美術品に係る減価償却資産の判定

2015年02月09日 | Weblog

 本日は、美術品に係る減価償却資産の判定が平成27年1月1日から改正になった事と、私が担当させていただいている関与先様の税務調査についてご紹介させていただきます。

 それではまず、美術品の税務上の取扱いについて確認していきましょう。
法人税法施行令では、「時の経過によりその価値が減少しないもの」は減価償却資産の範囲から除くと規定しておりますが、この規定だけでは美術品の場合判断が難しいことが多い為、所得税基本通達7-1-1に以下のように定められております。
書画骨とう(複製のようなもので、単に装飾的目的にのみ使用されるものを除く。)のように、時の経過によりその価値が減少しない資産は減価償却資産に該当しないのであるが、次に掲げるようなものは原則として書画骨とうに該当する。
(1)古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの
(2)美術関係の年鑑等に登載されている作者の制作に係る書画、彫刻、工芸品等
(注)書画骨とうに該当するかどうかが明らかでない美術品等でその取得価額が1点20万円(絵画にあっては、号2万円)未満であるものについては、減価償却資産として取り扱うことができるものとする。(所基通7-1-1)


 先日、私が担当させていただいている関与先様の税務調査において、まさにこの美術品(絵画)について質問を受けました。と言いますのが、約25万円(15号)の絵画を減価償却資産とし、さらに30万円未満であることから一括で経費計上(少額減価償却資産)したことについて詳細を教えてください、というものでした。
私は、「上記通達に基づき(1)には該当せず、(注)の号2万円未満に該当することから減価償却資産として処理しています。」と回答すると、税務調査官は、「しかし、この作者は美術年鑑に登録されているので減価償却資産としては認められません。」そして私は「これは複製品ですので認められるのではないでしょうか。」このようなやりとりをし、結果として此方の主張は認められました。

 それでは、最後に平成27年1月から美術品に係る減価償却資産の判定はどのように改正されたのかをご紹介させていただきます。
まず、上記所得税基本通達7-1-1の(2)にある年鑑登載基準は廃止となりました。さらに(注)の取得価額基準を1点100万円未満に引き上げ、号2万円基準も廃止となりました。という事は、(1)に該当しなければ100万円未満の書画骨董は減価償却資産(耐用年数5年で費用化)に該当するということです。
また、以前から保有していた美術品等でも取得価額が100 万円未満のものについては、新たに減価償却できる資産に該当するケースが出てくると思いますので、貸借対照表に計上されている美術品が減価償却できるかものかどうか、ぜひ確認してみましょう。
なお、以前から保有していた美術品等は法人においては平成27 年1 月1 日以後に開始する事業年度、個人であれば平成27 年分から減価償却が出来ます。


                                                           監査部一課
                                                           梅北 聖人