【反措定技術 レアメタルフリーバッテリ】
レアメタルがレア故に独占されてしまう。その意味では現在も世界政治経済の幻想的基軸の「地下化石
燃料・地下資源本位制は生き残っていて、いまなお国際問題のコアをなしているようにみえる。えぇ~
いぃ~面倒だ!とアンチ・レアメタル=レアメタルフリーの命題試行が、ドンキホーテーごとき無謀な
冒険に見えないというのがデジタル革命の世界同時進行性渦の現在というもの。
その具体例として、昨年末に発表された大阪市立大学の工位武治特任教授と大阪大学の森田靖准教授ら
のコバルトを使わずに、既存のリチウムイオン電池の1.3倍から2倍の電気容量を持つ電池の開発だがあ
る。これは、携帯電話やノートパソコンなど、ポータブルな電子機器やハイブリッドカーなどの普及に
伴い、充電可能な高性能電池(二次電池)の需要が高まって、二次電池には、鉛蓄電池やニッケル水素電池
など用度に応じて様々な種類があるが、高い電圧が得られ、つぎ足し充電もしやすいなどの理由から、リ
チウムイオン電池がもっとも普及しているものの。リチウムイオン電池は、正極活物質にレアメタルを含
むコバルト酸リチウムを使用しているが、コバルトは、生産国が限られるうえ、需要の拡大にともなっ
て価格が高騰し、資源獲得競争も激しくなってきている。
工位教授らが開発した二次電池は、コバルト酸リチウムの代わりに、石油化合物を原料とする「6-オキ
ソフェナレノキシル(60PO)」と「トリオキソトリアンギュレン(TOT)」という有機スピン分子を正極活物質
に使ったもので、「有機スピンバッテリー」と名付けられた。有機スピン分子とは、化学結合に与らない
不対電子を1個または複数子持つ有機分子のことで、化学的に反応性が高く不安定とされてきたが、分子
スピンの安定化技術は確立しており、今後もどんどん合成される、60POやTOTもそのなかのひとつだとい
う。有機化合物を使った二次電池には、ポリマー型のニトロキシドラジカルを正極活物質に用いた「有
機ラジカル電池」、電気容量がリチウムイオン電池の3分の2程度と小さく、その向上が課題となって
いたが、分子の量子的性質を制御する上で最も重要なフロンティア軌道に縮重性(エネルギーが等しい
量子状態が複数存在する性質)を持たせ、かつ充電・放電過程において電気エネルギーを運ぶ電子がこれ
らの軌道を占めるようにバッテリーを設計することで、電気容量を大きく伸ばすことに成功。
電池の安定生産が可能に、安全性でも優れる。また、「有機スピンバッテリー」は、分子間に新しい、強い
結合力が働いるだけでなく、強固な結晶構造をつくり、繰り返し充電・放電しても、結晶・分子構造が崩
れにくいという(上図参照)。一方、課題は、平均出力電圧が3Vを下まわり、リチウムイオン電池の3.7V
に比べて低い。しかし、フロンティア分子軌道エネルギーの制御、さらに今使っていない縮重軌道の利
用などの軌道エンジニアリングにより、出力電圧は向上させられるという。
レアーメタルの枯渇は石油や天然ガスと同様、海洋・海底資源開発で当面問題ない、ないがコストが問
題なのだ。これに比べ、今回の有機分子スピンバッテリーは、合成段階数が少なく、仕込み原料に対する
収率が高いことから、製造コストを低く抑えることは可能だという。しかしながら、チッソ・水俣病のよ
うに安全性について未知数。この問題を解決し年以内で実用化を目指していきたいとのことだ。
【反措定技術 有機薄膜太陽電池】
有機薄膜太陽電池は、光が当たると電子を放出するドナー材料と、放出された電子を受け取って電極ま
で運ぶアクセプター材料の2種類の半導体材料で構成され、それらを単純積層するのではなく、2種類
の材料を混合し、接合界面の増加によって、効率的に電荷分離を起こす「バルクヘテロ構造」が開発さ
れ、変換効率の大幅な向上が図られてきているが、この構造も万能ではなく、半導体材料によっては分
子同士が重なり合ってしまう凝集が起こるなど適応できないケースも生じ、また混合層の作製に手間と
コストがかかるという課題を抱えている。
これに対し、當摩哲也金沢大学テニュア・トラック准教授らの研究グループは、バルクヘテロ構造を用
いずに、これと同等以上の効率が得られる新しい構造をつくることに成功。その方法とは、デバイスの
基板上に斜め蒸着を用いて、CuI(ヨウ化銅)をナノメートルサイズの棒状粒子(ナノロッド)の形
で散りばめた、山谷構造を持つシートを形成→その上にドナー材料の亜鉛フタロシアニン(Pc)とア
クセプター材料フラーレン(C60)を単純積層→平坦な基板に比べて結晶性が高くなり、2つの材料
間の接触界面が増加するというもの。
尚、ナノロッドの作製には、高価な平坦透明電極基板よりも、安価で表面が荒れた基板が適するという
コスト面の有用性を示唆し、ヨウ化銅と亜鉛Pcの相互作用による分子の配向制御によって、光吸収が
増加。それらの相乗効果の結果、ナノロッドシートを用いた新構造太陽電池の効率は、単純積層型に比
べて3倍の値(4.1%)を示し、従来のバルクヘテロ型太陽電池を越えるという。
特開2011-82396
【解説】中間層に透明層が含まれていることにより、一方の有機太陽電池単セルでの未吸収光を透過して他方
の有機太陽電池単セルへ送るために充分な透明性を中間層に付与することができ、光電変換性の高いバルク
ヘテロ接合型のタンデム型有機太陽電池を得ることができる。また、中間層で複数の有機太陽電池単セルをオ
ーミックに接合することができ、この中間層に対して陽極側で隣接する有機太陽電池単セルにおける光電変換
層で生成される電子及び正孔のうち、主として電子が電子輸送層を介して透明層に送られ、また陰極側で隣接
する有機太陽電池単セルにおける光電変換層で生成される電子及び正孔のうち、主として正孔が正孔輸送層
を介して透明層に送られるので、透明層に電子と正孔とをバランス良く供給することができ、透明層7を再結合
層として機能させて前記電子及び正孔のバランスの良い再結合を行わせることができる。また、透明層は光透
過性が高くこの層を厚くすることができるので、塗布によって光電変換層を形成する場合においても、二つ目の
ブレンド材料を塗布する際に、溶媒が浸透することを防ぎ、一つ目の光電変換層を保護することができる。また、
中間層を電子輸送層/透明層/正孔輸送層の少なくとも三層構成にすることで、タンデム化での開放電圧のロ
スを低減することができ、タンデム化による特性の低下を抑制することができる。
特開2011-066265 有機薄膜太陽電池の製造方法
【解説】電極間に有機光電変換層を備えて形成する有機薄膜太陽電池を製造方法で、表面に電極を設けた2
枚の基板間に、有機光電変換層の材料を配置する工程と材料を加熱して融解させる工程と、2枚の基板の電
極間で融解した材料を大気圧より大きい圧で加圧する工程と、加圧状態を保ったまま材料を加熱温度よりも低
い温度に冷却する工程で、溶剤を用いたウェットプロセスでなく、発電特性に優れた有機薄膜太陽電池を得るこ
とができるの製造方法
上図の特許の発電効率はまだまだ低いものの、いろいろな形で有機薄膜太陽電池の知財が蓄積されている。
またそのことにより蓄電池や半導体、カラー表示器などの有機エレクトロニクス技術が「日進月歩」「秒進分歩」
で進歩している。これは、ある意味、現在開催されているロンドンオリンピック競技のような状況と例えられるも
のだ。もっとも、競技直前の薬物ドーピングは禁止されているが、平常時の薬物ドーピング(要定義の厳密化)
すなわち、科学技術力を道具として新記録が塗り替えられていると看れば、この流れは止められそうもない。そ
の意味で、先端技術本位制という世界政治経済の幻想的基軸もリアルに躍動しているといえる。
あっと、ドーピングといえば化学薬物だけではない。脳への電気的刺激の最適化により運動能力を高め
るような技術が競技直前で行われ、そう遠くない日に問題となるかもしれないのだ。これは柔道などの
動画判定が加わって混乱する場面を目の当たりにしてなおさらそう思う。