日々の恐怖 2月25日 電話に出た女(2)
次の日、私は早朝に目を覚まし、倉庫側のドアから倉庫に入り、一人で積み込み作業をしていました。
すると、事務所の入り口の辺りに人が集まっているのが見えました。
作業の手を止めて行ってみると、昨日物音がしていたドアに引っ掻いたような傷が残っています。
「 空き巣狙いなんじゃないのか?」
私の話を聞いた部長がそう言って、一応警察に連絡することになりました。
夕方、配送を終えて事務所へ戻ると、私の顔を見た部長が「警察へ行ってくれ」と言い出しました。
「 今日、近所で倉庫荒らしが捕まったらしいんだが、その関連で昨日の話が聞きたいそうだ。」
私は部長の車で警察に行くことになりました。
警察署では、簡単な事情聴取を受け、捕まった倉庫荒らしの話を聞きました。
警察によると、犯人は中国人の窃盗団だということでした。
彼らは、狙いを付けた倉庫会社に電話を入れて不在確認をし、そのうえで、電話が鳴りっぱなしであれば、多少の物音を立てても気にすることなく、工具でドアをこじ開けて中に侵入し、金品を奪ってトンズラする、という手口で倉庫を荒らしていたそうです。
「 万が一の時に備えて、奴ら拳銃も持っていたんです。」
取り調べの警官がそう言うのを聞いて、あの日侵入してきた窃盗団に見つかっていたら、と思うとゾッとしました。
続けて、警官が気になることを聞いてきました。
「 昨夜、あなたは電話には出なかったとおっしゃいましたが、本当ですか?」
私が、
「 はい。」
と答えると、警官はしばらく考え込むような素振りを見せてから、こう語り始めました。
「 あいつら、あなたの会社へかけた電話に誰かが出たと、そう言ってるんですよ。
だから、ドアをこじ開けるのを止めて、様子を伺っていたらしいんですが・・・。
その時、そこで何があったのか、誰も話そうとしないんです。」
警官はちょっと困ったような顔で言いました。
「 捕まった時にはあいつら、あなたの会社の近くに止めた車の中で、ブルブル震えていたんですよ。
大の男が4人揃って。
どう考えてもおかしいでしょう。」
「 男が4人・・・、ですか?」
「 ええ、一網打尽って訳でして。
それについては、私らもホッとしておるんですがね・・・。」
それで、私は昨日の事を思い出しました。
電話が切れた後、ドアの外にいたのは凶器を持った中国人の男達だった。
するとあの時、声がふっつりと止む直前に聞こえた女の声。
あれは誰の声だったんでしょうかね?
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