【オールバイオマスシステム完結論 Ⅸ】
● ようこそ!スマートキャンティへ
ヤコシ(薬師)
ここは鷹取山にある絆自然公園内の足湯小屋。 主催者のマペットが桜の木のチップから作った
桜焼酎を参加者に振る舞っている。近隣の山々の残雪が光り輝いている。心地よい桜の香りが
するがどのように蒸留するのかと、コキノダイナスがいつもの大きな声でそう尋ねた。マペッ
トは研究開発を担当したギリシャ語で「薬師」を意味するヤコシを呼び説明させる。「桜の木
の厳選した部位を一定のサイズに均一にナノスケールにミーリングすることで表面積大きくし、
低温焙煎処理した後、新種のエタノール酵素、これは秘密ですが、細胞壁の糖タンパク質の分
解を早め、エタノール変換しこれを取り出し醸造酒。あるいは蒸留し蒸留酒を造っています。」
Industrial Fermentation -- creating new products from wood
マペット(大酒呑み)
「なるほど、これなら緑茶などのお酒も飲めるというわけやね。」「原理的には全ての木質バイオマスに
応用できますから、これからが楽しみです」とヤコシは説明した。しばらく、足湯を楽しんだ後、クロス・ラ
ミネイテッド・ティンバー・パネル工法のバイオマス研究センタに移動した。
センターの集中管理に案内され、室内のディスプレイウォールに一同目を見張る。近隣の森林
の様子が一目で分かるようになっており、その表示部の一部に、監視用無人機のドローンから
テレメトリックグラフィック画像が同時に4カ所の映像が映し出されている。オペレーターの
クスネボーボシが、ドローンのカメラをマイクロモードに切り替え、樹齢30年の杉の一部を
拡大し、虫食い穴のようなの映像を撮影し、その映像を直ちにスキャンし解析。異常がないこ
とを確認し終えると、画面が切り替わり、元の管理パネル大の大画面に戻った。すかさず、プ
ロンシャスは、そのドローンはどうなっているのかと質問すると、クスネボーボシは、自動的
に2時間に渡り、ミッション地区の森林を監視撮影した後、繋留収納庫に戻り次のミッション
まで充電待機するのだと答えた。
プロンシャス(旅団長)
クスネボーボシ(木地師)
「それじゃ、この研究センタでの運営施設について説明します」とクスネボーボシは、ウォー
ルディスプレー部の中央部に上の画像「再生ネネの中で、なぜ『バイオガス化&発電』に着
目するのか?」を表示させ説明を始めた(詳細は上のグラフ(クリック)のNEDOの実用化
ドキュメント参照)。「ここでは、バイオマスでも営林の全てを使い切る試みを行っています。この山で触
診した森林を切り出し、あるいは間伐材やネグロマスを半自動で回収運搬させています。搬入
してきた森林は、燃料用、建材用、日用品、食品、肥料、生分解性プラスチックなどに加工製
造します。まず燃料用には粉砕→ジェットミルで、数百マイクロメートル以下(暫定値)、約
1500m2/gよりも大きいDFT表面積(暫定値)にパウダー化→メタン発酵→メタンをバ
イオマス活性炭で精製→ビッチ分離→ガス化→タール除去→改質→水素分離→水素燃料電池&
水素ガスタービン発電→送電/蓄電します。このプロセスで排出される、汚泥は乾燥→調合→
堆肥、廃熱はハーベスト発電&温水&ヒートポンプ(冷媒は液化二酸化炭素)などに利用しま
す。先ほどの足湯の温水は廃熱利用し、またこのセンタの地下の温水プールや地中熱とともに
自動融雪システムに利用しています。」
「小さく刻むことで表面積を広げる。そのことでこれまでの燃焼速度や化学反応の速度を飛躍
的に上がったというわけやね。」とコキノダイナスがスモールトークすると、「おっしゃる通
りメタン発酵プロセスで、"対抗衝突処理”という技法も使っています(上図参照)。さて、
メタン発酵設備や発電設備に、木質バイオマスパウダーとバインダーやフィラーと調合し、特
殊な木工ボンドで大型の3Dプリンタでタンクや建造物を造形し利用しています。また、小型
の3Dプリンタで日用雑貨品や家具・調理品、装飾品、玩具などの造形にも使っています。」
と説明して、すこし間を取っていると、ベゴニアが「医薬品などはつくっているの?」と質問
すると、すかさず「樟脳、木酢、檜油、除虫菊などは先ほどのドローンが植林に自動散布や患
部注入しています。」「それに、生物工学を駆使し、樹液や精油、樹皮から様々な医薬品・防
腐剤、アロマ、防虫・除草などより安全サイドに立ったホルモン誘導剤など有機化学薬品など
もつくれます。」とヤクシが付け加えた。
ベゴニア(秋海棠)
それまで、聞き手に回っていたプロンシャスが、「バイオマスから水素がつくれるのなら、ヘ
ーリオス君の"オールソーラーシステム構想"と合体できるじゃないのか?」と鋭い質問を投げ
かけた。コキノダイナスも「そうや、ひとことも口きいてなかったなぁ」と督促するかのよう
に相槌を打た。もぞもぞしながらヘーリオスは、「はい、バイオマスは光合成なくし存在しま
せん。従って、"オールソーラーシステム"と融合します。ただ、一足さきに太陽光の方が実用
化の目途、これは、最近話題となったトヨタの水素燃料電池車の特許無償公開が象徴されてい
るように、急速な再エネのコストの逓減となって表れています。」「したがって・・・」とコ
キノダイナスがスモールトークすると、「そうです、太陽光をはじめとする水素エネルギーの
技術的な大きな課題はもうなくなり、わたしはお払い箱です。」と苦笑いしそう話すと同席メ
ンバー一同の爆笑を誘った。
へーリオス(舳離雄)
「そうねぇ~。そういえば、ここに来るまでに、一度も大きな送電線をみなかったのは再エネ
普及の影響ね。すっかり風景も変わりましたよね。」とベゴニアが反応。「直流送電、マイク
ロインバータ、マイクロコンバータ、マイクロコンディショナ、スマートグリッド、地下埋設
送電、マイクロウェーブ伝送など現在の流れは”デジタル革命渦論”ということです。その究
極が、ナノテクノロジ、バイオミミックリに収斂されるというわけで、オールバイオマスの研
究にシフトさせたわけです。」とへーリオスが補足すると「君のことだから、その仕事もすぐ
に終わってしまうね」と赤ら顔のマペットがツッコミを入れると一同、再び爆笑。
コキノダイナス(赤鬼)
その後、センタの会議室を出て、バイオマス発電プラントを見学し、間伐材の集積現場でロボットスーツ
を着込み、木材の運搬作業を実体験し、エコツアーし、水素燃料電池ミニバスに乗り込み、上機嫌で帰
路についた・・・。
● 今夜のオンリーワンテック 紙のような発光ダイオード