おはようございます。
4月も中旬に入り、暖かい季節となってきました。週末はお花見に行かれた方も多かったのではないでしょうか?
税務の業界では、4月、5月は法人様の申告業務で忙しくなる時期です。
そこで、今回は法人税についてお話をさせて頂きたいと思います。
本日テーマに挙げさせて頂く項目は、「繰延資産」です。
繰延資産とは、法人が支出する費用のうち、その支出の効果が1年以上に及ぶもので、原則として支出時に全額経費にするのではなく、その支出の効果の及ぶ期間で償却することになります。
従いまして、繰延資産を正しく処理するためには、その支出が繰延資産に該当するかどうかを適切に判断すると伴に、支出の効果が及ぶ期間についても確認する必要があるのです。
では、繰延資産とは具体的にどのようなものなのでしょうか?
繰延資産は大きく2つに分類することができます。「商法上の繰延資産」と「税法独自の繰延資産」です。
まず、商法上の繰延資産は、会社を創業する際に支出したものである「創業費」、開業準備のために支出したものである「開業費」などが該当します。
これらについては、法人税法上は原則としていつでも償却してよい任意償却となります。
一方、税法独自の繰延資産は、例えば、建物を賃借した場合に支出する借家権利金、アーケードなどの共同的施設を設置するための負担金などが該当します。
これら税法独自の繰延資産については商法上の繰延資産と違い、支出の内容ごとに償却する期間が決まっており、この判断が実務上は1つのポイントとなります。
では、税法独自の繰延資産の取扱いを具体例を挙げて説明させて頂きます。
今回挙げさせて頂く項目は、借家権利金です。
具体例
A社は本社とは別に、新たに営業所を設置することになり、契約の際に家賃とは別に権利金50万円を家主へ支払いました。留意点は以下のとおりです。
※1 営業所は購入ではなく、賃借とします。
※2 賃借期間は5年とします。
※3 権利金は返還を要しないものです。
※4 A社の事業年度は平成23年4月1日から平成24年3月31日までとし、営業所の契約日は平成23年4月1日とします。
仕訳
1 契約年度
a 契約時
(借) 借家権利金(←繰延資産) (貸) 現金預金 50万円
b 決算時
(借) 借家権利金償却(←損金算入) (貸) 借家権利金 10万円
2 2~5年目
c 決算時
(借) 借家権利金償却(←損金算入) (貸) 借家権利金 10万円
解説
まず、借家権利金は契約時に一時に支払っていますが、その支出の効果は建物を借りている期間にわたって及ぶものであるため、税法独自の繰延資産に該当し、効果の及ぶ期間にわたって償却することになります。
また、借家権利金の償却期間は原則5年となります。ただし、賃借期間が5年未満で、契約更新時に再び権利金を支払う場合は賃借期間となります。
今回の具体例では、賃借期間が5年(以上)であるため、この権利金50万円については、契約時に一時に償却するのではなく、5年間にわたって均等に償却することになります。
つまり、①の契約年度においては、aの仕訳のように契約時に支出した50万円を全額繰延資産として処理します。そして、決算時にbの仕訳のように、経過した1年分(12ヶ月分)の償却(50万円×12ヶ月/60ヶ月=10万円)をすることになります。
そして2年目以降は、cの仕訳のように毎年決算時に経過した12ヶ月分の償却を行うことになります。
以上となります。
今回は繰延資産について、借家権利金を例に挙げてご説明させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
税法独自の繰延資産については、今回挙げさせて頂いたものの他にも複数のものがあります。また、金額が20万円未満の少額なものや、たとえ支出の効果が1年以上に及ぶものでも簡易的な施設の負担金などについては、均等償却をせずに一時に償却できるものもあります。
従いまして、今回は1つの具体例でしたが、次回以降も他の具体例を用いてご説明させて頂ければと考えております。
木山 浩晃