大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 2月19日 カード

2016-02-19 18:52:13 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月19日 カード



 去年の暮れのことだ。
池袋のとあるレストランで、会社の忘年会があった。
二次会は部署内で、三次会は仲間内での飲み会になった。
 家路につこうとする頃には終電も過ぎ、タクシーを使うことにした。
タクシー乗り場は例年のように長蛇の列。
私は連れと三人だったが、一人だけ帰路が違った。
彼らは乗合で乗車し、先に帰っていった。
 一時間も待ち、なかなかタクシーが来ない。
私は痺れを切らして、目白の方へ一人歩き出した。
線路に沿って歩いていたつもりが、細い路地に入り込んでしまった。
 塀に沿って進むうち、その向こうは墓所であることが分かった。
ちょっと気味悪いなと感じながら足早に歩くと、突然私の脇を子供が通り過ぎた。
黄色いパジャマを着ていた。
 この寒空に、などと感じる暇はなかった。
その子供は、塀の中に吸い込まれるよう消えたのだ。
私は声こそ出さなかったが、恐怖のあまり駆け出していた。
 ようやく広い通りに出て、運良くタクシーを拾うことができた。
運転手にちょっと話を振ると、年末は忙しくて幽霊なんか見る暇も無いとのこと。
私も笑い話につられて、さっきは目の錯覚だったかもと思い始めた。
 家に着く頃には、半信半疑、まあそんなこともあるか、くらいの余裕だった。
そしてタクシーから降りることになって、運転手から声をかけられた。

「 お客さん、忘れ物・・・。」

 振り返ると、ポケモンか何かのカードだった。
私が座っていた場所にあった。

「 違う、これは私のものじゃない。」

と言うと、運転手が不思議そうに言った。
お客さんを乗せる前には何も無かったと。











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