大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 3月23日 ←ココ(2)

2016-03-23 19:33:12 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 3月23日 ←ココ(2)



 俺は怒られるのが怖くてヤダといったんだけど、K君が、

「 ここ、見ろ!」

と言うので見たら、剥がれ落ちた中の壁から色の違う部分が見えている。
 灰色の壁に、黒い太い線で横断歩道のような模様が描かれてるのが、はがれ落ちた部分から確認できた。
 K君が、

「 これの続き見たいだろ?」

と言う。
 K君はカッターを持って崩れた壁の部分をカリカリやり始めた。
面白いように塗装が剥がれていく。
 すると、壁の中から組という文字が現れた。
さっき横断歩道のように見えた模様は、組の右側だったわけだ。
 もうこの後ろに何かあることは間違いない。
クラスの男子の半分近くが一緒になって壁の塗装を崩し始めた。
コンパスの針でつついたり、定規の角で削る者、彫刻刀を持ち出す奴までいた。
ちなみに俺は崩すのをまわりから見ていた。
 大抵こういう場合、壁のうしろに死体が埋まってただの、文字がびっしり書かれてただの、お札がいっぱい貼ってあっただのがよくあるパターンで、俺も当時すでに怖い話としてそういった話をいくつか知っていた。

“ この壁の向こうにあるものも、まさにそういうものなのか?”

そのドキドキと、先生に見つかったらどうするんだと言うドキドキで、心臓がきりきり締め上げられるような気がした。
 昼休みが半分たたないうちに、壁の塗装はあっという間に崩れた。
中から出てきたのは、お化けでもなんでもない、子供たちが描いた絵だ。
 平成2年 6年2組と書かれてる。
当時の卒業生が描いたものなんだろう。
 30人くらいの男子女子の似顔絵が集合写真のように並んで描かれている。
ただし、異様なのがその顔一つ一つ全てが赤いペンキで×と塗られていたこと。
特に、上の段の右から3番目の子は×どころか完全に赤く塗りつぶされ、その下に書いてあったはずの名前も彫刻刀かなんかで削り取られていた。
 俺たちは先生に怒られるだろうと覚悟を決めていたが、5時間目に先生が来ると、いきなり、

「 よし、5時間目は体育館で自習だ。
ランドセルに教科書とか全部入れて、5時間目が終わったらそのまま家に帰っていいぞ。
掃除もしなくていい。
教室に戻らずに、そのまま帰れ。」

と、全く怒られなかった。
 そして次の日、学校に行くと1階の教室が全て立ち入り禁止になっていた。
俺たちは急遽建てられたプレハブで6年の残りの学校生活を送るハメになった。
 この間13年ぶりに小学校の同窓会があって、当然のごとくその事件が話題に上がった。
当時の担任も来ていたので、

「 先生、あの事覚えてますよね?
あれはなんだったんですか?」

ときいてみたが、

「 いや、そんな事あったか?
覚えてないなあ・・。」

とか超すっとぼけてた。
だが、俺たちは全員、あの事件を覚えている。









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