徒然なるまま”僕の趣味と遊ぶ”

タイガース、水彩画、鉄道などの、僕の気ままな”独り言”

鉄道は正確が当たり前!!!その16-

2005年11月30日 15時07分34秒 | 鉄道は正確が当たり前!!

列車のダイヤには、1~3%の余裕時分があります。.

それにしても1~3%の余裕で一体何が出来るのでしょうか?と疑問に思いますが、事実その通りなのですが、システムに設けられた余裕時分は、それ単独で機能するだけではありません。
一端遅れるとなかなか回復しない鉄道となっても不思議ではありませんが、日本の鉄道の場合には、その解決には2つの理由があります。

一つは、余裕というものは、技術が発達すれば大きくなるということです。
つまり、日本の鉄道は、緻密なシュミレーションをして、その通りの仕事をすると言う技術を持っていることです。
日本の鉄道は、技術を磨くことによって、余裕を大きくするという選択です。ブレーキ一つの掛け方で余裕が生まれるのです。

もう一つは、鉄道システムの余裕というものは、相撲の徳俵のようなものと考えられることです。 この徳俵を巧く使うによって様々な技を生みだし、鉄道システムを安定的な経路に乗せるための手法が考えられています。
余裕時分単独では吸収出来ない大きなダイヤを狂わす要因が生じた時に、既存のダイヤを捨て、代役ダイヤを組むようになされています。

つまり、代役ダイヤが立てられ易いように、ダイヤの可変性を持たせることによって乱れたダイヤは回復しやすくなるということです。

この基本的な発想は、トラブルがあった時、列車がなるべく駅間には、止まらないようなダイヤの組み方をすることです。


鉄道は正確が当たり前!!!-その15-

2005年11月27日 16時11分32秒 | 鉄道は正確が当たり前!!

  
列車が時刻表通りに発着するということは、列車が計画通りに発着するということです。
そしてその計画通りの発着をするためには、計画そのものが合理的でなくてはなりません。

    
  大阪駅ホームにて               新幹線・品川駅ホームにて

合理的な計画は、列車が走る前に緻密なシュミレーションを土台に作られています。
しかし、いかなるシュミレーションも一定の技術水準と費用の制約があります。
鉄道が走る前には、どうしても不測の事態が発生します。

鉄道企業はこうした事前に特定出来ない事態に対しては、実際に事態が起こり特定化してから対応せざるを得ません。

これらの不確かな事態の影響を最小限に留めるための方策をあらかじめダイヤの中に取り組み、回復力を設計しているのです。


阪神電車のダイヤグラムの一部

その中で重要なのが、ダイヤ上の時間的余裕、「余裕時分」というものです。
駅間の時分、即ち「基準運転時分」を正確にはじき出していますが、日本の運転手の技術を持ってすれば問題はありません。 
しかし、不測の事態がどのような形で起こるか分からない状態では、駅間の「基準時分」に約1~3%の余裕時間を付けられています。これが「余裕時分」で、1律ではありませんが、肝心なところに重点的に余裕時分を配分され、これはダイヤの勘どころを捉える作業で、「スジ屋」という経験豊富な人が、様々な事態を想定して作るのだそうです。

いったん不測の事態が起こると影響が甚大な場合については、システムの回復力を詳しく読み、既存の設備の下でどのような運転整理をして、現場の鉄道員はどのように行動し、乗客の不満を抑えるか何分で回復出来るか過去の遅延データーを参考にして、ダイヤ回復の道筋を読んでいきます。

 


鉄道は正確が当たり前!!!-その14-

2005年11月22日 10時14分13秒 | 鉄道は正確が当たり前!!

日本の鉄道が正確なのは、その歴史的背景やシステムの完璧さへのこだわり等を述べてきました。

ここに大事なのは、乗客のニーズを如何に具象化するのかが大切です。航空機が発達している現在、鉄道の使命とも言えることではないでしょうか?

ここでその努力の一端をお話します。
平成3年6月、今まで上野発着であった東北・上越新幹線は、東京駅発着となりました。素人目には、単なる始発駅が上野駅から東京駅に変わっただけのことですが、その実現には、大変な努力が必要でした。

 東京駅の東北・上越新幹線の車止め。
                   終点でもあり、始発駅でもあります。

問題は、東京駅のたった一つのホーム、即ち2本の発着線で、1日に217本の列車を発着させなければならないことでした。 この「1つのホームで217本」は、世界水準は勿論、日本国内の水準から見ても、すごい数字なのです。

これも当時のアンケートでは、乗客の97%が東京駅の発着を希望していたことから、このニーズに応えるべき経営陣の強い意志のもと計画されたものです。

当時は「これは無茶苦茶だ」「不可能だ」の声が挙がっていましたが、出来るという推進派が反対派を説得したのは、緻密なシュミレーションでした。

つまり、列車の折り返しの時間を短縮することがポイントとなりました。
それまで20分で折り返していた新幹線を12分とすることでした。
それには、車内清掃時間の短縮をはかるため清掃作業そのものの洗い直しを徹底的に研究されました。

 
  東北新幹線の東京駅ホーム       東北新幹線の0地点ポスト
                          20番、21番ホームにあります。

もう一つの問題は、ホームの収容人員能力で、この短縮された折り返し時間では、ホームに人が溢れます。ましてや盆・暮れの帰省ラッシュで自由席券を手に発車の1時間半も前からホームに並び始めます。

東京駅の新幹線発着表示板
東海道・山陽新幹線は、14番~19番ホーム 東北・山形・秋田・上越長野新幹線は、20番~23番ホーム。

そこで考えられたのが、自由席の停車位置を列車毎に変えるということでした。
つまり、乗客の並ぶ自由席車両の位置を列車毎に変えることでたとえ一つのホームでも大勢の乗客が収容出来るのです。
勿論、これを実施するにあたっては、何度も何度もシュミレーションをし人の流れを研究されました。

こうして、不可能を可能にする努力を絶えず行ってきたお陰で今日の鉄道が走っているのです。


鉄道は正確が当たり前!!!-その13-

2005年11月01日 10時47分44秒 | 鉄道は正確が当たり前!!

鉄道が正確に運営するには、巨大システムが正確に稼動しなくてはなりません。

その巨大システムを稼動するには、各部品の信頼性が高くなければなりませんが、それを直列に繋げば一つの部品の信頼性が高かっても多くの部品から成り立っている全体システムの信頼度は落ちます。

         
    直列                        並列

そこで、その部品を並列に並べるとどうでしょうか?
判りやすくするために、今度はあえて、日常感覚からして”頼りない”とされる信頼度が0.6の部品3個を並列につなぎ合わせて見ます。

この場合は、ともかく一つでもうまく働くことが前提条件としますと、システムが巧く働く確率は、全敗しない確率となり、その確率は、1から(信頼度100%)全敗する確率を引いたものとなり、並列システムの信頼度は、
 1-(1-0.6)×(1-0.6)×(1-0.6)=0.936

これは、部品の信頼度0.6に対して並列システムでは、信頼度が上がっていることに注目すべきことです。

4個を並列にすると、システムの信頼度は、0.9744
5個を並列にすると、システムの信頼度は、0.98976

たちまち高い信頼度が得られます。

このように、たとえ”頼りない”部品でも、並列性を持ち込めば、全体として思いのほか良い結果が得られます。これが数字のマジックなのです。

このようにして直列と並列を組み合わせ、要所要所に並列性を取り入れて、全体の信頼度を上げていくことを「冗長設計」といいますが、この冗長設計は、日本の鉄道が「遅れない鉄道」をつくりに当たっても、「遅れてもすぐ回復する鉄道」をつくることに活躍しています。

特に列車車両のように直列に並ぶ部品の数が多いところでは、冗長設計が大きく貢献しています。


優勝のロゴマークのついた阪神電車

 

 


鉄道は正確が当たり前!!-その12-

2005年10月29日 11時01分03秒 | 鉄道は正確が当たり前!!

鉄道が正確に運営されるには、無数の巨大なシステムが動いて成り立っています。

鉄道に限らず、電力供給システム、航空システム、あるいはスペースシャトルのような宇宙開発システム、さらに経済システムに至るまで多くの巨大システムには、共通の課題があります。

システムを構成する部品やプレイヤー(操作者)の数が非常に多いので、システムの安定のためには、「数の闘い」をしなければならないことです。

”のぞみ”の車体

普通に考えると、一個一個の部品が完全であれば全体も良いものであると考えられていますが、気の遠くなるような部品と、無数のプレイヤーが関わる巨大システムでは、必ずしもそうではありません。
つまり、その優秀な部品もつなぎ方一つで全体が頻繁にトラブルを起こすシステムになってしまうのです。

閉塞識別標識1で第1閉塞信号機。
             黄色の△は、信号喚呼位置標識。

完璧な部品×完璧な部品×完璧な部品=完璧な製品?とはならないのです。

鉄道に関して云えば、電車車両も線路も電線も信号機もすべてが機能しなければなりません。 

この部品が非常に優秀で1000個使っても1回しか故障しないものとしましょう。
この部品の信頼性の確率は、0.999となります。

つまり、0.999の信頼度の部品が3個直列に繋がると
  0.999×0.999×0.999=0.9970029 となり優秀な部品を直列に繋ぐと、信頼性確率は、反対に悪くなります。
3個を繋いで、この値ですが、では10個繋げばどうなるのでしょうか?
計算では、0.9900448・・・ 益々信頼度は落ちます。

1000個では、なんと信頼度の計算値は、0.37
10000個では0.0005となり、信頼度は、限りなくゼロに近づきます。

これでは、全く信頼性は崩壊し、トラブルが多発して、列車は走れません。

この問題の解決には、部品の数を減らすこととか、一個の部品の信頼度をもっと挙げることです。がもっと良い特効薬があります。 これは、信頼性管理工学の分野になりますが、これは次回にお話します。

  


鉄道は正確が当たり前!!ーその11-

2005年10月16日 21時04分09秒 | 鉄道は正確が当たり前!!

日本の鉄道は、世界に類を見ない定時運転をしていますが、その要因について、日本人の資質が昔から向いていることを述べてきました。

しかし、資質だけではなく、定時運転を妨げている現実の問題の一つとして乗客の乗り降りが起因していますが、二つ目として自然災害が挙げられます。

 運転指令室

大雨での路盤が緩んだり線路が水に浸かったり河川の増水したりすると列車の運行を止めたり徐行運転をしなくてはなりません。
風速25mを超えると大事をとって、列車はあらかじめ決められた制限速度以下に速度を落とし運転するし、突風で架線が切れば、修復するまで列車は動けません。


雨量計          土砂崩壊探知機

雪国では、除雪が欠かせませんし、大雪ともなれば、雪がポイントを凍結させます。

雪の中の新幹線


地震が起きれば当然列車は止まり、保線員は、歩いて線路を点検します。

トラブルとしては、余り表面化していませんが、気温の変化に対して毎日伸び縮じみする線路をも調整しなくてはなりません。
冬と夏とでは、25mのレールでは、2cm違います。
年毎の災害件数

列車の遅延要因のうち自然災害によるものが約40%を占めていますが、上図の通り毎年減少傾向にあります。 これも平素の災害に対する対策諸策の賜物なのでしょう。


鉄道は、正確が当たり前!!!-その10-

2005年10月04日 11時37分20秒 | 鉄道は正確が当たり前!!

日本の鉄道が正確に運営されて居るのには、江戸時代からの日本人の日常生活にも遠因があり、その運営に尽力した多くの人々がいましたことは、前回で述べました。

しかし、鉄道がダイヤ通りに運営されるのには、現実の問題として、色々な障害があります。 

鉄道のシステムが実験室のような環境であれば、今の運転士の技術を持ってすれば、秒単位で正確に運営されるでしょうが、残念ながら運転を妨げる要因が沢山あり、あらかじめ対策がとれるものもありますが、中には事前には対策が取れないものもあります。

この要因との闘いこそが、我々利用者の目にはあまり触れることのない、鉄道で働く人の仕事でもあります

この要因には、乗客、自然現象、事件、設備装置の故障、ヒューマンエラー等が挙げられます。

今日は、まず乗客がどのように正確な鉄道運営に支障をきたすのかを述べてみます。

実験室の運転と大きく違うのは、乗客の乗り降りにあります

鉄道は「乗客」を乗せて初めて鉄道となり、社会において機能するのであって、列車ダイヤには、「停車時分」が定まれています。

しかし、皮肉なことに、鉄道としては「乗客」が多いことは、鉄道企業にとって有難く重要なことですが、その乗客の乗り降りに要する時間は、状況によって変化することで、時間通りに正確さを妨げる原因となっています。

乗客が理論通りの運行を妨げているのです。

でも、ラシュアワー(例えば毎日160万の人が行き交う新宿駅などの大都市の駅)での状況でも本来なら、乗客が転んだり、階段で将棋倒しなったり、身体が触れ合って喧嘩やパニックになることでしょう。

しかし、ここでは一つの流れがあり、秩序があります

これは、国民性もありますが、それより鉄道員と乗客とが受けてきた長年にわたる訓練の成果なのです。

今日の絵は、ドイツ、ハイデンブルグ、旧町への門です。F10号


鉄道は、正確が当たり前!!!-その9-

2005年09月21日 16時20分23秒 | 鉄道は正確が当たり前!!

いつまでも敬老の日では、困ります。   ”若い岡田虎”が”老いた落合竜”に又負けました。最近の井川、”若さ”がありません。 粋のよいストレートがありません逃げてばかりの投球では、守る野手にも伝染して、打つほうもお留守になっています。   あまり遊んでばかりしないで、ボチボチマジックを減少させましょう。

 

さて、鉄道ですが、日本の鉄道の時刻が正確になったのには、世界の鉄道界に先駆けて汽車より電車に切り替えた事にもあります。

昭和31年、「もはや戦後ではない経済白書に宣言された頃には、日本の鉄道も戦争で大きな痛手を受け、その復旧の一つに電車をいち早く本格化させたことです。

上の写真は、国鉄時代の省線電車”モハ40形”

では、なぜ電車を使うと何が有利なのでしょうか?

一番に動力源が、蒸気機関車では、1台の機関車が多数の車両を牽引しますが、電車は、その動力源が各車両に分散していることです。

つまり、動力源の蒸気から電力への切り替えは、蒸気機関車での石炭を火室に投げ込む重労力と途中駅での給水作業は、定時運行には、かなりの影響が考えられます。

重労働で性能のバラツキが出やすい列車と、ひと通りの訓練さえ受ければ簡単に運転出来る電車との差は、時刻の正確性からいって明らかに違いが分かると思います。

戦後の日本では、世界的に見ても早い時期から電車化の道が選択され、地形や短い駅間、駅設備の貧弱さ、線路構造の弱さが電車王国への道を決定付けました。

とりわけ、大都市での私鉄の発展は、それに拍車をかけ競争をすることで益々電車の改造、スピードに貢献しました。

下記の写真は、1954年に新造された阪神電車の3011形。流線型でクロスシートの特急車です。

 


鉄道は、正確が当たり前!!!-その8-

2005年09月13日 10時38分59秒 | 鉄道は正確が当たり前!!
今までは、日本の鉄道が世界に類をみない正確なのは、鉄道の引かれる前、つまり江戸時代からその環境が整っていたことを述べました。
でも、それだけでは、このように正確に運行する条件では、ありません。

鉄道を飛躍的に正確にした人物が、即ちキーマンがいた事も忘れてはなりません。

明治39年~40年の鉄道国有化に伴って、この時期にそれと思しき人物が現れています。
その人は、結城弘毅で、明治41年、国有化の下で長野機関庫主任となり、当時鉄道省詰めの新聞記者として活躍した青木槐三が「鉄道を育てたひとびと」の中で結城氏を「鉄道の神様」と述べています。

当時は、列車も相当遅れており、それが当然視されていました。
正確さを期すべく機関手と一緒に研究し、機関手もこの青年技師の理想にもろ手を挙げて賛同し、この運動を日本中に広げようと誓いました。

それは、沿線の風物のうち、夜でも目印になる物体を選び、そこを通る時、時計とにらめっこして目印を通過する時刻とあわせ、正確さを期し、石炭のくべ方、炊き方、蒸気の上げ方を研究しました。

その甲斐あって正確運転が実現し、全国の機関庫も同調して、正確運転をすることに成功しました。

結城氏の創意は、これだけでなく、お召し列車の運行にも利用され、昭和4年に日本中の列車の運行の改革をまかされ、本省の運転課長となり、昭和5年には、超特急「つばめ」をつくりました。
当時としては、画期的なもので東京~神戸間を2時間40分短縮し「国鉄運転技術の一つの山」とも言うべきものでした。
その後、満鉄の運転課長の時には、スピード列車「あじあ」号を実現させました。



勿論、結城氏一人の力だけではありませんが、鉄道を正確に運行させる契機になったことは間違いありません。

鉄道は正確が当たり前!!ーその8-

2005年09月07日 12時10分30秒 | 鉄道は正確が当たり前!!
日本の鉄道が世界でも類を見ない正確さを誇れるのは、鉄道が出来る前から、その環境が江戸時代からあり、その内容として、
時鐘システムが庶民の間でも日常的に使われていたこと。
大規模移動のプロジェクト(参勤交代)を管理・運営する能力があったこと。
、あらゆる階級の人が、旅を楽しみ、旅の重要性や危険度を熟知していたこと。

そして、その4つ目は、日本の都市は、人が歩ける間隔で鈴なりに発達したことです。 そのため日本の鉄道の駅間は縮まり、これが日本の鉄道を正確にするそもそもの発端であるように思われます。

例えば、東海道では、江戸の次は、尾張ではなく、品川であり、途中には、中小各種の都市(宿場町)があり、それが鈴なりに続いてありました。

列車は、途中で乗客を乗せるため何度も停車し、安全確保にも、何度も発車時刻を合わせる必要がありました。

同じ距離を走りながらも、途中で一度しか発車時刻を合わせる必要のない鉄道と、何度も停車し、発車時刻を合わせなくてはならない鉄道とでは、どちらがきめ細かい運営管理を行うようになるかというと、後者の方であろうと思います。

日本の都市が鈴なりに発達した起源をたどると、それは奈良・平安時代の駅(えき)馬、伝馬の制度あたりまで遡らなくてはなりません。

日本の歴史のどこかに馬車の時代があり、もっと都市間が長くなっていたら、短い駅間で、短距離の輸送需要にこたえる必要もなく、この起伏にとんだこの地形でも、それほど細かい運行計画は求められなかったかもしれません。

今日の絵は、バラです。F8号