日々の恐怖 3月2日 居心地の良い家(1)
私が短大生だったときのことです。
当時よくKとSという友達とつるんでいたのですが、1年の後期頃から、Sのほうがたびたび学校を休むようになりました。
Sは私たちに、
「 体調が優れないから・・・。」
と言っていたのですが、あまりにも頻繁に学校を休み、旅行や飲み会などもドタキャンされることが多くなってきたので、
「 体調が優れないっていうけど、本当にそれが理由なの?」
と問いただしました。
出席してきたときにはいたって健康そうに見え、倒れたりすることもなく、とても体が弱いようには見えなかったからです。
そして、しぶしぶSはうつ病であり分裂ぎみでもあることを告白しました。
いつも明るく気さくな性格で結構美人なSだったので、Kも私もとても驚きました。
一度告白してしまってからは気が楽になったのか、睡眠薬の飲み過ぎで病院に入院してしまったときは、見舞いにきてほしいと言われたりするようになりました。
Sは、おそらく自分の病気の原因は両親にあると言っていました。
Sの母親はけっこう重い分裂症で、遺伝したのではということです。
それが原因なのか、Sの父親はSが学校を休み始めたころ愛人と行方不明になってしまい、精神的にSは耐えられなかったらしいです。
2年のある日、一週間くらい学校を休んでいたSから、家に来てほしいと連絡がありました。
聞けば、母親が自殺未遂をおこし何日も入院しているので、気が滅入っているし遊びにこないか、と言う事でした。
事情が事情なので、Kと私はちょっと引きましたが断るわけにもいかず、次の日Sの家に行くことになりました。
初めてだったので駅からの行き方を聞いて、近所のコンビニで待ち合わせ三人でSの家に向かいました。
Sの家は一軒家で、建売ではない昔からの家が並んでいる一角にありました。
が、玄関の向きが並んでいるほかの家と違って、少し違和感があったように思いました。
具体的に説明はできないけれど、なんだか変わっていて、少し離れたところからも、おそらくSの家はあそこに違いないと私には変な確信がありました。
ドアを開けて入った瞬間の感想は、
“ うわ~、空気が重くてなんか気持ち悪い!!”
でした。
家の中全体が薄暗くじめじめした感じがして、
“ できれば早めに退散したいな・・・。”
と本気で思いました。
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