毎年のことだが、夏になると身内が長崎へ一週間程帰郷する。
いつも夜行バスで、12時間かけて帰る。
本当は昨日の予定だったのだが、台風が九州を直撃したために
一日伸ばしたのである。車で送ることもあるのだが、
今回はバスと電車を繋いで駅まで行く予定だ。
バスを降りた近くに安くて美味しい店があるので、
そこで夕食をとる予定で行ってみたが、なんと改装中だった。
仕方なく、何軒か並んでいる店のうちから似たような店を選んで入った。
店内はけっこう広くお客もそこそこ入っている。
どうも我々と同じく、改装中の店からの迂回組がけっこういるようだ。
大衆割烹風のこの店は、魚料理から焼き鳥、肉料理まである。
こういう何でも屋は、広く浅くで期待できないことが多い。
案の定そこそこの味に留まっていた。肉じゃがはまあまあ、
たこブツは水っぽい、などと客というものは我々だけでなく、
皆グルメ評論家になって一つ一つ批評しているに違いない。
こりや食べ物屋も大変だ、と思ってしまった。
最後にお茶漬けを頼んで待っていたが、忘れてしまったのか
なかなか来ない、そうこうしているうちに、時間が迫ってきたので、
身内に「もう行ったほうがいいぞ」と言って、この店で見送った。
行ってしばらくしてもまだ来ない。もうキャンセルして
帰ろうと思って席を立つとやっと頼んでいた鮭茶漬けが来た。
ま…いいか、と食べていると、なんと身内がひょいと
顔を見せたではないか、戻ってきたのである。
「おい、時間大丈夫か」と聞くと、「なんとか。」
そそくさと会計を済ませ、一緒に駅へ向かった。
あんな形で行くのはイヤだったようである。
何とか間に合って、無事夜行バスを見送ることができた。
やっぱり見送るときは一抹の寂しさがこみ上げてくる。
見送った後は「これで一週間独身だあ~」などとうそぶく自由もまた感じ、
いない不自由と合わせ、寂しいような、嬉しいような、
身勝手な思いが去来するのだった。やれやれ…。
チョンガーの頃は、東京で漫画家予備軍として四畳半一間に暮らし、
知り合いの漫画家の手伝いなどしながら、食いつないでいた。
漫画家になるというのが、夢であり支えだった。しかし
段々その実現が遠くなると、夢はクモの糸のように細くなり、
とりわけ秋風は身に沁みた。だから秋は嫌いだった。
まだ残暑厳しいが、そろそろ秋風が吹いてくる。まだあの頃の
名残で秋は好きになれていない。
果たして秋を好きになれる日が来るのやら、
はや人生の黄昏口に立って、そう思ったりするのだった。
いつも夜行バスで、12時間かけて帰る。
本当は昨日の予定だったのだが、台風が九州を直撃したために
一日伸ばしたのである。車で送ることもあるのだが、
今回はバスと電車を繋いで駅まで行く予定だ。
バスを降りた近くに安くて美味しい店があるので、
そこで夕食をとる予定で行ってみたが、なんと改装中だった。
仕方なく、何軒か並んでいる店のうちから似たような店を選んで入った。
店内はけっこう広くお客もそこそこ入っている。
どうも我々と同じく、改装中の店からの迂回組がけっこういるようだ。
大衆割烹風のこの店は、魚料理から焼き鳥、肉料理まである。
こういう何でも屋は、広く浅くで期待できないことが多い。
案の定そこそこの味に留まっていた。肉じゃがはまあまあ、
たこブツは水っぽい、などと客というものは我々だけでなく、
皆グルメ評論家になって一つ一つ批評しているに違いない。
こりや食べ物屋も大変だ、と思ってしまった。
最後にお茶漬けを頼んで待っていたが、忘れてしまったのか
なかなか来ない、そうこうしているうちに、時間が迫ってきたので、
身内に「もう行ったほうがいいぞ」と言って、この店で見送った。
行ってしばらくしてもまだ来ない。もうキャンセルして
帰ろうと思って席を立つとやっと頼んでいた鮭茶漬けが来た。
ま…いいか、と食べていると、なんと身内がひょいと
顔を見せたではないか、戻ってきたのである。
「おい、時間大丈夫か」と聞くと、「なんとか。」
そそくさと会計を済ませ、一緒に駅へ向かった。
あんな形で行くのはイヤだったようである。
何とか間に合って、無事夜行バスを見送ることができた。
やっぱり見送るときは一抹の寂しさがこみ上げてくる。
見送った後は「これで一週間独身だあ~」などとうそぶく自由もまた感じ、
いない不自由と合わせ、寂しいような、嬉しいような、
身勝手な思いが去来するのだった。やれやれ…。
チョンガーの頃は、東京で漫画家予備軍として四畳半一間に暮らし、
知り合いの漫画家の手伝いなどしながら、食いつないでいた。
漫画家になるというのが、夢であり支えだった。しかし
段々その実現が遠くなると、夢はクモの糸のように細くなり、
とりわけ秋風は身に沁みた。だから秋は嫌いだった。
まだ残暑厳しいが、そろそろ秋風が吹いてくる。まだあの頃の
名残で秋は好きになれていない。
果たして秋を好きになれる日が来るのやら、
はや人生の黄昏口に立って、そう思ったりするのだった。