日々の恐怖 3月3日 居心地の良い家(2)
おそらく掃除もあまりしていないだろうし、家庭の事情も聞いていたので、そんな風に思ってしまったのだろうとそのときは思いました。
ところが、居間に通されてお酒を飲みながら話をしているうちに、なんだかとても居心地が良くなってしまったのです。
Kとどちらともなく、
「 もう遅いし、泊まっていくことにしようか・・・。」
ということになりました。
次の日になりましたが、私たちはグズグズとSの家にいました。
昼ご飯を食べ、夕方になってもまだ帰る気にならず、私は思わず、
「 もう一泊しちゃおうか?」
とKに切り出しましたが、Kは、
「 私も泊まりたいけど、このあとどうしても休めないバイトがあるから帰らないといけない。」
とのことでした。
二人ともすごく名残惜しかったのですが、また近々来ることを約束してSの家を後にしました。
そのときは、
“ 本当にまたすぐ来たい!”
と思っていました。
その帰り道のことです。
私はKに聞きました。
「 ねえ、Sの家なんか雰囲気悪かったよね?」
「 うん、暗かったし、なんか変な感じがした。」
「 あのさ、とくに階段のところ気持ち悪くなかった?」
「 実は私も上がった瞬間思った。」
「 せ~のっ、で、何思ったか言ってみない?」
そして二人同時に言ったのは、
「 せ~のっ・・、女がいたよね?!」
その瞬間、本当にぞ~っとしました。
Sの家にいる間中、頭にフィルターがかかっていたようでした。
あれほど気持ちが悪く帰りたかったのに、家に入ってしまえば、今度はいつまでもそこにいたいような気分になっていたことも、怖くなりました。
Kも私も何かを見てしまったわけではありません。
ただそんな感じがしたというだけですが、SやSの家族が大変なことになっているのも、あの時感じた何かが原因のような気がしてなりません。
その後、Sは学校にまったくこなくなり、今では音信不通になってしまいました。
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