日々の恐怖 2月15日 お誘い
高校時代、先輩と8ミリ映画をよく作っていた。
俺以外はみんな1年先輩の仲間だったが、映画のこと以外でもよく一緒に遊んでいた。
みんなで撮影したフィルムが現像からあがってきて、M先輩の家でアフレコをすることになった。
M先輩の部屋は二部屋ぶち抜きになっていて広く、フィルムを映写しやすいのと、人がたくさん入れるからだ。
しかし、その先輩の家はユーレイが出るということが常々話の種になっていた。
ウワサではなく、住んでいる本人からもいつも聞かされていたのである。
「 階段の上をふっと見るとさ、人が通るんだよ。
廊下なんてないのにさ。」
「 この部屋泊まるだろ?
ザコ寝してるとさ、誰かが邪魔なんだよ。
まったくよ~、と思って起きると、近くに寝てるヤツなんていないの。」
そんな話ばっかりなのである。
その部屋に映写機などの機材をセッティングし、すべてが整って、さあ始めようという時、映写機が動かない。
ウンともスンとも言わない。
「 おっかしいなあ、持ってくる前は大丈夫だったのに・・・。」
どうにかしようと色々試したが、一向に動く気配がない。
原因不明である。
あとで診てもらうことにし、その日の作業は中止になってしまった。
それから持ち主の先輩が家に持ち帰ると、何事もなかったように動いたのだった。
「 やっぱり・・。
ユーレイに邪魔されたんじゃないか?」
そう言ってかたづけるしかなかった。
そのM先輩がとうとう引っ越す事になった。
「 なんで?やっぱりユーレイがいやで?」
「 そう!
もうだめだっていう事があった。
俺の部屋はね、人が入って来るの。
3人。
女の人。
寝てるとさ、一人づつ部屋に入ってきて、俺の耳元で何かボソボソ言ってから、こたつの方に行って座る。
3人がみんなボソボソ何か言うんだよ。
そしてみんなコタツのところに座るの。
いっつもだからさあ、半分慣れたっていうか、そんな感じだったんだけど、あるとき、何言ってるかはっきり聞こえたんだ。
『 Mさん・・・どこか連れてって・・・。』
ってよう、そう言ったんだよ。
もうダメさあ!」
その後、その家はどうなったかは知らないが、自分の名前言われると、そりゃ怖い気がする。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ