彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救っ
たと伝えられる "招き猫"と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。
(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編
のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。愛称「ひ
こにゃん」
1.クマヤナギ 2.ヨコグラノキ 3.ネコノチチ
4.クロウメモドキ 5.ケンポナシ
【樹木×短歌トレッキング:クマヤナギ】
柳こそ伐れば生えすれ世の人の恋に死なむをいかにせよとぞ
万葉集 詠人不詳
突然、過去に呼び戻され、このような歌が脳裏に降り落つ未練かな。
クマヤナギ(熊柳、Berchemia racemosa)はクロウメモドキ科のつる
性落葉低木。別名、「クロガネカヅラ」ともよばれる。冬は葉を落と
し、黒々とした幹やつるがクマを連想するところからクマヤナギの名
が付くが、ヤナギとは別の種の植物である。果実は甘味があり生食も
できるが、果実酒の材料にすることが多い。つるは、粘りがあり硬く
強靭なことから、雪靴のすべり止めのかんじきなどの材料に用いられ
た。昔は、つるで馬の鞭(むち)や牛の鼻輪を作った。漢方薬として、
茎葉を乾燥させたものを煎じ服用して用いられる。比較的穏やかな利
尿作用があり、慢性的な膀胱炎、尿路結石の予防、腰痛に良いといわ
れる。また、健胃やリウマチにも効能があるとされる。
【男子厨房に立ちて環境リスクを考える】
□ 今日のごみ排出量:廃プラ排出量 0.95 kg
【ポストエネルギー革命序論 452: アフターコロナ時代 272】
現代社会のリスク、エネルギー以外も「分散時代」
● 技術的特異点のエンドレス・サーフィング
再生可能エネルギー革命 ➢ 2030 Ⅶ
わたしの推し➲ 未来のEV スズキ軽四輪 SMAILE
特集|ハルバッハモータ革命渦論Ⅰ
□ デュアルハルバッハ配列界磁
【事例研究】特開2018-64371 株式会社アテック
下図1のごとく、着磁方向に平行な正方形断面を持つ永久磁石を、360°
を整数で除した角度ずつ着磁方向を回転させながら当該正方形断面に
平行に並べて形成される2つのハルバッハ配列を互いの発生する磁束
が強まるようにギャップを介して対向させたデュアルハルバッハ配列
界磁において、界磁ポールピッチの0.3~0.6倍の間隔に前記ギャップ
を設定。また、360°を3または5以上の整数で除した角度ずつ着磁方向
を回転させながら前記正方形断面に平行に並べて形成される2つのハ
ルバッハ配列を互いの発生する磁束が強まるようにギャップを介して
対向させたデュアルハルバッハ配列界磁において前記ギャップを界磁
ポールピッチの0.6~1.0倍の間隔に設定する電機子コイルに鎖交する
磁束を有効に利用するとともに機器重量当たりの出力の低下を抑制し、
小型化、コスト低減を図る。
【概説】回転機あるいはリニアモータに使用されるデュアルハルバッ
ハ配列界磁に関する従来技術では、着磁方向に平行な断面が正方形の
永久磁石を着磁方向が90°ずつ回転するように当該断面に平行に並
べて構成されており、デュアルハルバッハ配列界磁のエアギャップ長
を前記正方形断面の一辺の長さの1.2から2.0倍になるように規定して
電機子コイルに鎖交する磁束を有効に利用していた(➲特開2013-215
021)。しかし、磁石の着磁方向が90°ずつ回転する以外の場合にお
いて当該発明にかかわるエアギャップ長を用いると磁束の有効利用に
支障をきたし、機器の効率が低下する結果を招いていた。さらに、前
記ギャップ長がある程度広くなると出力を増加させるためにエアギャ
ップ中に配置される電機子コイルの体積を増大させることになるが、
体積増大に伴う重量増加のため磁束の有効利用が達成されても機器重
量当たりの出力が低下し、軽量化およびコスト低減の観点から問題と
なっていた。着磁方向に 平行な正方形断面を持つ永久磁石を、360°
を整数で除した角度ずつ着磁方向を回転させながら当該正方形断面に
平行に並べて形成される2つのハルバッハ配列を互いの発生する磁束
が強まるようにギャップを介して対向させたデュアルハルバッハ配列
界磁において界磁ポールピッチの0.3〜0.6倍の間隔に前記ギャップを
設定すると重量当たりの電機子磁束鎖交数が最大となる。また、360°
を3または5以上の整数で除した角度ずつ着磁方向を回転させながら前
記正方形断面に平行に並べて形成される2つのハルバッハ配列を互い
の発生する磁束が強まるようにギャップを介して対向させたデュアル
ハルバッハ配列界磁において前記ギャップを界磁ポールピッチの0.6〜
1.0倍の間隔に設定すると電機子磁束鎖交数が最大となる。発電機の場
合、最小の重量で最大の電圧を発生する。また、モータでは最小の重
量で最大のトルクが発生する。装置重量当たりの出力を最大化できる
ので装置の低コスト化および省資源化に貢献でき、また、回転機のみ
ならずリニアモータや電磁式ダンパーに適用できる。
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しかし、磁石の着磁方向が90°ずつ回転する以外の場合発明にかかわ
るエアギャップ長を用いると磁束の有効利用に支障をきたし、機器の
効率が低下する結果を招く。さらに、前記ギャップ長がある程度広く
なると出力を増加させるためにエアギャップ中に配置される電機子コ
イルの体積を増大させることになるが、体積増大に伴う重量増加のた
め磁束の有効利用が達成されても機器重量当たりの出力が低下し、軽
量化およびコスト低減の観点から問題となる。モータが電力を動力に
変換する装置なら、発電機は動力を電力に変換する装置。両者はいず
れもコイルと磁石を持ち、同じ原理に基づいている。モータと発電機
のエネルギー変換効率は、磁力の強さに大きく左右される。㈱アテッ
クの開発した モータ・発電機の超高効率の秘密は、「デュアルハル
バッハ配列」と呼ばれる磁石の並びにある。「ハルバッハ配列」とは、
磁石のN極とS 極を90度向きを変えて並べる配列のこと。 磁石の片側
に磁界を集中させ、磁力を強め ることができます(上図1)。この配
列を「デュアル」、つまり2列向かい合わせて並べると、磁力は単体
のハルバッハ配列の2倍になる。 ㈱アテックは工学院大学との共同研
究で、ロータ(回転子)の外輪と内輪にハルバッハ配 列をデュアルに
並べることで、強力な磁力によ る超高効率モータ・発電機を実現しま
した。「磁力が2倍になれば、同じ動力から得られる 電力も2倍。モー
タならその逆で、半分の電力で同じ動力を得られます。強い磁力のお
かげで、カタログスペック90%台後半という高い変 換効率を実現する
ことができる」。ところが、強力な磁力は開発を阻む壁にも なる。ロ
ータ内に磁石を並べる際に、 磁石どうしがくっついてしまう課題に直
面。指を挟んで血が出るのは日常茶飯事。製造工程を工夫し、その課
題を克服。
写真左:ローター(回転子)。ハルバッハ配列の磁石を外輪と内輪に
向かい合わせて2列(デュアル)に並べて磁力を高める。右:コイル
を収容するステータ(固定子)。
□ そよ風や小川のせせらぎを 電力に変える仕組み
㈱アテックのモータ・発電機のもう一つ の特徴は、コイルに鉄心(コ
ア)を使わない 「コアレス」構造であること。コアがあると、ロータ
が回転する際に、がっくんがっくんと引っかかる動きをする。「コギ
ング」と呼ばれるこの現象は、小さな動力で電力を得たい場合に大き
な支障となる。コギングがあると、風力発電だと最低でも風速毎秒4~
5mぐらいは必要です。コアレスだとコギングがなく、風速毎秒1.5 m
ぐらいから発電できる。頬頰に優しく感じるそよ風を電力に変えられ
ます。水力発電なら、小川のせせらぎや田んぼの用水路でも発電でき
まる。このように世界の消費電力のおよそ半分はモータが占め、日本
だけでも1億台ものモータが動いていると言われる。モータの効率を
高めることができれば、大幅な省エネが実現可能に。昨今、電気自動
車やドローンなど、モータ駆動の新たな製品群も増えています。モー
タの高効率化により、これらの航続距離を延ばすこともできる。モー
タには、世界を大きく変える力がある。
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□ 再生可能エネルギーとハルバッハモータ
✺ 風力発電システム
図1.特開2013-209969 風力発電システム
【概要】図1のごとく加振部材30に、所謂ハルバッハ配列とされた
永久磁石を備えるリニア電動機を採用することで、三相コイルが強く
励磁され、従来の加振器と比して、小型化され、さらに、大きい推力
で板部材28が軸方向に低周波数で振動する。そして、風車20が回
転することで生じる付随波を備えた低周波騒音を打ち消すような低周
波消音が生じる。このように、既存の風力発電装置12の変更を抑え、
また、加振部材16(装置)を大型化することなく、風車20の回転
により生じた付随波を備えた低周波騒音を打ち消すことで、既存の風
力発電部材の変更を抑え、また、装置を大型化することなく、風力発
電部材に備えられた風車の回転により生じた低周波騒音を打ち消すこ
とができる風力発電システムを提供する。
※サボニウス型風力発電用三層デュアルハルバッハ配列コアレス同期
発電機の検討:A Study on Savonius Type Core-less Synchronous Wind Po-
wer Generator with Triple Layers Dual Halbach Yusaku Arai(Kogakuin Un-
iversity), Mimpei Morishita(Kogakuin University), 2021.8.21
✺ 小型水力発電とハルバッハモータ
株式会社大洋電機エンジニアリングは、現在安定した売上を上げている水
力発電の水車調速用電動シリ ンダ・メンテナンス用の部品や特殊用途モー
タ・発電機の設計・製 作が主力だが、開発している大型ドローン用ハルバッ
ハ発電機 と電動バイク用SRモータを次の柱として売上を増やしていく予定。
大型水力発電への挑戦はまだ未明ではあるが、まずは小型水力からとの方
針は妥当。
✺ ドローンとハルバッハモータ
南相馬市にある株式会社マグネイチャーは、全速度域で従来のモータ
を超える高性能を有し、来るべき「空飛ぶクルマ」社会に求められる
航続距離、積載量共に40%以上増、発電効率が従来機の40-50%増を
実現する発電機利用も可能となるハルバッハモータを実用化すると宣
言しているが電気自動車用の商用普及と同期する。
✺ ハルバッハ配列磁石の製造方法
※特許第 5535827号 ハルバッハ配列磁石の製造方法 アスモ株式会社
✺ 円筒リニアモータの位置検出装置
※特許第 6349506号 ハルバッハ配列及び磁性リングによるdq比を用いた
円筒リニアモータの位置検出装置及び方法 多摩川精機株式会社
図1
図2
✺ ハルバッハモータ
※特階2021121153号 ハルバッハ界磁子およびこれを備える回転電機
【概要】ハルバッハ配列された単位永久磁石配列を有す界磁子には、
極めて強い磁力の永久磁石が使われ、隣接する単位永久磁石間に強い
反発力、吸引力が発生し単位永久磁石配列から押し出されたり、傾き
が生じ、所期ハルバッハ配列が乱れるおそれがある。下図のごとく、
ハルバッハ界磁子2は、四角柱状をなす複数の単位永久磁石50と、
中空円筒状をなす非磁性部材の内筒3および外筒4と、を備え、内筒
3および外筒4が同軸に配置されるとともに、同軸に配置された内筒
3と外筒4との対向空間内に拘束されるように、複数の単位永久磁石
50がハルバッハ配列をなして内筒3および外筒4と同軸の円筒状に
配置することで、複数の単位永久磁石によるハルバッハ配列を所期の
配列に確実に保持し、ハルバッハ界磁としての機能を確実に維持でき
るハルバッハ界磁子およびこれを備える回転電機を提供する。
✺ 電動ホイール
※ 国際特許出願第2021166420号 回転電動稀及びこれを用いた電動ホ
イール 株式会社 日立製作所
【概要】回転自由に支持された回転子と、回転子と所定の空隙を介し
て備えられた固定子と、を備え、回転子は、円環状の永久磁石と、永
久磁石に埋め込まれたコアピースと、からなる磁極リングを有し、磁
極リングは、円環状に形成された内周面および外周面を有し、内周面
または前記外周面のいずれか一方は、空隙と対向する空隙対向面であ
って、もう一方は、前記空隙対向面とは異なる非空隙対向面であって、
磁極リングの前記非空隙対向面は、前記永久磁石で構成され、磁極リ
ングの空隙対向面は、永久磁石と露出したコアピースを含んで構成さ
れ、永久磁石は、コアピースが極中心となるように着磁される回転電
機。
図1
【まとめ】
2021年11月に英国グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26
回締約国会議(COP26)で,日立は日本企業として初めてプリンシパル・
パートナーに就任。地球規模の環境リスクに挑戦のため、脱素社会の
実現に向け,社会全体の「電化・電動化」,「再生可能エネルギーの
大量導入」,製品ライフサイクル全体での「省エネルギー」,「資源
リサイクルの推進」の四つの取り組みが重要だと述べている(日立評
論「価値起点のイノベーション 環境:研究開発」2022 Vol.104 No.1)。
1.EV普及を加速する省スペース大容量マルチポート充電技術
2.脱炭素社会実現に貢献するSiCパワーデバイスTED-MOSの設計技術
3.インホイール式EV駆動システム「Direct Electrified Wheel」
脱炭素社会の実現に向けて普及が進むEVには,さらなる乗り心地と航
続距離向上のために,車内空間やバッテリースペースの拡大が求めら
れている。これを解決する方法として,モータをホイール内部へ搭載
するインホイール式EVが知られているが,ホイール内の重量増加や既
存ブレーキなどを大幅に改造が課題。これまで培った鉄道,エレベー
タなどの技術も生かし,モータとインバータ,ブレーキを一体化した
小型・軽量のダイレクト駆動システム「Direct Electrified Wheel」
を開発。モータは,磁石をハルバッハ配列にすることで磁極ごとの有
効磁束を増加させて駆動力を高め,扁平なコイルを高密度に配列して
軽量化。インバータは,モータに一体化するとともに絶縁性の冷却油
でパワー半導体を直接冷却する技術により,配管スペースを削減。こ
れらの技術により,本開発の駆動システムは,世界トップクラスのパ
ワー密度を実現してホイール内を大幅に軽量化するとともに,サスペ
ンション構造を大きく変更することなくホイール内部に搭載すること
を可能とした(前回のブログで掲載済)。
尚、ハルバッハモータは、「永久磁石技術を駆使した新構造モータ(
ボンド磁石)」として革命的な変化をもたらしているもので、アモル
ファスモータ----2008年、日立製作所はアモルファス金属を使った高
効率モーターの開発に成功。2014年には電気・電子工学の分野の標準
化を行う国際組織の国際電気標準会議(IEC)が策定した産業用モータ
の省エネ規格「IE5」をクリアする技術を発表---日立産機システムの
スクロール型空気圧縮機に組み込み販売、アモルファス金属は、モー
タの高効率化に大変向いた物性を持っている。鉄損が通常の鉄の1/10
と小さいが、加工があまりに難しく、現実的な値段で製品にできい。
そこでモータ形式を変え、回転軸の側(ロータ)に永久磁石を、モー
タケースの側(ステータ)に電磁石を配置し、従来の円筒形のロータ
の回りをステーターが取り囲むラジアルギャップ型----この方式では
打ち抜き加工した電磁鋼板を何枚も重ねて鉄心を形成----に対してア
モルファス金属を使うモータでは、2枚の円盤形ローターの間にステ
-タが挟まるアキシャルギャップ型に変更、バウムクーヘン型の型を
作り、上から剪断加工で裁断したアモルファス片を落とし積みかさね、
アモルファス金属を裁断する長さを少しずつ長くしていけば、バウム
クーヘンのような"年輪"をもつ鉄心をつくり、非抜き加工で長いロー
ルとして供給アモルファス金属を切っていくだけで鉄心を作り、材料
を永久磁石に安いフェライト磁石でつくり、永久磁石に安いフェライ
ト磁石で代替できる。モーターの出力を上げるのに一番手っ取り早い
方法は,ネオジム磁石は フェライト磁石の20倍ぐらいの価格。しかも
磁石の性能を高める重希土(Dy,Tb)の産出量は、ほとんどを中国が占
める。非ネオジム系のフェライト磁石----酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ニ
ッケル、酸化マンガンなどの酸化物が主成分----は磁力はネオジム磁
石に及ばないがずっと安く、アモルファス金属を鉄心に使い、アキシ
ャルギャップ型を採用すると、フェライト磁石でも性能は下がらず、
しかも、従来よりもずっと高効率になる。こうして同じサイズで同じ
出力。かつ価格は安く、高効率というモータ(これまでのモータを買
い換えても、下がる電気代の分で1年も経たずに元が取れる)の開発
に成功。がデメリットは、フェライト磁石を使うとローターが重くな
る。だから、電気自動車のように回転数を上げたり落としたりと迅速
な応答性が要求される分野では不利になる。アモルファス金属パンチ
ング加工から排出される屑が再利用きる。
4.分散グリッド向けエネルギーマネジメントシステムの顧客協創環境
5.福島第一原子力発電所廃炉に向けた作業ロボット自律制御技術
6.鉄道向け省エネルギー運転支援システム
7.脱炭素化に向けたCO2フリー燃料の燃焼シミュレーション技術
8.プラスチック資源循環を加速するプロセス最適化AI技術
9.リチウムイオン電池の非破壊診断・容量回復技術
要するに、パワー半導体や永久磁石可変界磁電動機(発電機)は、デ
ジタル革命渦論をベースに環境リスク本位制時代を切り開く、エネル
ギー・流通産業プラットフォームのリストラクチャリングの中核技術
を担うものであることが約束されいるのであり、我が国の貢献が期待
されているのである。面白い!
河出書房新社(2021/09発売)
サイズ 46判/ページ数 320p/高さ 20cm
商品コード 9784309228303 NDC分類 345.1 Cコード C0022
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第19章 税制の不備
国民国家の終焉?
国民国家とそこで採用されている税制は、物質世界を中心に構築さ
れている。今日に至っても、イギリスは市場調査とブランディングの
コストをGDPに含めていない。国家は、それを取り巻く新しい世界
に順応し、デジタル化に適応しなければ、国民国家モデル自体がおぼ
つかないものになる。形のないものに課税する方法を見つけて国際的
な競争力を保つか、支出を減らすか、いずれかの道を選はなければな
らない。さもないと、破産状態におちいる可能性もある。
政府の破産、税収の途絶、債券市場危機の可能性、国の通貨の信頼
性の低下----政府の破産、税収の途絶、債券市場危機の可能性、国の
通貨の信頼性の低下----これらのどれも、政治への不信と変化への渇
望に満ちた世界においては、現実になる可能性がたいへん高くなって
いる。またこれらは、革命や内戦につながる要素でもある。そういう
ことになるのを防ぐため、国家は先手を打ち、われわれを取り巻く新
しい経済世界の現実に合わせ、最善を尽くさなければならない。それ
には、統治する方法と、提供する公的サービスをうまく時代に適応さ
せることも必要になる。
小さな国のほうが、対応がより速いようである。適応への動きはす
でにあらわれている。アイスランド(実は、憲法の起草をクラウドソ
ーシングによって行なっている)、エストニア、マルタ、さらにはカ
リブ海周辺の島々も、それ以外の国々がまごまごしているあいだに、
税法と公的サービスの両方に、たとえばブロックチェーンの技術など
を取り入れている。小さな国が大きなライバルの先を行っているのだ。
Ⅰ人当たりGDPから見た富裕国ランキングのベストテンのうち、人
口が1,000万人を超える国は一つもない。また、ベスト20のうち、人口
が2,000万人を超える国はたった二カ国である(アメリカとドイッ)。
だが1950年の時点では、事情はかなり異なっていた。アメリカはおそ
らく世界一金持ちの国たった。参照できる購買力平価のデータは不正
確であるが、上位十カ岡のうら、少なくとも四カ国は人口が1,000万入
超であった----アメリカ、ベネズエラ、オーストラリア、カナダの四
カ国だが、もしかするとオランダもそうだった。ベルギー、フランス、
アルゼンチンはそれよりもやや少なかった。いまや、経済的にはスモ
ール・イズ・ビューティフルということになっている。しかし、かつ
てはそうではなかったのだ。
政治的にも、国民が地方の権限をもっと大きくするよう求めている
こともあって、小さな国へと向かう流れが出てきている。イギリスは
国民投票によってEU離脱を決めた。カタルーニャはスペインからの
独立を求めている。四半世紀前にユーゴスラヴィアだった地域は、い
まやボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、コソボ、マケドニア、
モンテネグロ、セルビア、スロベニアに分かれている。そういう例は
これからも出てくるだろうが、小さな国への道のりは易しくはない。
スペインはそうあっさりカタルーニャ独立を許すことはないという姿
勢である。当時、ブレグジットは暗礁に乗り上げていた。論争のおも
な領域----関税同盟と単一市場参入----は、もちろん税である。歴史
に示されているように、変化を起こし、大々的な税制改革を成し遂げ
るには、ある種の革命、財政破綻危機、あるいは戦争を引き起こすこ
とがしばしば必要になる。政府が自発的にそうすることはめったにな
い。だが、税収がだんだん減ってくれば、無理にでもそうしなければ
ならなくなる。
国々はそれぞれに、国民が選択した政治体制によってその後の税制
を決定する。だが、国々はこぞって企業を奪いあう。もっとも多くの
企業を引きつけるのは、法律によって私有財産権がしっかりと守られ
ており、新たに誕生した国際市民・国際企業にとって魅力ある税率が
定められている国である。この競争がさらなる後押しになって、他の
国々も同じ手法を取り入れるようになる。
ITが政府の公的サービスに取って代わるようになれば(多くの国
が、教育、医療、輸送関連の事業へのIT導入を検討している)、政
府支出を減らすことも可能になるが、ここで一つの疑問が浮かびあが
る。つまり、自発的にそれを選ぶというよりも、むしろ一種の財政圧
力のために致し方なく選ぶ場合が多いのではないか。高水準の支出が
定着している文化では、減税には強い抵抗があるだろう。多くの場合、
のIT導入を検討している)、政府支出を減らすことも可能になるが、
ここで一つの疑問が浮かびあがる。つまり、自発的にそれを選ぶとい
うよりも、むしろ一種の財政圧力のために致し方なく選ぶ場合が多い
のではないか。高水準の支出が定着している文化では、減税には強い
抵抗があるだろう。多くの場合、税率の引き上げと、新税----富裕税、
高級住宅税、空き家税、あるいは取引高税などが考えられることにな
る。有権者には事実上の税であることがわかりにくいインフレ税も、
すぐにではないとしても、必然的に取り入れるようになる。たとえば、
現代貨幣理論(MMT)や、いわゆる「国民のための量的金融緩和政
策」(PQE)は、政府が通貨の発行によって支出の財源を調達し、
経済を運営することを方針とするもので、いまさかんにもてはやされ
ている。
今後、脱税、租税回避、タックス・ヘイブンはもっと厳しく取り締
まられるようになる。税金の徴収はもっと積極的に行なわれるように
なり、その一環として、ある道徳的主張----その効果はすでにあらわ
れている----がさかんになされるようになる。つまり、重い税金やそ
の使い道に同意しないならば、ともあれその人物は悪人であるという
のである。中世のころ、王とともに戦争に行きたがらない騎士もこれ
と同じ道徳的主張の標的になっていた。こういう騎士は臆病税を課さ
れることになった。歴史に示されているように、このパターンはいい
結果に終わらないことが多い。
ダメージを緩和するには、早いうちに思いきった税制改革を実施す
ることである。だが、やはり歴史に示されているように、それは容易
なことではない。こういう改革は、なんらかの危機によって否応なく
後押しされるのがふつうだ。力量によっぽど自信のある政治家でもな
ければ、もっとも安易な方法を選ぶことだろう。枝葉の部分に手を入
れつつ、税の種類を増やし、税制をより複雑にし、税率を引き上げ
るという砿目遍的な万向に向かうのである。危機的状況に背中を押さ
れることなく、思いきった税制改革できるのは、たぐいまれな力量と
不屈の精神を持った政治家だけだろう。だが、アジアがひるむことな
く前へ前へと突き進みつづける現在、置いてきぼりを食いたくない欧
米諸国、とりわけヨーロッパ諸国は、国民への課税方法を変えなけれ
ばならない。
大きな政府と小さな政府、権威主義とリバタリアニズム、古い企業
慣行と新しい科学技術、税の種類の追加と削減。これら二者間のイデ
オロギー的闘争はこれからも続くはずである。どちらの側も自分から
引くことはない。だが、国民の税負担が小さい国、税制が公平でわか
りやすい国は生き残る。国民のアジアがひるむことなく前へ前へと突
き進みつづける現在、置いてきぼりを食いたくない欧米諸国、とりわ
けヨーロッパ諸国は、国民への課税方法を変えなければならない。
大きな政府と小さな政府、権威主義とリバタリアニズム、古い企業
慣行と新しい科学技術、税の種類の追加と削減。これら二者間のイデ
オロギー的闘争はこれからも続くはずである。どちらの側も自分から
引くことはない。だが、国民の税負担が小さい国、税制が公平でわか
りやすい国は生き残る。国民の税負担が小さいほど----したがって、
国民がのびのびとしているほど----したがって、国民がのびのびとし
ているほど機軸が生まれ、富が増えることになる。これまでの歴史で
はずっとそうだった。これからもずっとそうだろう。
この項つづく
風蕭々と碧い時代
Imagine Jhon Lennon
⦿ Album:『ヘル・フリーゼズ・オーヴァー』(Hell Freezes Over)
The Last Resort (Eagles song)
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