新鮮なマグロのマリネ(前菜として6人分)
スペインではオリーヴ油を使わない料理なんてひとつもないわよ」そう言い
ながらも挙げてくれたのが、小ぶりのビンナガマグロを使ったこのマリネ。
材料:○新鮮なマグロ(約700グラムの ○エクストラヴァージン・オリ
もの) 1尾 -ヴ油 2カップ
○塩 ○ローリエ 2枚
○タマネギ(刻む)約300グラム ○タイムの小枝 2本
○ニンニク(小片に分け、皮を ○シェリー・ヴィネガーまたは
むいて薄切り) 1個 白ワイン・ヴィネガー210cc
○辛口の白ワイン 3/4本
作り方:
マグロに塩をし、2時間おいておく。オリーヴ油でタマネギとニンニクを炒
め、ローリエとタイムを加える。焦がさないように炒め、タマネギが透きと
おったら、マグロとともに耐熱性の深鍋に入れ、分量のヴィネガーとワイン
さらに水をひたひたになるまで注ぐ。塩で昧をととのえて火にかけ、沸騰し
たら弱火にし、マグロがやわらかくなるまで約45分煮込む。火から下ろし、
荒熱がとれたら冷蔵庫で冷やす。少なくとも一昼夜、煮汁につけたマグロベ
取り出し、アメ色に炒めたピーマン、サラダ菜、野菜のローストとともに盛
って、煮汁少々をかける
第十章「マラケシュのオリーヴ市場」から。
はるか紀元前から、モロッコのヴォルビリスの周辺にはオリーヴの木が豊か
に繁っていた。ヴォルビリスは、サハラ砂漠の北東の端という辺境におかれ
たヘレニズム文化の前哨だった。のちにローマの征服者によって大都市が築
かれ、現在のメクネスの近郊には当時の遺跡が残っている。ローマ入はチュ
ニジア同様、ここでも地中海沿岸から内陸部まで至るところにオリーヴを植
えた。現在のモロッコでは、オリーヴの栽培本数はチュニジアより少なく、
オリーヴ油はほとんど輸出していない。だが、食用オリーヴではモロッコが
世界のトップであるという。
モロッコのどこの市場に行っても、深皿に山盛りになったオリーヴが見られ
る。黒オリーヴは、塩漬けもあれば、塩水漬けもあり、グリーンオリーヴは、
赤唐辛子で辛くしたものもあれば、レモンコンフィで甘くしたものもある。
ニンニク、パセリ、ターメリック、オレガノ、ローズマリーやタイムで風味
をつけ、丸々として果肉の締まった紫色のオリーヴもある。どの村にも秘伝
の製法があり、どの町にも特産品がある。フェズではコリアンダーを加える。
大西洋岸の町アガディールでは、山でとれる秘密の香草をまぶす。鶏肉のタ
ンジンから新鮮なサラダまで、オリーヴはありとあらゆる料理に忍びこんで
いるとか。
オリーヴ好きにとって、マラケシュの市場の一角は、世にまたとない特別な
場所である,蛇使いやスリとすれ違いながらジャマ・エル・フナ広場を抜け
れば、そこはもうスークである。オリーヴはモロッコの大部分で栽培されて
おり、海岸地帯からアトラス山脈、リフ山脈を越えて、サハラ砂漠の方まで
広がっている。オリーヴがもっとも鬱蒼と繁っているのは、千年の歴史を誇
るイスラム王朝の魅惑的な都、高い城壁と複雑な迷路の町フェズの周辺であ
る。しかしオリーヴ世界の聖地といえば、何といってもマラケシュである。
多くの旅行者に愛される世界的な一流ホテル〈ラ・マムーニア〉は、1920年
代に古都マラケシュのオリーヴ畑の中に建てられたアール・デコ様式の豪華
ホテルである。緑したたる庭園には、オレンジの木や多肉植物、可憐な花々
に交じって、オリーヴの大木が立っている。花をつけた蔓植物が古い幹をそ
っと這い上がり、まるで銀緑色に輝く樹冠から深紅の花が咲きでているかの
ように見える。マラケシュのオリーヴは、狭い裏通りの地下室で加工され、
アトラス山脈に住むベルベル人も各自特製のオリーヴ漬けを売場に来る。
観光客や物乞い、預言者ムハンマドの直系を自称する種々雑多なガイドの間
をすり抜けて進むうち、オリーヴ市場にたどりついた。1912年にモロッコが
フランスの支配下に入るまで、この近くでは奴隷の競売がおこなわれていた。
数軒の店が、樽や箱にあふれるばかりのオリーヴを並べて売っている。優美
なにアラビア文字で書かれた店の所有者名以外は、どこも同じようだ。どの
店も高く積み上げたガラス瓶で三方を囲まれ、瓶は精緻なタイルのモザイク
のように実に美しく並べられている。さまざまな色合いのグリーンオリーヴ
を背景に、鮮やかな黄色のレモンのマリネと赤唐辛子が交互に並んでいる。
先の尖った小さな唐辛子の間に、オリーヴを幾何学的に配した瓶もある。白
いアーモンドを詰めたオリーヴ。ニンジン、セロリと漬けこんだミックス・
オリーヴ。グリーンオリーヴの輪切りを模様のようにきれいに詰めたものも
あるという
アガディール(Agadir)
広い台の上には巨大な班寫の深皿がいくつも並び、見事な円錐形をしたオリ
ーヴの山は高さ2フィートに達する。どの店でも、見るからにオリーヴ売り
という感じの男が、大きな杓子とプラスチックの小袋を手に待ちかまえてい
る。エルバッシリ・アブデッサマド、オリーヴ卸売・小売商」と書かれた看
板の下に、愛想のいいオリーヴ売りがいた。大きな口髭をたくわえ、汚れた
長衣と白い縁なし帽を身につけた彼の名はアリといった。四年前まで通路の
向こう側の店で女性用の肌着を売っていたが、オリーヴの方がいいと言う。
アリは懇切丁寧に店の主要商品の説明をしてくれた。この国のオリーヴはほ
とんどがモロッコ産ピショリーヌ種(もしくはベルディ種)で、フランス原
産のピショリーヌより丈夫で野性的な品種である。アリの店も例外ではない。
グリーンオリーヴは九月中旬から十月末にかけて収穫する。砕いて塩水に漬
け、多くの場合、苛性ソーダも加える。種を抜くこともある。その次は紫色
に色づいたオリーヴを収穫する。これには塩水がよく染みこむよう、剃刀で
一度切れ目を入れる。黒オリーヴは十一月下旬から十二月まで木につけてお
く。よく然しているので、皮を切ったり砕いたりせずに処理できるという。
彼は、酸っぱいオレンジとレモンの皮を漬けこんで甘みを出した、柑橘類風
味の大粒グリーンオリーヴを強く薦めた。が、ローゼンブラムの目は、死ぬ
ほど辛そうな大量の唐辛子と刻んだパセリに覆われた、黒、紫、緑のミック
ス・オリーヴに釘づけだった。これはどれくらい長く漬けたものかと訊くと、
アリはきょとんとしている。ローゼンブラムは近所のフランス人たちがオリ
ーヴに風味をつける方法を説明した。香草、唐辛子、香辛料をミックス・オ
リーヴに加えて数か月漬けると、すべての風味が溶け合うと。そして、必要
な材料は、自然に処理したオリーヴのみ。ちょっとした想像力さえあれば、
サラダをつくるように簡単に、自分なりのオリーヴ漬けをつくることができ
というのだ。
808年、イドリスニ世はフェズをモロッコ最初の大王国の首都と定めた。旧
市街フェズ・エル・バリは涸れ川の両岸に築かれた。片岸にはスペインを追
われたムーア人が住みついて、アンダルシアの香りをもたらし、もう一方の
岸にはチュニジアのカイラワンからの移住者が、イスラム聖地の息吹を伝え
た。アフリカの富がラクダで北へと運ばれ、イタリア凰の壮麗さが海を渡っ
てきた。それらが渾然一体となり、胸躍るモザイク都市ができあがった。タ
イル装飾、アーチの入口、繊細な木彫、そびえ立つ泥土のミナレット、夜の
闇に沈んでゆくつややかな石畳。
‘
そして、ローゼンブラムは-だが、何よりフェズで印象的なのは、町という
より、むしろ人の顔-エキゾティックな頭巾に半ば隠れた顔の方だ。色とり
どりの上着の尖ったフードの下に見える、野性的な黒い髭。かぎ針編みの白
い縁なし帽に、つやつやした赤銅色の肌が映える。黒いいヴェールからのぞ
く、なまめかしい黒い瞳。文化が変わればオリーヴの木もがらりと変わるが、
オリーヴをつくる人もまた変わる-と表現する。
世界で1,125品種はあると言われるオリーブ。開花期間は4~5日と短く、
開花後、米粒ほどの小さい実をつけるが、他品種の樹を側に複数本植えるこ
とが好ましい。多くの品種は自家受粉ができないうえDNAが同一の花粉には
反応をしない上、花が咲いたとしても結実することは難しいとも言われ、自
家受粉する。青いオリーブの実は10月頃には2cm弱の大きさに育ち、紅葉の
ころ青い実は褐色に熟成し、グリーンオリーブとブラックオリーブと収穫期
で摘みわける。実は、傷つけやすく、傷口から果肉や実に含まれ酸化劣化も
始まる。昔は、実に切り傷をつけ何日も流水にさらし、渋抜きをしたが、現
在では新鮮な実をアルカリ処理で渋を抜きし、塩水に浸漬し加工するとか。
テーブルオリーブをみると緑・黄・茶・黒と色とりどり良く、形や大きさも様
々、香りや味も千差万別。まさに百花繚乱、いや、百種繚乱というわけだ。
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