「ズッキーン!」と右上奥歯に痛みが走った。それに最近冷たいものを
食べるとヤケにしみるではないか。「ヤバイ!虫歯と知覚過敏が
同時に来たか」と愕然とした。
実は、3か月に1度の検診の連絡が来ていたのに、当日用事ができて、
キャンセルしてそれっきり半年以上になっていたのだ。
というわけで、久々に歯医者に行った…。
以前担当していた妙齢の歯科衛生女士は退職したとの
ことを告げられ、新しい…こちらはキリリとしていたが、モナリザの
微笑をたたえた歯科衛生女史という雰囲気の方に名刺を渡された。
「きれいな歯ですねえ」例の千年の恋もオジャンにしてしまいそうな
大口開けポーズをとらされての一言である。
まあ、歯科衛生女史にそう言われては、気分の悪かろうはずはない
…が、このポーズなのだ。つくづく歯科衛生女史との恋は難しかろうと
関係のない老婆心ながら思うのだった。(笑)
「痛くて、沁みるんですね」と言うと、何やら小道具を取り出し、
痛い時は言ってください」と歯をつつきはじめた。
「これが○番」コンコン「これが×番」コンコン「これが△番コンコン
「どうですか?」「痛くないです。」「今度はエアーを吹きつけますので、
沁みたら手を挙げてください」と言ってシューシューと吹きつけていく…。
これも何ともないのである。電話予約を入れた時はけっこうな痛みを
感じていたので、それ相応の覚悟はしていたのだ。
まあ、猛烈な腹痛に襲われて、病院に行ったら治っていた
というような感じだった。一瞬女史の表情に「何しにきたの?」
というような沈黙の間合いが生まれたが、すぐにモナリザに戻って、
「確認のためにレントゲン撮りましょうね」と言って撮ったが、
やはり異常はなかった…。
じゃあ、あの痛さと、しみるのは何だったのか…多少釈然としない
わたしに、「体調の悪い時など、歯の中の神経が腫れて
それが圧迫されて痛い時があるので、しばらく様子をみてください」
とモナリザのままに、女史はおっしゃったのである。
その後、歯垢をきれいさっぱりと取り除いてくれ、口中美人となって
歯医者を後にした。
ままよ…いずれにしろ、健康で丈夫な歯だというお墨付きを
いただいたようなものではないか。口中を一なめまわすと、
キュキュとしたスッキリ感が舌先に伝わる。
意気揚々とまではいかなかったが、軽やかな気分で
家路についたのだった…。