2020年度診療報酬改定について
2019年9月2日/Weblog
9月に入り、いよいよ季節が夏から秋、そして冬に向かおうとしております。
2020年は2年1度の診療報酬改定の年で、これから秋にかけて議論が本格化し、2019年11~12月にはおおよその方向性が示される予定です。
2019年3月27日開催の第411回中央社会保険医療協議会で、「2020 年度診療報酬改定に向けた検討項目と進め方について(案)」が示され、2020 年度診療報酬改定における議論の主なテーマが示されました。
その中でも「昨今の医療と関連性の高いテーマについて課題を整理」(以下抜粋)として、医療・介護業界の今後を占うと思われる事項が示されました。
ア 患者・国民に身近な医療の在り方
〇患者にとって必要な情報提供や相談支援の在り方(診療計画書、明細書等)
〇かかりつけ医機能とかかりつけ薬剤師・薬局機能の連携
〇紹介状なしの大病院受診時の定額負担 等
イ 働き方改革と医療の在り方
〇医師等の働き方の見直しを踏まえた対応
〇業務の効率化の観点を踏まえた医師・看護師等の外来等の配置基準の在り方
〇タスクシフト、タスクシェアの推進、チーム医療の推進等に係る取組 等
ウ 今後の地域づくり・街づくりにおける医療の在り方
〇今後の人口減少社会における医療体制の確保
〇地域医療構想の達成に向けた取組
〇医療機能の分化・連携、患者の状態に応じた取組
〇外来診療の提供体制
〇地域包括ケアシステムの構築に向けた取組
〇救急医療・災害医療・へき地医療対策等の評価 等
エ 新たなエビデンスやICT技術を踏まえた医療の在り方
〇新規医療技術への対応
〇新たなエビデンスを踏まえた医療の質の確保
(診療ガイドライン、既収載の技術等の見直し等)
〇医療の質を高める研究の推進
〇ICTやデータヘルスの利活用 等
オ 介護・障害者福祉サービス等と医療との連携の在り方
〇地域包括ケアシステムの構築に向けた介護サービスとの連携
〇地域移行・地域生活支援の推進
〇様々な依存症対策への対応 等
カ 医薬品・医療機器等の適正な利用の在り方
〇多剤投与、重複処方等への対応
〇後発医薬品の使用促進
〇フォーミュラリー等への対応
〇高額医療機器の共同利用の推進 等
上記事項を見る限り、従来の方針を継続する形で、地域包括ケアシステム構築とその根底を支える多職種連携やかかりつけ医機能等が議論の中心になっていくと思われます。
また、医師等の働き方改革や医薬品・医療機器等の適正な利用といった点も議論され、2024年4月からの医師の時間外労働上限規制への対応やCT・MRI等の共同利用による生産性向上といった取組に対して、診療報酬上の何らかの評価がなされる可能性があります。
興味深いところでは、地域医療構想を踏まえた地域の特性に応じた推進・取組も評価される可能性があるという点です。
地域医療構想は、2025年における病床の必要量を高度急性期・急性期・回復期・慢性期等の機能別の試算に基づき、地域の医療機関が自主的に機能分化・転換等をしていくことを期待するものです。
この地域の特性に応じた医療体制や紹介状なしの大病院受診時の定額負担に関連して、個人的には、2017年4月から開始した地域医療連携推進法人制度の活性化に関する議論にも及ぶ可能性があるのではないかと考えます。
地域医療連携推進法人制度は、地域医療連携推進法人がホールディングカンパニーとして傘下の医療機関の機能分担や業務連携の方針を定め、傘下の医療機関における医療資源(病床・医薬品や医療機器・人事等)が有効活用されることを期待するものです。
これにより、地域医療連携推進法人制度は、かかりつけ医病院の集合体としてグループ全体で大病院と同じような機能を発揮し、地域包括ケアシステム構築の一端を担う可能性があります。
地域医療構想や地域医療連携推進法人制度は、行政主導という面は否めませんが、医療の将来構想に民間の医療機関も自主的・具体的に関与する可能性があるという点は面白いと思います。
医院経営においても、医院の将来を占う意味で、診療報酬改定や医療・介護の今後の方向性には興味深いものがあると思います。
弊所でも、医院の将来ビジョンのご相談に対応できるように頑張って参りますので、よろしくお願いいたします。
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監査部 波多江 誠一