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日々の恐怖 2月12日 兄の話

2016-02-12 19:45:34 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月12日 兄の話



 東京在住のSさんの兄の話です。
私の兄は神奈川県の某老人病院で看護士をしている。
その病院では、夜中に誰も乗ってないエレベーターが突然動き出したりなど、いかにも病院らしい話がよくあるとのことだった。
その兄が、今迄で一番怖かったという話です。
 その日、兄は夜勤で、たまたま一人でナースステーションで書類を書いていた時、ふと視界のすみの廊下で、人影がふらふらしているのが目に入った。
その時兄は、入院している患者が夜中に便所にでもいくのだろう程度に思っていたらしい。
 だが何時迄たっても、視界のすみでその人影は廊下をふらふらとしている。
ちらりと目をやると、どうやら髪の長い、浴衣を着た若い女のようだ。
きっと昼間寝てしまい眠れなくなってしまったのだろうと、書類にまた目をもどしたその瞬間、

“ そんなわけないッ!!”

と、咄嗟に頭の中で考えた。
 この病院は老人専門の病院だ。
若い女なんかが入院してるわけがない。
 同じ夜勤の看護婦ならナース服を着てるから一目でわかる。
危篤の患者の家族だとしたら、自分のところにも連絡がきてるはずだ。
第一今晩、危篤の患者など、いやしない。

“ では一体!?”

と顔をあげたその目の前、鼻先がくっ付かんばかりに女の顔があった。
 長い髪、血の気のない無表情な顔、何も映っていない瞳。
その瞳と目が合った瞬間、兄は踵を返し、後ろを振り返る事なく一目散に下の階のナースステーションに駆け込んだ。
 怯え慌てふためいてる兄の様子を見て、その階の看護婦はまだ何も言って無いのに一言。

「 そのうち慣れるわよ。」

そのとき兄は、女の方がよっぽど肝がすわってると思ったそうだ。
ちなみに病院と女の因果関係は、結局判らずじまいだそうだ。










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