日々の恐怖 3月24日 凝視(1)
女子大時代の友人から、
「 うちに遊びに来ない?」
と電話が入った。
私は、
“ 声を聞くのは半年振り、実際に会うとなれば1年ぶりにもなるのだなァ・・・。”
と、仕事明けのぼんやりした頭で話半分に聞いていた。
すると、いつの間にか2週間後の週末を彼女の家で過ごすということになっていた。
当日は急な仕事が入ってしまい、夜、仕事が終わるとそのまま彼女の家へ向かった。
着いてすぐに手料理を振舞われ、彼女の仕事の愚痴を聞き、土産にと持って行った酒やつまみを空けきるころには日付を越えてしまっていた。
それではもう寝よう、と気分良く横になりまぶたを閉じたのだが、落ち着かない様子で寝返りを打つ彼女が気になってうまく眠れない。
私が、
「 どうしたの?」
と聞けば、
「 実は言っていないことがあるの・・・。」
と気まずげな様子で彼女が言い、
「 2週間前からなんだけどね、手首が出るのよ。」
私が、
「 よくわからないけど・・・・?」
と首を傾げると、彼女はベットから離れた、正面反対側にあるクローゼットを指差した。
そして、彼女は続けた。
「 一番初めは、クローゼットの隙間から指が出ていたの。
そのときはただの見間違いだろうと思って、気にしなかったのよ。
でも次の日、今度は本棚の影に指を見つけて、また次の日はテーブルの横に手が見えた。」
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