日々の恐怖 2月6日 田舎暮らし
東京在住の主婦Mさんの大叔母の話です。
Mさんの大叔母がまだ若い頃、田舎にありがちな大家族だった我が家は、敷地内に母屋のほかに別棟が隣接して立ててあり、その1階を納屋、2階を子供たちの寝室にしてありました。
お手洗いは外にひとつだけでした。
街灯もろくにない時代でしたから、夜は本当に怖かったそうです。
そんなある日、夜中に大叔母は、小さい方の妹にそっと起こされました。
「 お手洗いに行きたいけど、怖いから窓から見ていて欲しい。」
と言われ、大叔母は窓を開けて、妹が外のお手洗いに行くのを見ていました。
何度も何度も確かめるように振り返る妹に、大叔母は2階から手を振って見ていることを伝えました。
妹がお手洗いに入って、暫く大叔母はぼんやりと窓の外を眺めていました。
満天の星空がきれいで、たまにフクロウの声が聞こえたりします。
そのとき、突然遠くでギャーンという声が聞こえました。
狐の鳴き声です。
狐というのは、猫を叩きつけた時にあげる悲鳴のような声で鳴きます。
田舎なので、いまだに狐もイノシシもいますが、やはり夜中に聞くと恐ろしいものがあります。
大叔母もはやく妹が帰ってこないかとそわそわしながら、ふと山のほうに目を向けました。
すると、よく晴れていたにもかかわらず、空はただ闇が広がるばかりです。
そしてその中にふうっと浮かび上がった空より黒い山のシルエットの中に、ぽつりと青い火が灯りました。
驚く大叔母の目の前で、その火は、
“ ポツ、ポツ、ポツ・・・。”
と増えていきます。
気が付くと、山はいくつもの青い狐火に覆われていたそうです。
大叔母は、そのあまりの美しさに見入っていました。.
しかし、妹への対応を忘れていた大叔母は、階段を駆け上ってきた妹の形相が恐ろしかったようで、バツが悪くなり布団をかぶって眠りにつきました。
そのとき、狐火は別に実害はなかったそうです。
でもその話を聞いてからは、幼い私は本当に怖くて、納屋の二階にあがることができませんでした。
このとき大叔母の見ていた山は、斜面に階段状にお墓のある小さな山なんですが、お墓の前に田んぼがあって、一人であぜ道の雑草を刈っていた母が、
「 誰もいないお墓から、仏壇にある鐘を鳴らすチーンという音を聞いた。」
と、青い顔をして帰ってきたことがありました。
そこは、周囲を見渡せるところだし、お墓しかないから、そんな音が聞こえるはずがないところです。
私、そこ通学路だったのに、こわ・・・・。
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