モーニングコールのない朝。
それでも、部屋の小窓の外が明るくなれば、目が覚める。
朝
午前8時。
ビール片手に朝食の人びとを、生暖かい目で見守りながら…。
ビールのあてが朝食のホットサンドイッチというのは微妙だし、そこまで飲みたいとも思わない。
今回、同じチームだった、30年ダイビングをされているという熟年のおじさんは刺身に目がない。
毎晩、ドーニクルーが釣り上げたキハダやサワラが刺身となって提供されたが、このおじさんは、ぶっちゃけ、毎度ヒンシュクな刺身のとりっぷりなのである。
まさに周囲は無視する勢いである。
朝から幸せそうにビールを飲んではるので、「これで刺身があれば最高でしたねぇ…」とふったが最後、着火した様子。
「そうだ!刺身だ!あるかなぁ?」と目を輝かす。
「クルーにお聞きになってみたらどうですか?あるかもしれませんよ。」という私の無責任な返答に、「よし、聞いてみるか?」と、フットワーク軽くテーブルを離れていった。
すぐに戻ってきて、「今、出てくる。言ってみるもんだなー」とご本人様大喜び。
しばらくしたら、さわらが出てきた。
朝から刺身…。
しっくりこないが、せっかくだからいただく。
でも、刺身は、私たちがいたテーブルにだけに出されて、なんだか他のテーブルにたいして罪悪感が…。
だって、おじさん、他のテーブルに「サシミありますよ」なんて気配りはまるでない。
まあ、それは海の中の行動も同じであったんだけれど。
このおじさんと、連れのおばさんは、水中でも、周囲への心遣いはいっさいなく、何か出れば突進。
ただ、まったく悪気がないだけに、さすことはできなかった。
スキルには問題がないのに、ダイバーとしてのふるまいに問題があるのは、残念なことだ。
食事が終われば、潜らない日の船上は、本当に退屈。
去年のイクエーター号で読んだ、テルマエロマエの次の巻を読んだり、ふだん買わないダイビング雑誌を読んだり、図鑑ですぐ忘れてしまうウンチクをふやしたり、器材をかたしたり、ごろごろして半日。
アイランド・サファリ・ロイヤルは、時速30キロ程度というが、昼にはマーレに着いた。
昼
正午。
このランチが、アイランド・サファリ・ロイヤルでの、最後のごはん。
モルディビアンカレーとフィッシュパパド。大好き!
13時。
炎天下のトップデッキで、全員で記念写真をとり。
その後は、まただらだらと時が流れる。
今回のクルーズで撮ったビデオを、早くも編集完了した方がいて、上映。
なんて几帳面なんだろう。
夕方
17時。
キャプテンに握手してチップを渡すスタイルが嫌い。
船上の噂で、この船で一番のイケメンは、キャプテン!とのことだったので、ガン見したら、確かにそうとも言える。
まだ若いのに、落ち着いた感じで、顔も整っているし、背も高いし、スマイルもいい感じ。
セレベス・エクスプローラーのキャプテンも、こんな人がやってほしい。
そして下船!
フルレに着いたら、皆さんはスリランカン航空で日本へ飛ぶ。
初日、私と同じSQ便で着いた女子は、このあとリゾートへ行くという。
私は、イクエーター号むけフライトパターンで変更ができなかったので、マーレでケチくさく1泊。
以前は、マーレのスーパーで、カレー用各種スパイス購入に余念がなかったが、カレーはインド料理屋におまかせポリシーに転換した今となっては、スーパーにも用はなく、不用なマーレ1泊である。
着いた日と同じ、ワールド・ツアー・プランナーズの女性が出迎えに来ていたので、「マーレへのドーニ乗り場だけ教えてください」と頼んだら、彼女はマウルーフに、私をドーニのりばに連れてゆくようにたのんでくれた。
マウルーフはマーレのおうちに帰るんだそうだ。
そして、みんながカートと格闘している間に、なんの挨拶もなく、そそくさとドーニ乗り場へ移動。
今回は、うわっつらの社交だけで、だれとも友だちにならなかった。
なんだか閉鎖的な人率が高くて、同行者がいる人は同行者だけでがっちり固まってるイメージ。
マウルーフは、ドーニのきっぷを買ってくれ、家へのおみやげのミニミニマンゴまでひとつくれてしまい、なんか悪いことをした。
Dace Hotel
ホテル名は、マウルーフが見ても「?」
住所を見せても「?」
Jettyについて、タクシードライバーに、「この住所」と説明してくれるが、ドライバーもホテルをわからないと言っている。
マウルーフにお礼を言って別れ、タクシードライバーが場所がわかるかと聞いてくるので、知らないと答え、とにかく発進。
マーレの通りは、細い道に人と車とバイクがあふれ、みんなお互いに「ちっ」と思っている雰囲気。
このタクシーは無線を積んでいて、無線でやりとりしてホテルへの道がわかった様子。
未知の通りをぐんぐん走って、こんな道覚えられないけど、きょうあす、どうやって歩こうと不安になる。
やがて、「この道だよ」と路地の入り口で降ろされた。
パッと見、ホテルのエントランスも見えず、ちょっと行き過ぎたら、ホテルのスタッフが「Dace?」と声をかけてくれた。
感じのいいモルディビアン男性。
ホテルの入り口は、民家の扉なみに小さく、とてもホテルと気がつかない。
「こちらがレセプションです」と通された、左手の部屋は、真っ暗。
窓側のソファーにどうぞどうぞ、と椅子をすすめられるが、窓から弱い光が入ってくるのみの暗がり。
レセプションには、ろうそくがひとつ灯されていた。
「Blackout?」と聞いても、バツが悪そうに笑っているだけで、ケータイでどこかに一生懸命電話をかけている。
KKでもときどき停電はあったけど、マーレもいまがそうなのか?
スタッフが電話で話を終えると、電気にスイッチが入る音がして、やっと明るくなった。
自家発電で、お客がいないと電源ぜんぶオフにしてるとか?
まさかね…。
そして別のまた、感じのよいスタッフが現れて、チェックイン。
18時。
通された部屋は3階。
エレベーターはない。
外で迎えてくれたスタッフが、荷物をかついであがってくれる。
小さな部屋には、エアコン、TV、冷蔵庫があり、コンプリメンタリーで1.5リットルミネラルウォーターがある。
バスルームはシャワーのみ。
温水が使える時間は、限られている。
時間外でも頼めば、温水出してくれるとは書いてあったけれど、温まるまで10分とかかかるらしい。
マーレ
この路地裏のホテルから、どうやってJETTY側にゆけるんだろう?
レセプションで地図をもらい、夕食になりそうなものを求めて街に出る。
日没後の残照で、まだ空はわずかに明るかったが、暗くなったら、この路地を見つけるのは大変そう。
目印になるもの、バーバーだったり、木だったりをチェックしながら歩きはじめる。
でも、コンビニもなさそうだし、日がとっぷり暮れたら、完璧に迷子になると確信したので、深みにはまらないうちに戻ることにした。
が、いとも簡単に曲がる道を間違えたようだ。
これはもう海側に出て、地図見ながら戻るしかない。
ここはマーレ。
パリのように、犬も歩けばメトロにあたるわけでも、ベネチアのように船着き場への矢印が出ているわけでもない。
東西南北だけでもわかればと、iPhoneのコンパスを起動するが、作動しない。
使えねー。
とりあえず、歩いてゆくと、ほどなく海沿いの道に到達した。
でも、これって、私が思っている海沿いとは明らかに様子が違う。
きっと逆側に出てしまったんだ。
タクシーをつかまえるのは時間の問題、と思うけれど、人通りは多いし、もう一生来ないであろう場所の散歩を続ける。
幅広な通りを見つけると、ここを行ったらどうだろう?とチャレンジャー。
こうして迷走しているうちに、サッカーのフィールドが現れた。
ナイター練習をする若者たち。
弱そうだけど、頑張れ。
サッカー練習からバイクで帰る者、バイクでやってくる者…。
ふと、バイクに乗ろうとしている警官の姿が目に飛び込んできた。
このまま去らせてはいけない。
呼び止めて、空港ゆきのドーニが出るJettyの方向を尋ねる。
「この先の道を、あっちにまっすぐ」的な返事で、よし、と思う。
「歩いて何分?」と聞いたら、「5~6分」だそうで、楽勝じゃん。
そして、言われたとおりにまっすぐ道を歩いて行ったら、ミニマートがあったので、入ってみる。
ミニマートのお兄ちゃん、入ったらとても笑顔が感じよい。
残念ながら、買うものはみつからず、店を出る。
そしたら、店に入ったことで、またまた方向感覚を失うなさけなさ。
だって、モルディブの裏道って、みんな同じ景色に見える。
今まで、道に迷っても、どうにもならなかったことはない。
どう考えても、さっきのおまわりさんが教えてくれた道からずれてんなー、と思いつつ、歩いてゆく。
こんどは、まあまあのサイズのスーパーがあった。
マーレでイタリアンやチャイニーズを食べる気持ちはほとほとないし、このスーパーでカップ麺とかパンでも買って、道を聞こう。
パンがなければ、お菓子を食べてやる!
ちゃんと買い物をして、Jettyへの道をたずねると、わざわざ店の外に出て、「そこまっすぐ行って、曲がって」と教えてくれた。
歩いてゆくと、アイスクリーム屋が見えた。
ツーリストむけの店が多い、チャンダニーマグにやっと着いたということだ。
せっかくだから、いつものSTOトレードセンターのスーパーにも寄っておこう。
と思って、ビルに入るとCLOSE。
本当はお祈りの時間なのだろうけれど、店の中では、白人女性といかにも変わり者風のローカルのおっちゃんが、だらだら買い物していて、まあ、祈ってない。
19時45分再開となっていて、10分たらずなので、待つことにした。
無脂肪乳と、ドイツ製のココナッツクッキー無糖を買って店を出る。
これで明るかったら、地図片手に歩くが、ちょっと無理そう。
STOの前でタクシーを拾おうと思ったが、私がビルを出たときに、ちょうどインド系のおねえちゃんがタクシーに向かって手をあげたが、タクシーは行ってしまった。
しっかりお客が乗っている。
それを見たモルディビアンが、そのインド系に「あっちへ行ったほうがいい」というジェスチャーをしている。
どうやら、ここで拾うのは難しいということらしい。
それを見て、ふーん、そうなんだと、またまたドーニのりばを目指す。
ドーニ乗り場なら、ドーニで着いた客待ちのタクシーがいるかもしれない。
しかし、客待ちのタクシーは、この時間帯はおらず、流しのタクシーを拾おうとしても、どれもこれも先客あり。
たまに小道から出てくるのがカラなのだが、それに気づいたときには、時すでに遅し。
小道から出てくるのが狙いめとわかったので、視点を変えたらすぐにタクシーはGETできた。
乗り込んだら地図を見せて、印のついている場所を指さして、ここに連れって言ってというが、またまた「?」
住所も書いてあるし、地図があってもまだわからないと言われるDace Hotelって!?
タクシーは乗り合いになるのが普通のようで、別のおっちゃんも乗りこんできて、そのおっちゃんが、どこそこの方ではないか?みたいなアドバイスをしてなんとかホテルへの方向性を見出したもよう。
そのおっちゃんが途中で降り、まだまだ迷うタクシー。
マーレのタクシーは、どんだけ走っても人だけならUS2ドルなので、まあ、迷いたいだけ迷ってください。
場所が不便なだけでなく、このわかりづらさは、Dace Hotelの致命的な弱点といえよう。
紆余曲折、なんとか戻るが、またまた路地手前で降りるので、大丈夫かな?と思うが、ホテルの人が、すぐに見つけてくれた。
部屋に帰ると、シャワーはもう水。
お湯を待つ気力はなく、そのまま水シャワーでがまん。
カップ麺を食べようと思ったら、湯沸しポットはないのであった。
仕方ないので、買ってきた牛乳と、ドイツ製クッキーとでわびしい夕食。
いままで飽食すぎたから、たまにはこのくらいがいいのだ。
でも、ドイツ製クッキーがまずいっ!
明日のシンガポールゆきのフライトは深夜。
歩けば迷う、タクシーも迷う、モルディブの物価は高い。
夜までマーレにいるのは、もういやだ。
昼にチェックアウトしたら、ホテルに荷物をあずけて、カフェのはしごで時間をつぶそうかと思ったが、Daceの、この地の利の悪さじゃ、現実的でない。
できれば、早い便で東京に帰りたい。
出発前には変更できなかったが、明日のマーレ発昼便に空席がないかSQに電話をかけてみた。
出てきたのは、インドなまりの英語…。
マーレ→シンガポールの便は昼に変えられるけれど、乗り継ぎのシンガポール深夜発、成田朝着の便は満席とのこと。
日本には、日曜の23時まで帰れないってことか…。
それでも、マーレ→シンガポールだけでも変えてもらうことにして、めでたく明日の午前中にマーレを去れることになった。
それでも、部屋の小窓の外が明るくなれば、目が覚める。
朝
午前8時。
ビール片手に朝食の人びとを、生暖かい目で見守りながら…。
ビールのあてが朝食のホットサンドイッチというのは微妙だし、そこまで飲みたいとも思わない。
今回、同じチームだった、30年ダイビングをされているという熟年のおじさんは刺身に目がない。
毎晩、ドーニクルーが釣り上げたキハダやサワラが刺身となって提供されたが、このおじさんは、ぶっちゃけ、毎度ヒンシュクな刺身のとりっぷりなのである。
まさに周囲は無視する勢いである。
朝から幸せそうにビールを飲んではるので、「これで刺身があれば最高でしたねぇ…」とふったが最後、着火した様子。
「そうだ!刺身だ!あるかなぁ?」と目を輝かす。
「クルーにお聞きになってみたらどうですか?あるかもしれませんよ。」という私の無責任な返答に、「よし、聞いてみるか?」と、フットワーク軽くテーブルを離れていった。
すぐに戻ってきて、「今、出てくる。言ってみるもんだなー」とご本人様大喜び。
しばらくしたら、さわらが出てきた。
朝から刺身…。
しっくりこないが、せっかくだからいただく。
でも、刺身は、私たちがいたテーブルにだけに出されて、なんだか他のテーブルにたいして罪悪感が…。
だって、おじさん、他のテーブルに「サシミありますよ」なんて気配りはまるでない。
まあ、それは海の中の行動も同じであったんだけれど。
このおじさんと、連れのおばさんは、水中でも、周囲への心遣いはいっさいなく、何か出れば突進。
ただ、まったく悪気がないだけに、さすことはできなかった。
スキルには問題がないのに、ダイバーとしてのふるまいに問題があるのは、残念なことだ。
食事が終われば、潜らない日の船上は、本当に退屈。
去年のイクエーター号で読んだ、テルマエロマエの次の巻を読んだり、ふだん買わないダイビング雑誌を読んだり、図鑑ですぐ忘れてしまうウンチクをふやしたり、器材をかたしたり、ごろごろして半日。
アイランド・サファリ・ロイヤルは、時速30キロ程度というが、昼にはマーレに着いた。
昼
正午。
このランチが、アイランド・サファリ・ロイヤルでの、最後のごはん。
モルディビアンカレーとフィッシュパパド。大好き!
13時。
炎天下のトップデッキで、全員で記念写真をとり。
その後は、まただらだらと時が流れる。
今回のクルーズで撮ったビデオを、早くも編集完了した方がいて、上映。
なんて几帳面なんだろう。
夕方
17時。
キャプテンに握手してチップを渡すスタイルが嫌い。
船上の噂で、この船で一番のイケメンは、キャプテン!とのことだったので、ガン見したら、確かにそうとも言える。
まだ若いのに、落ち着いた感じで、顔も整っているし、背も高いし、スマイルもいい感じ。
セレベス・エクスプローラーのキャプテンも、こんな人がやってほしい。
そして下船!
フルレに着いたら、皆さんはスリランカン航空で日本へ飛ぶ。
初日、私と同じSQ便で着いた女子は、このあとリゾートへ行くという。
私は、イクエーター号むけフライトパターンで変更ができなかったので、マーレでケチくさく1泊。
以前は、マーレのスーパーで、カレー用各種スパイス購入に余念がなかったが、カレーはインド料理屋におまかせポリシーに転換した今となっては、スーパーにも用はなく、不用なマーレ1泊である。
着いた日と同じ、ワールド・ツアー・プランナーズの女性が出迎えに来ていたので、「マーレへのドーニ乗り場だけ教えてください」と頼んだら、彼女はマウルーフに、私をドーニのりばに連れてゆくようにたのんでくれた。
マウルーフはマーレのおうちに帰るんだそうだ。
そして、みんながカートと格闘している間に、なんの挨拶もなく、そそくさとドーニ乗り場へ移動。
今回は、うわっつらの社交だけで、だれとも友だちにならなかった。
なんだか閉鎖的な人率が高くて、同行者がいる人は同行者だけでがっちり固まってるイメージ。
マウルーフは、ドーニのきっぷを買ってくれ、家へのおみやげのミニミニマンゴまでひとつくれてしまい、なんか悪いことをした。
Dace Hotel
ホテル名は、マウルーフが見ても「?」
住所を見せても「?」
Jettyについて、タクシードライバーに、「この住所」と説明してくれるが、ドライバーもホテルをわからないと言っている。
マウルーフにお礼を言って別れ、タクシードライバーが場所がわかるかと聞いてくるので、知らないと答え、とにかく発進。
マーレの通りは、細い道に人と車とバイクがあふれ、みんなお互いに「ちっ」と思っている雰囲気。
このタクシーは無線を積んでいて、無線でやりとりしてホテルへの道がわかった様子。
未知の通りをぐんぐん走って、こんな道覚えられないけど、きょうあす、どうやって歩こうと不安になる。
やがて、「この道だよ」と路地の入り口で降ろされた。
パッと見、ホテルのエントランスも見えず、ちょっと行き過ぎたら、ホテルのスタッフが「Dace?」と声をかけてくれた。
感じのいいモルディビアン男性。
ホテルの入り口は、民家の扉なみに小さく、とてもホテルと気がつかない。
「こちらがレセプションです」と通された、左手の部屋は、真っ暗。
窓側のソファーにどうぞどうぞ、と椅子をすすめられるが、窓から弱い光が入ってくるのみの暗がり。
レセプションには、ろうそくがひとつ灯されていた。
「Blackout?」と聞いても、バツが悪そうに笑っているだけで、ケータイでどこかに一生懸命電話をかけている。
KKでもときどき停電はあったけど、マーレもいまがそうなのか?
スタッフが電話で話を終えると、電気にスイッチが入る音がして、やっと明るくなった。
自家発電で、お客がいないと電源ぜんぶオフにしてるとか?
まさかね…。
そして別のまた、感じのよいスタッフが現れて、チェックイン。
18時。
通された部屋は3階。
エレベーターはない。
外で迎えてくれたスタッフが、荷物をかついであがってくれる。
小さな部屋には、エアコン、TV、冷蔵庫があり、コンプリメンタリーで1.5リットルミネラルウォーターがある。
バスルームはシャワーのみ。
温水が使える時間は、限られている。
時間外でも頼めば、温水出してくれるとは書いてあったけれど、温まるまで10分とかかかるらしい。
マーレ
この路地裏のホテルから、どうやってJETTY側にゆけるんだろう?
レセプションで地図をもらい、夕食になりそうなものを求めて街に出る。
日没後の残照で、まだ空はわずかに明るかったが、暗くなったら、この路地を見つけるのは大変そう。
目印になるもの、バーバーだったり、木だったりをチェックしながら歩きはじめる。
でも、コンビニもなさそうだし、日がとっぷり暮れたら、完璧に迷子になると確信したので、深みにはまらないうちに戻ることにした。
が、いとも簡単に曲がる道を間違えたようだ。
これはもう海側に出て、地図見ながら戻るしかない。
ここはマーレ。
パリのように、犬も歩けばメトロにあたるわけでも、ベネチアのように船着き場への矢印が出ているわけでもない。
東西南北だけでもわかればと、iPhoneのコンパスを起動するが、作動しない。
使えねー。
とりあえず、歩いてゆくと、ほどなく海沿いの道に到達した。
でも、これって、私が思っている海沿いとは明らかに様子が違う。
きっと逆側に出てしまったんだ。
タクシーをつかまえるのは時間の問題、と思うけれど、人通りは多いし、もう一生来ないであろう場所の散歩を続ける。
幅広な通りを見つけると、ここを行ったらどうだろう?とチャレンジャー。
こうして迷走しているうちに、サッカーのフィールドが現れた。
ナイター練習をする若者たち。
弱そうだけど、頑張れ。
サッカー練習からバイクで帰る者、バイクでやってくる者…。
ふと、バイクに乗ろうとしている警官の姿が目に飛び込んできた。
このまま去らせてはいけない。
呼び止めて、空港ゆきのドーニが出るJettyの方向を尋ねる。
「この先の道を、あっちにまっすぐ」的な返事で、よし、と思う。
「歩いて何分?」と聞いたら、「5~6分」だそうで、楽勝じゃん。
そして、言われたとおりにまっすぐ道を歩いて行ったら、ミニマートがあったので、入ってみる。
ミニマートのお兄ちゃん、入ったらとても笑顔が感じよい。
残念ながら、買うものはみつからず、店を出る。
そしたら、店に入ったことで、またまた方向感覚を失うなさけなさ。
だって、モルディブの裏道って、みんな同じ景色に見える。
今まで、道に迷っても、どうにもならなかったことはない。
どう考えても、さっきのおまわりさんが教えてくれた道からずれてんなー、と思いつつ、歩いてゆく。
こんどは、まあまあのサイズのスーパーがあった。
マーレでイタリアンやチャイニーズを食べる気持ちはほとほとないし、このスーパーでカップ麺とかパンでも買って、道を聞こう。
パンがなければ、お菓子を食べてやる!
ちゃんと買い物をして、Jettyへの道をたずねると、わざわざ店の外に出て、「そこまっすぐ行って、曲がって」と教えてくれた。
歩いてゆくと、アイスクリーム屋が見えた。
ツーリストむけの店が多い、チャンダニーマグにやっと着いたということだ。
せっかくだから、いつものSTOトレードセンターのスーパーにも寄っておこう。
と思って、ビルに入るとCLOSE。
本当はお祈りの時間なのだろうけれど、店の中では、白人女性といかにも変わり者風のローカルのおっちゃんが、だらだら買い物していて、まあ、祈ってない。
19時45分再開となっていて、10分たらずなので、待つことにした。
無脂肪乳と、ドイツ製のココナッツクッキー無糖を買って店を出る。
これで明るかったら、地図片手に歩くが、ちょっと無理そう。
STOの前でタクシーを拾おうと思ったが、私がビルを出たときに、ちょうどインド系のおねえちゃんがタクシーに向かって手をあげたが、タクシーは行ってしまった。
しっかりお客が乗っている。
それを見たモルディビアンが、そのインド系に「あっちへ行ったほうがいい」というジェスチャーをしている。
どうやら、ここで拾うのは難しいということらしい。
それを見て、ふーん、そうなんだと、またまたドーニのりばを目指す。
ドーニ乗り場なら、ドーニで着いた客待ちのタクシーがいるかもしれない。
しかし、客待ちのタクシーは、この時間帯はおらず、流しのタクシーを拾おうとしても、どれもこれも先客あり。
たまに小道から出てくるのがカラなのだが、それに気づいたときには、時すでに遅し。
小道から出てくるのが狙いめとわかったので、視点を変えたらすぐにタクシーはGETできた。
乗り込んだら地図を見せて、印のついている場所を指さして、ここに連れって言ってというが、またまた「?」
住所も書いてあるし、地図があってもまだわからないと言われるDace Hotelって!?
タクシーは乗り合いになるのが普通のようで、別のおっちゃんも乗りこんできて、そのおっちゃんが、どこそこの方ではないか?みたいなアドバイスをしてなんとかホテルへの方向性を見出したもよう。
そのおっちゃんが途中で降り、まだまだ迷うタクシー。
マーレのタクシーは、どんだけ走っても人だけならUS2ドルなので、まあ、迷いたいだけ迷ってください。
場所が不便なだけでなく、このわかりづらさは、Dace Hotelの致命的な弱点といえよう。
紆余曲折、なんとか戻るが、またまた路地手前で降りるので、大丈夫かな?と思うが、ホテルの人が、すぐに見つけてくれた。
部屋に帰ると、シャワーはもう水。
お湯を待つ気力はなく、そのまま水シャワーでがまん。
カップ麺を食べようと思ったら、湯沸しポットはないのであった。
仕方ないので、買ってきた牛乳と、ドイツ製クッキーとでわびしい夕食。
いままで飽食すぎたから、たまにはこのくらいがいいのだ。
でも、ドイツ製クッキーがまずいっ!
明日のシンガポールゆきのフライトは深夜。
歩けば迷う、タクシーも迷う、モルディブの物価は高い。
夜までマーレにいるのは、もういやだ。
昼にチェックアウトしたら、ホテルに荷物をあずけて、カフェのはしごで時間をつぶそうかと思ったが、Daceの、この地の利の悪さじゃ、現実的でない。
できれば、早い便で東京に帰りたい。
出発前には変更できなかったが、明日のマーレ発昼便に空席がないかSQに電話をかけてみた。
出てきたのは、インドなまりの英語…。
マーレ→シンガポールの便は昼に変えられるけれど、乗り継ぎのシンガポール深夜発、成田朝着の便は満席とのこと。
日本には、日曜の23時まで帰れないってことか…。
それでも、マーレ→シンガポールだけでも変えてもらうことにして、めでたく明日の午前中にマーレを去れることになった。