大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 2月17日 松の木

2016-02-17 20:08:13 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月17日 松の木



 一番下の娘も小学校の高学年になったし、今年の夏は久しぶりにキャンプに行こうと近場のキャンプ場をリサーチしていた。
 車で一時間ほどかかるが、気に入って毎年行く遠浅の海水浴場がある。
その海水浴場の近くにもキャンプ場があることを思い出した。
 海水浴場からは同じ海岸沿いだが、1kmほど離れている。
20年ほど前、そのキャンプ場が出来て間がない頃に、一度キャンプしたこともあった。
 今はどうなっているだろうかと、趣味の仲間でその近くに住んでいる知人にそのキャンプ場のことを聞いてみた。
 すると彼は、

「 あのキャンプ場はやめたほうがいい。」

という。
何でも、自殺者が相次いでいるというのだ。

「 自殺者?」
「 ああ、砂浜には松の木がつきものだろう?
その松の木で首を吊るんだよ。」

 彼は鈍感なのだが、奥さんは感覚が鋭いそうで、キャンプ場辺りは空気が淀んでかなりやばい雰囲気なのだという。
 それから近所の青年の話をしてくれた。
彼もそこで首を吊ったのだが、彼は時々空中を漂っているという。

「 嫁さんが言うにはね。
ちょうど二階の高さくらいの所を漂っているらしいんだ。」
「 二階・・?
家のですか・・・??」

 彼はちょうど二階の窓の辺りに顔が来るから、漂いながら近所の家の中を覗いているらしい。

「 これは嫁さんの意見なんだけど、あの高さはちょうど首を吊った位置なんじゃないかな。
首を吊って死んだものの、その高さから降りられないんじゃないかって・・。」

そして、あまりにも自殺者が続いたので、自殺者が首を吊った松の木は切り倒してしまったそうだ。


 その後、夏の初めに遠浅の海水浴場に家族ででかけた。
天候が崩れてきて、雨もポツポツし始めたので、海水浴は切り上げて、件のキャンプ場を覗いてみることにした。
 車に乗ったままキャンプ場に入って行くと、右手に浜辺、左手に駐車場やテントサイト、調理場などが並んでいる。
その道は車でも入って行けたので、徐行しながら切り倒された松の木を探してみた。
 自殺者の噂は知らないのか、キャンプだけでなく潮干狩りに来たらしい家族連れもいて、そこそこひと気がある。
俺たち家族はみんな鈍感だし、知人が話してくれたことを知らなければ、そんな不気味な場所とは気付かなかっただろう。
 ゆっくりと走る車から探していると切り倒された松の木があった。
普通木を切り倒す場合、根本から切ると思うのだが、異様なことにその木は1mくらいのところで切られている。
それなりに年月を経てきたであろう太さの松の木がだ。

「 あれかな?」

と言いながら、車を進めていくとまた同じように途中で切られた松の木があった。

「 あっちにも同じような木がある。」

それは200mほどの間に点々と続いた。
 どの木も風雨に晒されたためだろう1mくらいまでの高さでも微妙にくねっている。
それぞれ少しずつ違う方向にくねった1mの寸胴の松の木が並んでいるのは、かなり気持ちが悪かった。
 車から降りるのはためらわれたので、そのまま家路についた。
車の中で、

「 たくさんありすぎて、どれが首吊りの木かわからなかったね。」

と話していた。


 後日、このキャンプ場の話をしてくれた知人に会った時、キャンプ場を家族で見に行った話をした。

「 いやあ、切り倒された松の木はたくさんあって、どれが首吊りの木かわかりませんでしたよ。」
「 ああ、そうかァ・・・。」

彼はちょっと申し訳無さそうに苦笑いすると言った。

「 途中で幹を切られていた木はすべて、人が首吊りをした松なんですよ。」












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