つぶや句

夢追いおっさんの近況および思うことを気まぐれに。

エイリアンな一日

2006-08-18 14:29:11 | ちょっとした出来事
ついに胃カメラの日がやってきた。死んでもやりたくないのが
この胃カメラなのだ。死んでもいいんならやらなきゃいいじゃないか、と
思うのだが、やっぱり本当はまだ死にたくないらしい。

「がんセンター」と大きく書かれた建物へ入って行く。
いつも混んでいる。これだけ癌の心配をしている人がいるわけだ。

予約は10時30分だったが、9時30分に到着。
胃カメラの受付で予約表を出すと、早速着替えてくれと言う。
更衣室は、コイン式ロッカーになっていて、盗難防止が計られている。

控え室で座って待ってっていると、看護士さんの説明があり、
すぐに何やら液体を紙コップで飲まされた。かすかに味がしたが、
水とほとんど変わらなかった。

しばらくして喉の麻酔である。これも気持ちのいいものではない。
タイマーを渡され、注射器でピュッと口に入れられた。
タイマー設定5分。このタイマーを持ったまま、口を開けっぱなしで
上を向いているのである。
悔し紛れに忌野清志郎の「上を向いて歩こう」を頭の中に巡らせてみた。
この場合九ちゃんの「上を向いて歩こう」ではだめなのだ。
「上~をむいて~イエ~イ!歩こう~イエ~イ!」それでも5分は長かった。

いよいよ胃カメラ室だ。薄暗い中で指示通りベッドに横たわる。
「力を抜いてリラックスしてくださいね」と看護士さん。
ビカビカ光る胃カメラの先端がこちらへ向かってくる。
まるで何かの生命体のようだ。
管は小指大と書いてあったが、もっと太く思えた。

グニュルと入っていく、「グゲッ」思わずあげそうになる。
「グゲグゲ」どんどん入って行く。だいたい食べ物でもない物を、
飲み込むということぐらい苦しいものはない。

「力をいれないで!」と私を押さえている看護士さん。ムリ、
「ゲボッ」「げっぷをしないで」と先生。ムリ、
口からはよだれ、鼻からは鼻汁、目からは涙、悲惨だ。
カメラはさらに進んでおなかを引っ掻き回してる。
また「力を入れないで」と看護士さん。でもね、
私を押さえている看護士さんの手に相当力が入っているんですけど…。
この地獄の苦しみの中で思った。これはまるでエイリアンに入りこまれた
人間の感じではないだろうかと…。

「抜きますよう」という先生の言葉のなんと嬉しかったことか。
エイリアンが「シュポッ」と出て行った。
1時間ぐらいに思われたこの苦しみは、10分ぐらいのことだった。

終わってからしばらくは手の振るえが止まらなかった。
おなかには、すでにカメラは入っていないのにもかかわらず、
エイリアンが住み着いてしまったような感覚がしばらく続いていた。

エイリアンな顔のまま外に出ると蝉時雨がつづいていた。
そしてその中につくつく法師の声。今年初めて聞く秋の声である。
私の長~い一日と、夏は終わりを告げようとしていた。
もう~胃カメラなんか死んでも…

コメント
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