日々の恐怖 3月28日 電波な人(2)
でもここは3Fで、外にベランダはありません。
窓のそばにも誰もいないので、何がおきているのか理解できず、全員ただ硬直して顔を見合わせていました。
窓を叩く音は続き、
“ 早く終われ!”
という自己逃避の中で、K君を見ると、彼は自分の携帯電話で何かを話しています。
あまりに非現実的な光景に何やら怒りすら込み上げてきたその時、K君が言いました。
「 白髪で右目の上にイボみたいなのがあって、餃子耳なおじいさんに心当たりのある人いる?」
私は驚きました。
それは私の叔父の特徴そのものなのです。
私がK君にその事を告げると、彼は、
「 ちょっと・・・・・。」
と私だけを台所に呼ぶとこう言いました。
「 もう間に合わないけど、今日は急いで帰った方がいい。
こっちは大丈夫だし、帰りも変な事はおきないから大丈夫、保障する。」
言い方から、
“ あぁ、叔父が亡くなったんだな・・・。”
と理解しました。
実は、叔父は三か月前からガンで入院していたのです。
その後は自宅に帰り、予想どうりの訃報に改めて呆然とし、ガクブルしながら朝を待ちました。
その後、K君は本格的に職場での居場所がなくなってしまい、残念ながら自主的に退職して行きました。
今にして思うと彼の奇行は、私達には理解できなくても、彼には何か見たり、聞こえていたのかも知れないと思います。
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