極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

人騒がせな西方の風よ。

2015年01月16日 | 日々草々

 

 

● 「介護労働は経済成長の足枷」という考え方 

政府は介護事業者に支払われる介護報酬について、15年度の改定で引き下げる。引き下げ幅は5
%前後で来年4月から実施。
介護報酬は介護保険サービスの公定価格で、総額は年間約10兆円。
1%下げると支出は1000億円減(税520億円減、保険料410億円減、利用者負担70億円
減)となる。日経はこの記事に「自己負担1割軽減」の見出しを付けて報じた。
介護職員の給与を
月額で平均1万円程度増やすのに必要な介護報酬(約1300億円、約1.3%増分)を別途確保す
るという。
財務省は、特別養護老人ホームや通所介護(デイサービス)事業者の報酬は「大幅に削
減」する。こちらが目的なのだ。全体で3%台前半の削減を求めている。厚労省は「実質5%近い
減額で、経営難に陥る事業者が出る」と反発。2%台後半での決着を模索中だという。

 

介護の過酷さは昨年なくなった母の介護で身に染みている。両脚の手術した後、介護老人福祉施設(特別
養護老人ホーム)に入所するまでの間、入浴、トイレ、着替え、車いすへの乗せ換えなど作業の大変さ加減
は言うに及ばず、例えば、トイレの出入りの動作が困難となり、夜中の室内用ポータブルトイレ中、転けて、
室内に糞尿が床に飛び散るなどもしばしば。転倒した母を元のベッドに戻すのも骨粗鬆でやせ細った身体を
抱き上げことは二人かかりでも難儀な作業だった。自治町内には、知事が長寿祝いに訪問するぐらいの長寿
一家が住まわれていて、寝たきりの百歳を超える寝たきりのおじいさんとお父さんを、娘さんが長い間介護
されておられたが。その方が「私には青春時代というものがなかった」とその苦労を語っていた。

長寿はめでたいが理想をひとことで喩えれば、「ピンコロが一番、風呂で倒れても(入浴中脳梗塞や怪我な
どで致命的な状態に陥っても)、救急車を呼ばないこと」と自虐的な冗談を言い合うこともしばしばだ。老
々介護など重度になれば、仕事も辞めなければならない。こういった場合、「ウサギ小屋に住むニホン」で
あればなおさら、不慮の連鎖事故、火事などの罹災に見舞われるリスクが高くなる。仕度で余裕をもって介
護・看取りができる福祉環境――その基準・法整備は未だに整備されず家族責任として放置――をつくるに
は相当のコストと時間を必要とする。それがかなわないというなら専門家・専門施設に任せるのが一番だ。
その負荷が軽減できれば、そのまま仕事を続けることができる、生産的でもある。つまり、経済成長に繋が
る。「健康的な長寿社会」は実は立派な成長戦略ということを率先垂範すべき政治委員も財政国家官僚も、
大手マスコミもいないと思わせるような"デフレ社会
”に停滞している。そういえば、野々村なにがしかの
兵庫県のデフレ県会
議員の映像が丁度お似合いな本年度の予算編成劇である。



● 人騒がせな西方の風よ。

 

                                                                                     


   

  荒々しい西風 秋の息吹よ
  見えないお前に駆り立てられ枯葉が舞う
  魔法使いから逃れる亡霊のように

  黄色に 黒に 灰色に 真っ赤な色に
  染まった枯葉がおびただしく舞う 西風よ 
  お前は種を吹き飛ばして地上にばらまき

  冷たい大地のうえに横たわらせる
  墓穴の中に寝そべった遺骸のように
  だがやがてお前の妹 春の風が吹いて

  眠れる大地を呼び覚まし
  木々の蕾に生気を吹き込み
  野や山を生き生きと色づかせるだろう

  そこここに吹き荒れる野生の息吹よ
  破壊者にして守護者 聞け いざ聞け


  

  揺らめく空中を お前の勢いに流されて
  千切れ雲が枯葉のように吹き飛んでいく
  天と海原のもつれあう枝々からは

  雨と雷光の天使たちが振り落とされる
  お前のブルーに染まったうねりにそって
  マイナデスの逆立った髪のように

  おぼろげな地平線から天頂に向けて
  近づく嵐の徴 巻き毛のような雲が
  ぐんぐんと湧き上がっていく

  死に行く年の葬送曲よ 夜は閉じられ 
  巨大な墓場のドームと化すだろう 
  お前は夜露の力を集めて天蓋を支え

  天蓋の凍った大気からは 黒い雨
  雷や雹が吹き出るだろう 聞け いざ聞け


  Ⅲ

  西風よ お前は地中海を夏の眠りから目覚めさす
  その快いまどろみの中で 紺碧の海は
  バイアの入江の小さな島の傍らで

  きらめく波のうねりに揺れる
  波の底には宮殿や塔が
  緑のコケや花々に覆われ

  震えつつ揺らめき騒いでいた
  なんと甘美でそぞろな夢か
  だが今や西風よ お前の吹きすさぶ道にそって 

  アトランティックの海は逆巻き
  海底に色あせた草や木々も
  お前のうなり叫ぶ声を聞くと

  恐怖のあまり更に黒ずみ
  根こそぎにされて海にただよう 聞け いざ聞け


  Ⅳ

  もしも私がお前に運ばれる枯葉であったなら
  もしも私がお前によりそう雲であったなら
  もしも私がお前の力強い鼓動をわかちあい

  のたうつ波であったならば
  おお西風よ 誰にも制御しえぬものよ
  もしも私が少年の頃のように

  お前とともに大空を駆け回ることができたならば
  私はお前よりも早く駆け巡り 他には何も見ないだろう 
  もしその夢がかなったなら こんなにも

  お前に訴えかけることはしなかったろう
  私を持ち上げてくれ 波や葉っぱや雲のように
  私は生命の茨の上に落ち 血を噴き出す

  お前のように奔放で敏捷で誇り高かった私を
  時の重みが押しつぶしたのだ


  Ⅴ

  私を竪琴にして 森の如き音を発せしめよ
  木々から葉が散ろうとも気にかけるな
  音は力強いハーモニーをかなで

  悲しくも甘美で深い秋の調べを歌う
  西風よ 猛々しい妖精よ
  私に乗り移り 私を力強い勇者たらしめよ

  枯葉のような私の思いを世界にばらまき
  世界を生き生きと生き返らせよ
  私の言葉に命を吹き込み

  不滅の火から飛び散る火花のような
  私の言葉を世界中にばら撒いてくれ
  眠った大地に向けて 私が発する音になってくれ

  西風よ 予言のラッパを吹き鳴らせ 
  冬が来たなら 春は間近いと


     Ode to the West Wind
     Percy Bysshe Shelley, 1792- 1822  

  
    

     O wild West Wind, thou breath of Autumn’s being,  
     Thou, from whose unseen presence the leaves dead   
       Are driven, like ghosts from an enchanter fleeing,   
 
     Yellow, and black, and pale, and hectic red,  
       Pestilence-stricken multitudes: O thou,    
          Who chariotest to their dark wintry bed   

        The wingèd seeds, where they lie cold and low, 
        Each like a corpse within its grave, until   
        Thine azure sister of the Spring shall blow  

        Her clarion o’er the dreaming earth, and fill 
       (Driving sweet buds like flocks to feed in air)  
       With living hues and odours plain and hill:   

         Wild Spirit, which art moving everywhere;  
         Destroyer and Preserver; hear, O hear!



     Ⅱ

       Thou on whose stream, ‘mid the steep sky’s commotion,
       Loose clouds like Earth’s decaying leaves are shed,  
       Shook from the tangled boughs of Heaven and Ocean, 

       Angels of rain and lightning: there are spread        
      On the blue surface of thine airy surge,  
        Like the bright hair uplifted from the head  

         Of some fierce Maenad, even from the dim verge       
      Of the horizon to the zenith’s height,   
          The locks of the approaching storm. Thou dirge   

           Of the dying year, to which this closing night        
      Will be the dome of a vast sepulchre  
         Vaulted with all thy congregated might  

       Of vapours, from whose solid atmosphere    
       Black rain, and fire, and hail will burst: O hear


           
III

      Thou who didst waken from his summer dreams   
          The blue Mediterranean, where he lay,
       Lulled by the coil of his crystalline streams,
      
            Beside a pumice isle in Baiae’s bay,  
        And saw in sleep old palaces and towers  
        Quivering within the wave’s intenser day,  

           All overgrown with azure moss and flowers 
        So sweet, the sense faints picturing them! Thou    
            For whose path the Atlantic’s level powers   
     
       Cleave themselves into chasms, while far below  
        The sea-blooms and the oozy woods which wear   

       The sapless foliage of the ocean, know    
          
           Thy voice, and suddenly grow grey with fear,    
           And tremble and despoil themselves: O hear! 

    
  
    IV

    If I were a dead leaf thou mightest bear;

    If I were a swift cloud to fly with thee;
    A wave to pant beneath thy power, and share

    The impulse of thy strength, only less free
    Than thou, O Uncontrollable! If even
    I were as in my boyhood, and could be

    The comrade of thy wanderings over Heaven,
    As then, when to outstrip thy skiey speed
    Scarce seemed a vision; I would ne’er have striven

    As thus with thee in prayer in my sore need.
    Oh! lift me as a wave, a leaf, a cloud!
    I fall upon the thorns of life! I bleed!

    A heavy weight of hours has chained and bowed
    One too like thee: tameless, and swift, and proud.

     V

    Make me thy lyre, even as the forest is:
    What if my leaves are falling like its own!
    The tumult of thy mighty harmonies

    Will take from both a deep, autumnal tone,
    Sweet though in sadness. Be thou, Spirit fierce,
    My spirit! Be thou me, impetuous one!

    Drive my dead thoughts over the universe
    Like withered leaves to quicken a new birth!
    And, by the incantation of this verse,

    Scatter, as from an unextinguished hearth   
    Ashes and sparks, my words among mankind!
    Be through my lips to unawakened Earth

    The trumpet of a prophecy! O Wind,
    If Winter comes, can Spring be far behind ?

 

"If Winter comes, can Spring be far behind ?"  ( 末句「冬来たりなば春遠からじ」)って知ってい
ると突然部屋に入るなりこう切り出す。彼女しか読まない朝日新聞の「天声人語」に掲載されたこ
の言葉が、中国から伝わってきた諺と思っていたが英国の詩人のパーシー・ビッシュ・シェリーだ
ったのよと言う。「虐げられた労働者の応援歌だとよ」と答えながら、作業の手を止め、ネットを
すぐさま検索し、英語の発音を聴かせると、満足そうに英文の綴りを確認し部屋を出た。面白いね。
そんな彼女は、生き生きしているように見える。

 

  ● 今夜の一曲

交響曲第2番 変ホ長調 作品63は、エドワード・エルガーが1910年から1911年にかけて作曲した交
響曲。第3番は未完に終わったため、完成した交響曲としては最後のものとなる。英国国王エドワ
ード7世に献呈されることになっていたが、王が1910年5月6日に崩御したため、亡き国王エドワ
ード7世陛下の追悼に捧げられた。曲自体は追悼よりはエドワード朝(1901年1月22日~1910年5
月6日)の叙事詩、回顧といった性格が強いものである。
自筆の総譜に英国の詩人パーシー・ビッ
シュ・シェリーの詩「うた(Song)」(1821年) の一節(冒頭の2行)がエルガーの筆跡でペン書き
されており、その意味を巡って今日なお論議が続いている



 
             Rarely, rarely, comest thou, Spirit of Delight ! 

                       めったに、めったに来ない、汝、喜びの精霊よ!
 


第1楽章は大規模なソナタ形式で、変ホ長調で提示される第1主題は、全曲のモットー的意味合いをもち、
他の楽章にも現れる。
交響曲第2番は全体的に輝きを放ってはいるが、夕映えのようなものだと評
され、第1番と共通するトーンがあるが、この第2番はシェイドにつつまれた黄昏の輝きといえそ
うで、大きな三
管編成のオーケストラが巧みに表現されたれた美しさと、エルガー音楽の難解さが
混一した名曲といえるだろう。

 

 

 

 

コメント
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