役員退職金支給時の注意点

2013年09月17日 | Weblog
みなさん、こんにちは。
朝夕は少し涼しくなり過ごしやすくなってきました。

今回は役員に対する退職金についてです。
役員への退職金支給は節税効果が大きくなりますが、それだけ税務署にも目を付けられやすく問題になりやすい点でもあります。
中小零細企業はほとんどが同族会社であるため、退職金支給について恣意的に決められることも問題になりやすい原因でしょう。

税務署に否認されないためには
・役員退職給与規定
・株主総会議事録・取締役会議事録
を整備し、「支給する退職金額」と「支給時期」について明確にしておくことが大事です。

法人の損金に算入する時期としては、原則として決議のあった日の属する事業年度とされますが、実際に支給した日の事業年度に損金に算入する方法も認められます。

分割払いも認められますが、役員退職給与規程等の整備、株主総会等の決議がされていなければなりません。あまり長期でない2~3年以内での支給が実務上、妥当と思われます。

退職金の金額が適正であるかどうかについては、計算手法として、一般的には功績倍率法で検討されます。功績倍率法の算式は以下のとおりです。

■役員退職金の適正額=最終月額報酬×勤続年数×功績倍率(1.5~3.0)

最終月額報酬について退職直前に報酬をアップしたり、逆に退職直前に報酬を低く抑えたりした場合には、適正な月額報酬を算定しなければなりません。功績倍率については、類似法人の多くの資料を集め、その数値がいかにして導かれたのかを明らかにしておく必要があります。(功績倍率については2013年7月18日に東京高等裁判所で納税者が最高功績倍率で算定した退職給与が認められないという判決が出ており今後注意が必要かもしれません。本件は現在上告申立て中。)
過大と判断されない算出基準を明確にするためにも、やはり役員退職給与規程等を制定しておくのが良いでしょう。



★役員の分掌変更による退職金支給にも注意

たとえば代表取締役が退職し、会長職や平取締役になることがあります。
退職金支給後に退職した前代表取締役が今まで通りに仕事をし、役員報酬を支給してしまっていると退職金を否認されてしまいます。
実質退職していない人に支給した退職金は経費として認められない、ということです。

退職金を支給した後も引き続き役員報酬を支給するのであれば、以下の2つの条件を満たす必要があります。
・役員報酬代表取締役の変更登記を行い、非常勤の役員として「経営上主要な地位」から外れていること
・支給する役員報酬は50%以下まで減額していること
(とはいえ200万円を100万円にすれば良い、ということではありません。あくまで勤務実態に即した金額でなければ過大役員報酬と見られて否認される可能性がありますので、非常勤役員に相応の額である必要があります。)

ご注意ください。


監査部 川上裕也