日々の恐怖 2月10日 幻影(3)
すると、2人はそれぞれ名前を言いましたが、やたらと長くて難しい名前でした。
「 立派な名前ですね。」
と言うと、二人は笑って返しました。
そして、
「 私達は皆、こんな名前だから。」
と言いました。
やがて、夜も明けてきました。
すると、
「 そろそろ山を下りなさい。
さっきも言ったけれど、ここを真っ直ぐ下りなさい。
途中で細い道があるけれど、それを行ってはいけない。
その道を越えて、更に下へと下りなさい。」
Kさんは、
「 その細い道は何の道なんですか?」
と質問しました。
でも二人からは、
「 知っても、しょうがない事だから・・・。」
と返されるだけでした。
2人に別れを言い、Kさんは山を下り始めました。
下りる途中、後ろを振り返りましたが、既に灯かりは消えて人の気配も消えていたそうです。
女性に言われた通り山を下ったKさんですが、さっき言われたような細い道が見えてきたそうです。
“ ここを下った方が、早く山から出られそうなんだけどなぁ・・・。”
そんな考えが頭を過ぎります。
“ 行っては駄目だと言われたけど、見た目は全然普通の道だし、この道を下ってしまおう!”
そう思って踏み出そうとした時です。
道の奥から、人が1人歩いて来るのが見えました。
“ なんだ、俺以外にも人が居るじゃないか。
やっぱりさっきの2人は狐か狸だ。
この道を無視して更に下ったら、滝壺なんかがあるに違いない。
危ない危ない、騙されるところだった。”
そう思いながら、道を歩いて来る人に声を掛けようとしたKさん。
が、相手の姿を見て絶句してしまいました。
見た目は確かに人でした。
そして、昔の貴族の従者が着てるような狩衣を着ています。
しかし、Kさんが驚いたのは、その人の服装ではありません。
その狩衣を着た人物、袖から出ている手足に、皮膚も無ければ肉も無い。
要するに、白い骨が剥き出しになっていました。
また顔には、目の部分だけに穴を開けた木の面を被っています。
その下も白骨であろう事は、当然予想できました。
そいつがフラフラと道を歩いて来る。
“ 何故白骨が歩けるんだ。
これこそ、おかしいじゃないか・・・。”
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