素直な気持ちをいち早くキャッチする環境を整えておくことだ。若手のメンバーはその組織内での経験値の少なさから正常性バイアスがかかりにくい状態にある。その彼ら彼女らが抱く「不安」というのは組織の弱点を見抜いている場合が多々ある。異常を異常と判断できているその意見に、経営者としてアンテナをめぐらしておくというのは有用なことなのである。
いずれにせよ、経営者はこれらのメッセージを“キャッチしなければならない”という点は同じである。キャッチできなくなるのが正常性バイアスなのにキャッチしろとはおかしな話だと思われるかもしれないが、誰しもが正常性バイアスにかかる危険を秘めており、一度かかるとこのようになるということを知っておくことは、いざかかった際にそこから素早く抜け出し、危機を危機と認識する手助けになるはずだ。先にも述べたように、正常性バイアスは心の平静を得るためのメカニズムでもあるため一概に否定されるべきものではない。しかし、経営者や管理職等より多くの人に影響を与える立場の人は、頭ごなしに「異常なんてそうは起きない」と考えるのではなく、上記「危機」と「不安」を結び付け、様々なシナリオを想定した上でその都度冷静に物事を判断することが求められるのである。
我々税理士事務所は数字を根拠とした分析から異常が発生していないか常に御社・御医院の経過を観察しています。月に一度訪問させていただく際にはお話をさせていただき、その不安や想いに耳を傾けています。そこから見えてくる“まだ見ぬ事態”を、組織外部の立場から進言させていただく“最後のキーパーソン”としてご活用いただければと考えています。
■参考リンク
㈱安全・安心研究センター
広瀬弘忠 東京女子大学名誉教授
http://www12.plala.or.jp/anzen_anshin/home.html
http://ameblo.jp/hirotadahirose/
監査部一課 原浩恭