日々の恐怖 3月16日 操車場跡
埼玉の三郷に操車場跡というところがあります。
地図にも載ってます。
心霊スポットとしては途中のお化けトンネルが有名ですが、体験したのは近くの建物です。
操車場は上から見ると芋の形をしているのですが、その両脇を道路が走っています。
その東(千葉)側の真ん中辺りの道路脇に敷地があり、奥まった所に真っ暗なビルが残っています。
敷地の入り口は柵がされており、建物は入り口を鉄板などで封鎖されています。
7、8階建てのビルなのですが、1番上の階辺りにぽつんと明かりがついてて不思議でした。
そこは以前から窓から人が見ていたとか、写真を撮ったら窓から手が出ていたとか聞いていました。
自分たちもそれを期待して夜から観に行ったわけです。
敷地に入ると資材が色々置いてあり、プレハブもあったのでまだ何かに使っているようでした。
人がいた形跡の為にすこし気が抜けたのですが、案の定建物には入れません。
一緒にいた友人も、何も無いねぇなんて言ってたんです。
建物の周りを一回りして車に戻ろうとした所、入り口の柵の脇に通路を見つけました。
そこは敷地の端っこから坂になっていて、ちょうど自分の真下のところでトンネルになっています。
坂の脇に回ったのですが、トンネルの奥は真っ暗で何も見えません。
何があるんだろうと思い覗き込んでいたら、ふと音が聞こえてきました。
“ カタン・・・、カタン・・・、カタン・・・、カタン・・・。”
電車のレールの継ぎ目を車輪が超える瞬間のあの音です。
“ ん?
なんで音が?
こんな所で?”
時間も時間だし、操車場はほとんど使われていません。
それに道向こうの操車場は高い壁で囲まれていて、電車の音なんて聞こえるはずが無いのです。
それは一瞬の出来事でした。
深く考える間もなく横で叫び声がしました。
「 キャー!」
「 うわー!」
“ ん?
どうした?
なんでみんな逃げるの?
え?
なんか出たの?
え?
え?
まって?
置いて行かないで~!”
自分も走り出しました。
自分は変なものを見たことが無いし、怖い思いもありません。
“ でも、みんな逃げるし、置いて行かれてもイヤだし・・・。”
何て思いながら、ようやく車に辿りつき発車させました。
「 え?どうしたの?なにがあったの?」
一緒に言った4人は黙っています。
「 なんだよぉ、教えてくれよぉ・・・・。」
俺一人訳の分からないパターンです。
「 もういいよ!」
ふてくされて運転を続けてると、女の子がポツリと言いました。
「 電車が走ってきた・・・。」
「 え?
電車?
どこ?
いつ?」
詳しく聞いてみると、自分が覗いていたのと反対側に資材が置いてあったようなのですが、その女の子が、
“ あっ!”
と思った瞬間、自分の側に向かって電車が走ってくるのが見えたそうです。
そうです、自分に聞こえたあの音は、やはり電車の音だったようです。
その女の子も、あんな電車は初めて見たと言っていました。
私にとっては、怖くは無いのですが貴重な体験でした。
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