日々の恐怖 3月17日 商業科棟の鏡(1)
出身高校の商業科棟のトイレにはすべて鏡がありません。
正確にいうと、鏡を取り付けていた跡は残っています。
もちろんその他の『普通科棟』『普通科棟Ⅱ』『普通科棟Ⅲ』『体育館』『図書館棟』には通常通り鏡はあります。
鏡が外された訳は在学中の兄から聞きました。
その時は普通科の特進クラスに通っている兄からの話のため正確な情報は聞けませんでしたが、噂によると、卒業を前にした商業科男子生徒が、学校の風景を心に残すため校内を回っているうちに、商業科棟の屋上から転落死したそうです。
それ以来、商業科棟の鏡に映し出されるようになったためだそうです。
その後、俺は商業科へ進学し、トイレを3年間使うはめになり、入学式後、同校出身の女子にトイレに鏡があるか聞くと無いとのこと。
坊主だった我々には鏡などは無用の長物だったのですが、女子トイレにも無いとはホントに出るとしかいえませんでした。
しかし意外と早く真相を聞くこととなります。
他校出身の友人が別の話を教えてくれました。
その友人には10歳以上年の離れた兄がいて、70年代後半に盛んだった校内暴力時代の学校の卒業生だそうです。
その時代は器物を破壊することやガラスを割るのは当たり前で、一番破壊の激しかった商業科棟は何度入れ替えても鏡を割られるので、最後には鏡を商業科棟には設置されなくなったそうです。
「 結局、学校の怖い話とは、勝手に話に尾ひれがついて別のものになっていくものだよ。」
と話を締めくくったてくれました。
昭和から平成にうつり、校内暴力など化石と同じ平成元年入学生の私から見たら、
いまだに鏡をはめないのもおかしいと疑問に思ったのですが、坊主頭に鏡は必要ありません。
それで納得してしまいまい、2年生になるまではその話が真実だと信じていました、実際鏡を手に取るまでは。
2年生になり、何度目かの掃除区画が割り当てられました。理科準備室です。
何日か過ぎたあと、放課後私のクラスの新人の理科担当から呼び出しをうけました。
机を新調したので模様替えを手伝ってほしいとの依頼で、売店のパンとコーヒーで手伝うと手をうったのですが、割の合わない仕事でした。
机の中身やロッカーの中身を別室に移し、そのあとまた入れなおす単調な仕事が続きました。
そのとき、上段が本棚、下段がロッカーの二段に分かれたロッカーの、上に積んであったものの中からから、古い鏡が8枚出てきました。
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