わたしは、週末の会社帰りには必ずと言っていいほど、スーパーの魚売り場を
覗いてる。当然ながら酒の肴を求めてのことである。
先週末、いつものように魚売り場を覗いていると、美味しそうなカツオの半身ブロックが、
1パックだけ残っていた。刺身はほとんどブロックで買って、自分で切るのである。
わたしは思わず引き寄せられ、「欲しいなあ…」とゴクリと生唾を飲み込んだが、
780円と我が清貧のみぎりには、ちと高い。
しかし、簡単にはあきらめきれず、一先ず保留にして他の魚を見回っていると、来た来た、
値段を安く張り替える店員さんが、魚売り場の値札を張り替え始めたのである。
わたしはカツオの前に陣取り、店員さんを待ち構えた。イカ、アジ、と張り替えていく。
次はいよいよカツオだ…。ところがどっこい肝心のカツオをスルーしてしまったではないか。
そして次のサーモンブロックにも、650円が550円にペタッ。「オイ!」わたしは
思わず声なき声を呑みこんだ。店員さんはそのまま進んで行く。
ちょっと時間が早かったかな…と思い、気を取り直して野菜売り場へ…。カツオといえば
うちでは玉ねぎのスライスと大葉のきざみを添えてポンズ生姜で食べるのだ。
生姜はカツオに付いているので、とりあえず大葉を購入。
チラと魚売り場に目をやると、また一巡りした店員さんがカツオの方向に戻って行くではないか。
わたしは再びカツオの前に陣取り、これ見よがしにカツオに視線を投げかける。
店員さんは知ってか知らずか、値札を張り替えるべくカツオの方へ…。その手は隣りの
タイへペタッ…。「オイ…」例によって声なき声。
が、再びカツオの方へ値札を持っていってペタッと張ったのは、カツオを挟んだ隣りのサーモンで
ある。「な、何だよ!その隣!ホラ高いだろ!」声なき声がわたしの中でほとばしる。
またもやスルーである。「何でカツオだけ…」さすがに、穏やかで、平和を愛し、女性を尊敬し、
友愛精神にあふれた我が心情が、グラグラと煮えたぎってきた。わたしはカツオをむんずと掴み、
店員の鼻づらに突き付け「これが目に入らぬかー」とわめくこともできずに、結局780円也の
元値で買ってきたのである。
あれは、知っててわざと張らなかったのでは…。わたしは売り手と買い手の凄絶な駆け引きにおいて
奥様相手に百戦錬磨の店員さんに苦もなくひねられたに違いない.敗残兵の悔しさは、その日刺身と
共に久々に作った血あいタタキの苦みとなってにじみ出たのか、「この血あいタタキ美味しい~」と
身内らにことのほか好評だったのである。
覗いてる。当然ながら酒の肴を求めてのことである。
先週末、いつものように魚売り場を覗いていると、美味しそうなカツオの半身ブロックが、
1パックだけ残っていた。刺身はほとんどブロックで買って、自分で切るのである。
わたしは思わず引き寄せられ、「欲しいなあ…」とゴクリと生唾を飲み込んだが、
780円と我が清貧のみぎりには、ちと高い。
しかし、簡単にはあきらめきれず、一先ず保留にして他の魚を見回っていると、来た来た、
値段を安く張り替える店員さんが、魚売り場の値札を張り替え始めたのである。
わたしはカツオの前に陣取り、店員さんを待ち構えた。イカ、アジ、と張り替えていく。
次はいよいよカツオだ…。ところがどっこい肝心のカツオをスルーしてしまったではないか。
そして次のサーモンブロックにも、650円が550円にペタッ。「オイ!」わたしは
思わず声なき声を呑みこんだ。店員さんはそのまま進んで行く。
ちょっと時間が早かったかな…と思い、気を取り直して野菜売り場へ…。カツオといえば
うちでは玉ねぎのスライスと大葉のきざみを添えてポンズ生姜で食べるのだ。
生姜はカツオに付いているので、とりあえず大葉を購入。
チラと魚売り場に目をやると、また一巡りした店員さんがカツオの方向に戻って行くではないか。
わたしは再びカツオの前に陣取り、これ見よがしにカツオに視線を投げかける。
店員さんは知ってか知らずか、値札を張り替えるべくカツオの方へ…。その手は隣りの
タイへペタッ…。「オイ…」例によって声なき声。
が、再びカツオの方へ値札を持っていってペタッと張ったのは、カツオを挟んだ隣りのサーモンで
ある。「な、何だよ!その隣!ホラ高いだろ!」声なき声がわたしの中でほとばしる。
またもやスルーである。「何でカツオだけ…」さすがに、穏やかで、平和を愛し、女性を尊敬し、
友愛精神にあふれた我が心情が、グラグラと煮えたぎってきた。わたしはカツオをむんずと掴み、
店員の鼻づらに突き付け「これが目に入らぬかー」とわめくこともできずに、結局780円也の
元値で買ってきたのである。
あれは、知っててわざと張らなかったのでは…。わたしは売り手と買い手の凄絶な駆け引きにおいて
奥様相手に百戦錬磨の店員さんに苦もなくひねられたに違いない.敗残兵の悔しさは、その日刺身と
共に久々に作った血あいタタキの苦みとなってにじみ出たのか、「この血あいタタキ美味しい~」と
身内らにことのほか好評だったのである。