日々の恐怖 2月24日 電話に出た女(1)
会社員Oさんから伺った話です。
3年ほど前のことです。
当時、私は倉庫会社の配送担当をしていました。
その日は仕事が終わってから仲間と一緒に飲みに行き、その後2軒3軒と飲み歩くうちに、気が付くと終電は無くなっていました。
翌日は早朝から積み込みと配送があったので、私は会社に泊まることにしました。
倉庫の横にある事務所の2階に休憩室があり、早番や遅番のドライバーは、そこで仮眠を取ることが良くありました。
ただ、深夜には出るという噂があって、そこで夜を明かす人はほとんどいませんでした。
その噂のことは知っていたのですが、生まれてこの方、怪異などとは縁がなく、まるっきり心霊音痴だった私は、かなり酔っていたせいもあって、あまり深く考えることもなく、休憩室の畳の上で横になるとすぐに眠ってしまいました。
どれぐらい眠っていたのか、私は電話の音で目が覚めました。
“ ピリリリリッ、ピリリリリッ!”
事務所の電話が鳴っています。
“ こんな夜中に誰だろう?”
そう思いながらも、起きるのが面倒臭かったので放っておきました。
しかし、電話は執拗に鳴り続けました。
“ ピリリリリッ、ピリリリリッ!”
ボリュームが最大に設定してあるせいか、物凄くうるさい。
いい加減うんざりして、身を起こそうとした時、
“ ドンドンドンッ!”
1階にある事務所の入り口のドアが叩かれる音がしました。
不審に思って、動作を止め耳を澄ますと、今度はドアを引っ掻くような音がします。
“ ガリ・・ガリ・ガリ・・・ガリ・・・。”
何だか怖くなって、私は畳の上に半身を起こしたまま息を潜めていました。
“ ピリ・・・・・。”
と、不意に鳴り続けていた電話の呼び出し音が止みました。
同時に、ドアの物音もしなくなりました。
すると今度は、ぼそぼそと人の声がします。
ドアの外で誰かが喋っているようですが、話の内容はわかりません。
何が起きているのか全くわかりませんでしたが、ひどく嫌な予感がしたので、私は耳だけに神経を集中して、物音を立てないようにジッとしていました。
話し声は断続的に、ぼそり、ぼそり、と聞こえてきます。
複数の男の声のように思えました。
やがて、女の声が加わるとすぐに声は止み、周囲には静けさが戻ってきました。
何が何だか良くわからないまま、しばらくは様子を伺っていましたが、そのうち張りつめていた気が緩んだのか、いつしか私は眠ってしまいました。
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