極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

脱ロスト・スコア論 Ⅴ

2014年11月11日 | 時事書評

 

 




● 電動式水上バイク

4つの水中翼を備える水上バイク。電気で推進するので、軽量を実現して、水の抵抗をほ
とんど受けずに推進。1度の充電で航続距離は約百キロメートルとなり、最高時速37キロ
メートルの速度が出ていて、水中のスポーツカーのように見える。来年180万ドルで発売
予定とか。スタイリッシュで、電動式だから静粛性は抜群。琵琶湖でのプレジャ・ボート
(ウォータバイクあるいは、ウォータスクータ)に打って付けだ。これは面白い!


※参考特許:US8820260 Watercraft Device

 

   

【脱ロスト・スコア論 Ⅴ】

● たまには熟っくりと本を読もう

高橋洋一著 『「成長戦略」の罠―「失われた20年」』



ここでは、高橋は重要なことを語っている、「三権分立ではなく、まるで行政府が立法府
と司法の上に君臨しているかのようだが、そうすれば官僚に好都合である」(内閣法制局
の「権威」の正体)と。つまり「官僚内閣制」だと。だとすれば、"そのこと"を
意識的に
あれ、無意識的にあれ放置してきたことは歴代の政権与党の責任に帰するところ大なので
あろう。それはさておき、時代が大きく変化しようとする時、例えば、「失われし20年」
の歴史的学習から学び現状をを変革していこうとするドーパント(異質分子)をアクセプ
タ(受容体:国家・地方官僚あるいは独占企業体など)が排除しようとする
特徴を、この
世界(史)から学ぶことができる(例えば、ロシアのスターリン主義体制、中国の一党独
裁、米国の産軍複合体縁故資本主義、日本の官僚内閣制!
?など)。そのことは念頭に置
き具体的事例をみていこう。
 

                         第3章  この国を蝕む「官愚」

                         ■ 天下り斡旋の恐るべき実態

  「天下り」という日本語は英訳できない。"descend form heaven"(天から下りる)
 と直訳したところで通じるわけもない。前章で述べた「産業政策」と同じで、外国に
 はない概念なのだ(例外としてフランス語には似た概念の単語がある)。逆に言う
 と、天下りは実に日本らしい"風習"なのかもしれない。
  
また誤解を恐れずに言えば、サラリーマン的思考をする人(サラリーマンであると
 は限らない)は官僚制に擁護的だ。話は簡単で、サラリーマンが会社を定年退職した
 
あと、関係会社に再就職を斡旋してもらえたらうれしく思うだろう。その分、老後の
 心配がなくなるのだから。
  ここには組織の論理が働いている。官僚は霞が関という組織の、サラリーマンは会
 社という組織の中で、一単位として奉公する。再就職先斡旋は、その恩典である。恩
 典なのだから、みな「ありかたいなあ」と思うのは当然だ。
  官僚であれサラリーマンであれ、この再就職先斡旋=天下りを断わる人を、私は知
 らない。ありかたい語を断わる人は、もっと前に辞めている。

  実は天下りを断わって、定年を待たずに辞めたのは他ならぬ私である。私は財務省
 から官邸に出向し、政策立案に係わっていたから、役所の枠からはみ出た役人と見な
 されていた。だからだろう、財務省は私に天下り先をすごく斡旋してきたものだ。
  斡旋の第一段階は、財務省の秘書課長(一般の組織の人事課長)や官房長など幹部
 からの電話である。そこで面会の日時を決める。幹部のパターンはこうだ。幹部室の
 隣に個室があるのだが、その部屋へ行くと……。

  幹部 高橋くん、どう、最近?
  高橋 はあ、忙しいですよ。
  幹部 どんなことやってるの、最近?
  高橋 これこれ、こういうこと(仕事の中身)をやっています。
  幹部 そうか。君もそろそろアレだよね、定年が近くなるよね。
  高橋 そうですね。
  幹部 あのさ―、こういうところ(天下り先)があるんだけど、関心ある?

 ここで多くの官僚は「お願いします」となる。だが、私は「お願い」しなかった。

  幹部 どう? 君に向いているんじゃないの。
  高橋 お気持ちはありかたく存じますが、私は自分でやりますから。

 この返事に、幹部は内心「コノヤロー」と思っただろう。


                      ■ 日本郵政に居座った財務官僚OB

  私の場合、こうして「お断わり」したのはI回や2回ではない。斡旋の話は次から
 次へとやってきた。それが官房長や秘書課長の仕事なのだから仕方ない。彼らが「こ
 ういうところがあるんだけど」と言って紹介する天下り先は、民間企業の顧開戦もあ
 れば、大学教授というポストも用意されていた。
  私は日ごろ、財務官僚を辞めたら大学で研究の仕事をしたいと思っていたから、役
 所で雑談の祈にそんな話を□にしたこともあっただろう。それが漏れ伝わったのか、
  「高橋くん、××大学(私立)とか△△大学(国立)なんてどうだろう」と、先回り
  されたことがある。私は「え~っ」という感じである。それでも「自分でやりますか
 ら」とお断わりしたが。

  こうして、キャリアの官僚には必ず天下りの声がかかる。私のようにそれを断わる
 官僚はまずいない。例外中の例外として、家業を継ぐ人がいるだけである。「実家を
 継ぎます」と言われれば、人事担当も容認せざるを得ない。私の場合は実家の関係で
 も何でもなく、役所の世話にはならない、再就職先は独力で探すと言ってのけたわけ
 だから、官僚の世界では空前絶後の出来事だったろう。おまけに大学教授職は正当な
 手続きでゲットしたのだから、我ながら無茶苦茶だと思う。

  それにしても、キャリアとして国家公務員になれば一生、食うに困らないというの
 は本当で、それを天下りというシステムが支えているのである。基本的に天下りは2
 回できることになっていて、―回が5~6年だから、役所を辞めてもその後の10年か
 ら12年は保障されているのだ。高齢化社会とはいえ、まさに死ぬまでの永久就職同然
 ではないか。 公務員制度改革が前進しないなか、第二次安倍政権誕生後も官僚の天
 下りは後を絶だない。文庫版『官愚の国』の「まえがき」で触れたが、特に政策金融
 機関で顕著である。元経済産業次官の杉山秀二氏が商工組合中央金庫社長に、元財務
 次官の細川興一氏が日本政策金融公庫総裁に、そして著名な財務官だった渡辺博史氏
 が国際協力銀行総裁のポストに就いた。

  安倍政権が官僚の天下りで抵抗したのは日本郵政くらいだろう。大蔵省OBで内閣
 官房副長官補まで務めた坂篤郎氏は2009年に日本郵政の副社長に就任、3年後の
 2012年12月には社長に昇格したが、安倍政権誕生後の2013年5月には社長退
 任となった(6月の株主総会で正式承認)。当時は「官邸による更迭人事」と騒がれ
 たものだ。
  ところが坂氏は社長の座を追われてからも、ちやっかり「顧問」の肩書でロ本郵政
 に残っており、これが2014年3月に発覚すると(それまでは、なぜか秘密だった
 ということだ。このことを憂慮した何者かが官邸に "ご注進" したのだろう)菅義偉
 官房長官たちの逆鱗に触れ、またしても退任に追い込まれたのである。

  菅官房長官は記者会見で、次のように述べた。

 「坂氏が(日本郵政の)社長を退任したのは事実上の更迭だった。しかし監督官庁の
 責任者である総務相も知らないところで顧問に復帰し、報酬も支払われていた。あぜ
 んとした。坂氏の年間報酬は1000万円、勤務実態は週2日以下だ。国民から理解
 されないようなことはすべきではない」




                   ■ 渡辺喜美氏辞任劇を法律面から検証する

  ところで公務員制度改革といえば、思い出すのは渡辺喜美氏である。渡辺氏は第一
 次安倍政権(改造内閣)および福田政権で、行政改革担当相として制度改革の前線に
 立っていた。
  その渡辺氏が2014年4月7日、みんなの党代表を辞任した。化粧品会社、デイ
 ーエイチシー(DHC)の吉田嘉明会長から8億円を借り入れていたという週刊誌報
 道が発端だった。ここでは本件を法律面からクールに見てみたい。
  8億円の資金は銀行振り込みされている。吉田氏は、そのお金は選挙資金であると
 明言し、政治資金収支報告書などへの記載がないため問題とされていた。ここでのポ
 イントは、8億円という巨額な資金であり、貸し付けた吉田氏が「選挙目的」と言っ
 ていることだ。猪瀬直樹前東京都知事の借り入れ(5000万円)より巨額なだけに
 悪質だと論じるところもあった。
  これに対して渡辺氏は、借り入れていた事実は認めたうえで「自分個人で借り入れ
 て、みんなの党に貸し付けたものであり、党の政治資金収支報告書には渡辺喜美個人
 からの借り入れや資金使途が記載されているため法的な問題はない」というスタンス
 だった。

※いわゆる「8億円借入金問題」(Wikipedia

 
  両者の主張の違いは、誰の選挙資金なのか(渡辺氏かみんなの党か)ということで
 ある。

  マスコミは、この点を明示的に書いていない。おそらく渡辺氏個人とみんなの党を
 同一視し、両者一体と考えてしまった。渡辺氏個人とみんなの党の関係をはっきり書
 かずに、あたかも渡辺氏が裏金的に使ったような記述も散見された。
  一方、渡辺氏の主張は、誰の選挙資金であるかについて明確だった。渡辺氏の言い
 分は、渡辺氏個人で借りて自分の選挙には使わなかったので、渡辺氏の選挙資金では
  ない。また、みんなの党に貸し付けたので、みんなの党の選挙資金となる、というこ
 とだろう。したがって(渡辺氏個人の選挙資金ではないため)、渡辺氏の収支報告書
 には記載されていない。みんなの党の選挙資金だったので、みんなの党の政治資金収
 支報告書には記載がある、としている。
 
  猪瀬氏の5000万円借り入れとの違いについても、猪瀬氏は自分の選挙資金とし
 て借り入れていたが、渡辺氏は党の選挙資金として借り入れたという点で異なると言
 っていた。
  現行制度では、政治資金、選挙資金ともに受け入れの主体のところで収支報告書を
 作成し、その使途を明らかにするという仕組みになっている。最終段階の資金の受け
 入れで報告書に記載されていれば、資金の流れが分かるので、重複して報告書に記載
 する仕組みにはなっていない。
  簡単に言えば、選挙資金として受け入れた人物・団体に報告義務があり、自分の選
 挙資金として借り入れていない場合、自分の報告書には書かなくてよい。渡辺氏の主
 張は「党に貸し付けた」であるから、そのとおりなら8億円はみんなの党の政治資金
 になる。もちろん、みんなの党の政治資金収支報告書に記載がなければ大問題だが、
 こちらのほうには書いてある。なお、吉田氏が直接みんなの党に振り込んでいれば、
 何の問題もなかったはずだ。
 
  私は渡辺氏を擁護するつもりはない。また渡辺氏のロジックについて、借り入れ金
 額の数字の整合性などをチェックしているわけでもない。あくまでクールに考えるた
 めに、法律論に絞ってみた次第である。


                                                   ■ 官側の"圧力"が働いた!?

 
  マスコミからはぶ涙叩き〃状態の渡辺氏だが、彼の「8億円問題」と辞任劇につい
 て、訝しく見る向きも実は少なくなかった。
  なぜ突然、週刊誌のスキャンダル報道が出てきたのか、その背景はどうなっている
 のか、意図的なりIクがあったのではないか、このことで得をするのは誰か……さま
 ざまな観測が私の周辺でもなされていた。そうしたなかで、さる訳知りの人物の見立
 てを紹介しよう。ただし、あくまでも可能性としての話であることをお断わりしてお
 く。その人d物は「渡辺さんは官僚にやられたね」と言うのだ。 

  まず、近い将来の内閣改造で、渡辺氏が公務員制度改革担当初として入閣するかも
 しれない、という情報が流れた。ご承知のとおり渡辺氏は安倍総理と親しく、かつて
 は二人三脚で公務員制度改革に取り組んだことがある。改革のキモは年功序列の廃止
 と天下り斡旋の廃止であった。
  渡辺公務員制度改革担当初の再登板―――この情報に接した霞が閣は「それは大変
 だ」と色めきたった。
  霞が関の官僚たちにとって、忘れがたい出来事がある。以前、渡辺氏が行政改革担
 当相・公務員制度改革担当相だったころのこと、各省の事務次官を呼び、天下りの斡
 旋をしているかどうか、一人ひとりヒアリングを行なったのだ。
  かなり厳しい聞き取り調査で、事務次官たちは答えに窮したが、結局は嘘をつくし
 かなかった。しかもその場所(個室)には透明性を確保するためカメラが入れられ、
 渡辺氏と事務次官のやり取りが生々しく記録された。それがプライド高い官僚たちに
 大きな屈辱感を与え、トラウマとなって残ったのである。
  渡辺氏はその後、金融担当大臣も兼務することになったが(2007年8月)、乗
  り込んだ金融庁では天下りを一切させなかった。

   官僚たちの不満と怒りはすさまじく、渡辺氏の退任後も「渡辺憎し」の炎は煥りつ
  づけた(私も討凹じ穴の琲ごと見られていた)。ほとぼりが冷めることなどなく、そ
  こに渡辺氏入閣の情報が飛び込んできたというわけである。
 「あんな大臣が来たら大変だ」と多くの現役官僚が阻止に動く。政治家の "息の根"
 を止めるにはスキャンダルというのがこの国の常道だ(世界では文字どおり暗殺で息
 の根を止めることがある)。
  そして官制はDHCの吉田氏に圧力(企業経営者に対する圧力は国税筋と相場が決
 まっている)をかけ、誘導し、週刊誌に告白記事を掲載することに成功した。

  ――以上のような図式で渡辺氏の政治資金問題を読み解く人は、けっこう多い。表
 に出てこないだけである。もちろん私は、週刊誌の記事作りの内情を知っているわけ
 ではないし、あのスキャンダルが官僚による謀略報道だと断言する気もない。
  それでも渡辺氏と霞が関の対立構造を見てきた立場で言えば、さもありなん、と思
 わざるを得ない。

  ちなみに渡辺氏はスキャンダル記事が出る直前にも、官僚への "攻撃" を行なって
 いた。先に述べた(150ページ)大蔵OB・坂篤郎氏の、日本郵政顧問退任の一幕
 にキーパーソンとして登場する。「産経新聞」がそれを記事にしたので引用しよう。

 
   《郵政顧問・坂氏の退任劇 渡辺代表が菅長官に「通報」きっかけ

    日本郵政顧問に就任していた坂篤部首社長の退任劇は、みんなの党の渡辺喜美
   代表が菅義偉官房長官に「通報」したのがきっかけだった。集団的自衛権の行使
   容認などで野党との連携を進めたい菅氏と、安倍音三政権との距離を縮めたい渡
   辺氏の思惑が一致した形ではあるが、第1次安倍政権でも政権中枢にいた菅、渡
   辺両氏と坂氏は対立を繰り広げており、因縁の対決が繰り返されたともいえる》
   
                     (「産経新聞」2014年3月7日付)

  前述したように、2012年12月に日本郵政の社長に昇格した坂氏は、翌年3月に
 退任したものの、顧問として残っていた。これに官邸が不快感を示し、2014年3
 月に更迭した。

  坂氏が日本郵政顧問の職にあったことは、公にされておらず、私は150ぺージで
 《それまでは、なぜか秘密だったということだ。このことを憂慮した何者かが官邸に
 "ご注進"したのだろう》と注釈を加えたが、新聞報道によれば、この「何者か」こ
 渡辺氏だったのである。



                        ■ 霞が関は「三権」をも支配する

   これまで見てきたように、この国は官僚たちにいいようにされている。牛耳られて
  いる、と言ってもよい。私がたびたび指摘することだが、日本は議院内閣制であるは
 ずなのに、「官僚内閣制」と呼んだほうが実態に近いのだ。すなわち「官」が行政を
 支配している。
  それどころか、官僚は立法も司法も膝下に置こうとしている。そう、三権すべての
 支配が官僚の宿願なのだ。
  立法支配についてはお分かりだろう。国会法は、法案を提出できるのは内閣または
 国会議員と定めている。内閣が提出する法案を「開法」、国会議員の提出なら「議員
 立法」と呼ぶが、法律として成立する約8割が開法である。そしてこの閣法をつくる
 のが官僚たち(内閣は限られた時間で法案をチェックするだけ。そのため見落としも
 ある)なのだから、官が立法を支配していることになる。
 では、司法はどうか。読者は面食らうかもしれない。だが最近、「官僚の司法支配」
 を如実に示す事例があった。巷間かまびすしい集団的自衛権をめぐる議論に、それを
 見出すことができる。

  時間を少し戻す。2014年2月13日、「東京新聞」が朝刊1面トップで《首相、
 立憲主義を否定 解釈改憲「最高責任者は私」》と大見出しを掲げた。
 護憲派の同紙が、安倍政権が進める集団的自衛権の行使容認に拒否反応を示すのは
 理解できる。多様な言論があって当然だ。しかし「集団的自衛権の行使容認に反対」
 する前提として、内閣法制局の仕組みなどについて正しい認識をしていなかったのは
 いかがなものか。

  集団的自衛権について、従来の政府見解は以下のようになっていた。

   《我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家
   である以上、当然であるが、憲法第九条の下において許容されている自衛権の行
   使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解
   しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲
   法上許されないと考えている》
     
           (1981年5月29日、鈴木善幸内閣の閣議決定。原文ママ)


  この政府見解を、安倍政権が変更しようとした。2014年7月1日の閣議決定か

 ら抜粋する。

    《我が国による「武力の行使」が国際法を遵守して行われることは当然である
   が、国際法上の根拠と憲法解釈は区別して理解する必要がある。憲法上許容され
   る上記の「武力の行使」は、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある。
   この「武力の行使」には、他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とするも
   のが含まれるが、憲法上は、あくまでも我が国の存立を全うし、国民を守るため、
   すなわち、我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の指教として初めて許容さ
   れるものである》

  さて、これまでの「集団的自衛権の行使は違憲」という政府見解に大きな役割を果
 たしていたのが内閣法制局である。この内閣法制局に対して、この国では誤った認識
 が流布している。

  政府内の一機関である内閣法制局は、法律上の建てつけとしては、総理に助言する
 機能しか持だない。つまり内閣法制局長官は、企業で言えば法務部長か法律顧問とい
 ったところである。にもかかわらず、世間一般では「憲法を解釈する法の番人」のよ
 うに言われ、ステータスを非常に嵩上げされている。あたかも最高裁を凌駕するかの
 ごとくである。集団的自衛権の行使を違憲とする政府見解に。お墨付き〃を与えたの
 が内閣法制局であり、法制局長官は政府にとって敬うべき "先生" のような存在に見
 られている。

  ただし歴史的に見ると、官僚の中でも多少ステータスが高いのは事実だ。給料も高
 い。役人の「格」は給料に反映しており、「特別職の職員の給与に関する法律」にあ
 る「別表」を見ればすぐに分かる。内閣法制局長官は、総理、大臣に次いで、官房副
 長官、副大臣、宮内庁長官らと並ぶ3番目の高ランクなのである。ちなみに月給(俸
 給月額)は143万4000円(2014年7月現在)だ。
 
  内閣法制局長官は内閣が任命するだけの役人であり、官房副長官らのような認証官
 (任免にあたって天皇による認証が必要)ではない。もっとも、常時閣議への陪席が 
 認められており、官僚の感覚からすると、官房副長官の次くらいにエラい。これを象
 徴するのが、池田山(東京都品川区)にある旧長官公邸だ。小泉元首相が「旧首相公
 邸より官僚の公邸のほうがいい」と言って話題になったものである。
  なぜ、このようにステータスが″"アップグレード"されてきたのか。そのメカニズ
 ムにこそ「官僚の司法支配」が潜んでいる。


                                               ■ 内閣法制局の「権威」の正体

   政府内の一部局に過ぎない内閣法制局が、なぜ権威を持つのだろうか。あらためて
 法的な位置づけを確認しておこう。 
  内閣法制局は「内閣法制局設置法」第3条で所掌事務が規定されている。次の4つ
 の事務だ。

  《①閣議に恥される法律案、政令案及び条約案を審査し、これに意見を附し、及び
    所要の修正を加えて、内閣に上申すること
   ②法律案及び政令案を立案し、内閣に上申すること
   ③法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること
   ④内外及び国際法制並びにその運用に関する調査研究を行うこと)
    
  新聞報道で暗黙の前提になっている「憲法解釈の権限」というものは、内閣法制局
 の所掌事務の中にはどこにもない。そもそも、そうした解釈をする最終的な権限が行
 政府にあるはずはなく、行政府の一部である内閣法制局にも当然ない。
  もちろん、もし政府が法律を解釈する場合、法律の専門家である内閣法制局の意見
 を聞くのはいい。それを尊重するのもいいだろう。大臣が代わるたびに、政府の法解
 釈がコロコロと変わっては問題にもなるだろう。

  法解釈の変更といっても、一定の合理性は必要だ。国際情勢などの変化で従来の解
 釈が通用しないような事態が起きた場合には、政府が責任を持って法解釈を変えない
 とまずいことになる。変える責任は政府にある。この意味で、安倍総理が「最高責任
 者は私」と言ったのは、内閣法制局を取り巻く仕組みから当然であり、正しい認識で
 ある。
 
  ここで私の考え述べよう。

  政府の一部門であって、総理に意見具申するだけの役割に過ぎない内閣法制局が権
 威を持つのは、霞が関の官僚が法学部出身者で主要ポストを占める「法学部社会」だ
 からである。理系出身で元官僚の身として、私はそう思っている。
  官僚の醍醐味は、法案を起案して、国会を通し、その法律を解釈して権限を得るこ
 とにある。三権分立ではなく、まるで行政府が立法府と司法の上に君臨しているかの
 ようだが、そうすれば官僚に好都合である
  官僚は立法府の国会議員を、予算を餌に操ることもあるが、立法府である国会が国
 権の最高機関であることは否定できない。そこで官僚は法律案の内閣提案を行ない、
 法案のドラフトを書く。立法府の代行をして、事実上、立法府を形骸化させるのだ。

  前述したように法律の8割程度(重要法案のほとんど)は閣法である。
  さらに官僚は、しばしば「有権解釈」(権威のある機関が法解釈をすること)を行
 なう。法律の解釈について、最終的に問題にできるのは司法であり、行政府であるは
 ずがないのに、あたかも行政府が司法を超える存在であるかのように官僚が振る舞う
 のだ。
  こうして、行政府が事実上、立法府、司法の上に立ち、行政府の内部では、政治家
 である総理、閣僚を手玉にとって「官僚内閣制」ができあがっている。法律のドラフ
 トからその解釈までを官僚が握っているので、政治家も官僚に対抗するのが並大抵の
 ことでないのだ。

       高橋洋一 著 『「成長戦略」の罠―「失われた20年」は、さらに続く』

 

                                               この項つづく

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血中アミノ酸分析工学

2014年11月10日 | デジタル革命渦論

 

 

 

【血中アミノ酸分析工学】 

抗癌最終戦観戦記Ⅰ』シリーズで掲載したように、癌の早期発見が血中アミノ酸濃度を測
定することができそうであるという。この検査法の特徴は、(1)わずか5mlの採血のみで
癌のリスクを測定する事が出来る。(2)ある程度進行しないと変化が見られない腫瘍マー
カーと違い早期がんに対する感度が高く、がんの組織型にも左右されない。
(3)
アミノイ
ンデックス®は少量の血液サンプルで短時間に健康状態を調べられるというメリットがある。
これで、がん以外の疾患についても研究が進み、データー蓄積が進み、"ビックX解析法"

たくさんの説明変数を元に目的因変数との相関を高度な電算機で数理解析する)と、
採血し
た資料を高速で検査するコンパクトな測定装置、あるいは、"マルチアミノ酸標準液"
を用い
て迅速に比較検査(S/N比判別)することで予防でき、膨大な医療費スリム化に寄与でき
ると期待される。

このような血中アミノ酸分析検査法は、世界で初めて日本の神奈川県立がんセンター臨床研
究所(宮城洋平部長)らと味の素株式会社などの民間企業の共同開発で確立されたものであ
る。これらの技術が進展してきた背景として、例えば膵臓癌がある(下図参照)――日本で
は、膵臓癌による2009年の死亡者数は男14,094人・女12,697人で、男性では癌による死亡の
第五位、女性では癌による死亡の第四位である。膵臓癌の生涯罹患率は2%である。膵臓癌
は、癌の部位によっては症状が乏しく、進行してから発見されることが多く、膵臓癌は、画
像診断を用いて2センチメートル以下で発見されても膵臓外の隣接組織への転移がある場合
が多く、予後が極めて不良である。膵臓癌については、手術可能なより早期の発見が望まれ
来たが、
膵臓癌の診断には腹部超音波エコー、CT、MRIが用いられ、いずれも膵臓癌の発見率は
高くなく、血清癌マーカーとしてはCA19−9、CEA、SPan−1、DUPAN−2等が
あるが、これらのマーカーは、進行癌には比較的高い感度と特異度を有するが、初期癌にお
ける陽性率は低く、また膵臓癌以外の癌でも陽性になる場合があるといった問題をもつ――
この新規技術では、評価対象から採取した血液中のアミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度
データ
(Asn,His,Thr,Ala,Cit,Arg,Tyr,Val,Met,L-
ys,Trp,Gly,Pro,Orn,Ile,Leu,Phe,Ser,
Glnで構成
される19種のアミノ酸のうちの少なくとも2つのアミノ酸の濃度値が含まれているもの)を
取得し、取得した評価対象のアミノ酸濃度データ、及び、アミノ酸の濃度値が代入される変
数を含む予め設定された、膵臓癌リスク疾患の状態を評価するための式(19種のアミノ酸の
うち少なくとも2つのアミノ酸の濃度値が代入される少なくとも2つの変数が含まれている
もの)を用いて、式の値を算出することで、評価対象における膵臓癌リスク疾患の状態を評
価する。これにより、膵臓癌リスク疾患の状態を知る上で参考となり得る信頼性の高い情報
を提供できる、という効果を奏する。また、この情報の信頼性向上と、利用者に掛かる様々
な負担(例えば、精神的負担、身体的負担、時間的負担、又は金銭的負担など)の軽減とを
両立して実現することができる――という効果がある。

特開2014-106114


また、下図の新規考案は、連続して細胞をマイクロ流路の特定の領域に連続配置する機能と、
画像ベースで1細胞単位でその細胞の集団状態の有無と蛍光の発光を同時認識する機能と、
その形状と蛍光の発光の情報に基づいて認識を行って、細胞集団あるいは細胞塊を選択的に
分離精製する機能を有する細胞濃縮精製装置を提供することで、集団化あるいは塊化した細
胞を選択的に回収する細胞精製装置を提供することができる装置である。このことで、体液
(例:血液、リンパ液、唾液、尿)中の微量な被検対象の細胞が、クラスター化しているか

否か(孤立一細胞であるか否か)を識別することができ、対象細胞のうち細胞集団あるいは
細胞塊となっているものを選択的に回収し精製して、その対象細胞の正確な遺伝子情報、発
現情報の解析が実現でき、血液中に細胞集団または細胞塊が存在する場合は、それが癌細胞
である可能性が高いことから、この装置システムおよび方法は、癌の診断、癌患者に対する
薬物投与計画策定等のために用いることができるという。 

 

  Redspotted grouper

● 幻の高級魚キジハタ復活

かつては魚介類が豊かで「魚庭(なにわ)の海」と呼ばれた大阪湾の水産業再生へ、大阪府が本格的
に取り
組んでいる。「汚い」というイメージを払う切り札は、最近まで「幻」とされた高級魚のキジ
ハタだ。孵化(ふか)さ
せた稚魚の育成に成功して5年目を迎え、ブランド化も視野に入ってきたと
いう(朝日新聞デジタル 2014.11.10) 。滋賀県でいえば、琵琶湖のビワマスだ!

 Poached Fillet of Redspotted Grouper

キジハタの旬は春から夏。白身で身が締まっていて硬いが、旨みがあって、食感がよく、粗(あら
などから良質のだしがとれる。関西では夏に薄造りにして楽しむ。「アコウ-石茂魚の薄造り(刺身
)」。この場合、活けでなければうまくない。ポン酢や柑橘類を落とした醤油が合う。 粗(あら)
は潮汁にするとうまい。鍋物、しゃぶしゃぶ、煮つけも美味。ムニエル、フライ、グリルも美味いと
いう。因みに、定置網、刺し網で獲る。これは美味そうだ。



● "カップヌードルしお" にひと工夫  

そういえば、深まる秋に食欲が増し、ついつい昼食を取ることになる――これで、ルームウォーキン
グの効果が半減するが――カップラーメンしお(下図)に、ニンニクを電子レンジでチンしトッピン
グしていたが、チンの折、ニンニクから「アリシン」などが揮発してしまうので、バターなどの油脂
でコーティング、薄切りのチーズで巻きつける、あるいは竹輪に詰め込んでチンしてみたが今ひとつ
そこで、大きめの豚肉で皮を剝いたにんにくを完全に包み隠すように巻きチンし、これをトッピング
し、お湯を注いだカップをラップし輪ゴムで締め、さらに2分程度チンし、しばらく蒸らしておく。

 




こうすれば、ニンニクの有効成分を逃がさず、素早くエコに、精力増進の一品をトッピングし美味し
く頂けることに。これはチョットした工夫だと、自己満足している。

 

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エアバック工学

2014年11月09日 | 時事書評

 




【エアバック工学】

タカタが北米子会社が製造した助手席用エアバッグに不具合があるとして、各自動車会
がリコールを実施していた問題で、2014年7月18日、市場回収処置を行い、特別損失
450
億円程度を計上すると発表。エアバッグが作動した際にエアバッグを膨らませるガス
発生
剤の金属容器が壊れ、破片がエアバッグの外に飛び出したり出火したりする恐れが
あると
いう。2014年6月11日にトヨタ自動車は国内外で約227万台、6月23日にはホンダ、
日産、
マツダが世界で計294万台、6月27日には米GMが約3万3千台、7月8日には富士
重工が
米国で8557台をリコールすると発表。また、2014年10月20日、高速道路交通安全
局(NHTS
A)はリコール対象車に対して早急に修理するよう警告。対象車数を約474万台と
発表。そ
の後約780万台に拡大。10月27日には米国の消費者がフロリダ州の連邦地裁に集
団提訴し
ているという(投資情報総合サイト)。

 

ただ、タカタは13年3月期にリコール費用300億円を特別損失で計上。15年3月期第1四
半期にも447億円を引当金に繰り入れた。この巨額特損で15年3月期は240億円の最終赤字
に転落する見込みだが、想定される範囲の修理費用の引き当て処理を済ませたことで、リ
コール問題は一段落したと思われていた。にもかかわらず、次々とリコールが発表された
ため、株式市場でタカタ株は連日大幅に売り込まれた。20日の2186円から24日には1538円
へと下落。4日間で500億円以上の時価総額が失われた。
(中略)これまでのリコールは、
00年から02年9月にタカタのメキシコ工場で作られた部品が対象だった。03年から07年製
造の部品でも、高温多湿な地域で長期間使用された場合に不具合が発生している。この問
題では従来、メキシコ湾岸の一部地域に限って自主回収やリコールが行われていたが、対
象地域がジリジリと拡大しているのだ。
「特別に高温多湿な地域だけの問題」とタカタは
主張するが、本来、自由に移動できる自動車で地域限定のリコールはほとんど例を見ない
危険性が高ければ、地域に関わらずリコールするのが筋だ。であるならば、全米、全世界
でリコールとなる可能性は無視できない。
一番の問題は、タカタに対する不信感の広がり
だ。すでに米メディアの批判報道は過熱しており、米議会でも取り上げられた。集団訴訟
の動きもある。
米国で報じられているタカタ製エアバッグによる事故が、すべてタカタ製
部品の欠陥が原因かはまだわからない。トヨタの品質問題では“意図せぬ急発進”のほと
んどは後にアクセルの誤操作と結論づけられた。だが、いったん、危ないというレッテル
を張られてしまえば、それを払しょくするのは難しい。タカタが窮地に追い込まれている
という厳し見方も報じられている(「広がるリコール。タカタの甘い認識」-欠陥エアバ
ックは政治問題化」東洋経済、2014.10.27)。

 

● 自動車用エアバッグ作動の流れ

ところで、一口にエアバックといっても、車椅子のような低速移動体の転倒障害防止装置
や、各
種スタント行為の障害防止用クッション、さらには惑星間移動体の着陸衝撃の緩和
装置や二輪
車などのと広範に利用されているが、自動車用エアバッグの動作フローをお復
習いしてみよう。

(1)まず、クルマが衝突すると加速度センサーが反応。センサーからエアバッグ ECU
(Electrical Control Unit)
に加速度の情報が送られ、(2)
エアバッグ ECU は内部でも持っ
ている加速度センサーの情報も加味してエアバッグの展開・不展開を決定。(3)展開と

の決定が下された場合、エアバッグECUはエアバッグモジュールに展開の指示。(4)イ
フレーター(エアポンプによる膨張装置)にて火薬を爆発させガスを発生させ、エアバ
ッグを0.01秒
単位で瞬時に膨らませる。この際、収納部(通常、運転席ではステアリン
グホイールの中
央部、助手席ではダッシュボード上部)を押し破ることでバッグが出る。
(5)完全に膨
張したら、バッグの背後に設けられている穴よりただちにガスが抜けエア
バッグが収縮―
という一連の動作フローの流れとなる。

Honda Fact Book/二輪車用エアバッグシステム


これまでの不具合の原因として、タカタとホンダは、米国のモーゼス・レイク工場とメキ
シコのモンクローバ工場で2000~02年、インフレーター(エアバッグを膨張させる
ガス発生装置)の中に用いる火薬の製造工程や管理に問題があったと米当局に説明してい
るが、これは、「高温多湿な地域で長期間使用された場合に不具合が発生」してきたとい
うタカタなどメーカ側の見解と符合させると「火薬が湿り劣化し、衝突試験の合格基準を
下回った」と言うことになることが考えられるが、劣化させない方法を考えると、(1)
火薬の耐久性を向上させる、(2)劣化しないようなケーシリングを考案する、(2)製
造過程で起因する不具合事項の一掃(ゼロ欠陥運動:ZDM)などが考えられる。



【要約】ステアリングホイール用エアーバッグモジュールに関する。エアーバッグモジュ
ールは乗員に面するカバーを有する。この発明によれば、カバー(15)は、それが正面
位置に配置されているときには、ステアリングホイールの下方に位置する領域(18)に
おいてのみ完全に開かれる。アウトオブポジションに着座している乗員に加わる負荷はス
テアリングホイールリムの下部の方向へガスバッグが展開することによって軽減される。
さらに、負荷は二次衝突に際しても軽減される。これは、カバーの中央領域及び上側領域
がガスバッグが展開するする以前の位置に実質的には留まっており、その結果、ガスバッ
グがつぶれた後にカバーのエネルギー吸収部材の有効性が維持することで、ステアリング
ホイール用エアーバッグモジュールにおいて、乗員の保護特性を改善する。


 特開2013-212831

【要約】点火信号に応じてガス発生器(1)を点火するための点火器(3)を備えたエア
ーバッグ
モジュールのガス発生器(1)用の点火装置であって、熱供給の間、点火信号と
は独立に、ガス発生器(1)を点火するための早期点火セット(4)を備え;早期点火セ
ット(4)を受容する収容部(25)、及び、ボリューム調整手段(5)を備え、それら
は収容部(25)の中に早期点火セット(4)と共に配置される。それに関して、ボリュ
ーム調整手段(5)は電導性材料からなるファブリックを含む構成により、点火信号に応
じてガス発生器を点火するための点火器を備えたエアーバッグモジュールのガス発生器用
の点火装置を供給する。




● ブラックペッパーの家庭内菜園

法事の準備などで忙しいのはいいのが、二人とも疲労からくるのか注意散漫状態。こんな
ときは別ののこと――趣味などのこと考えてみても良いのではということで、来年春のハ
ーブの家庭内菜園(計画)に、さらに、黒胡椒をもう1つ追加することにした。黒コショ
ウはインド原産であり、高温多湿の気候で栽培される――因みに、栽培地はインド、イン
ドネシア、マレーシア、ブラジルなどブドウの房のように小さな果実がなり、実が熟する
直前につみ取り乾燥させたもが黒コショウ。完熟した実の皮をむいて乾燥させたものが白
コショウ――が、自然な気候の中で、30メートルの高さまで成長する。黒コショウを乾
燥し、粉砕することができるが、粉末はペッパーミルやグラインダーを用いる。黒コショ
ウは屋内で温室管理――熱帯性植物のため、温度は最低15℃以上にキープ。水はけのよい
土壌を好み、日光を好むが、直射日光のあたる場所は避け、半日陰になる場所での管理し、
冬の間は水遣りを少なくし、乾かしぎみに――すれば栽培できる。また、昼夜の適度な温
度差で栽培することで、香りが高く辛みも増すといわれている。

家庭菜園の作業フローを記載すると、(1)まず、腐葉土とパーライト、木炭で作られた
土に植える。(2)土壌表面から1/4インチの深さに種子を蒔くき、培土を湿らせる。
プラスチック製のラップでプランターの上部を覆う。 このときプランターのリップの周り
にラップをバンドを締め付け固定する。23~30℃の温度で管理。(3)12インチ径のポ
ットに苗を移す。 スプレーミストと水差しで頻繁に湿らせ注水。 部分的な日陰を形成し
ポットを置く(東側の窓辺が適当)。(4) 苗の近くに土壌中に小さな金属製のトレリス
(格子垣)を立てる。(5)夏の間は毎週受粉作業を行い、開花しは21℃以上に室温をキ
ープ。温度が24℃以上になれば屋外に移すが、12月~1月の温度が降下すれば室内(温室)
に戻し、夏の終わり次の種子が花咲く。 




                                                                       

 

  

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楽市楽座再論

2014年11月08日 | 政策論

 

 

  

 

【脱ロスト・スコア論 Ⅳ】

● たまには熟っくりと本を読もう

高橋洋一著 『「成長戦略」の罠―「失われた20年」』



                          第3章  この国を蝕む「官愚」

                      ■ なぜ公務員制度改革は進まないのか

 「官愚」とは、「衆愚」(多くの愚かな人々)の対義語のつもりで編み出した私の造語

 である。「衆愚政治」は辞書に載っているが、「官愚政治」はない。霞が間で28年間を
 過ごした身としては、これではあまりに公平を欠くと思い、" 無能の集団" である官
 が支配する日本を指して「官愚の国」と呼んだ次第である。

  安倍総理が明言した「岩盤規制にドリルで穴を開ける」ためには、この官僚支配の
 造を壊さなければならない。すなわち、日本が成長してゆくには公務員制度改革が
不可
 なのだ。しかし前章で官僚の天下りについて言及したように、つねに批判の的
とされ
 てきた天下りは今もなお堂々とまかり通っている。つまり公務員制度改革は前
進してい
 ないに等しい。

  なぜ公務員制度改革が進まないのか。その歩みを別表(下表)に示したが、直近の動
 きを検証しながら述べることにする。

  毎年、7月はキャリア官僚の人事の季節である。それに先駆けて2014年5月30
 日、内閣人事局が発足した。これは4月11日の参院本会議で成立した公務員制度改革
 関連法の柱であり、従来の "慣例" を彼って、審議官紙以上の幹部官僚人事(約600
 人)を官邸主導で決める制度だ。

 

  内閣人事局のスタートにあたり、新聞各紙では「政治家による公務員人事に対する
 過度な介入」など、新制度への懸念がアナウンスされた。ただしこの「懸念」は、マ
 スコミを使った現役官僚側によるネガティブ・プロパガンダだろう。上司である政治
 家に思うような人事をさせず、。慣例〃どおり自分たちだけで人事を進めようとする
 魂胆が見え見えだった。サラリーマンと同じで、上司や人事部ではなく、自分で勝手
 に人事ができればうれしいに決まっている。
  一方、内閣人事局の設置根拠となっている公務員制度改革法案は、昨年閣議決定さ
 れたものだが、このとき現役官僚たちとは違った「懸念」を抱く人たちもいた。それ
 は公務員制度改革に取り組んできた改革派の元官僚たちで、彼らの懸念は「政治家の
 人事介入」ではなく、別のところにあった。
  その懸念の中で、特に大きかったのは次の3点である。

  ①人事院の焼け太り
  ②幹部公務員の身分保障が過保護すぎること
  ③天下り禁止の骨抜き

  結論を言うと、彼らの懸念は現実のものとなった。
  まず①の「人事院の焼け太り」について見てみよう。
  本来であれば内閣人事局は、人事院、総務省などに分散された人事関連の機能を統
 合し、内閣主導の幹部人事を支える体制づくりを目指していた。2008年の基本法
 や、2009年のいわゆる「甘利法案」である。
  2013年9月時点で政府が示した法案骨子では、「甘利法案」の内閣人事局関連
 部分どおり、とされていた。ところが、政府の法案を見ると、

  (1)任用、採用その他の事務につき、内閣人事局と人事院との間でそれぞれ "焼
    け太り" のための業務分担を設定
  (2)幹部職員の級別定数の設定につき、内閣人事局の権限としつつも「人事院の
    意見を尊重」との規定を追加

  となっている。
  つまり、内閣人事局への人事機能一元化ではなく、人事院の機能を温存したまま内
 閣人事局も発足することにすり替わったのだ。実際、人事院は「お取り潰し」に遭わ
 なかった。これでは新しい組織をつくるという「焼け太り」であり、人事機能が分散
 した無責任体制をさらに悪化させるだけになる。過去の改革プランでは焼け太りは許
 さなかったのだから、大甘な措置と言える。

  次に②「幹部公務員の過保護」だが、これも手つかずで今までどおりだ。
  現行の公務員制度では、次官・局長などの幹部公務員も係員レベルの職員と同じ身
 分保障の対象であり、よほどのことがないかぎり免職も降格もされない。その結果、
 民間人や若手を幹部に起用しようとしても、幹部ポストにある職員の身分保障に阻ま
 れる。だから結局、年功序列型の順送り人事によるしかない――以上が実態だ。
  かつて自民党が野党の時代には、「幹部公務員法案」を提出したこともあったが、
 今回は「幹部公務員法」がない。これでは不十分だ。やはり大甘な結果となっている。

  最後の③「天下り禁止の骨抜き」も懸念していたとおりで、天下りについては "抜
 け穴゛だらけである。
  2010年に、民主党政権の下で公務員の「退職管理基本方針」が決定され、「現
 役出向」という天下りの抜け穴がっくり出されたが、今回はそれを改めるどころか、
 逆に抜け穴の拡大が行なわれている。それは政府案に盛り込まれた「人事交流の対象
 となる法人の拡大、手続の簡素化」という規定だ。
  この規定は「退職管理基本方針」に沿って現役出向を拡大するためのものでしかな
 いだろう。退職管理基本方針は、かつて野党時代の自民党から批判があったとおり、
  「天下り禁止」という第一次安倍内閣以来の方針を覆そうとするものだ。それを踏
 襲するどころか運用拡大するのだから、「天下り禁止」に逆行することになる。
  129ページに掲げた表にあるとおり、公務員制度改革は「廃案の歴史」である。
 麻生政権時代の2009年、民主党政権時の2010年と2011年に提出された改
 革関連法案は、いずれも "ねじれ国会" の中で成立しなかった。そして今回、衆参で
 過半数を持つ安倍政権でようやく実現したわけだが、蓋を開けてみたら、内容が大き
 く後退していた。
 
  人事院の焼け大り、幹部公務員の過保護な身分保障、天下りの3点については前述
 したとおりだが、欠陥はまだある。
  ひとつは「国家戦略スタッフ」と「政務スタッフ」の問題だ。かつての改革プラン
 では、官邸に国家戦略スタッフ、各大臣のもとに政務スタッフを置き、重要政策の企
 画立案をサポートすることとしていた。また、人数にも制限を設けず、政権の判断で
 実効性のあるチームを形成できることとしていた。
  しかし今回の政府案では、①国家戦略スタッフは既存の総理補佐官をもって置き換
 えることとし(増員なし)、②政務スタッフは各省1人の大臣補佐官としている。政
 策の企画立案サポートは一定規模のチームで行なうことが不可欠であり、不十分と言
 わざるを得ない。
 
  次に「公募制度」である。かつての改革プランでは、公募制度の導入が重要な柱の

 ひとつと位置づけられ、具体的な数値目標を定めるなどの規定を設けていた。しかし
 今回の政府案では、これらの規定が削除されている。これでは、公募導入の推進は期
 待できない。
   公務員人事の実質的な最高責任者は官房長官だ。菅義偉官房長官は公務員人事にか
  なり厳しいので、右記のような制度の欠陥もあまり目立たない。しかし、菅氏に代わ
  って「官僚に甘め」の政治家が官房長官になったときには、官僚天国になるだろう。
  つまり、政治家の人事介入を許さず官僚の官僚による官僚のための人事になる。
  そのうえ人事院などの役所組織は温存されたままなので、官僚が自由に活動できる
 揚が確保されている。また幹部公務員の身分も従来どおり保障されるから、政治家も
 おいそれと手出しができなくなり、官僚が守られる聖域になる。これだけでも現役官
 僚には居心地がいいだろう。しかも、天下りも抜け穴が多くなって、退職後も官僚天
 国を満喫できるというわけだ。
  おそらく官僚は、今の菅官房長官後のところまで読んでいる。今はそっと息を潜め
 ておこう、そのうちに自分たちの天下の時代が来る……と。


                        ■ 消えた「制度改革推進本部」

  時間を少し戻そう。2013年7月10日に国家公務員制度改革推進本部と、事務局
 がなくなった。その5年前の2008年6月B日に国家公務員制度改革基本法が施行
 され、7月11日、同法に基づき国家公務員制度改革推進本部が設置されたのだが、そ
 の措置には5年間という時限があり、期日が到来したのである。
  この法律と推進本部で国家公務員改革は進むはずだった。ところが、5年経っても
 何も変わらなかったに等しい。しかも、国家公務員制度改革基本法が事実上、消滅し
 た。霞が関官僚にとって、これがどれほど喜ばしいことか目に浮かぶようであった。
  今一度、129ページの表を参照していただきたい。最近の政権における国家公務
 員改革の経緯をおさえておこう。
  第一次安倍内閣では、国家公務員法改正によって天下り規制、能力実績主義が盛り
 込まれた。私が関与していたから言うわけではないが、特に天下り規制は「天下り斡
 旋の禁止」という国家公務員改革の歴史の中でも画期的なものだった。もっとも、こ
 れで霞が関の官僚すべてを敵に回したため、政権内で官僚との関係がギクシャクし、
 結果として第∵次安倍内閣は崩壊してしまった。



  続く福田政権では、第一次安倍政権のときに検討された国家公務員制度の総合的改
 革が法制化され、国家公務員制度改革基本法が制定された。この法律は政策の枠組み
 や進め方を定める「プログラム法」と言って、実定法をあとで改正しなければならな
 いが、国家公務員制度改革の全体を眺望できる法律である。それに従って国家公務員
 改革は進むはずだったのだ。
  当初のスケジュール(工程表)では、内閣人事局の設置は1年以内、それ以外の法
 制の措置(国家戦略スタッフ、幹部職員制、キャリア制度の廃止など)は3年以内、
 その他の借着を合わせて5年以内で、国家公務員制度改革基本法に沿った改革は終了
 するはずだった。

   麻生政権では、国家公務員法改正案(これが通称「甘利法案」)が提出されたが、

 廃案になっている。
  そこで政権交代だ。民主党政権下でも、国家公務員法改正案(通称「民主党法案」)
 が提出されたが、廃案となった。このときは、野党の自民党・みんなの党で幹部公務
 員法案(通称「自・みんな法案」)を共同提出したが、これも廃案となった。
  麻生政権以降、国家公務員改革の勢いはますます低下していった。脱官僚を掲げて
 いた民主党があっさり官僚依存に転向したので、さらに国家公務員改革は進まなくな
 った。公務員改革を断行しようとすれば当然、官僚の抵抗がある。だから大きな政治
 パワーが必要なのだが、麻生政権以降は官僚との融和を重視し、結局のところ、改革
 は何もできていない。
 
  この間に廃案となった法案(麻生政権以降に提出された改革関連法案)を比較する

 と、「自・みんな法案」が国家公務員制度改革基本法に最も忠実である。甘利法案も
 民主党法案も、幹部公務員に甘く、天下り規制も抜け穴だらけ(上表)。
  この5年間、霞が関官僚たちにとって、国家公務員制度改革基本法は目の上のたん
 こぶだった。それが事実上なくなったのだから、各省で「祝砲」が打ち上げられてい
 
たらしい。
  私は小泉政権において、各省庁事務次官の天下り先であった政策金融機関の改革を
 担当した。その後、各省は時間をかけてその骨抜き、すなわち私の改革案を "なかっ
 たもの" にすることに汲々としていたが、ようやく完成したようである。詳細は省
  が、商工中金も政策投資銀行も天下り先として確保されている。役人の天下りにか

 る執念深さには、皮肉をこめて感心する。

  稲田朋美行政改革担当相∴国家公務員制度担当相は、「甘利法案をベースに公務員
 改革を行なう」と言っていたが(5月24日)、あまりに「甘い」のではないだろう
 か。官僚の掌の上に載せられているようで、不安感が拭えない。国家公務員制度改
 を達成しなければ、成長戦略の障害である「岩盤規制」は破れないのだ。


                      ■ 霞が関だけではない天下りの利権


   この国の天下りが性質が悪いのは、霞が関の官僚に限ったことではなく、いたると
 ころで見られることだろう。実は東京都も天下り天国なのだ。私も役員に名を連ねる
  NPO法人「万年野党」が独自に調査した結果を次ページ以下に掲げる。これは課長
  級以上の東京都職員が、過去4年間にどれだけ都の外郭団体に「再就職」したかをま
 とめたもので、天下り利権の実相を端的に表わしている。
  右記の調査発表は都知事選投祭日の直前、2014年2月3日のことだった。東京
 都職員の再就職は合計249人。この数字は比率(全職員に対する天下り先確保職員
 の比率)で言うと、国家公務員よりも高い。
  国家公務員に関しては2007年に国家公務員法の改正が行なわれ、一定の規制が
 なされたが、地方公務員のほうは事情が違う。同じ2007年に出された地方公務員
 法改正案が廃案になったままなのだ。つまり地方公務員法での天下り規制は行なわれ
 ていないため、東京都職員による外郭団体への再就職が多いのだろう。
  ただし249人という数字は氷山の一角かもしれない。というのは、天下り問題に
 取り組んだ大阪市の例と比べても、人数が少ないように思えるからだ。

  私の知人は橋下徹大阪市長に委嘱され、2012年6月から2013年秋まで、大
 阪市の人事監察委員会委員を務めた。同時期に大阪府の人事監察委員も務めている。
  人事監察委員会とは、簡単に言えば再就職の適否を個別に審査したり、問題があっ
 た職員の分限懲戒処分を決めたりする委員会である。私が会長をしている株式会社政
 策工房が関わったのは前者の「退職管理部会」だ。大阪市は2012年5月に職員基
 本条例を定め、地方自治体としては初めての厳しい天下り規制を導入した。
  たとえば、勤続20年以上の職員および職員OBは、原則として条例に基づく外郭団
 体や職員を派遣している公益的法人、あるいは市が負担金や補助金、交付金など財政
 的援助をしている法人には再就職できない。例外は市長が人事監察委員会の意見を聴
 いて承認した場合に限っている(職員基本条例第47菜)。
 
  そんな制度の下で、人事監察委員会が本格的な個別審査に乗り出す前の2012年
 度は、天下りの実態がどうだったか。外郭団体および外郭団体の子法人に課長代理級
 以上の職員が再就職した人数は108人に上っていた。
  この108人を東京都の数字、249人と比べると半分弱になる。大阪市が予算規
 模で3・8兆円であるのに対して、東京都は12兆円と3倍以上だ(2014年度)。
  しかも都の数字は課長級である。大阪市のように課長代理級を含めれば、相当な数に
 なるはずだ。

 
 
  大阪市の実態は人事監察委員会の中の退職管理部会が2012年9月から翌年6月
 まで断続的に部会を開き、延べ221件の再就職案件について個別に審査して判明し
 た。その結果、再就職を承認した案件が201件たった。
  201という承認数は多く見えるかもしれないが、実はほとんどが比較的、待遇条
 件が低く、ハローワークや対象法人のホームページでも民間から求人するなど、雇用
 機会の均等が保たれていた案件だった。局長板で承認した場合も、一般公募で適任者
 が見つからないケースなどである。
  規制の重要な成果は、具体的な人名を秘匿しつつ、こうした再就職案件の結果がす
 べて市のホームページで公開されている点にある。審査に当たった委員の名前も公表
 されている。
 
  こうした透明性を確保した結果、何か起きたか。
  まず職員の問に「いい加減な『密室の天下り』はもうできない」という抑止効果
 生まれた。これが最も大きい。次に人事監察委員会の審査をパスしたとしても、民間
 からの募集も前提になっているから、結果的に採用されなかったケースもある。
  実際、2013年度の外郭団体および外郭団体の子法人への再就職は、先に示した
 前年度の108人から34入に激減したのである。さらに再就職した34入に対し、実は
 審査で承認された数は56入に上っている。つまり、差し引き22入は再就職を希望して
 事前の人事監察委員会審査もパスしたが、肝心の採用試験・面接で果たせなかったわ
 けだ。すなわち就職活動の舞台裏で、公務員と民間人の競争原理が働いたのである。
  密室の天下りが続いていたら、とても考えられなかった事態だろう。
  もっとも、こうした人事の荒療治は、時として摩擦も多い。長期的には望ましいこ
 とでも、短期的に見れば失敗もある。特に、退職ではなく採用の場合を見ると、民間
 人が不祥事を起こすこともあり得る。公募区長や公募校長では、残念ながらそうだっ
 た。取り組みの方向はよいが、密室天下りの解消などの「いいこと」は報道されず、
 マイナス面ばかりがフレームアップされるのは残念である。
 

       高橋洋一 著 『「成長戦略」の罠―「失われた20年」は、さらに続く』

 

 

   

平成版「楽市楽座」ともいえる「行政改革」が遅々として進まないと高橋ならではの指
摘は、納税国民の内なるを告発するかのようだと感じるのは過剰反応なのだろうか。
ところで、「新経済成長戦略『双頭の狗鷲』とは」(『梅もどきと双頭の狗鷲』2009.
12.02)で「小泉改革が破綻したが、在任中彼は、財政規律優先と経
済成長の両立は難
しいから、財政規律優先→経済成長という路線をとったのは旧福田派
(旧大蔵官僚閥)
であったことも影響しているのだろうが、結果、小泉が成功している
ように見えたのは
アメリカのバブル経済によってもたらされた外需拡大に完全に依存したものだったか
らです」とい萱野稔人(『トベラと消えた成長モデル』)の指摘通りだ。財政規律ば
かりに目を奪われていると、経済成長ばかりに目を奪われているとその双方とも現実と
のギャップが深まるということに帰着する」と記載している。つまり、「
潜在的国民生
産力」×「行
政の効率化」積和政策を構想し、後に政策評価の数値化(=見える化)重
視を構想し、「デジタル・ケインズ主義」と呼称し、新しい政策設計をイメージした経
緯があることを今夜再確認する。その意味で先回の「是々非々主義」と合致しているこ
とも点検した。
     



                                                この項つづく

 

 

 

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太陽光励起レーザ工学

2014年11月07日 | デジタル革命渦論

 

 

 

【オールソーラーシステム完結論 29】 


● 太陽光励起レーザー工学

水素ガスは、酸化剤により酸化し水を生成するので、燃料電池の燃料などクリーンな燃焼
であり、化石燃焼の枯渇や、地球温暖化対策からエネルギー・インフラ基盤を、化石燃料
からクリーンなエネルギーへ切換える必要があり盛んに研究開発されている燃料である。
これまで、水素は、水の電気分解反応により生成され、高圧容器に充填された後、各所に
運搬されて使用されているが、運搬重量が大きく、可燃・爆発の危険性があり取り扱いに
注意を要し、長期保存からも充分なものでない。その弱点を克服する方法として『パウダ
ー水素エネルギー工学
』で取り上げた、水素化ホウ素ナトリウムから水素を取り出す方式
を掲載したが、それ以外の既存方法には以下のようなものがある。

 



例えば、苛性ソーダーの電解製造方法から水素を取り出す従来法にもくみ取るべきものが
あるが、多くは地下化石燃料依存型であり、持続可能社会指向型の、いやこの"オールソー
ラーシステムにはなじまないが、水電解法は再生エネ型は出力の不安定の弱点は蓄電シス

テムの整備で解決できるものの「コストが高い」との一点が問題とされる(ここでは、水
電解法の技術課題についてまた別の機会に掲載したい)。そこで、「マグネシウムと太陽
光励起レーザを用いたエネルギー循環システム」の新規考案「特開2007-145686 水素生成
装置、レーザ還元装置、エネルギー変換装置、水素生成方法および発電システム」を取り
上げた(下図参照)。




この提案は、水素生成装置、レーザ還元装置、エネルギー変換装置、水素生成方法と発電
システムに関わるもので、水素生成装置10は、金属元素を保持する反応容器12と、反応容
器に水を供給する貯水槽16と、金属元素と水との反応により生成した水素ガスを回収する
水素取出管14とを含み、回収された水素ガスを貯蔵する水素貯蔵装置26を含むもので、水
素ガスを還元し生成した金属元素の酸化物や水酸化物をレーザ還元し、金属元素を再生す
る。レーザ還元では、太陽光励起レーザを使用することができる。また、レーザ還元の際
に形成する荷電粒子を使用し電流を生成する、エネルギー変換装置と水素発生システム
を使用する発電システムである。

 

この方法は、パウダー水素エネルギーの「水素化ホウ素ナトリウム循環システム」と異な
り、マグ
ネシウムはペレット状あるいは豆粒状であり、エネルギー効率でみると、太陽光
励起レーザは数パーセント(2%とも)言われている。これは、太陽光発電の水電解法と
比べ――太陽光の変換効率を25%として電解効率を80%、それ以外のエネルギーロス
をα%=10としたとき、20α%(=
80×0.25×(1-0.1)α)となる――9分の1と効率
が悪いことになる。因みに、水素化ホウ素ナトリウム循環システムの概念図を下に掲載。

なお、メタホウ酸ナトリウムと水素および還元性金属の反応メタホウ酸ナトリウムを還元
性金属と水素雰囲気下で加熱することで、NaBH4を合成する方法の式、

NaBO2 + 2H2 + 2Mg  → NaBH4 + 2MgO  
△G0(298K) = -342 [kJ/mol-NaBH4]

金属の表面にH- (プロタイド)が生成する金属では特に効率よくNaBH4を合成することがで
きる。この方法でも NaBH4の加水分解により水素を発生した後に回収される、NaBO2を含
む"使用済み燃料"からNaBH4 を再生で
きる。

このように、マグネシウム法は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、
カルシウム、亜鉛な
どの元素から反応エネルギーを回収すると共に、水素ガスを発生させ
る技術――金属を用いて水を水素に還元する水素生成装置と生成された金属酸化物または
化学物質を、レーザで還元するレーザ還元、エネルギー変換方法、水素生成および発電シ
ステムであるが、従来、含マグネシウム酸化物(酸化マグネシウム、ドロマイト)などの
酸化物資源を約千℃の高温のアーク放電で還元し、水を添加しても水素ガスを得ることが
できるが、環境負荷を増大させる原因となる。

(1)また、水素生成装置およびそのための方法が種々提案されている.特開2003-313001
    号公報では、密閉可能な本体容器内で、水素化物を加水分解させて水素を発生させる
  水素
発生方法で、水素化物と水とを、少なくとも一部が水蒸気透過性を有する撥水性
  水蒸気透過
材により隔離すると共に、この撥水性水蒸気透過材を透過する水分子と水
  素化物と
反応させて水素を発生させる水素発生方法がある(下図参照)。

 
(2)アルミニウムとアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属からなる水素発生用燃料を
  収容する容器と、この容器に収容された水素発生用燃料を加熱溶融して合金化する加
  熱手段と、容器内の水素発生用燃料に水を供給する水供給手段とを備え、水素回収手
  段で発生した水素を回収する水素発生装置である(下図参照)。

(3)また、アルミニウムとアルカリ金属もしくはしくはアルカリ土類金属との合金の水
  素発生用燃料を使用し、容器の内部を冷却する冷却手段を備える水素発生装置とこの
  装置を用いる水素発生方法(特開2002-69558)。

(4)反応金属体を熱源を介して溶融し、溶融反応金属体を容器底部に貯め、溶融反応金
  属体に水を供給し熱化学反応を発生、得られた水素を外部に導出し、酸化金属体を排
  出手段を介して容器外に排出する水素発生方法(特開平8-109001)。

(5)容器内に設けられ水と電熱化学反応する反応金属体とを用い、反応金属体の上部か
  ら水を供給し、反応金属体と水とによる電熱化学反応により水素ガスを発生する水素
  発生方法とその装置(特開平8-59201)。

(6)水素を水から生成させるためにアルミニウム粉末と酸化カルシウム粉末とを含み、
  アルミニウム粉末の配合比が85質量%以下である水素発生材料とこの材料を使用す
  る水素発生方法と装置(特開平7-109102)。



(7)また、特開2004-231466では、水素を水から生成させるためにアルミニウム粉末と
    酸化カルシウム粉末とを含み、アルミニウム粉末の配合比が85質量%以下である水
    素発生材料およびこの材料を使用する水素発生方法と装置。



上記した水素発生装置と水素発生方法は、金属を使用して水を還元する高温状態で水素発
生材料を混合物し、混合物を加熱する電気炉、電気化学反応、または高水素原子含有物質
を使用し水素ガスを生成するが、金属元素は、水素を発生させた後、酸化された金属酸化
物を廃棄すると、際限なく金属元素――例えばアルミニウムを使用する場合、電力消費と
化石燃料の使用などを含めたトータルな環境コストが必ずしも低いものではない。
と、そ
う記載している。実はここのところの大まかな計算値が欲しいところだが、この労力は膨
大になるだろう。

一方、金属元素の酸化および還元は、湿式の電気化学的方法以外に、いずれも高温下で進
行する。この場合、最小の装置コストで金属酸化させ水素を生
成し、同時に処理対象を変
更し、最小の装置構成の変更で金属酸化物を還元し、金属生
成する水素発生装置が提供で
きれば、トータルな環境
コストを逓減できると指摘している。


● 太陽光励起レーザとは

一方、レーザ装置は、主に電気エネルギーを光(ランプ点灯)や放電の形態に変換し、レー
ザ媒体を励起することによりレーザ光を発生している。この手法には、複数段のエネルギ
ー変換過程が含まれており、エネルギー効率が低い(効率は2%?)ことが知られている。
この理由は、もともと品質の良い電気エネルギーを、低効率エネルギー変換を経て光に変
換して利用するためで、この点を改良したものに、半導体レーザ励起の固体レーザが提案
されいるが、光電変換効率は、約50%程度まで得られるようになり、その汎用性も向上
すると考えられる。

そこで、太陽光を使用する太陽光励起レーザがある。太陽光を励起光源として使用すれは、
化石燃料に依存した電気を直接使用した電気-光変換プロセスを使用せず、レーザ発振光
源にでき、レーザ還元装置として、汎用レーザ装置をより容易、かつ低コスト、さらに低
い環境負荷で使用できると考えられる。加えて、風力発電、潮力発電、地熱発電など化石
燃料に依存しない発電方式も実用化されつつある。ピーク発電量では、2千kWhを超え
る電力を提供することが可能で、この電力で発振するレーザを使用しマグネシウムの形で
エネルギーを蓄えることができれば、環境負荷を低減したエネルギーの供給できる。

さらに、レーザ還元を行う場合、金属酸化物などの分解の初期プロセスで、金属イオンが
生成することが見出され、レーザ還元より発生する金属イオンは、局所的なプラズマを形
成し、既存の磁気閉じこめ装置を使用することにより制御可能となり、磁場方向に垂直な
方向に金属イオンと負イオンは互いに逆方向に運動するため、系外に電流として取り出す
ことで、光電変換が可能となる。金属元素を用いて水から水素を製造する場合、酸化物が
副生物として得られ、高いアルカリ性の故に、その処理・廃棄などが困難であった。さら
に、金属元素の酸化物は、高温分解すれば、再度、アルカリ金属またはアルカリ土類金属
に変換でき、再生可能エネルギーを使用し高温環境を生成できれば、環境に対して最も負
荷の少ない方法で水素ガスを生成できる。

また、従来の汎用レーザは、電力を消費し、また電気-光エネルギー変換効率が低く、一
方、太陽光励起レーザは、大学・研究機関などにおける実験的研究がなされるにすぎず、
工業用途に適用することができない。

そこで、特許文献(下図/下)に記載されているようなテーパー状の反射面による集光方
では、太陽光がレーザー媒体の出力端部付近に集中して集光され、レーザー媒体が吸収
る太陽光のエネルギーがその部分だけ大幅に大きくなる結果その出力端部付近でのレー
ザー媒体の歪みが大きくなり破損するおそれがあったが、下図(上)の、太陽光励起レー
ザー装置1のように、太陽光に励起されてレーザー光を出力す
る棒状のレーザー媒質31
と、レーザー媒質の長手方向の軸Xに対してレーザー媒質の側
方に位置し軸Xに対してそ
れぞれ異なる傾斜角を有し太陽光を反射する第1反射面22a
及び第2反射面22bと、
を備え、第1反射面は、レーザー媒質の出力端部側の位置から、レーザー媒質の出力端部
と反対側の端部側の位置へ向かうにれて、軸Xから離れるように、軸Xに対して傾斜する
構造により、太陽光からレーザー光への変換効率及びレーザー媒体の耐久性を向上させる
ことが可能な太陽光励起レーザー発振装置に改良したものである。

下図は、酸化マグネシウムと、一酸化ケイ素または二酸化ケイ素のような非金属酸化物と
の混合物又は化合物に対してレーザを照射することにで、非金属酸化物から酸素を脱離さ
せることで、一酸化ケイ素または二酸化ケイ素のような非金属酸化物から高純度のケイ素
を収集する。

ところで、理論的には、一酸化ケイ素又は二酸化ケイ素などの酸化物に対して、所定条件
下において、レーザなどを用いて沸点以上の温度をかけると、二酸化ケイ素等を構成する
ケイ素と酸素との結合が切断されつつ噴出し、加熱場所から分離することができる。した
がって、半導体材料などに用いることができるケイ素を収集することができ、例えば、二
酸化炭素でも、所定条件下で、レーザなどを用いて沸点以上の温度をかけると、炭素と酸
素との結合が切断されつつ噴出し、加熱場所から分離でき、地球温暖化の一因とも考えら
れている二酸化炭素量が削減できるが、「所定条件」を選定することが困難であり、理論
的にはともかく、現実的に、高純度のケイ素を収集するとか、二酸化炭素量を効果的に削
減させることは非常に困難である。この還元装置は、第1の酸化物(例えば、酸化マグネ
シウム、酸化カリウム又は酸化カルシウム)と第2の酸化物(例えば、二酸化炭素や一酸
化ケイ素)との混合物や化合物に対しレーザを照射することで、第1と第2の酸化物から
酸素を脱理させている。太陽光を含むエネルギー源を利用する固体レーザ、気体レーザ、
あるいは半導体レーザとすることもでき、太陽光や自然エネルギーから生成したレーザの
実現で、化石燃料に由来する電源を使用することなく、地球環境に配慮dした新たな還元
処理ができる。


 

以上、マグネシウムと太陽光励起レーザーを用いたエネルギー循環システム技術を大急ぎ
で俯瞰してみたが、商用化までのハードルはかなり高そうにも見える。今後の動向を注視
したい。
 

 

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石蕗にティファール

2014年11月05日 | 時事書評

 

 

             秋日和 季節外れの 簾下 石蕗の花 悲しみ拭う

 

 




法事などの急な来客に差し出すお茶で、あたふたふたする失敗があり、T-fal 電気ケトル
( アントワネット プラス/ 0.6L)を急遽買いそろえが、ことのほか便利が良く、朝の
インスタントコーヒーや午後と夜のパウダー緑茶、ホットウィスキー用に重宝し、自室で
の缶詰作業環境がさらに強まった――快適で、エコで、ウォームビズに少しは貢献してい
るとは思うが。
 

 
なお、上図の新規考案によると、ケトル(1)は、容器(3)と、リッド(5)と、ロッ
クするためのロック装
置で、容器に配設された第1ロック手段(11)とリッドに取り付
けられた第2ロック手
段(12)を含め、第2ロック手段が第1ロック手段に係合するリ
ッドのロック位置と、リッドが解放されるロック解除位置との間で、リッドに対し可動の
この装置で構成し、さらに、リッドに配設した第2ロック手段を制御する部材(20)を
含め、制御部材は、第2ロック手段がロック位置にあるときにリッド内に組み込まれ、第
2ロック手段がロック解除位置にあるときにリッド上に突出しグリップすることで、容器
にリッドをロックするための装置を具え、リッドの美的魅力を向上した電気ケトルを提供
できるとある。



欲を言えば、吹き溢れ防止(内圧上昇で加熱を自動停止する)の完成度を上げることと、
もう少しだけ軽くしてもらえればという感想をもった。

 



  

【脱ロスト・スコア論 Ⅲ】

● たまには熟っくりと本を読もう

高橋洋一著 『「成長戦略」の罠―「失われた20年」


ここでは、日本の成長戦略で最大の欠陥は、『産業政策』にある。個別産業をターゲット
にする産業政策は、成功した例がなかった――例えば、官制の財テク事業の最終的な収支
尻は、2000年までの累積損失は約2兆円――と指摘し例示されていくことになるが、
読み手にとってはわくわくする件でもある。


                         第2章 「第3の矢」成長戦略の罠

                     ■ 「公的資金の運用見直し」の落とし穴

  政治家が、事務方であるはずの官僚に丸め込まれる、あるいはお任せしてしまうの
 は、前章でも触れたが、この国に根強くはびこる「官僚の無謬性」という神話による
 ところが大きい。日本の役人は優秀だから間違わない、間違うはずがないと、政治家
 も国民もなかば洗脳されている。それが、"間違い"の元なのだ。
  ふたたび成長戦略(「日本再興戦略」改訂版)を見てみよう。56、57ページに引用
 した冒頭部分「鍵となる施策」から、官僚無謬性による「まやかし」を指摘しておき
 たい。

  《1.日本の「稼ぐ力」を取り戻す (1)企業が変わる

    ①企業統治(コーーポレートガバナンス)の強化
    ②公的・準公的資金の運用等の見直し》

  とある。

  傍線部分の主役が、「世界最大の機関投資家」とマスコミでもしばしば取り上げら
 れたGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)である。「公的年金の運用見直し」
 ということで、厚生労働省所管のGPTIFでの運用強化(積極運用)がなされよう
 と
しているのだ。
  総額129兆円とされるGPIFの運用資産は、国民の年金である。にもかかわら
 ず、「運用見直し」ではGPIFとそれを取り巻く金融機関の利害だけが議論されて
 いる。まったくもって国民不在である。
  公的年金の運用はどうあるべきか。過去の例と海外の事例から考えてみよう。
  まず、過去の経緯から検証する。GPIFは、サラリーマンの公的年金である厚生
 年金の運用事業を行なう独立行政法人として2006年4月に設立された。その前身
 は年金福祉事業団(年福事業団)という特殊法人だ。運用事業は「官の財テク」とし
 て1986年度からスタートされ、2000年度まで財政投融資の中で行なわれてい
 た。



  1986年と言えば、NTT株が上場後に3倍の値をつけるなど、日本中が財テク
 に走ってゆく時代相であった。この財テクブームに乗じて、政府も年金資金の有利運
 用へと転じ、国会では厚生省(当時)年金局長が「1・5%利差稼ぎ」と豪語したほ
 どである。2001年度から、現在のように厚生労働省の責任で資金運用される方式
 になっているが、「官の財テク」としての性格は変わっていない。
  スタート当時、年金資金を運用していた年金福祉事業団は、略称を「年福事業団」
 と言って、厚生次官の天下り指定席だった。あり余るほどの巨額な資金を使うことか
 ら「満腹事業団」と揶揄されていたことを、今でも私は覚えている。ちなみに、巨額
 の年金資金をつぎ込み、各地でリゾート施設を建設しては不良債権化させた「グリー
 ンピア事業」も、年福事業団の仕事だった。
  2000年度までの財テク事業の最終的な収支尻は、累積損失約2兆円。「官の財
 テク」では肝心の運用実績は上がらなかった。しかし、この失敗の責任については、
 グリーンピア事業と同じで誰も取っていない。前述した「キバセン」(基盤技術研究
 促進センター)の顛末と、構図はまったく同じである。

  一方、海外における公的年金運用の実態はどうなっているのか。
  そもそも、一般国民に対する公的年金を国として運用しているケースはあまり多
 い。2008年の経済財政諮問会議で、当時の舛添要一厚労相が世界の公的年金運

 について調査資料を提出したが、それによれば「積立金が多い国」の中でカナダ、

 ウェーデンが「株式投資比率の高い国」として挙げられており、日本とアメリカは

 そうでない国」、イギリス、フランス、ドイツは「そもそも積立金が少ない国」とさ

 れていた。
  このとき、GPIFの積極運用を推進する有識者から、横槍のような声が出た。上 
 記の国々のほかに市場運用を行なっている国として、ノルウェー政府年金基金、オラ
 ンダ公務員総合年金基金、アイルランド国民年金積立基金が挙げられたのだ。
  アイルランド国民年金積立基金は規模が小さいが、ノルウェー政府年金基金とオラ
 ンダ公務員総合年金基金はそれぞれ30兆円台とそれなりの規模である。もっとも、ノ
 ルウェーは石油収入があり、そのための市場運用である。またオランダは公務員の年
 金であり、一般国民の年金ではない。
  さらに積極運用を推進する民間金融機関から、アメリカのカリフォルニア州職員退
 職年金基金(カルパース)などの例が出された。カルパースは自主運用を行なってい
 る。しかしその受給対象者の範囲は国ではなく州であり、その中でも州公務員の年金
 
である。


※ 出展:海外投資データバンク




                           ■ GPIFは不要である

  結論を述べる。国が行なう事業として市場運用ほど不適切なものはない。サラリー
 マンの公的年金を運用するGPIFだけの議論も胡散臭い。なぜなら、公務員の共済
 年金では積極運用の話が出ないことと辻棲が合わないからだ。
  ここで、私がかつて第一次安倍政権で内閣参事官を務めていたときに、具体的に考
 えた代替案を示そう。大別すると、以下のA、B、2つのパターンに分けられる。

  ・A案一GPIFなし/金融機関なし

  ・B案一GPIFなし/金融機関あり

  A案は、アメリカの公的年金で実際に行なわれているものだ。アメリカには「オス
 ディ」(OASDI  Old‐Age ,Survivors,and Disability Insurance)という制度があり、公的
 年金の資産は全額、非市場性国債(物価連動債)の購入に充てられる。こうすると、
 市場運用するためのGPIFのような組織は必要ではなく、担当者が万人いて、財務
 省に非市場性国債の発行を依頼するだけで済む。
  B案は、さらに選択肢が分かれる。払い込み保険料の一部(積立部分)を、

  (1)全額国債運用
  (2)半分国債/半分株式
  (3)全額株式運用

 
  の3コースに分け、それぞれ受託金融機関の組み合わせの中から、各国民にどれか
 を選択させるものだ。
  現状でもGPIFは運用を金融機関に丸投げしている。去る4月、7年ぶりに国内
 株式の運用委託先を見直したそうだが、アクティブ運用(市場平均を上回る運用実績
 を目指す運用)で新たに始める「スマートベータ型」という投資では、ゴールドマン・
  サックス・アセット・マネジメント、野村ファンド・リサーチ・アンド・テクノ
 ジー、野村アセットマネジメントの3社を委託先に選定した。

  したがってGPIFを "中抜き" して、Bのパターンをつくることは可能なのであ
 る。GPIFを廃止して、多様な方法でやればよいだけの話だ。
  現在、議論されている公的年金運用の改革案は、GPIFという官僚機構の全知全
 能(無謬)を前提としている。それが「官僚無謬性神話によるまやかし」なのだ。

  前に紹介したアメリカのOASDIは、1937年にスタートした。「老齢・遺族
 障害保険」と訳され、一定所得以上のサラリーマンや自営業者が加入する。前述
した
 ように物価連動債を買うだけで、運用=投資行為は行なわない。もし運用しよう
とし
 たら、国民から文句が出るだろう。アメリカ人は「運用するくらいなら強制徴収
をや
 めてくれ。自分たちで運用する」と言う。日本のように、民に代わってお上がや
って
 あげる、などという論理は通らないのである。


  そこで、かねて「官僚の無謬性」に否定的だった私は、政権内部にいたときに、G

 PIFなしで済ませられるA、Bの2案を考えたのだ。まったく運用しないか、国民
 が運用金融機関を選ぶか、の二者択一である。
  しかし私が提示したこの案は、当時、猛反対に遭ってしまい、日の目を見ることは
 なかった。「俺たち(官僚)の仕事がなくなってしまう」という愚にもつかない理由
 からである。
  一方、同じころ「GPIF拡充案」というのもあったのだが、私はそれに反対する
 論陣を張り、結果的にこの拡充案は潰れた。喧嘩両成敗ではないけれども、私の「G
 PIF不要案」が通らなかった代わりに「GPIF拡充案」も消えたのである。
  ただGPIFそのものが消えたわけではなく、ご承知のように現在も成長戦略の一
 つの柱として改革案が議論されている。恐ろしいのは、かつて「拡充案」を主張して
 いたある人物が、今も「公的年金の運用見直し」の議論に深く関与していることだ。
 この御仁は官僚ではないが、頭の中身が官僚なのだろう。


 


                ■ これまでの成長戦略で日本は「成長」したのか

  本章の終わりに、「官僚による成長戦略」が、いかに虚妄にすぎないかを再度、述
 べよう。 
   私は大恐慌研究の世界的な権威であるバリー・アイケングリーン(カリフォルニア
 大学教授)のツイッターをフォローしているが、その中で注目した記述がある。
 “Japan Rising? Shinzo Abe's Excellent Adventure"とあった。
  アメリカの詩人、ヘンリー・ワーズワース・ロングフェローの一節「矢を空中に放
 った。地面に落ちた。どこだか分からなかった」を引用しながら、「第3の矢」の難
 しさを強調しつつも、成功を期待している。しかも、第3の矢では、不利になるのは
 今の既得権者であると言っている
  アイケングリーン教授は、明らかに、第3の矢は「規制緩和」のことだと思い込ん
 でいる。アベノミクスの第3の矢には「産業政策」と「規制緩和」の2種類があり、
 産業政策で利益を得るのは既得権者、規制緩和で利益を失うのは既得権者であるとは
 思いもしないのだろう。アメリカ人の彼には、「産業政策」は概念として存在しない
 のではないか。
 
  2001年以降を見てみると、日本ではどの政権も自らの政策方針を出している。


   ①小泉内閣 「骨太の方針」(2002年6月)
   ②安倍内閣 「成長力加速プログラム」(2007年4月)
   ③福田康夫内閣 「経済成長戦略」(2008年6月)
   ④麻生太郎内閣 「未来開拓戦略」(2009年4月)
   ⑤鳩山由紀夫内閣 「新成長戦略~輝きのある日本へ~」(2009年19一月)
   ⑥菅直人内閣 「新成長戦略~『元気な日本』復活のシナリオ~」(2010年6月)
   ⑦野田内閣 「日本再生戦略」(2012年7月)
   ⑧第二次安倍内閣 「日本再興戦略」(2013年6月)

  このうち、1回目の小泉政権では「成長戦略」を強調していないが、その後は「成
 長戦略」を標榜する政策が、実に7回も打ち出されてきた。まさに「成長戦略」の
 ンパレードである。これで日本が「成長」できたのか。「未来を開拓」したり「元

 な日本が復活」したり「再生」したのだろうか。答えは言わずもがな、であろう。

  むしろ成長戦略を強調しなかった小泉政権のほうが、他の政権より長期に成長した。
  それは皮肉なものである。

  成長戦略が策定されるたびに、マスコミでは淡い期待をにじませながら、日本の各
 産業の将来が豊富なデータとともに描かれてきた。数字が並ぶから記事にするのは簡
 単だ。しかし実際に成長をさせるのは難しい。私は、ノーベル経済学賞を受賞したポ
 ール・クルーグマン教授(プリンストン大学)に、かつてこう言われたことがある。
  「経済成長を確実にできる方法を発見すれば、ノーベル賞受賞は確実だね。だって、
 世界中から貧困問題がなくなるじゃないか。経済学なんて学問もいらなくなってしま
 うよ」

  それでは経済学はまったく無力かというと、そうでもない。経済成長に資すること
 は、およそ分かっているのだ。経済学上、大雑把にコンセンサスができているところ
 では、競争政策、規制緩和(含む「民営化」。これは強調しておきたい!)、貿易自
 由化、教育投資、技術開発、マクロ経済の安定などが成長に重要だということだろう。
 もちろん、これをやれば確実に成長するというわけではないが、けっこう「打率」が
 高いのだ。




  日本の成長戦略で最大の欠陥は、何度も述べてきたように「産業政策」にある
 別産業をターゲットにする産業政策は、成功した例がなかった。かつて高度成長時代
 の産業政策が成功したというのも、神話にすぎないことは明らかになっている。
  前著でも触れたが、竹内弘高教授(一橋大学)の研究によれば、日本の20の成功産
 業について、政府の果たした役割は皆無だった。また、三輪芳朗教授(東京大学・当
 時)の一連の研究では、高度成長期でさえ産業政策は有効でなかったとされている。

  私は1986年から1988年まで公正取引委員会事務局に勤務し、当時の通産省
 などの産業政策を、競争政策の観点から見ていた。そのとき、産業政策を分析し公正
 取引委員会に説明した資料の一部を学術誌に公表するように上司から勧められた。
  表題は「日本的産業政策はもはや過去の遺物だ」とした。相手の通産省などに配慮
 して穏やかな表現になっているが、その当時、すでに産業政策が機能しなくなってい
 ることをデータ分析から示したものだ。

  今も強烈に印象に残っていることがある。通産省などの官僚とともにいくつかの業
 界の人にヒアリングをしたり、実態調査をしたが、「業界の人」だと思っていたら、
 実は通産省などの天下りOBだった。いわゆる「専務理事政策」である。
  業界には事業者団体という「○○協会」がある。その理事長や理事は、たいてい業
 界の人が非常勤で務めている。常勤の専務理事は、その業界の監督官庁からの天下り
 なのだ。産業政策をするときには、「専務理事」が業界と役所との連絡調整などで活
 躍するのである。



 
  役所としては、産業政策が有効でなくても、専務理事ポストさえ確保できればいい
 という印象を受けた。
  この経験は経済学の分析とも一致していた。産業政策が有効でないのは、第一の理
 由として政府が有望産業を選べるほど賢くないのである
  もし官僚に有望産業が本当に分かる能力があるのなら、役所の斡旋など受けず、そ
 の "将来有望の業界" に自ら転職する人が多いはずだ。しかし、官僚のほとんどは天
 下り斡旋を受けている。
  第二の理由は、産業政策に伴う利権を求めて、民間企業がレントシーキング(特殊
 利益追求)を行なうからだ。こうした活動は資源の浪費でしかない。
  産業政策では、税制上措置や補助金だけが恩典ではない。事業者団体はしばしばカ
 ルテル的行為の温床になっている。そうした競争制限的な行為も業者にとってはメリ
 ットとなる。一方、そこに前述の「専務理事政策」が付け入る隙が生まれる。
  霞が関が主導権を握り、さらに「専務理事政策」が堂々と行なえ、天下りもできる
 のだから、官僚はほくそ笑んでいるに違いない。官僚は賢くはないが、ずる賢い。

       高橋洋一 著 『「成長戦略」の罠―「失われた20年」は、さらに続く』



 


● 消費税増税の是非の議論をしている場合ではない?!

この項を、エコノミストの三橋貴明の動画(音声)を聴きながら記載していたが、今回の
コメントで、アベノミクスとは、"唯日本株価主義 だと言った見識に触れ、これは蓋し名
言だと感心していたが、それにしても、民主党政権も経済音痴だったが、やはり、自民党
政権も変わらないと思っていた矢先でもあり、ズバッと切り込んだ発言に清涼感を抱いた。
この先どのように展開して、感想が変わり、どのように結論するのか自分自身でもわから
ぬが、高橋洋一と三橋貴明(プラスα)との差異を注意深く確認し読み進めていくことに。


                                                                この項つづく

 



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脱ロスト・スコア論Ⅱ

2014年11月04日 | 時事書評

 

 

 

 

 

【オールソーラーシステム完結論 28】 

● 分散型電力貯蔵システム 

先回、【オールソーラーシステム完結論 27】に掲載したエンフェイズ エナジー社とエ
リーパワー社によるマイクロインバーターを備えた太陽電池モジュールと、
双方向マイクロ
インバーター、蓄電池をパッケージ化した「分散型電力貯蔵システム」(上図)に関わる特許の掲載
が抜けていたので改めて掲載しておく。


発電・蓄電モジュール自動化システムの概略図


発電・蓄電モジュール自動化システム初期起動の流れ図


発電・蓄電モジュール自動化システム安定化の流れ図



●  ソーラー兼業農家

天気次第で出力が大きく変動する太陽光発電が扱いにくい側面を持つのは確かだが、メガ
ソーラーだけではない。出力が10キロワット以上50キロワット未満で低圧扱いの太陽
光発電もある。今、注目を集めるのは農地に太陽電池を設置し、農業を続けながらFIT
(全量固定価格買取制)で売電する「営農発電」だという(日本経済新聞-1つの畑で野
菜も発電も「ソーラー
兼業農家」に注目 2014.11.04)。

農地は農業以外で収益を得ることが禁じられているが、農林水産省が昨年3月末、再生エ
ネの普
及を目指して規制緩和したが――植物の光合成は太陽光をすべて使い切っているわ
けでなく、光が
十分に強くなると、それ以上いくら光を当てても光合成量が増えなくなる
「光飽和点」があり、この光飽和点の分を確保し、余った光を発電に回せば、影ができて
も作物の
収量には影響しない。これが、「ソーラー営農法」の特徴――千葉県の例では、
売電で年220万円の収入 初期投資8年で回収できるある。また、農機販売子会社のヤ
ンマーアグリジャパンを通じて営農発電システムの販売に乗り出したことも掲載されてい
る。

勿論、同上の情報では蓄電池による出力の平準化についても紹介しているが(下図参照)
この分野の技術革新による品質向上とコスト逓減が急ピッチに進めば、近い将来、農業も
大変貌することになる。

  

【脱ロスト・スコア論Ⅱ】

● たまには熟っくりと本を読もう

高橋洋一著 『「成長戦略」の罠―「失われた20年」


先回につづき、「民営化」「規制緩和」を巡る話。ところで、「規制緩和」に対するわ
たしの立場は「産業政策」と同様に、「是々非々」である。それでは、読み進めていこ
う。

                         第2章 「第3の矢」成長戦略の罠

                   ■ 対立する「産業政策派」と「規制緩和波」

  1年ほど時間を戻す。

  2013年10月15日に招集された第185回臨時国会は、”ねじれ”が解消されて
 初めての本格的な論戦となったが、私は与野党の対立ではなく、与党内の対立に興味 
 を移していた。それは「産業競争力強化法案」(2013年12月4日成立)と「国家
 戦略特区法案」(2013年12月7日成立)が、与党内の「産業政策」vs「規制緩和」
 の構図となっていたからである。
  産業競争力強化法案は、アベノミクスの成長戦略を具体化しようと目論む産業支援
  策である。前述した官主導の「産業政策」の色合いが強いが、表向き「企業版特区」
  という"規制緩和"盛り込まれている。
   もっとも、企業板特区というが、農業、医療、教育、労働など、いわゆる「岩盤規
  制」には手をつけていない。企業への優遇が中心で、経産省の言うことを聞けば優遇
  措置が得られるという類の施策である。何しろ具体的なメニューが出ていなかった。
   一方、国家戦略特区法案は地域限定で「規制緩和」をするものだ。全面的な「規制
  緩和」では既得権の抵抗がある。そこで地域限定で行なおうというのだから、現実的
  なアプローチだ。しかも具体的なメニューが出ており、当初の15項目のうち10項目で
  成果が出ていた。すなわち、

  ①病床規制
  ②保険外併用診療
  ③医学部新設
  ④公設民営教育
  ⑤容積率緩和
  ⑥都市のエリアマネジメント
  ⑦賃貸マンション宿泊利用
  ⑧農業信用保険制度
  ⑨農地の利用拡大
  ⑩歴史的建造物

  以上の項目では「規制緩和」の成果があるだろうと、1年前に私は踏んでいた。外
 国医師の診察や雇用条件明確化、有期雇用でも一定の成果がある。
  この2つの法案-産業競争力強化法案と国家戦略特区法案だが、マスコミの取り
 いでも大きな差があった。

  産業競争力強化法案は、礼賛の記事ばかりだった。経産省のレクチャーどおりであ
 る。その一方、国家戦略特区法案の労働関係部分で、マスコミは「解雇特区」という
 名称をつけた。この表現はひどいと思う。内容は「雇用ルールの明確化」にすぎず、
 一定の人を対象として外資系企業を誘致するためのものである。

 「解雇特区」を記事や見出しに掲げさせた。"抵抗勢力"は厚生労働省だった。「特区
 の内外で労働規制に差をつけるのがまずい」というのが言い分である。ならば、全国
 で雇用ルールを明確化すべきだろう。
  日本の新聞は「たとえば、遅刻をすれば解雇と約束し、実際に遅刻したら解雇でき
 る」などと書いていたが、公序良俗に反するし、特区ガイドラインにも反する話であ
 る。外国紙では、労働の特区が正規と非正規雇用という労働の二重性を打破する可能
 性などに触れていて、正確な理解をしていたのだが。
  日本ではマスコミが役所のポチになっている。2つの法案をめぐる報道は、それが
 露骨に表に出ていた代表的なケースである。



 
                  ■「岩盤規制」にドリルで穴を開けられるのか

   それでも国家戦略特区法案は、産業政策を推進するような産業競争力強化法案より
 もまともであった。国会審議では、野党の一部から「今回の国家戦略特区法案の規制
 改革項目は、小粒すぎて法案に値しない」という批判が出たが、「国家戦略特別区域
  法」として成立を見た。
  前述したように外国医師による診療、病床規制、医学部新設、雇用ルールの明確化、
 公設民営学校、容積率規制の転換、農業委員会、農業信用保証など、いわゆる「岩盤
 規制」で穴が開いた。これまでまったく前進できなかった分野であるから、一定の成
 果である。
 
  もちろん、こうした一定の成果に対して、漏れ落ちたり抜けたりしている点を探す
 のは容易である。ただ1回の国会会期で、すべての岩盤規制を解決しきることはでき
 るわけもなく、当然多くの課題が積み残された。安倍総理白身、規制緩和の追加項目
 があることを認め、国家戦略特区諮問会議で「法改正を要しないものは遅くても20 
 14年の年内実施。法改正を伴うものは次期国会(秋の国会)に法案を提出する。ド
 リルのスピードを一層増していきたい」と発言している(6月17日)。

 整理しておくと、国家戦略特区に指定されたのは次の6エリアである。

  ①東京圈(東京都千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、江東区、品川区、大
   田区、渋谷区と、神奈川県、千葉県成田市)
  ②関西圈(大阪府、兵庫県、京都府)
  ③新潟県新潟市
  ④兵庫県養父市
  ⑤福岡県福岡市
  ⑥沖縄県

  これらの地域が、3月に「岩盤規制の突破口」として選ばれ、下表に掲げた規制緩
 和(規制改革)項目を先行することになる(表は規制緩和の項目ごとに、「国家
 戦略特区法」を○、△、×で評価したもの)。





                          ■ 「第8条」が曲者だった

  私は、規制は一気に解決しきれないという観点から、「岩盤規制」の穴が開いたか
 どうかという「分野」に着目するよりも、まずは国家戦略特区法案に書かれた規制緩
 和の「スキーム」を精査してみた。そのスキームやその運用次第で、今後の規制緩和
  のさらなる拡大などが決まってくるからだ。
   何度も述べたように規制緩和は、法律の取り組みで2年間、その成果が出るのに3
 年間の合計5年くらいかかることが多い。つまり規制緩和は懐妊期間が長く、必ずし
 も成果がすぐ出ないものばかりなので、永続的に取り組まないといけないのだが、今
 回の国家戦略特区法では、一定分野について少なくとも最初の2年間はスキップでき
 る。
 
  そこで法案を精査すると、特区実現のためのスキームとして3つの仕組みがあるこ
 とが分かる。[特区担当大臣」「特別区域会議」「特区諮問会議」である。
  第一の特区担当大臣では、大臣のリーダーシップが期待されている。かつての構造
 改革特区の初期には、たとえば農業へのりIス方式での企業参入など、大きな成果が
 上がった。その時期には特区担当。ほぼ"専任"の大臣が置かれており、その成果が如
 実に表われたのだろう。
  ところが、その後、専任大臣ではなくなってしまった。そのため構造改革特区の成
 果が鈍ってきたように思われる。それで特区担当大臣を専任にすべく、新たに創設し
 たのである。
  第二に特区会議だ。これは特区ごとに国・地方・民間の三者が一体となった。" 統
 合推進本部"を設けることで、それを特区内におけるず "独立政府" にする効果があ
 る。従来の規制改革や特区の運用では、現場レベルの規制改革ニーズが抑え込まれて
 しまい、なかなか表に浮かび上がってこないということもあった。これを防ぐため、
 特区担当大臣、首長、民間代表で構成する統合本部を設け、これまでの弊害を防いで
 いる。
  第三に、特区諮問会議。
  過去の歴史を振り返れば、規制改革における最大の難関は、やはり規制を所管する
 省庁の壁をどう突破するかという一点である。
  そのため特区諮問会議は、特区担当大臣と規制担当大臣、および民間有識者も交え
 て議論し、そのうえで最後は総理が決定する、という経済財政諮問会議スタイルを可
 能にしている。
 
  以上のスキームは、よい。

  しかし法案の細部には、このスキームを台無しにしかねない"気がかりな条項"も合
 まれていた。それがそのまま可決したのである。「国家戦略特別区域法」第8条(区
 域計画の認定)から、2点を指摘する。まずは第6項だ。

  《6 区域計画は、国家戦略特別区域会議の構成員が相互に密接な連携の下に協議
  した上で、国家戦略特別区域担当大臣、関係地方公共団体の長及び前条第二項に規
  定する構成員(注・政令に基づき選ばれた特区会議の構成員のこと)の全員の合意
  により作成するものとする》

  特区会議において、計画作成は「特区担当大臣、関係地方自治体(地方公共団体)
 の長など構成員の全員の合意」とされているが、関係地方自治体とはどこまで含むの
 か。あまり関係のない人まで構成員となると、迅速な意思決定ができなくなる恐れが
 ある。

  次に気がかりなのは第9項。

  《9 内閣総理大臣は、認定(注・計画の適合認定)をしようとするときは、区域
  計画に定められた特定事業に関する事項について、当該特定事業に係る関係行政機
  関の長の同意を得なければならない》

  特区諮問会議での審議を経て、総理が意思決定を行なう際、関係大臣(関係行政機
 関の長)の同意を得なければならないとされている。
  もちろん、総理大臣の意向で関係大臣は罷免することもできるので、私はさほど心
 配していないが、"抵抗勢力が関係大臣に反対させて、規制緩和を進めない"という事
 態が出てこないとも限らない。そのとき責任を負うのは、言うまでもなく総理である。
  ここで言う「抵抗勢力」とは、ズバリ官僚のことだ。各種の規制イコール役所によ
 る許認可事項だから、規制が緩和(撤廃)されれば官僚の仕事がなくなる。規制は官
 僚の権力の源泉なのである。だからこそ、特区担当大臣や特区諮問会議の人選が重要
 になってくる。官僚に丸め込まれない人を選ばなくてはならない。人なくして重要政
 策なし、である。特に特区諮同会議の役割は大きい(メンバーは下覧を参照)。




                                      ■ なぜ東京が特区の "問題児" なのか

  その特区諮問会議が槍玉に挙げ、 "問題児扱い" している特区があると「日本経済
 新聞」が記事にした。問題児とは、6ヵ所ある国家戦略特区のうち、他ならぬ首都・
  東京のことである。ようやくこのような報道が出てきたかと私は感心したものだ。
   編集委員の瀬能繁氏による署名記事で、見出しは「小粒すぎる東京特区、霞が関
 驚く都官僚の逃げ腰」。官僚(ここでは霞が関の官僚ではなく都の官僚だが、その

 質においては同根である)に丸め込まれると、政策がうまく実現できないというこ

 が如実に表われている。

  記事は特区諮問会議民間議員であるハ田達夫氏(大阪大学招聘教授)の「東京都
 あんまりだから、これは外したほうがいいのではないかという議論さえありまし
た」
 との発言を紹介し、以下のように続く。


  《東京都の提案が不十分だった理由とは何か。

  1つは「外国企業・投資家も注目する雇用・労働分野を含めての提案が全くなかっ
   た」(八田氏)ことだ》
  《もう一つは、入院ベッド数などを基準にした「病床規制」の緩和だ。特区法に盛
  り込んだ。ところが、都が提案したのは、「都内高度専門医療機関の治験共同実施
  における規制の適用除外」。国の医療保険がきかない自由診療(保険外診療)の場
  合は病床規制の対象から外してほしいという内容だが、国の関係者は「いまでも自
  由診療なら病床規制の対象外のはず。これは規制緩和でも何でもないのでは」と首
  をかしげる》
  《話はこれで終わらない。
  「特区にするのは都内23区のうち8区か9区にとどめたい」。3月中旬には都から
  政府にこんな意向が伝えられていた。東京圈のうち東京都は23区だけでなく多摩地
  域を含めた全域を対象にしようとしていた政府は「そんなバカな!」と焦った》
  《「特区法で用意した初期メニューを使い切らないばかりか、特区の場所すら限定
  しようとする。質的ふ囲的に特区を楼小化しようとする動きだ」。舞台裏を知るあ
  る霞が関の官僚は都の姿勢に憤る》
       (「日本経済新聞」2014年4月28目付。振り仮名と傍点は引用者)

  霞が問の官僚も都の官僚に呆れ、怒っていると書いてあるが、私に言わせればどっ
 ちもどっちである。それはともかく、この東京都の対応はお粗末だ。いや「お粗末」
 の一言よりも、英語表現のシャビー(多芸邱古臭い、みすぼらしい、汚らしい、卑劣
 な)という形容詞がぴったり来る。
  そもそも国家戦略特区法の下で指定された「東京圏」で、なぜ東京23区全域ではな
 く、千代田、中央、港、新宿、文京、江東、晶川、大田、渋谷の9区しか特区に定め
 られなかったのか、疑問を持つ向きも少なくなかっただろう。そのカラクリは「アジ
 アヘッドクォーター特区」という東京都の政策で解ける。
  アジアヘッドクォーター特区とは、東京都が政府の国家戦略特区に先行して進めて
 いたプロジェクトで、グローバル企業の誘致を目的に2011年、野田伸彦民主党内
 閣時代の国に申請し、「国際戦略総合特別区域」として指定されたものだ。この指定
 区域が前述の9区から文京区を除いた8区だったのである。つまり今回の国家戦略特
 区は追い風になるはずなのに、文京区I区を加えただけに終わった。だから政府が
 「そんなバカな!」「特区を楼小化しようとする動きだ」と憤慨したというわけであ
 る。

  23区はおろか、多摩地区も含めた東京都全域を国家戦略特区に指定しようとしてい
 たという政府に対し、なぜ東京都は逆行するような挙に出たのか。「日本経済新聞」
 の記事は《都議会や23区、業界団体との調整に時間がかかることで二の足を踏んだの
 だろうか。あるいは「国の官僚よりフットワークが重い」といわれる都官僚の癖が出
 ただけ、なのだろうか。真相はいまひとつはっきりしない》としているが、そんなと
 ころだろう。要は都知事が官僚に「丸め込まれた」のだ。
  猪瀬直樹氏の辞職を受けて新都知事に就任した舛添要一氏は、 "収革派" のように 
 目されているが、白身が東大法学部卒ということもあり、官僚へのシンパシーは抜き
 がたいものがあると言われる。そのため、都の政策の最終承認者として「(手続きが
 面倒だから)従来の8区プラスー区で行きましょう」とする都官僚に乗ってしまった
 のではないか。

  2020年には東京オリンピックが開催されるのだから、国家戦略特区の指定を生
 かそうと思えばオプションはいくらでもあるはずだ。しかし、そのオプションはきわ
 めて限定的なものになりかねない。舛添氏にとっては格好のチャンスであるはずなの
 に、このまま官僚任せでは寂しいかぎりだと言わざるを得ない。
  ここは、労働者(連合東京)の応援を受け、都官僚の天下り問題も後ろ向き(詳し
 くは後述)……といった舛添知事への批判はひとまず控えておこう。
  舛添知事は「東京都を金融特区にしたい」と言った。そのために、もっとも有効な
 手段を講じてもらえれば、知事のやる気が評価される。それは東京都が保有する莫大
 な都財産の証券化である。
  東京都の平成24年度一般会計の貸借対照表を見ると、資産が29兆8809億円、
 負債が7兆8389僚円。国が債務超過であるのに対して、22兆420億円の資産
 超過となって「超」優良財政である。この資産の一部でも証券化すれば、東京が世界
 の金融ビジネスの中心になることは間違いない。と同時に、東京都の資産を都民のた
 めに有効活用することもできるので、一石二鳥である。この政策を行なえば、舛添知
 事が都官僚の天下り問題に消極的であるとの一部の批判も回避できる。
 

       高橋洋一 著 『「成長戦略」の罠―「失われた20年」は、さらに続く』


それにしても、東京都の優良財政ぶりには驚かされるが、この"一極集中の謎"?の解析結
果を知りたいと思うとともに、「本社機能と事業税負担の分離(公正化)」による是正と
いう "
仮説 テーマ"が閃いた。これについては残件扱いとしておく。 


                                                                この項つづく

 

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窓なし旅客ジェット機

2014年11月02日 | デジタル革命渦論

 




 

● 窓なし旅客ジェット機って ?
 
フレキシブルエレクトロニクス関連の製造技術を開発する英国のCentre for Process InnovationCPI
は、フレキシブルで大面積の有機エレクトロルミネッセンス・スクリーン技術を複数のメーカーと
共同で開発していることを公表したという。それによると、下図のような、旅客用航空機の床以外
の内壁全面に同スクリーンを壁紙のように貼り、窓の代わりに外部の映像を映すという想もの。
CPI社によれば、旅客機の窓をなくすことで、強度を保ちながら、あるいは強度を高めながら機体を
より薄く、軽くできるとする。その結果として燃料を大幅に低減することを狙うものだという。窓
をなくすことで乗客に閉塞感を与えないようにするため、CPI社は旅客機の内装に大面積の有機エレ
クトロルミネッセンス・スクリーンを貼り、そこに飛行中の外部の景色やさまざまな情報を映し出
すことを想定。CPI社が公開イメージビデオでは、あたかも、壁のない飛行機に乗っているかのよう
な体験ができるとアピールしている。映像の代わりに白色光を点けることで照明代わりにもなると
いう。CPI社などが開発している有機エレクトロルミネッセンス・スクリーンは、輝度は、100cd/m2
でやや暗く、一方、映像の解像度は150dpiで、2万時間の寿命を見込む。現在、ロール・ツー・ロ
ールによる量産技術を開発中で、向こう約5年で本格的な量産が可能になるという。 



これに似たアイデアはかつてブログ掲載したことを思い出す(『瞬間空間移動システム』)。この
ニュースを見たとき、”いよいよ、有機エレクトロルミネッセンス・スクリーン時代に突入しつつ
あるのだ!?”とチョットした興奮を憶えた。これは面白い。 

 

 

【オールソーラーシステム完結論 27】
 

● 水素で再生可能エネルギーの出力変動を吸収
 
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2014年度中に「水素社会構築技術開発事業(水
素エネルギーシステム技術開発)」を開始する。このプロジェクトで開発する水素関連技術には、
(1)水素を利用し再生可能エネルギーの出力変動を吸収するシステム――太陽光や風力による発
電設備は天候の影響を受けて出力が変動するが、電力の安定供給の面で大きな課題である。出力の
変動により生まれる余剰電力を電気分解して、水素を製造する(下図参照)。欧米では「Power to
Gas
」と呼ばれていて、電力を水素ガスに変換して貯蔵する方法として各国で技術開発が進められ
ている。

(2)もう1つは、水素発電システムである。水素を燃料に使って発電できるガスタービンなどを
開発し、二酸化炭素を排出しない水素発電の実用化を推進し、水素発電は再生可能エネルギーから
変換した水素を再び電力として再利用するための重要な技術となる。この2つの開発テーマと市場
調査を合わせて、2017年度までの33年強をかけてプロジェクトを進めていくとする。事業者との
共同研究か委託方式で実施するために、10月24日から公募を開始。2015年1月までに共同研究・委
託先を決定して、2月から開発に着手する方針という(下図参照/水素発電のロードマップ)。

尚、この計画はできるだけ前倒しにした方が良いと考えている。


 

 



● ソーラー・マイクロインバーターがインバージョン ?!

日本国内では全くといってよいほど導入が進んでいない太陽光発電向けのマイクロインバーター。
欧米で
は同技術の優位性が評価されており、パワーコンディショナーを追い込むほど導入数が増え
ている。パワーコンディショナーは使わない。直流を交流に変換する20cm角程度の装置「マイクロ
インバーター」を太陽電池モジュールごとに接続し、太陽電池モジュールからその場で交流を取り
出すという方式(上図)。従来のパワーコンディショナーを集中制御だと考えれば、マイクロイン
バーターは分散制御に相当する。パワーコンディショナーもマイクロインバーターも直流を交流に
変換するという意味では同じ機能を備えている。パワーコンディショナーは複数の太陽電池モジュ
ールを直列に接続したストリング単位で、得られる電力を最大化しようと動作することに対し、マ
イクロインバーターは1枚の太陽電池モジュールだけを最適化する。



上図のシステムには次のような4つの特徴(利点)がある。

(1)もう少し電力が欲しい」という場合、太陽電池モジュールを1枚単位で増設できる。1枚だ
  け大出力のモジュールを追加することも可能だ。モジュールの特性を合わせる必要がないから
  だ。このため、パワーコンディショナーを用いた場合よりも、一般には得られる電力の量が多
  くなる。
(2)太陽電池モジュールの故障や、影にも強い。故障したモジュール、影が当たったモジュール
  の出力だけが下がり、隣のモジュールは正常に動作し続ける。システム全体への影響が小さい。
(3)設置工事も楽になる。もともと交流を通している宅内配線と接続しやすく、システム拡張が
  たやすい。マイクロインバーターにコンセントプラグが付いており、これを家庭用コンセント
  に差し込むだけで動作する製品もある。「プラグインソーラー」と呼ぶ。
(4)設置スペースでも有利だ。パワーコンディショナーの専用スペースを用意する必要がないた
  めだ。小ぶりな家屋ではありがたい。(5)ただし、マイクロインバーターにも「欠点」はあ
  り、太陽電池モジュールの数だけ装置を用意しなければならず、モジュールの枚数が多いと、
  パワーコンディショナーよりも割高になるのだが、パワー・コンデョショナと比べて0.2~0.3
  米ドル/Wほど割高になるが、出力の最大化や設置コストの削減、メンテナンス費用の削減によ
  って、初期コストの高さを回収でき問題ないといわれている。


米国の調査会社であるIHSが2013年8月に発表した資料によれば、マイクロインバーター市場は米
国に集中しており、2012年には世界市場のうち、72%のシェアを占めたという。2013年には米国の
住宅市場の40%がマイクロインバーターを採用し、パワーコンディショナーが少数派に転落する可
能性が高いと予測する。
2017年のマイクロインバーターの世界市場は2.1ギガワットまで成長する
見込みであるという。これは2013年の約5百メガワットと比較すると4倍の成長に相当する。

こうした状況の中、マイクロインバーターの考え方を蓄電池にまで拡張しようとしている企業があ
る。米国はEnphase Energy社(
エンフェイズ エナジー インコーポレイテッド)。同社はマイクロ
インバーターを採用した太陽電池モジュールを、「双方向」マイクロインバーターを用いた蓄電池
と組み合わせる(上図参照)。ここで、双方向とあるのは、蓄電池には充電と放電の逆向きの電流
の流れがあることによる。同社が世界で初めて開発した技術であると主張しているが、双方向マイ
クロインバーターを備えた蓄電池をEnphase AC Battery」と呼ぶ(下図参照)。



また、同社は2015年下期にも最上図のようなシステムを市場に投入する予定である。全てを交流で
接続する「オールACアプローチ」を採る。マイクロインバーターを備えた太陽電池モジュールと、
双方向マイクロインバーター、蓄電池をパッケージ化した「分散型電力貯蔵システム」として提供
することで、住宅内のエネルギーマネジメントを最適化できるという。制御にはEnphase Energy
Management System
を利用する。


ところで、エンフェイズ エナジー社は、マイクロインバーターの開発・製造・販売に強みのある企
業だが、蓄電池技術はないため日本で蓄電池を開発・製造・販売するエリーパワーと戦略的提携の
覚書を締結した(2014.10.22)。長期的かつグローバルな提携である。「覚書の詳細な内容は公表
できないものの例えば1年という短期間ではない。エンフェイズ エナジー社は世界市場に販売網を
構築しているため、当社の蓄電池を組み込まれる。

*エリーパワーの発表資料によると、リン酸鉄リチウムを正極材に使用しており、安全性と性能に最
も優れており、長寿命であること。蓄電池を高い品質基準の全自動ラインで製造していることが挙げ
られている。


このように俯瞰してみると、ソーラー・マイクロインバータの方が『デジタル革命』の基本特性に沿っているよう
にみえる。当面、住宅用との棲み分けが考えられるが、将来的にはソーラー・マイクロインバータに集約され
ると考える。

 

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脱ロスト・スコア論

2014年11月01日 | 政策論

 

 




● 素敵な選TAXI

主人の枝分(竹野内豊)が、乗客自らが望む過去まで連れていくことができる「選TAX
I(せんタクシー)」の運転手で、様々な人生の選択の失敗に苦しむ乗客(毎回のゲスト
主人公)が、その人生経験を聞きながら、アドバイスをしながら、人生の再生へ向かわせ
乗客本人の生きることの大切さ、本当の自分に忘れていたものを思い出させるというスト
ーリ(単話完結)のSFヒューマンドラマ――『素敵な選TAXI』2014年10月14日から
毎週火曜日に、関西テレビ制作フジテレビ系の「火曜22時枠」で放送されている
が、バカ
リズム(マセキ芸能社所属の升野英知)が「世にも奇妙な物語」に書いた脚本が評価され
てたためと言われている(Wikipedia)――をたまたま観る機会があり、その斬新さに感心
しそのまま嵌り込んだ。ところで、タイムスリップしている時間は長くて数時間程度だが、
料金は数万円単位で請求される。そして、ストーリーは全てハッピーエンドで完結する。
この先どうなるか?分からずにいるが、映画『バック・ツゥー・ザ・フューチャー』がヒ
ントになって脚本されたのか分からない。それにしても、斬新で面白い。
 

 

  

● たまには熟っくりと本を読もう

高橋洋一著 『「成長戦略」の罠―「失われた20年」


ここでは、著者は成長戦略そのもを否定せず、そのやり方を、小泉政権運営での経験――
個別の産業育成など、国=官僚にできるわけがないのだから、成長戦略などつくら
ずに、
民営化と規制緩和だけを行なった――から、「第3の矢」も民営化と規制緩和に特化すべ
きだと言い切るが、それが、"高橋イズム"、ある種の原理主義であるのかどうか、あるい
はそれが有効なのかどうなのか判断するために、いましばらく読み進めて行き、"脱ロスト・
スコア論”を考察する
 

                                             第2章 「第3の矢」成長戦略の罠

                            ■もうひとつの"問題点"


  今回の「成長戦略」改訂では、さらに問題が顕在化した。それは関係会議が分断状
 態であるということだ。
  たとえば農業改革については、産業競争力会議の農業分科会、規制改革会議のWG
 (ワーキンググループ)国家戦略特区の関係会議などで議論がなされた。 また、外国
 人労働者問題は経済財政諮問会議などでも議論された経緯がある。こうした会議体の
 相互連携が、必ずしも十分とは言えないのである。
  そのうえ、議論自体の深度が甘い。規制改革ひとつを見ても、かつての構造改革特
 
区では当然になされていたような「全国ベースの規制改革か、特区での実験的な規制
 改革の選択を迫る」といった議論さえ十分に行なわれた形跡が窺えないのだ。
  ここで整理しておく。「成長戦略」は産業競争力会議が、「骨太の方針」は経済財
  政
諮問会議が、「規制改革」は規制改革会議が、それぞれ議論を経たうえで取りまと
  め
ることになっている。どの会議体も政府の審議会であり、議長職の総理や官房長官
  を
除けば構成員も異なる別個の組織である。
   ちなみに産業競争力会議の分科会は「雇用・人材」「農業」「医療・介護等」「フ
  ォ
ローアップ」の4分野で構成され、さらに「フォローアップ分科会」が「新陳代謝」
 「科学技術」「IT」「子不ルギー」「立地競争力等」「国際展開戦略等」の6部門
 に分
かれている(64ページ以降に政府が主催する主要な会議の一覧を掲載するので、
 参考にされたい)。

  合同会議などを開催してはいるものの、やはり連携は不十分だ。にもかかわらず、
 上記3つの会議体は妙に足並みがそろっているから、活かややこしくなる。
 《経済財政運営と改革の基本方針2014~デフレから好循環拡大へ~》(これが通
 称「骨太の方針」)と《規制改革実施計画》は(「日本再興戦略」改訂2014》と
 同日、2014年6月24日に閣議決定された。要するに政府の3つの審議会が、「せ
 1の」でまとめて答申を出した格好である。答申資料文書の総ページ数は、実に190
 (「成長戦略」130「骨太の方針」40、「規制改革」20)。
 「骨太の方針」では、農業、電力、法人税など、何十年ぶりの改正などを「骨太」な
 政策課題として頭出ししている。また「規制改革実施計画」も農協の見直しなど多数
 の項目を列挙した。そこに、これまで述べてきた「成長戦略」が加わるのだから、政
 策課題という「項目」の数たるや膨大なものになる。
  メニュー満載のレストラン……なら喜ばしいけれども、審議会の出す「お品書き」
 は、お客(国民)にとって数が多いうえに、分かりにくいから困ったものだ。「骨太
 の方針」の本文を読んでも一般的な文言ばかりで、総花的である


 

 ※首相官邸「総理、副総理または官房長官を構成員とする会議」から作成。太字(アミ部
   分)は本章で言及する「成長戦略」関係の会議体。ただし「規
制改革会議」は議長以下15
   名の委員全員が民間人であるため、この表に
は反映されていない。


  一応、「骨太」で謳う"目玉政策"が産業競争力会議、規制改革会議ヘアウトソーシ
  ングされるかたちになっているが、前述したように会議の連携が不十分なため、その
  有用性はクエスチョンだ。だいいち、これだけ「項目」(政策課題)が多いと、何か
  目玉なのかも分からなくなる。
  かつて小泉政権時代の「骨太の方針」では、各省庁から出てくる。"タマ"(政策提
 案)に筋のいいものが少なかった。そこで箸にも棒にもかからないものは「その他」
 (通称「ガラクタコーナー」)に納めてしまい、政権としてどうしてもやりたいもの
 だけをトップダウンで決め、優先順位を付けて、目玉として出していた。今回とは状
 況がだいぶ異なる。

  繰り返すが、今回の「成長戦略」「骨太の方針」「規制改革」は、連携不十分なが
 ら3つがワンセットで構成されていると考えたほうがよい。
 今回のやり方は、よく言えば網羅的だが、あえて言うなら「どんな矢が当たるか分か
 らないから、とりあえずたくさん放ってみた」ということだろう。従来型の官僚主導
 の「産業政策」でなく、民営化や規制緩和であれば、「百に三つ」ほどは当たるから
 たくさん放ってみるのはいいことだ。もっとも、規制緩和は少しあるものの、民営化
 はほとんどなく、矢を放っていない。これは大いに気にかかるところだ。
  しかし、政策の優先順位はよく分からない。しかも、政策の項目はたくさん出てい
 るのに、それらを今後、どのような手順で進めてゆくのかが見えてこない。項目はず
 らりと並んでいる。しかし制度設計図が不在なのだ。

  テレビや新聞などマスコミの報道を見ると、豊富な"メニュー"を紹介しつつ、それ
 らの政策に即時的な効果を期待するような論調である。「景気が悪いのは、第3の矢
 である成長戦略が具体化しないからだ」というわけだ。ただし、こうした構造改革的
 な政策の常であるが、「即効性」という点は期待しないほうがよい。
  1章で述べたマクロ経済政策とは違って、成長戦略なり規制改革なりは、5年程度
 経過しなければ成果を判定できない。制度整備に2年、実際のビジネスに影響が現わ
 れるのはそれから3年程度かかるからだ。しかも肯定的な効果が出るのは、大げさに
 言えば先述のように「百に三つ」なのである。遂に結果が分かるくらいなら、成長な
  んて簡単で、世界の貧困問題さえ解決できるものだ。それを発見できればノーベル賞
  間違いなしである。

  なぜマスコミが、こぞって「成長戦略」を報道した
のか。その背景を簡単に説明しよ
 う。

  金融政策と財政政策は、何度も言うように抽象度の高いマクロ経済政策なので、経
 済学の教育をまともに受けていない記者諸氏にとっては苦手な対象である。それに引

 き替え、成長戦略は全般的にミクロ経済政策が多く、素人でも分かりやすい。しかも
 
記事にできる小ネタが多い。そのうえ成功する確率も低いので、批判する記事も簡単
 に書ける。つまり、「持ち上げておいて、こき下ろす」というマスコミの常套的手法
 にはもってこいなのだ。

 
                 ■ 日本でしか通じない「産業政策」という言葉

  効果を発揮するまでに5年を要し、しかも成功確率が3%(百に三つ)だからとい
 って、「第3の矢」が不要ということではない。将来の成長のためには実行しなけれ
 ばいけないものだ。ただ、その根本的な考え方と実行方法に誤りがあれば成長など望
 めようもない。成長戦略と言うからには、しかるべき「戦略」と「戦術」が必要な成
 長戦略の罠だろう。すなわち官僚主導の政策を恃みにしてはならないのである。

  実は私が小泉政権で政権運営に携わっていたときには、成長戦略などつくらずに、
 民営化と規制緩和だけを行なった。結論を先に書いてしまうと、今回の「第3の矢」
 も民営化と規制緩和に特化するべきだ。個別の産業育成など、国=官僚にできるわけ
 がないのだから、放っておけばよい。

  旧通産省(通商産業省)時代からの悪弊で、「成長戦略として政策提案せよ」と言
 うと、経済産業省の官僚は決まって「産業ターゲティング・ポリシー」(産業政策)
 や「官民ファンド」ばかりを官邸に持ち込んでくる。前者は経済理論として正当化で
 きないし、後者は税金無駄遺いの温床になりうる代物だ。

  かつて、「通産省による産業政策(特定産業の成長促進や保護)が日本の高度成長
 をもたらした」という嘘のような"神話"がまかり通っていた。このことについては、
 『官愚の国』で紙数を割いたので、同書をお読みいただきたい。ここで述べるべきは、
 「産業政策」なるものは日本だけでしか通用しない、特殊きわまりない政策だという
 ことであろう。
  そもそも「産業ターゲティング・ポリシー」も「産業政策」も、英語では説明不可
  能な概念なのだ。
 industrial targeting policy とか industrial policy
と英訳しても、先進国の外国人にはさっ
  ぱり通じない。この場合、頭に必ず Japanese をつけるのがお約束だ。つまり
日本固有
  の、ドメスティックな概念なのである。

  しかも「ジャパニーズ・インダストリアル・ポリシー」を用いて、成長戦略を英語
 で説明したところで、外国人だちからは「ビジネス経験のない官僚に、なぜ成長戦略
 が分かるのか。分かるはずがないだろう」との一言で片づけられるのが関の山だ。加
 えて彼らはこうも言う。
 
 「日本の『産業政策』というのは、政治家と役人への利益誘導ではないか」
  それに比べれば「民営化」(privatization)、「規制緩和」(deregulation)は世界中
 で共有できる概念だ(ただし英語の「プライバタイゼーション」は「民有民営」を意
 味しているが、日本では国有でも会社形態のものを「民営化」と呼ぶなど、国際的な
 意味とずれている。また「デレギュレーション」は、本来「規制撤廃」を意味する
 ところが和訳するときに「緩和」とされ、骨抜きになってしまった)。


                   ■ 霞が関に残る、産業政策失敗の「伝説」

  私も財務省(正確に言えば大蔵省)時代、産業ターゲティング・ポリシー(産業政
 策)の失敗を目の当たりにしてきた。今でも「失敗の象徴」として霞が開の語り草に
 なっている「キバセン」について説明しよう。

 「キバセン」とは運動会の種目「騎馬戦」ではない。特殊法人「基盤技術研究促進セ
 ンター」の略称というか通称である。情報通信や新素材、バイオテクノロジーなど、
 当時"成長産業"と目された分野の基礎的な研究に対する投資(出資、融資)を目的と
 して、1985年に設立された経済産業省(当時は通産省)と総務省(郵政省)共管
 の特別認可法人だ。
  原資は政府が保有するNTT株式の配当金などの産業投資特別会計(産技特会)で
 あり、これらの資金で基盤技術研究促進センターは投資事業を行なった。つまり国民
 のお金が「キバセン」を通じて、出資・融資対象の研究開発機関や民間企業に流れて
 いたのである。

  1995年ごろのことだと記憶している。私は財務省で財政投融資の担当補佐をし
 ていた。そこで経産省の「キバセン」担当者に「投資の成功例を出してほしい」と要
 求したところ、返ってきた答えがこれである。
 「高橋さんの要望に沿えるようなデータは、持ち合わせていない」
 「今はまだ投資の成果が出ていませんが、これから急速に伸びるはず(の分野)です。
 だから大丈夫、期待してください」

 まるで根拠がない。

  私は「そんなに儲かるビジネスなら、あなたが経産省を辞めてそこに行けば?」と
 ご提案申し上げたのだが、転職した官僚は誰一人いない。要するに彼らには「成長産
 業への投資」を成功させる気などなかったのだ。
  とはいえ、基盤技術研究促進センターは基盤技術研究円滑化法という法律に基づい
 てできた特殊法人なので、私のような一介の財務官僚が潰すことはできない。経産省
 のほうも「キバセン」の存続に必死であった。
  5年後の2000年、「キバセン」に会計検査院の検査が入った。その報告書「平
 成12年度 特定検査対象に関する検査状況 基盤技術研究促進センターにおける出資
 事業について」を見てみよう。

 《検査対象  基盤技術研究促進センター
  出資の概要 新規に設立する研究開発プロジェクト会社に対して、基盤技術研究
  の促進を目的として研究開発に必要な資金を出資するもの
  調査した会社 74社  うち 研究開発中の会社 11社
                成果管理会社   47社
                解散した会社   16社

  上記に対する出資金の総額 279ぴ億円(昭和60年度~平成12年度)》 
 《出資金の回収状況 研究開発プロジェクト会社74礼に対しては、12年度末まで
 に、民間からの出資金と合わせて4000値円を超える出資が投下されている
 が、特許収入等の総額はわずか30値4627万余円である》

 会計検査院は報告書の最後に(本院の所見)として、次のように断定した。

 《現実にはこのスキームによる出資金の回収は困難であることが明らかになってきて
  いる》
                        
  そして2003年4月、投資資金2684億円が回収不能として出資金償却計上さ
 れ、基盤技術研究促進センターは解散した。国民のお金は海の藻屑となって消えてし
 まったのである。

                      ■ 国会でも追及された「キバセン」

  この「キバセン」事件は、失敗が確定した後、当時の国会でも取り上げられた。基
 盤技術研究促進センター解散翌月の2003年5月12日、参議院決算委員会(第15
 6回通常国会)。質問に立ったのは社会民主党の又市征治氏である。議事録から抜粋
 してみよう(読みやすさを考慮して、一部省略した)。

  又市委員 財務大臣にお伺いをいたしますが、大臣お預かりになっているお金が2
  770億円(注・又市氏は「時点の捉え方の違いで、損失額は2684億円ではな
  く2770億円と経済産業省が認めた」としている)あなたの目の前で雲散霧消し
  たわけであります。総務省や経済産業省は、これは特許権が陳腐化をして特許利用
  材を稼げなかったとか技術が蓄積されたからいいんだとかという、こういう弁明が
  あるようですけれども、国民の資産を預かる財務当局としてはそれでは済まないん
  じゃないですか。

  塩川正十郎財務大臣 この種の産業振興あるいは技術研修とかいうのは、出資金
  の形と基金という格好でやっておるのもございますが、要するにこの出資金という
  のは、民間で言いますところの資本金、配当を期待した資本金という、そういう感
  覚とちょっと違うのでございます。
   極端な言い方で恐縮でございますけれども、出資金、基金というのは、要するに
  その金を「必要があれば使ってやったらよろしいよ」という、そういう意味のお金
  なんでございます。技術開発とかいうのは、その起こってくるところの成果という
  ものが国民に還元されていけばいいという性質のものでございますから、そこから
  配当を期待するということはなかなか難しい。
   現に、経産省関係と思いますけれども、技術関係で、もうほとんど出資金を食っ
  てしまって、マイナスのところがたくさんある。けれども、それじゃ、そのセンタ
  ーなり技術研究所は何も国民に寄与していないのかと言えば、いやそうじゃない。
  大変な寄与をしておるものがあって、その技術は民間企業に波及しておって、それ
  がために国際競争力に役立っておるものもたくさんあるんです。

 "塩爺"こと塩川財務相(当時)は、こうして「数字上はマイナスでも(特殊法人から)
  派生した技術が民間で役立っている」と庇ってみせたが、この答弁に又市氏は「大臣、
 それはおかしい!」と噛みついている。もっともな反応だろう。

  この問題は翌年にも尾を引き、今度は衆議院経済産業委員会で取り上げられた。2
  004年5月28日(第159回通常国会)での質疑で、質問者は民主党(当時。そ
 の後、離党)の計屋圭宏氏。政府参考人として計屋氏に答えるのは、経済産業省産業
 技術環境局長の小川洋氏だ。以下はそのダイジェストである。

  計屋委員 昭和部年から平成12年度までの毎年、80位円から250位円の出資金が
 (注・基盤技術研究促進センターに)出た。出資金は産業投資特別会計産業投資勘
  定から行なわれた。財源はNTT株保有による配当金を充てていた。出資の残高が
  平成12年度末で3055位9059万円に達したわけでございますけれども、この
  数字は間違いないですね。
  小川政府参考人 末尾の数字がちょっと違うかもしれませんが、私の持っておる数
  字では3055位9100万円でございます。
  
  計屋委員 それで、平成13年6月に同センターは解散する法律が成立しているわけ
  ですね。平成15年4月1日で解散。この解散によって、産業投資特別会計の産業投
  資勘定は、15年度に2861位円の出資金償却損を計上した。したがって、305
  6億円の出資金のうち、回収できたのは195億円にすぎなかった。回収率が6・
  4%ということでございますけれども、この数字で間違いないですね。

  小川政府参考人 そうでございます。
  
  計屋委員 それでは、このセンターが出資した各会社の特許出頭数が6471件と
  いうことでございますけれども、特許を取得できたのは何件なのか。

  小川政府参考人 出願件数はご指摘の6471件で、そのうち、特許権として成立
  いたしましたのが2664件でございます。

  計屋委員 たとえば取得特許の現在の所有権者が誰になっているのか。これは、も
  う会社を解散して、特許を2664件取得しているわけですね。その所有権という
  のはどこにあるのかということですね。
 
  小川政府参考人 基盤センターでございますけれども、先生ご指摘のとおり、13年
  に法律改正が行なわれまして、清算手続に入って、15年の4月1日に解散というこ
  とになってございます。したがいまして13年から15年のセンター解散までの間、法
  が通って解散までの間、各社の研究開発会社の清算手続中に特許権は売却をされま
  して、現在は、その特許の所有者は、売却されたものを購入した人たちが持ってい
  るということでございます。     

  計屋委員 それで、解散前の当時の役員は再就職されているのかどうか、その辺も
  お聞かせいただきたいと思うんで小川政府参考人 センターの出資先となりました
  研究開発会社各社につきましては、民間企業からの出向者の方々がそれを担ってお
  られることが多うございまし
ときに、それぞれの会社の人事の中で新しい職を得ておら
   れるというふうに理解をしております。

   計屋委員 これは民間の企業から出向ということじゃなくて、役員の中にはそれぞれ官僚
   から天下りで行った人がいるんじゃないですか。民間でみんなやったはずじゃないと思いま
   すよ。公益法人である以上は、そういったようなことはないはずだと思います。

   小川政府参考人 私どもの持っております資料によりますと、センターが出資をいたしまし
   た研究開発会社の役員につきましては、公務員のOB等は勤めていなかったというふうに
   承知しております。

   計屋委員 では、兼務でやったのかね。それで、そのとき、民間の役員の皆さんについて
   は退職金は払っているのか、あるいは、兼務で役員をやっておられても、退職金そのもの
   を払っているのかどうかということですね。 

   小川政府参考人 それぞれの研究開発会社の解散手続の中で、それぞれの会社が決め
   ております退職金のルールに従って民間の方に支払われたというふうに理解をしておりま
   す。

                                          
       高橋洋一 著 『「成長戦略」の罠―「失われた20年」は、さらに続く』

                                                               この項つづく

 

 

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